タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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1-2-5 真面目に不真面目

 0619      FRI

 

 テスト初日、皆、ペンを走らせている。カリカリカリカリ。今日は日本史と政経、それに地理。個人的にはかなり重い。俺は理系なんだ。

 ・・・まあそれでも、教科別の順位でも半分より上に入るけどね。

 竜崎はといえば、テスト中はアクセサリ等は外さなくてはならなかったので、カバンの中に入れっぱなしである。

 

 

 今日の日程が終了し、教室内が少しずつ騒がしくなっていく。もっとも、それはテストの答え合わせであったり、嘆きであったり。俺日本史爆死したわ~やら日本史の問題4はマジキチ~みたいな声が一番多い。俺は普通の出来だけど。

 「……なあ………遼……………どう、だった…………?」

 「まあ、いつも通りだよ。いつも通り。可もなく不可もなく。」

 「お前はっ……お前にとってのその点はっ・・・・・・・・・俺にとってはっ・・・・・・・・・・!うああああああああ!」

 カイジの目は虚ろ。まあ、テストのたびにこうだったからもう慣れた。

 「ちなみに、怜たちはどうだったんだ?」

 俺はカイジをスルーして周りにいた怜や静乃に聞いてみた。

 「ぼくはまあそれなりにできたかな。社会は嫌いじゃないし。今回も遼はぼくには勝てないよ。残念だったな。」

 こいつェ……俺より少し順位が高いからって調子こきやがってぇ・・・・・・・・10位差なんてひっくり返してやんよ……

 「私は……ダメでした。やっぱり、私はダメなんです……。」

 「とかいって、また綺麗に25位ジャストをとるんだろ?」

 そう、刹那はなぜかテストをやると、必ず教科別だと25位をとる。それは一種の才能ではないかと俺は思うね。しかも狙ってやってないんだから。ちなみに、合計順位はまばら。

 「だからダメなんですよ!いつまでたっても中の下っていうのは耐えられないんです!……はぁ、暗記パンとかあればいいのに。」

 今の刹那は通常――白ヘアピンのみつけているので、白刹那とでも言ったらいいのか。

 そんなことを思っていると、ふとあることが頭をよぎった。

 ―自己暗示をうまく利用できないか―と。

 刹那はヘアピンによって人格が変化している。その色――たとえば青なら、青色がキャラカラーであるガンダムOOの主人公のような人格になる。まあエクシア刹那とでも言おう。次に、赤。最近つけているのを見ていないが、これをつけると、シュタインズゲートの主人公のような人格。これは鳳凰院刹那と名付けるか。

 つまり、“天才”のキャラカラーのヘアピンをつければ、この現状を打開できるのではないか。

 そう思ったのである。

 刹那の人格変化には特徴がある。

 OOの主人公。

 シュタゲの主人公。

 この2人の中の人、乃ち声優が同じなのだ。

 その声優が演じているキャラでなくてはならない。さて、どんなキャラがいたものか………

 う~ん、出てこない。ちょっと帰ったらググろう。

 俺が考えに耽っていたその時、ふと気づいたことがある。俺が、「怜たちはどうだったんだ?」そう聞いたのに、まだ怜が一言も言葉を発していないのだ。怜の方をちらりと見てみる。

 彼女の眼もまた――虚ろだった。

 「れ、怜?どうしたんだ?まさかカイジみたいに答案が大事件だったのか?」

 俺はふざけてそう聞いてみた。だが怜は無表情。

 「お~い、榊さ~ん。生きてる?ダイジョブ?」

 俺は怜の眼前で手を振ってみた。だけど、眼球は動かない。

 「おい!しっかりしろ!」

 俺は肩を揺さぶった。そうしたことで、やっと怜は瞳に色を取り戻し、そして、

 「もともと……転校したての私に……暗記系は無理……なんだよ……。」

 その時、俺は思い出した。この前の勉強会の時、怜は理系分野ばかりを勉強していて、文系にはあまり・・・というか、ほとんど手を付けていなかった。

 しかも、よくよく考えてみれば、この地球に住んでいるかどうかも怪しいのに、そんな地球の政治や歴史、構造についてわかるのか?おそらく、答えはノー。理由は怜の顔が物語っている。

 「おいおい……それ………かなり不味くないか?今までの授業、ついていけていたのか?」

 「ノートはとってたけど……わかんなかったよ・・・・・。」

 「・・・・・・・・空欄は何個だ?」

 俺は怜に尋ねると、怜は人差し指を俺に突き付けてきた。

 「何?1個だけ?それはなかなか上出来じゃないの?下手な鉄砲も数撃ちゃあた――」

 「1個、しか解けなかった。」

 「…………は?」

 「地理は計算問題があったから、そこはできたけど……あとは……。日本史はまだできたけど……政経はまったく……」

 「やったっ……!これで初の最下位脱出だっ……!」

 「伊藤は黙ってろ。」

 静乃からのどぎつい言葉に、カイジは肩をすぼめていた。

 「0点………。」

 俺の口からそうこぼれた言葉に、怜はびくつき、額には汗がびっしょりであった。ガクブルしている。確かに、これはまずい。

 「と、とりあえず落ち着け。まだ大丈夫だ。補習を受け、再テストすれば、なんとかなる。」

 「そうだよ怜!まだ留年が確定したわけじゃない!」

 「留、年……」

 その言葉を聞いた怜は、なぜかガクブルがとまり、ここではない別の何かを見ているようであった。

 ――そうだ、1年……。

 怜はもともと、竜崎のエージェントだ。だから、竜崎が消えるのと同時期、すなわち俺が彼女を作ったとき、それまでの間しかここにいないのではないか?しかも、どんなに長くても、おそらく年末まで。つまり、どんなに点数が悪かろうが、どうせ消えるんだからどうでもいい。そう思っているのではないのだろうか。

 だが、その考えだと矛盾が生じる。それは、何故こんなにもガクブルしていたのか。ということだ。これについては実際に聞いてみるしかわからない。

 「怜、お前、どうしてそんなにガクブルしていたんだ?」

 「だって……私がここまでできないなんて・・・・・・・・プライドが許さないわ……許されないのよ……。」

 ……やっぱり、留年は眼中にはないのか。

 「おいおいプライドの問題かよ……そんなことより留年するかどうかが問題だろ?」

 「え、ああうん…。確かにそうよね……。」

 怜は相槌をしているが……これは本心ではない。そう思えるのは、俺が怜の身分を知っているからだ。どうせ年内には消える存在。来年は、ここには居ない。居ないからどうでもよい・・・・・だから留年てどうでもいい。それでいいのかって……?

 ……やっぱり気に食わない。

 「…………ダメだよな。」

 俺の唸ったような声に驚いたのか、怜たちが静かになる。

 「怜、再テスト、まじめに受けるぞ。」

 「へ?ああうん。そりゃあもちろ――」

 「ま じ め に だぞ?」

 俺が強調言うと、怜を含め周りの人もぽかんとしている。

 「どうしたっ・・・・・・?なんかいつもと様子が違うぞっ・・・・・・?いつもなら「フヒヒwまあせいぜい頑張りなされwwww」とかなのにっ……!」

 「確かに……そういえば私も何回かそういわれたことがあります。」

 「……どういう風の吹き回し?しかも、受けろよ、じゃなくて受けるぞって……。お前も受けるみたいじゃないか、再テストを。」

 ああ、わかった。この不快感。きっと怜は、やっても無駄になるんだから全力でやらなくてもいいじゃない。そう思っているんだろう。その態度を、俺は不快に思っていたんだ・・・ 。

 「どうもこうもない。怜が、赤点とって不安がっているのかと思ったら、プライドが傷ついて震えていたこと知って少しイラついたんだよ……。――でもまあ、こいつが今からまじめにやったところで、0点近くだった奴がいきなり再テストのボーダーである70点を超えるとは思えない。だから、こいつが単位を落とさないように、俺が協力してやる。受けるぞっていったのはそういう意味だ。」

 建前上はそうだが、本音は違うけどね。

 「……それはいらぬお節介――。」

 「いいのか?留年しても?まあもっとも、一人でこの現状を打開できるのなら、たしかにいらぬお節介かもな。」

 「……今日の遼君、ぐいぐい来ますね……ほんと、どうかしたんですか?」

 そう刹那に言われ、俺は自分が熱くなっていることに気付いた。怜は少しではあるが、俺に対して不信感を抱いているように見える。ちょっときつく言い過ぎたな。落ち着け、俺。俺は怜に対してイラついていたが、怒ろうとしていたわけじゃないんだ。

 「カイジの場合は本来やっているはずのところを、やってないから取れない。それは自業自得だ。だけど、今回は違う。はなっからやっていないんだから、わからないのも当然。だから、この点とるのも仕方ないな、なんか手伝ってやりたくなるなって思ったんだよ。なんか、無意識のうちにきつい言葉が出ていたけど、まあ気にしないでくれ。過保護って言ったら過保護だな。そりゃあ。」

 「…………。」

 怜は黙り込んでしまった。

 「……どうせ遼は、私が拒んでも、聞かないんでしょう?……わかったわ。」

 怜は俺のエゴでもある提案に乗ってくれた。なんでそんなのに乗ってくれたんだろう。まあ、拒否したところで俺はぐいぐいしてたけど。自己満足はそうでもしなきゃ満たされない。

 「……じゃあ、遼だけじゃ心もとないからぼくも参加しようかなぁ~。」

 おもわぬ副産物だ……。

 「悔しいっ……!俺たちじゃ力になれそうにないっ……!それがっ………!悔しいっ……!」

 「え?ええ?伊藤君、私も混ぜないでくださいよ!」

 いやいや、勉強できない組だと自覚している時点でダメではないか(笑)

 「じゃあ、とりあえず今日から――と言いたいところだが、いいか?」

 「え?ああうん。いいよ。」

 「………ああ―今日、か。いやごめん。言い出しておいてなんだが、今日は無理っぽい。明日でいい?今日は遼、明日はぼく、みたいな?」

 「…!いやいや、静乃が謝ることないよ。もともとは私の問題で、静乃はそれを手伝ってくれようとしているわけだし…。静乃の都合で大丈夫だよ!」

 「そういってもらえたら助かる。」

 「……ふと思ったんだがよ……。萩原っ・・・・・・!お前っ……残りのテストの勉強っ……大丈夫なのかっ・・・・・・?」

 …言われてみればそうだった。

 俺はもう山場は今日でこえた。あとは古典、現代文は苦行ではあるが、理系は別に前日に焦らなきゃならないほど切羽詰まっているというわけではない。

 だが、静乃。あいつの事情は俺には全く分からない。大丈夫なのか――

 「ああ、それは問題ない。毎日それなりにやっていたから、前日に少しやらなくたって平気さ。」

 どうやら、静乃も俺と似たような状況らしい。まあ、俺と学級順位がさほど変わらないしな。

 「……さて、長話もなんだ。もう帰ろうか。」

 そういわれて、俺らはまだ教室内にいたことに気付く。周りを見渡せば、もうかなりの人数の生徒が教室から消えていた。

 「あっ……そういやっ………!」

 カイジは何か思いついたように俺の方に寄ってきて、耳に口を寄せる。

 「『どうせ私が拒んでも、聞かないんでしょう?』って言葉、体育教師に無理やり関係を持たされてる女学生っぽくてエロいよなっ……!」

 なんて言ってきたので、あまりにくだらなく、俺は歩く速度を速めた。

 

 

 

 「もうかなりしたわね……。ちょっと疲れたわ。コーヒーでも淹れて――あ、紅茶の方がよかった?」

 「いや、俺はコーヒー派だ。それでお願い。ありがとうな。」

 空は紅色。時刻は6時に差し掛かろうとしていた。俺はといえば、怜と政経、地理の勉強の真っ最中である。場所は怜の家のリビング。家に帰って、私服に着替えてからすぐさま怜の家に向かい、勉強を始めた。もうかれこれ4時間になる。怜は参考書と問題を交互に見ながら、そして俺がところどころ解説―という流れであった。怜は理系が異常にできるからかどうかは知らないけど、俺が解説をしたところをすぐさま理解して、問題も解けるようになっていた。なんて理解力なんだ。

 そしてその4時間の間、怜は学校での出来事には一切触れず、ただひたすらに解説を聞き、問題を解いていた。そして一区切りついたところで、先の言葉なのである。

 ちなみに、竜崎はこの場にいない、理由としては、「四六時中君といたら私の身が持たない。怜の家に行くなら私の役目は怜が果たしてくれる。だから、私が行く必要はない。故に部屋でゆったりさせてもらうよ。私だって休養は必要なのだよ。」だそうだ。

 ほどなくすると、怜は両手にコーヒーを持ってやってきた。カップの色はモノクロチェック。ちかちかするな。さすがにこればっかりはセンスを疑うよ。

 怜は俺にコーヒーを渡し、「砂糖とミルク持ってくるわね。」と残し、再びこの場から姿を消した。コーヒーの匂いが鼻につく。俺の脳を活性化させる――様な気がした。

 てか、俺はブラック派なんだが……いまさら言うのもあれだし、ここは黙っておくのが吉だろう。俺はブラックのままコーヒーを一口飲んだ。

 怜はすぐ戻ってきた。2人分のプラスチック製のマドラー、カップに入ったミルク、棒状の袋に入ったシュガー。これらは、いかにもインスタント、と思わせる。生活感をあまり感じさせなかった。

 俺はそれを素直に受け取ると、砂糖だけコーヒーに入れ、一口飲んだ。……やっぱ甘いな……。甘すぎるのはダメなんだ。あと、このコーヒーは安っぽい味……実際に淹れたのではなく、インスタントのものだろう。まあ、不味いわけじゃないからいいし、折角淹れてくれたんだ。それだけでもありがたいもんだ。

 怜はといえば、砂糖2本、ミルク2個……あれ、こいつ甘党?

 怜はマドラーでコーヒーをかき混ぜる。黒がみるみる灰色へと変わっていく。ああ、甘そうだな。

 「・・・・・・・・さっきは。」

 「なんであんなこと言ったの?とかか?」

 「…やっぱりわかる?」

 「そりゃあ、予想の範囲内だからな。」

 「……そう…。」

 彼女の表情は浮かない。視線もどことなく下に向いている。

 「お前がここにいるのって――――年内までなんだろ?」

 「……。」

 返事はない。ただ、俺の言葉に体は反応していた。これは肯定ととっていいのかな。

 「すぐ――ではないけど、来年にはこの地に高確率で居ない。だから、来年の事なんて考えてなかった。考える必要もなかった。だから、留年なんて気にもしていなかった。―――それが、その態度が、気に食わなかったんだ。」

 俺は話は止めない。思っていることをすべて言ってしまいたかった。

 「――――ここからは俺の推測だけど、怜はきっと俺と同じ年・・・・・ぐらいじゃないか?実は100歳を超えるんだっていうのなら、そういった雰囲気が出るはず。よくロリババアを見てきたからわかる。まあアニメとかだけでだが。怜には年長者の持つ風格が微塵も感じられない。普通の女子高生に見える。そんな娘が――大切な学生時代を無駄にしてしまうのではないかと思うと、イラついてしまったんだ。どうせいなくなるにしても、せめてその間は、普通の女子高生として過ごしていこうぜって、言いたかったんだよ、要は。」

 ・・・・・・・・・・よく考えてみれば、怜の素性についてあんまり知らないのに、ずけずけと聞きすぎたのではないかと、今更後悔した。

 一度そう考えてしまうと、そうとしか思えなくなってくる。俺は申し訳なくなって、

 「――えっとその……お前何様のつもりだよって話だよな――」

 「いや……。そんなことはないよ!遼がまさかそこまで考えているなんて……。遼って結構すごい人なんだね……。見直しちゃったな…。」

 怜は俺の話を聞いて顔をしかめるどころか、なにやら感傷に浸っているように見えた。なんでだ?

 「……確かに、遼の言った通り、私は、おそらく、年が明けるころには居なくなるかもしれない。いや、おそらくいなくなるわ。だから、来年の事なんて気にもしていなかったわ……。だけど、それは間違いだったみたい。たとえ消える身でも、いる間は普通の学生としていこうって。……こう考えさせてくれたのは、あなたなんだからね?」

 怜は優しく俺に微笑みかけた。目が少し潤んでいた。……そんなに俺の話が感動的だったのか?いやまさか、勉強しすぎて目がおかしくなっただけだろう。

 

 

 結局そのあと、他愛もないことを話してから、家に戻った。なんだか1日がすごく長かった気がするのは気のせい?気のせいか。

 結果、もうすでに9時。それから飯を食い、風呂に入り、なんやかんやしてたら11時になっていた。勉強疲れもあったので、もう寝ようと、部屋の明かりを消し、ベッドに入ろうとしたその時、ヴヴヴとバイブレーションが鳴った。まったく、こんな時間に誰だよ……

 そう思いながらケータイを開いてみると――

 メールが一通来ていた。

 

<From.Shizuno To.Ryo

 今日はお疲れ様。どう?うまくできてた?教えれた?まあ、お前はなんだかんだ言ってできる人だから、そこらへんは信用してるよ。明日はぼくが教える。遼は今日で疲れたろうし、明日は存分に休めよな?>

 

 なんで命令口調なんだよw

 そう思って俺は思わず笑いがこぼれた。にしても、静乃のやつ、けっこう気遣ってくれるなぁ・・・・・あ、昔からなんだかんだでそうだったか。

 とりあえず返信しようと、俺は毛布にくるまりながら文字を打った。

 

<To.Shizuno

 とりあえず報告として、怜の理解力の早さには驚かされるな。一から説明したらかなりの速さで覚えていったよ。・・・・・・・・・あとさ、正直、俺一人だったら自分の身が持たなかったよ。手伝ってくれてありがとうな。>

 

俺は送信ボタンを押した。すると、ものの数分で返信が来た。

 

<From.Shizuno To.Ryo

 ぼくも、怜の態度にはちょっと違和感があったし、なにより放っておけないって思ったからな。勘違いするなよ?お前の身を案じて手伝っているわけじゃないからな?>

 

 ……ぼくも、だって?

 その言い方だと、俺が違和感を抱いていたみたいじゃねえか。間違いじゃないけど、そんなこと一言も言ってないぞ?まあいいや、放置放置。眠いし。

 

<To. Shizuno

 ツンデレ乙wwww>

 

 数十秒後、

 

< From.Shizuno To.Ryo

 てめえ一回地中海に沈んで来い。 >

 

 ふっふっふ、可愛いやつめwwwww

 まあいいや、もう寝よ。おやすみなさい。

 

 

 

 

 彼が完全に寝たことを確認すると、私はルームの中にあるホログラムを起動させた。

 そこに表示された“あるもの”に目を向ける。

「やはり……君は*******でありながら、********なんだね…。」

 どれが“該当”なのか。それは私にはわからない。わかればこんなに苦労はしていない。

「まさに神のみぞ知るというやつか……。」

 私はホログラムを止め、就寝した。

 

 

 

 

 0622 MON

 

  テスト二日目。俺は刹那の自己暗示をうまく利用できないかと調べた結果、素晴らしいアイデアが浮かんだ。「この色のヘアピンを買えば少しは結果が変わるかも。とにかく買え!俺がおごってやるからさ!」と土曜日に告げたわけなのだが……果たして本当に買ったのだろうか…。もし買ってなかったらちょっとショックだな…。まあ押しつけがましいのは重々承知だけどさ。

 そんなことを考えながら、俺は椅子に座って頬杖をついていた。時刻は8時15分。少し早めの登校だ。

 「おはよう遼」

 「おう、おはよう。」

 丁度静乃が登校してきた。

 「確かにあの理解力の速さはすごいな。もう既に60点は取れるレベルだぞ?」

 「………そこまで?」

 驚きしかない。なんせ、つい数日前では0点近くだったのだから。あと、静乃の教え方のうまさにも驚かされた。もう60点レベルまで引き上げただなんて・・・ 。怜の話によれば、俺の5倍くらいは分かりやすかったらしい……。悲しいかな。

 「これ、あとちょっとやればもう大丈夫だろう。てか怜は?」

 「……お前の目は節穴か?後ろを見てみろ。」

 俺は親指を後ろに向ける。怜はといえば、政経の勉強をしている。こんなときにまでやるなんて、律儀なやつだなぁと素直に感心する。

 「……もうぼく、教える必要ないんじゃ…?」

 「俺もうすうす感じている。もう一人でできそうな気がするぜ。」

 静乃も感心していた。そりゃそうだよな。

 それからほどなくして、刹那が教室内に入ってきた。彼女の髪には………

 茶色のヘアピン、白のヘアピンが、つけてあった。

 「・・・っ!」

 俺は席から立ちあがって、刹那のところに駆け寄った。

 「刹那おはよう。……あれ?新しいヘアピン買ったんだ。・・・・・・・・・・・・・・・・今度はどんな性格なのだろうか。」

 静乃も刹那の自己暗示については理解している。だから、気になるのだ。どんな人格になっているのかが。

 「よう刹那。今回のテスト、いけそうか?」

 俺はわざとらしく聞いてみる。俺の予想が正しければ、この刹那、“とんでもない天才”のはずだ。

 「ククク、 計 画 通 り 。」

 予想通りであった。

 そう、今の刹那は

 

 デスノートの夜神月な

 東大を首席で入学するような天才なんだ。こんなテストなんて、余裕なんじゃなかろうか。

 「な、何が計画通りなんだ?」

 「私が今の今まで25位という中途半端な結果を取り続けていたのは、私の完全なるプランの一部にすぎなかったのですよ。ここからの巻き返しによるお膳立てにすぎません。なぜそんなことをするのかって?それは、確実なトップを狙うためです。私は問題の難易度を考えて、25位を狙うためにわざと問題を解かなかったのです。わざと調節していたのですよ。ですが、一年間25位をとりつづけることに成功した。狙った点が取れるようになったと考えてよいでしょう。ですから、もうそんなことはしません。一番を狙います。」

 「あ、ああ、なるほどな……。」

 静乃は刹那の饒舌ぶりに呆気にとられていた。

 俺も呆気にとられ、そして妙に納得してしまった。理屈っぽいところは月そのものだが、言っている内容はどう考えても負け惜しみにしか聞こえない……。

 

 

 

 実際テストを受けてわかった。

 刹那の自己暗示、これは失敗に終わった。

 人格は変わっても、さすがに知識までは変えられなかったのだった。

 

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