タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

15 / 105
注:ホモ描写あります


1-3-1 ピザデブとドMとおホモたち

 0627 SAT

 

 テストも終わり、そのあとはゲー研の面子でアドアーズに乗り込んでフルドに没頭したり、怜の勉強見たりで、かなり忙しかった。

 そして今日は、待ちに待った、フルドの地区予選日。俺はショルダーバッグにいつもゲーセンに赴く際のものを詰める。ボイスチャット可のヘッドフォン、財布、フルドのIDカード、ノート、よし、大丈夫だな。ちゃんとバイトにも断りを入れた。バイト長曰く「緋色君も休むのに君も休むってのは手痛いな~…。その埋め合わせは頼むよ?」だそうだ。会長もバイト休むなんて珍しいこともあるんだな。親戚に不幸でもあったのかな?

 俺はショルダーバックをかけ、胸ポケットには竜崎を入れて、部屋から出た。

 「あれ~?兄さん、どこいくの~?」

 まだパジャマを着ていた有希がのんきそうに聞いてきた。こいつ、今の今まで寝ていたのか…。ま、土曜日だし当然といっちゃ当然か。まだ9時だしな。

 「これから戦場へ向かう。」

 「はいはいおもしろいおもしろい~。いってらっしゃ~い。」

 こいつ…、寝ぼけるかバカにするかどちらかにしてくれ…。

 俺は有希に対して顔をしかめたが、有希はそんなことを気にもせず、どこかに行ってしまった。

 俺は家を出ると――なぜか正面には怜が立っていた。ホットパンツにパーカー。すらりと伸びている生足がエロい!あとどんだけパーカー好きなんだよww勉強会の時もそうだったがwww

 「あら、結構早かったわね。」

 「そりゃあ大切な日だからな――て、なんでいんの?」

 「え?いちゃだめなの?」

 「いや駄目じゃないけど…。」

 「遼のゲームしてるところ見てみたかったし、それに……一緒にいたかったし。」

 「え?それってつまり……・?」

 「フラグ立てるためにもね。」

 「・・・・・・・・・ですよねー。」

 「え?まさか期待しちゃってたわけ?wそんな都合のいいことあるわけないじゃない。」

 怜は俺を小馬鹿にするように嘲っていた。

 く、クソっ・・・・!一瞬でも信じた俺がアフォだったっ……!

 「まあまあそんなにへこまないで。応援したかったのは事実だから。――じゃあ立ち話もなんだし、会場に向かおう?」

 「……ああ、そうだな。」

 俺たちはアドアーズに向けて、足を向けた。

 ちなみに、竜崎は怜がいるということを予知していたのか、ついてこなかった。きっとまた家でゴロゴロしてるんだろう。

 

 

 集合は9時半、アドアーズ付近の公園で、ということになっている。この公園、その辺にあるような小さいところではなく、北海道の中島公園のように、公園というよりは広い土地、といったほうが正しいだろう。正式名称は水薙中央公園。

 俺と怜が到着したころには既にメンバーがそろっていた。服装を見てみると、部長は革ジャンにジーンズ。服装だけ見るとかっこいいのだが、いかんせん性格がおちゃらけているからそう見えないのが不思議だ。柄谷は黒のワンピースで、袖や裾がフリルで飾られていた。俺としては、どことなくゴスロリっぽいのにそそられるな。にしても暑くないんだろうか。黒だし、長袖だし。光吸収するし。そしてグラハムは……いつもの仮面に、羽織、もう完全にブシドーさんですね、わかります。いつにもまして気合入ったコスプレだな~。

 「あ、先輩!おはようございます!」

 「カタギリ、遅かったではないか。」

 「国広ぅ……一番気合入ってそうなあんたが遅いだなんて……もしかしてそちらの彼女さんが原因かな?かな?」

 「んなわけないですよ(笑)」

 「まあ、先輩にいるわけないですしね~。」

 「おいそこ、それは俺に対して失礼ではないか?」

 「まあいいや。怜ちゃんに悪いし。」

 ちなみに、前にお互いの自己紹介は済んである。

 部長は怜を一瞥した後、

 「ではっ!県予選に向け、今日は勝つぞ!!」

 「「「おう!/承知した!/はい!」」」

 こうして、俺たちはビルの中へと足を踏み入れて行った。

 

 

 フルドの開催場所はビルの5階、6階となっている。下からA、Bブロックとなる。受け付けは5階の入り口付近。部長がエントリー用紙に記入をしに行っている間、俺は近くの壁に寄りかかって、あることを考えていた。

 言ってしまえば、俺と柄谷をボコボコにした相手、《Nameless》についてだ。ここ数日、この場所でやつらに出くわしはしなかった。そもそもオンライン対戦なのだから、この付近の大会に出没する確率なんて、天文学的に低いわけだが、どうも落ち着かない。この付近のプレイヤーである気しかしないのだ。ジャメビュ?いやまさかな。とりあえず、ああいった戦術の相手のために期待の調整はした。結果は良好。きっと大丈夫、大丈夫さ……。

 「先輩?どうしたんですか?浮かない顔して。」

 気が付けば、柄谷は俺の瞳を覗き込んでいた。距離が近かったので、さらにこんなに近くにいたのに存在に気付かなかったこともあり、驚いて、本能的に後ずさろうと――したが後ろが壁だったのでそれはできなかった。

 「ちょ、近い近い、少し下がってくれ。」

 「……!す、すみません……。」

 柄谷は少し顔を赤らめて、後ろへ二歩ほどあわてて上がった。大方、遠くで見ていてもよくわからなかったから、近づいて確かめようとした。無意識にってところだろう。

 「ちょっとな、奴らについて考えていてな。」

 柄谷はその言葉を聞いて、赤らめていたのが一変、表情が曇ったように見えた。だけれどそれも一瞬。

 「大丈夫です!あれだけ練習しましたし、何より対策も立てたじゃないですか!それに……あの人たちがこの辺に現れるなんてあるわけない。仮に現れたら、リベンジしてやればいいじゃないですか!とにかく大丈夫です!私もいるんですし!」

 ……そうか、そうだよな。勝つイメージを持たないとな。まさか柄谷にそんな簡単なことを言われるとは……それに気づかない俺も俺だな。

 「……柄谷、俺を励ますとはなかなかやるな。お前がいるから大丈夫ってところは疑問だが。」

 「そ、それは酷いですよぅ……。」

 「冗談冗談。正直助かった。俺は考えすぎてたみたいだな。 それに、あいつらが出たからって、また負けるとは限らない。というか、むしろ勝てる。」

 「先輩……やればできるじゃないですか!」

 俺は柄谷の頭の上にポンと手を置き、

 「ちょっと生意気。 まあ、気遣ってくれてありがとな。」

 「……こちらこそ……。」

 柄谷は視線を少し落とした。どことなく頬が赤っぽいのは気のせい?気のせいか。

 「じゃあ、部長の所に行くぞ。」

 「はい!」

 

 

 「部長からの言伝がある。私たちはBブロックだからこの階は1つ上、そして2ブロック目だ。開会式終わったら6階の手洗い場付近で集合だそうだ。」

 俺らが部長の所に行こうと5階をさまよっていたら、グラハムと怜を発見した。彼らは壁に寄りかかっていた。部長の行方を聞いたら、そんな返事が返ってきたのである。

 「……肝心の部長さんの行方が……。」

 「単にトイレに行ってるだけよ。ほんの数分前に向かっていったわ。」

 「ああなるほど。」

 「じゃあ伝言残す意味あるんですか?」

 「いや柄谷、それは愚問だ。どうでもいいことをするのが部長だろう?」

 「それもそうですね(笑)」

 「とりあえず、ここで待っていればいいらしいわよ。」

 「了解。」

 

 

 ほどなくして部長が戻ってきて、いよいよ開会式が始まった。参加者たちはスクリーンの前に集まってくる。俺たちは部長を待っていたので、少しステージからは後ろ気味だ。あたりを見回してみると、アドアーズ常連客もいた。やっぱあいつらも出るのか……。何回か対戦したことがあるが、まあ俺らが大抵勝から、ノーマークでいいかな。前方に目を向けると、何故かよくわからないが、アイドルファンによくある法被を着ている人が結構いた。そんな有名人が来るの?たかが地区予選に?

 それにしても――ああ、いよいよ始まるんだなって思うとたぎってくる。緊張で手が汗でほんのりとにじむ。

 「ではこれより!2012年、フォースレイドライブの地区予選を開始しますっ…!」

 司会者の開催宣言に、参加者たちのテンションが一気に上り詰める。

 「司会、実況は、アドアーズ水薙中央店店長、一条聖也が務めさせていただきます。さてさて、県予選への切符は2枚、はたしてどのチームが手にするのか、期待で胸が高まりますね!それでは今日は皆さん、存分に己の力を発揮してください!」

 それにしてもこの一条という男、赤い髪にスーツって、いくらマイクを握っていても、実況者というよりはセールスマンに見える。しかもエリートオーラが滲み出ているなぁ。

 「では、ここでビッグサプライズっ!なんと今回の予選では、解説者が付きます!それは、この方です!」

 すると、檀上右側から、一人の女性が現れた。それを皮切りに、さっきの法被男たちのテンションが最高潮になる。

 「真冬たん可愛いよおおおおおお!!!!!!!」

 「俺のおいなりさんをぺろぺろしてくれええええ!!!」

 「「「真 冬 ! 真 冬 ! L O V E 真 冬 !」」」

 とにかく熱気がすごい。てか、五月蠅い。ここは勝負をする場であってアイドルを愛でる場ではないのだが……。でも、彼らが発狂するのもうなずけるくらい、檀上の女性は可愛かった。クリーム色の髪色を白いリボンでまとめ上げ、カーディガンにロングスカート。全体的に軽めな色で合わせていた。そして、可愛い。美しいのではなく、可愛い。例えるなら、神のみの栞、ぶらばんの須美に似たようなオーラ。要するに守ってあげたくなるような、か弱い感じ、清楚な感じが滲み出ている。まさに完成されたヒロイン!やべえ、惚れてまうやろ。

 「うおおおお真冬たあああああん!」

 ふと、聞きなれた声に振り向いてみると、そこには法被を着たオタク軍団に混ざってカイジがいたのがわかった。俺は人ごみをかき分けて前に進んだ。

 「ちょwwおまwwwwこんなとこで何やってんだwww」

 「お前こそっ………!真冬たんに会いに来たんじゃないのかっ………?」

 カイジも俺がここにいることに驚いていたようだ。両目を大きく見開いていた。

 「檀上の娘なんて初めてみたわwwwwでも可愛い。やべえよこの可愛さ……。」

 「だろっ・・・・・・・・・?真冬こと椎名真冬たんはゲーム評論家、開発者でありながら、プロゲーマーとしても名高いからっ……、かなり名の知れている人だっ………!だが、本人がいうにはっ……、あまり顔をメディアに見せたくないらしいっ……。理由は恥ずかしいからだっ………!こんな美少女なのになっ・・・・・・・!だから俺のような外見に惚れ込んだファンはそんなに多くはないっ……!それがっ…!俺らが真冬たんを独占しているみたいでっ……素晴らしいっ・・・!萌えるぜ・・・!」

 ・・・・・そういや、ファミ通や電撃プレイステーションのレビューコーナーで、この名前を見かけたことがあるぞ。電撃プレイステーションの方は文字だけだったが、ファミ通は本人をデフォルメして模したラスト付きだったな。よくよく見れば、まさにイラスト通りのかっこうだ。

 ……すごく親近感を感じるぜっ!

 って、俺は真冬たんを見に来たんじゃない。試合しに来たのだ。危うく忘れるところだったぜ。

 「あとっ……!俺は詳しくは知らないがっ……真冬たんはBL業界でも有名な人らしいっ……!まあ俺はホモに興味ないからっ……。」

 「ふうん、まあ俺もホモはお断りしますな。」

 俺はカイジに別れを告げ、来た道を戻って部長たちと合流した。

 「何々国広?もしかしてあまりの可愛さにファンになっちゃったのかな?」

 「ち、違いますよ。友達がいたから声をかけに行っただけですって。」

 「はいはい、そういうことにしておいてあげるよー」

 部長は全く取り合ってくれなかった。まあ、よくあることだから気にもしてないけど。

 「はいはい皆さん、いったん落ち着いてください。  えー、彼女、椎名真冬さんには今大会の解説を担当なさっています。これまでに数か所の地区に派遣されてきましたが、今回の派遣先がここ、アドアーズ水薙中央店となりました!みなさん、盛大な拍手をお願いします!」

 一条の言葉とともに、会場内には拍手が鳴り響いた。

 「ありがとうございます!ここはなかなかの激戦区だと聞いていますので、期待に胸が高鳴ります!皆さん、全国優勝目指して頑張ってください!真冬からの言葉は以上です!」

 おぅ……一人称が名前とは………萌えるっ!

 ああ、こんな娘は制服コスをさせて立ちバックで犯されてるのが似合いそうだなぁ……そうだな、フリル白ニーソで制服は黒を基調としたチェック。………我ながら素晴らしい組み合わせだ!・・・・・・・・って、痛え!なんか足先が痛え!めっちゃぐりぐり踏みつぶされてるっ!

 俺は足元に目を向けると、部長と柄谷の靴がそこにはあった。彼女らが俺の足を踏んづけていたのだ。

 「す、すみません……。謝りますから、足をどけてください……。」

 俺はとりあえず謝った。何に対して謝ったのかは定かではなかったが。

 

 

 「さあて、まずは一回戦、ぼっこぼこにするよー!」

 ついに試合開始10分前となった。各チームは絶賛ミーティング中だ。

 「対戦チームを見る限り、私たちは当たりを引いたみたいですね。」

 「私としてはやりがいがなくてつまらない。ここはカタギリと柄谷に任せる。こういった戦闘は私には向いていない。」

 一回戦は2対2対2対2の一本勝負。1チームは4人であるので、半分だけが出場すればよいのだ。各チームの戦力ゲージは6000。すぐには負けない仕様となっている。

 「まあ確かに、これは乱戦みたいなもんだし、柄谷が遠くから狙撃しているか、逃げ回っているだけで周りがやりあってくれるから、それでいいしな。」

 さらに、4チームが一斉に戦うということもあって、対戦フィールドはかなり広い。一応これは乱戦回避のためらしいが、相手の面子を見る限り、乱戦は間違いないだろう。なんせ、相手のチーム名が、「ちっぱいぺろぺろしたいお」「ハマーン様に踏まれたい」「ああああ」だからな~……。しかも、相手のランクを見る限り、DやC、たかくてB+っていう(笑)まさに俺らに勝ってくれと言っているようなもんだ。

 「じゃあ、この勝負は国広と栞ちゃんに任せていい?」

 「任せてください!」

 「ぼっこぼこにしてやんよ。」

 俺と柄谷は、足取り軽く、8つ設置してある筐体へと向かった。

 

 

 この筐体、大会仕様で、台の1つ、横に仕切りが付いていて、横から他のプレイヤーをうかがうことができない。これは、不正を防ぐためである。以前はしきりなんてものはついていなかったが、大会中、プレイヤーに向かってライトを当てたりする輩がいたもんだから、こんな仕様となってしまった。まあ、普通にプレイする分には何の問題もない。むしろ視界に邪魔なものが入らなくなるから、いいことだ。

 「それでは、ログインして、各自持参、もしくは備え付けのヘッドフォンを着用し、筐体と接続し、ボイスチャットテスト、動作テストを開始してください!」

 勿論俺は愛用のものを使う。マイク機能も付いたものだ。

 俺は慣れた手つきでログインをすませ、さっそく柄谷と連絡を取ってみた。

 《おーい、そっちは繋がったかー?》

 《大丈夫です、聞こえてます。》

 《音量的には大丈夫?》

 《特に問題はないですね。先輩は?》

 《俺も大丈夫だ。》

 《戦術は打ち合わせ通りでいいんですよね?》

 《ああ、だから、ケルディムで来いよ?俺はアリオスで行くからさ。》

 《言われなくてもわかってますよ~》

 ここで説明を加えておこう。柄谷のMS“ケルディム”は長距離射撃を主とする機体だ。格闘攻撃―要するに剣などの類はすべて排除し、そこの部分に銃を設定してある。具体的にはツインハンドガン、これは命中精度を犠牲にして、量でダメージを負わせるといったものだ。そして、この機体の要となるのが、メイン武器のスナイパーライフルだ。すなわち、この機体は遠くからの狙撃に特化したものとなっているのだ。さらに、SLを重点的に強化しているため、レンジもかなり広いし、威力も高い。メイン武器はこれで、サブはミサイル、味方機支援、自機支援のものとなっている。HPは2.0upをつけての1500、SLなど、高火力のものも多いため、コストは2500となっている。

 ……射撃系の装備しかないので、斬りこまれたら対処のしようがないが・・・・・それについての対策ももちろん考慮済みだ。

 次に俺のMS“アリオス”は可変機だ。要するに、人型と戦闘機型(といっても、皆の想像する戦闘機とは違い、ぱっと見クワガタのような形状だ。)とで変形することができる。利点としては、戦闘機型は細かな動きはできないが、移動、一部の攻撃が強化され、味方機を“運ぶ”ことができるところだろう。無難に長剣を装備し、メイン射撃は柄谷の格闘コマンドと同じツインハンドガンだが、チャージショットというコマンドが備え付けられている。サブは自機支援に、右腕に備え付けられたシールドによる固定技―格ゲーで例えるなら、投げ技と言ったらよいだろうか。かかったら絶対に技が終了するまで、自力で逃げ出すことはできない。そんな技が2つほどある。一つは人型、もう一つは戦闘機型。なぜシールドが攻撃技であるのかという疑問はスルーしておければありがたい。後にわかることだ。HPは柄谷と同じ1500、装備は割と無難である(一部例外もあるが)ので、コストは2000。装備を強くしようとすれば、コストが上がってしまうので、これで今のところ落ち着いている。

 ボイスチャットは特に問題はなかったので、次に動作テストをしてみる。プラクティスフィールドに送り込まれた俺は、一連の動作を試してみた。―よし、こっちも異常はないな。戦闘ステージ対策もした。あとは待つだけだ。

 

 

 『えーそれでは、開始5分前となりました!解説の椎名さん、この勝負はどう見ますか?』

 対戦者が各々調整にはいっている中、一条は6階奥で、観戦者に見守られながら司会進行をしていた。彼はステージに設置された椅子に座り、前方のデスクに置いてあるパソコンで、現在の対戦者の状況を確認している。このパソコンは、8つの筐体すべての映像をつかんでいるのだ。といっても、すべてそれを表示するとごちゃごちゃして、はっきり言って見づらい。だから、基本はマップ表示(全体像、そして各機体の位置を表示していて、対戦者用の自機しか映らないマップとは違っている)、そして、それを見て、何か大きな動きがあれば対戦車支店の映像に切り替えて、実況するわけだ。同様に、隣に座っている椎名も解説をする。このパソコンは6階用。勝負が終わるたびにステージ袖にある非常階段で5階に降りて、そこで同じことをしなければならなかったので、非常に大変であった。彼らの後ろには巨大モニタ。これは一条と椎名が見ているものと映像がリンクしている。このモニタは観戦用だ。

 ちなみに、画面を切り替える権利はすべて椎名に握られている。

 『そうですね…。客観的に見ればCチーム『vibrio』ですね。可変機で挑む<Norris>さん、SLが要となる狙撃機を扱う<carat>さん。どちらもランクがAを超えています。コストは2000と2500でそれなりにバランスもいい。しかもちゃんとステージ対策もしています。このブロックでは屈指の強豪で、真冬が思うに、この試合では最も勝率が高いじゃないでしょうか。』

 『今回のステージ『大都市(夜)』対策とはなんですか?』

 『それはおいおい説明するということでお願いします。』

 『なるほど。では、ほかのチームはどのように見受けられますか?』

 『えっと…。まず、『ちっぱいぺろぺろしたいお』ですが……って、ちょっとこの名前、何とかならなかったんですかね…。まあそれはいいとして、二人ともランクはC。機体は…両方ともゴリ押しタイプですね。格闘スキルの強化を主にし、射撃スキルは低い。コストはともに3000。2度撃破されたら即終了。厳しい戦いが強いられますが、一対一に持ち込めばいい結果に導けると思います。それなりにステージにあった機体かと。次に『ハマーン様にふまれたい』ですが、彼らの機体はファンネルが主となっています。故にヒット&アウェイで戦うのが定石です。ファンネルの配置がどのようになっているのかが肝ですね。コストは2000と2000。最後に『ああああ』。真冬としては2番目に勝率が高いチームだと思います。B+、Bとランクは高め、仕様機体は共にオールラウンダー。無難といえば無難ですが、それ故に各人のスキルが試されます。コストは2000、2500。Vibrioと同じですね。』

 『なるほどなるほど。――おっと、いい頃合いですね。それでは!Bブロック第2試合を開始しますっ!』

 

 

 機体が戦闘フィールドへ転送される。場所はランダム。だがチーム内で離ればなれになるように飛ばされるわけではない。――さて、さっさと“送り届けた”後、逃げ回るとするかな。

 画面に《start!》と表示される。ついに始まった。マップを見たが、事前に打ち合わせていた通りにするためにはちょっと移動しなくちゃならないな。なるべく見つからないようにしたいものだ。なにぶん、こちらのマップには敵を一度発見しないと表示されないのだから。

 《じゃあちょっと移動するぞ。》

 《了解です。》

 俺は戦闘機型に変形すると、柄谷の機体をその上に“乗せた”。

 《なるべく見つからないように。そして、こちらが発見した時は相手に気付かれる前に狙撃。いけるな?》

 《いや、さすがにそれは無理ですよ(笑)まあやれるだけやってみます。》

 そうして俺は、柄谷を乗せて加速し、目的地までビルの間を奔った。

 

 

 『今回の戦闘フィールドの説明をしますと、まず舞台が大都市というかなり入り組んだ場所であるため、相手の発見が困難。加えて夜であることが拍車をかけています。だから、発見次第潰していく、もしくは狙撃というのが望ましいです。相手を見つけたけど逃げられてしまった。そういったとき、追いかけていったら別な相手からの不意打ち…なんてこともあります。じゃあ、身内の誰かが発見して、もう片方が狙撃という戦法になりますが…、ビルには高さがあり、バーニアを強化でもしない限りビルの上には飛び乗れません。したがって高いところからの狙撃は難しい。となると、やはりであったときに潰す以外方法はありません。』

 『それなら、どうして椎名さんはチームvibrioがフィールド対策をしているといえるんですか?』

 『さっき、狙撃するにもビルが高くて飛び乗れない。そう真冬は言いましたが、逆にいえば、飛び乗れてしまえばあとは早いのです。そのための可変機です。まず、可変機の上に乗り、可変機のブーストゲージがなくなるまで上昇します。なくなったら、今度は狙撃機自身がブーストゲージを消費して上昇します。二段構えと言ったらいいのでしょうか。まあそうすることによって、容易にビルの上に乗ることができます。あとは、脚の速い相方が敵機を発見し、狙撃機で撃つ。理想的ですね。』

 『確かにそうですが……そもそもビルが多いのですから、狙撃はしにくいのでは…?』

 『いくら遮蔽物が多いといえども、大きな通り、中央広場など、狙撃ポイントはかなりあります。そりゃあ、路地に入られたら撃てませんが、そうまでして撃つ必要もないでしょう。なんせ4チームもいるんですし、他が勝手にやりあってくれます。』

 

 

 大都市ステージは何度もプレイした。当然道は覚えている。―よし、あと少しだ―

 その時、右耳にかすかながら機械音が聞こえた。……敵だ。おそらくブーストして飛んでいるな。

 《右だな。》

 《右ですね。正確には右斜め前、といったところでしょうか。その先の十字路の右から来ると思われます。》

 俺はいったん動きを止め、柄谷を降ろした。

 《面倒だからここで撃ち落とすぞ。》

 《挟撃にしますか?》

 《いや、離れすぎると逃げづらくなるからそれはいい。相手はまだ無傷。なら、最後まで戦うというより、途中で逃げた方がいいだろ。だからまあ、ヘッドショット頼むわ。》

 《了解です。》

 俺と柄谷はその場に立ち止った。柄谷はSLを構え、俺は反対側を見張っていた。

 《――来たっ!》

 ――ダダァァン――

 柄谷の2連射が、容赦なく相手の頭部に命中した。相手機体は撃たれた方向へと転倒する。

 《よし、逃げるぞ。乗れ。》

 《了解!》

 

 

 『おおっと!最初の銃声が響いたっ!発砲したのはチームvibrioのcarat選手!しかも2発、HSだああああ!!!』

 『HSは、数秒間相手の視界をブラックアウトさせるだけでなく与えるダメージも致命的、しかも軽い相手なら吹き飛ばすこともできる。『ハマーン様に踏まれたい』チームは残念でしたね…。にしても、あんな短時間で、外すことなくHSを決めるということは、かなりの動体視力と反射神経を持ってます!すごいです!』

 『それにしても、caratさん、Norrisさんは事前に察知していたようですが…そこについてはどうなのでしょうか?』

 『はい、彼らは敵機が近くにいたことを察知していました。勿論予知能力とかそんなんじゃなくて、単に音を聞いていただけ。相手にも気づくチャンスはあったのですが…先を越されてしまいましたね。』

 

 

 さっき柄谷がHSした相手はもうマーク済み。後は再度柄谷に撃ち落してもらおう。そのためにもビルの上に送らなければ…。

 音から察するに、もう既にどこかでドンパチしているらしい。方角的には、さっき撃ち落した奴らではないだろう。

 俺は柄谷を乗せ、機体を奔らせていた。が、今度はど真正面に敵が、何故か1機のみでいるのを発見した。

 《……罠?》

 《先輩。たぶんこの機体、ランクCの方ですよ。》

 《ああなるほど、ただのバカか。――ちょうどいい、あれを試してみるぞ。》

 《了解!》

 俺は柄谷のブーストゲージを利用して、さらなる加速をした。敵機はこちらに気付いて、銃をぶっ放――さずに突撃してきた。……まさか、銃持ってないの?

 敵機のとの距離が10mとなったころ、

 《…今だっ!》

 《わかってます!》

 ―バスッ!バスバスバスッ!―

 柄谷のサブ射撃コマンド、GNミサイルが命中した。これにはホーミング性もあるため、敵には当たりやすく、命中したら相手は立ダウン(通称立ダ。転倒ダウンとは違い、この間、相手は無敵状態ではない)状態になるのだ。そしてそこへ――俺の機体の先端の両端がペンチのような形状となり、相手を挟み込んだ。これこそ俺の戦闘機型での固定技であるGNクローである。相手を挟み込み、そのまま握りつぶすのと、日本の腕の中心から針が伸び、相手を貫く2段攻撃…正確には同時であるが。

 《まだだ…まだ終わらんよ!》

 攻撃判定には若干のラグがある。そのラグをついた――機械の盲点を突いたのがっ!

 《柄谷、HSを決めるのだぞ。》

 《先輩、ちょっと黙ってて。》

 腕の挟み込み、針での貫きと同時に、

 ―ダァン―

 柄谷のHSが、俺の固定技と同時に、決まった。

 相手機体は砕けちった。破壊されたのだ。今の攻撃で。

 どうやらこれはちっぱいぺろぺろっていうところの機体か。コストは――え?3000?体力強化つけてないとか……舐めプもいいところだよ…。

 まあなんにせよ、これでやつらはあと一回撃墜されれば終わりってことだ。

 

 

 『おおっとおおお!!開始1分でちっぱいぺろぺろしたいおチームの《キモタク》選手を撃破したのはっ…チームvibrioのNorris選手とcarat選手!しかもおお!なんだこれはああああ!!!Norris選手の固定技と同時にcarat選手のHSっ・・・!椎名さん、これはいったいどういうことでしょうか?』

『“デュアルブレイク”という名称がつけられています。たいていはDBと略されます。それで、ようは技を同時に決めるということです。コンボを続けているなど、連続したダメージを与える際、自機がすぐに破壊されないように、一定量、乃ちボーダーを超えると、コンボ等が打ち切られ、相手は転倒ダウンとなり、立ち上がるまで無敵時間が発生します。無限コンボ阻止のためです。……ですがこれには穴があり、長いコンボをしようとしたら倒ダになりますが、重い一撃ならそれを無視することができるのです。たとえば、ボーダーが500で、コンボが200、200、200の三連撃とします。すると、三連撃すべて決まると600、ここで相手は倒ダとなります。次に、先ほどのNorrisさんとcaratさんのような同時撃ち、“デュアルブレイク”では、固定技が500、SLが500とすると、相手に1000与えることができます。これ、結構重要なテクですよ?』

 『なるほどっ…!よくわかりました。では、先ほどでも、ほんの少しでもずれていたらDBとはならなかったんですよね?』

 『はいそうです。ですから、これは高レベルなテクなのです。たいていの場合が固定技+射撃技となっています。セオリー通りのいい戦い方ですね。』

 

 

 「さすがカタギリだ。私たちにできないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるっ!」

 「いやいや、私たちができないのはアンタがしようとしないからだから。」

 隣ではグラハムと宮永先輩が遼たちのプレイングを見て熱くなっていた。私はといえば、何がすごいのかよくわからないまま、ただ観ていた。…でも、解説とか聞いていると、いろいろわかってきて、そして改めて遼はすごいんだなって思わされる。――ってあれ?なんかケータイ鳴ってる…。あ、鳴りやんだ。メールか。誰からだろう。

 私はケータイを取り出して、画面を見るとそこには――

 

 

 1機撃破した後、俺は目標地点に何とかたどり着き、そこで柄谷をビルの上まで運んだ。――正確には、俺を踏み台にしたのだが。まあそんな些細なことはどうだっていい。とにかく送り届けた。俺のやることはただ一つ。

 《じゃ、マーキングしますかな!》

 《もう半分は終了してますから、あと3人です。》

 俺は機体を発進させた。音を聞いてると、どうやらどこかで交戦中のようだ。マップを見る限りでは、マークした相手ではないことがわかった。つまり、俺の獲物がそこには2機以上いるってことだ。ラッキーだなぁ。

 案の定、そこには3機いた。《ああああ》チームの2機と、《ちっぱいぺろぺろしたいお》チームの1機。俺はさっさとマークを済ませ、その場から逃げた。相手は1チームまるまるいるんだ。単騎で乗り込むほど馬鹿じゃないさ。相手は俺に気付いたが俺が、すぐさま逃げたので、追っては来なかった。………てか、ちっぱい、単騎で乗り込んでたから、潰されるのも時間の問題だな…。

 俺は左上に表示されている各チームの戦力ゲージを見た。現在、ちっぱいのみゲージが半分減っている。さて、交戦中の機体のコストはなんぼかな~…2000が妥当かな。相方3000だし。

 なんてことを思っていたが、驚愕した。なんと、半分だったゲージが、すべて消えたのだった。

 《ちょwww両方3000とかwwww》

 《アホ…というか運がなかったんですね。私たちのDBに早々にかかったわけですし・・・》

 《ま、早々に1チーム消えたのは誤算だったが、これは勝ち戦だし、俺にはなんも変化はないよ。》

 

 

 「な、なんてことだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!開始2分にしてっ!すでに一チームが敗北してしまったあああああああ!!!!!」

 「ちっぱいさんは運がなかったですね…。VibrioさんのDB、そのあとああああさんに袋叩き…。彼ら、まだ何もしてませんよ?」

 「できることならやり直して差し上げたいっ……だが、ところがどっこい!これが現実っ…!現実ですっ…!」

 ウワアアアアンサクラシェンシェエエエエ……

 キモタクセンパイ!コンナトコロデナキジャクラナイデクダサイヨ!

 「うっわぁ……キモタク先輩っていう人…あんなでかくてTHEデブオタって感じな人が号泣してるのって…なんか気持ち悪いわね…。」

 「怜ちゃん、その気持ちはわかるけど、一応相手の事悪く言っちゃだめよ?・・・・・・・にしてもキモい。熱そう臭そう。」

 「貴様ら両方とも駄目ではないか!」

 

 

 どれくらい経ったか、わからない。が、左上の戦力ゲージは減り続けている。勿論相手チームの、だ。柄谷は均等に狙い続けているため、相手は着々と倒され、気づけば両チームのコストは2000。俺はといえば、柄谷の有効射程内に引きづり出すようにして戦っている。気づけば、見えないところからの狙撃、前方には俺、という2対1となり、皆やられていくのだ。俺はといえば、まだ破壊されてない。1500あったHPは700まで減ったが、それでもまだ破壊されていない。柄谷は無傷。高すぎる位置にいるため、狙いづらい。ああああたちが狙おうとしたが、柄谷が先に撃ち落している。もう俺たちの勝利は目前。ぬるげーだったな…。俺はもうドライブを始めた。近くに敵がいたら、そいつを撃つ。それでいいや――

 その油断から、俺は、音を聞くことへの、集中をやめてしまった。そして突然――ズダダダダァン――

 背後から撃たれた。

 倒ダから回復し、振り向くとそこにはああああの片割れがいた。

 《…まあ1機なら軽くボコッてやるか。》

 そうしてそいつに斬りかかろうとしたら――また背後から撃たれた。

 《先輩っ!挟撃されてます!》

 《んなこたぁわかってるんだよ!》

 《注意してください!それだけじゃ――》

 そこで俺は、ここが十字路であったことに気付く。そして今度は左右から撃たれた。

 見ると、ドM軍団であった。

 《まずいっ!4方向からやられた!援護射撃を求める!》

 《無理です!そこは遮蔽物多くて!》

 《はぁ?バカ野郎!そのくらい何とかしやがれ!》

 《先輩がふらふらと移動したからじゃないですか!》

 ……確かにそうだ。これは俺の油断から始まったことだな……ってそんなことはどうだっていい!目の前の敵を何とかしないと!

 こんなときは…………

 《前方を討つ!》

 まず真正面の敵に斬りかかった。とにかく、十字路の真ん中にいるのは危険すぎる。前の敵を倒して…そうすれば、相手4人を前にさせることができる。そうすれば、まだいける!

 俺は前方のああああの片割れにHSを決め、背後をとり、変形してその場から逃げた。

 奴らはといえば、そこでドンパチ始めるかと思いきや、4人そろって俺を狙いに来た。

 ……こいつら…グルだな……

 だが、可変機の俺には追い付かず、みるみる相手との差は広がる。――まあ、はなしすぎると追うのをやめるかもしれん。適度に離そう。

 数秒、柄谷の狙撃ポイントまで来た俺は、人型に切り替え、背後を迎え撃った。場所はフィールド中央。ちょうど、大きな広場となっていて、道ではないため、誰がどこにいるかが丸わかりである。柄谷にとっては最大に狙いやすい場所だ。――狙いやすさと当たりやすさは比例してほしかったな――

 《何とか足止めする!》

 《了解!》

 

 

 『これはおもしろいことになってきましたああ!なんと、どMチームとああああチームが結託し、vibrioを撃ち落とそうとしているぅう!いったいなぜこうなってしまったのかああ!!』

 『きっと、まだvibrioチームのゲージが減ってない、加えて何度も狙撃される。そうしてイライラが募っていたのでしょう。利害の一致、敵の敵は味方ってことでしょう。』

 『でも、ボイスチャットは敵同士ではできませんよね?』

 『心が通じ合ったんでしょう。……仮にここでNorrisさんを撃破するとします。そのあともまだ結託を続けるとなれば…Norrisさんはまた4対1となり、苦戦を強いられるでしょう。このゲームは、常識的に考えれば多人数で攻められると勝すべはありません。2対1でも酷いのに、4対1ですから…。まあ彼には優秀な狙撃者がいますが、彼の射程外なら居ないも同然ですからね……。とはいえ、今は狙撃手の射程内にいます。ここからどう戦うのかが見ものです。』

 『狙撃手がいるなら、こう――一気に撃ち落とすってことはできないんでしょうかね?』

 『無理ですね。移動範囲の限られている道路ならまだしも、縦横無尽に動き回ることができる広場、加えて相手は4人。リロードの時間はSLは長い。一発一発当てて行ったそしても…。』

 解説者たちは、今の遼の状況を劣勢だといいたいらしい。しかも絶望的なほどに。まあ私の目から見てもわかるほどだから、間違いないわ。

 「まだ戦力ゲージ的には無傷だし、あと2回死ねるって考えるとまだまだダイジョブなんだけどな~。」

 「だな。さらに相手は一度破壊されたら負け確定でもある。」

 あ、そうだったんだ…。まあ、きっと大丈夫よね。それもそうだし、

 ――この試合見たら・・・行かなくちゃ。

 

 

 《一発目行きます!》

 銃口から放たれた弾が一直線に飛ぶ。それはあいての頭部に――当たらず、胴体に命中した。命中することに意義がある。HSなんて望んでない。でかした。俺は撃たれた相手に追撃をかけた。だが、奴は破壊されなかった。でも、HPを見る限りあと少しだ。俺のHPは300。こっちもかなりまずい。………もうこれは決断せざるを得ないな。

 《柄谷。》

 《なんでしょう?》

 《降りろ。》

 《はい?》

 《降りてミサイルと通常射撃で俺を援護しろ!》

 《ああなるほど。今行きます。死なないでくださいね。》

 マップを見ると、柄谷のアイコンが徐々に近づいてきているのがわかる。――早く来い!こっちは長くはもたない!

 10秒ほどたった。もう俺のHPは100、死にかけだ。柄谷に狙撃したやつを狙ったが、あいにく当たらない。―当たらないんだよ!

 そいつに気を取られていた俺は、右からの斬りかかりに全く気付かなかった。―やられるっ!

 刹那、その機体は横方向へ吹き飛んだ。

 《お待たせしました!援護射撃します!》

 柄谷は俺の正面にいた敵を撃ち、撃破した。ああああチームの機体だな。残るはどМ集団のみだ。

 奴らは、片方は俺を狙い、もう片方が柄谷に斬りかかった。俺は柄谷に斬りかかっているやつをそれを撃とうとしたが、残弾がなかった。

 ……まあ、“斬りかかったのは間違いだったな”。

 柄谷はそれを撃ち落とすわけでもなく、逃げるわけでもなく、腕を×字にクロスさせ、攻撃を“受け止めた”。だが、これはガードなんかではない。これは――

 《カウンターですっ!》

 柄谷は頭部横に備え付けられている銃で相手を撃ち、立ダにさせ、相手の後ろに回り込み、握られていた銃で0距離で連射。この一連の動作が柄谷のもつ斬撃への対処、カウンターである。カウンターは外すと隙は大きいが、その分あてた時の威力が高い。相手は破壊され、戦闘はそこで終了した。俺たちの勝利、しかも両方とも撃破されずに、だ。

 

 

 「ついに決着ぅ!この乱戦を征したのはチームvibrio!皆さん、盛大な拍手をっ!」

 「あの絶望的状況からの生還、技術的にもなかなかハイレベルでしたね。にしても、真冬はなんて簡単なことを見落としていたんでしょう…狙撃手が固定されたものと、それを前提と考えてしまって…。」

 「まあ過ぎたことはいいじゃないですか。それでは、勝者にインタビューしましょうか。Norrisさん、caratさん、感想はいかがですか?」

 「そうですね……なかなか楽しめました!次も頑張りたいと思います!」

 「最後は焦りましたが…何はともあれ勝つことができてよかったです。次も勝ちます。」

 「以上、Norrisさんとcaratさんからでした!次は5階にて第5試合を始めます。映像は6階にも回しますので、どうかご安心を。それではみなさん!5階で会いましょう!」

 

 

 「国広!なかなかいい試合だったわよ!栞ちゃんもお疲れさん!」

 俺は部長たちの元へ戻ると、部長たちは満面の笑みで俺らを迎えてくれた。

 「最後は焦りました。」

 「そりゃ、相手が一丸となって襲いかかってきたんだ、無理もない。」

 「次の試合までまだしばらくあるけど…どうする?」

 「あ、私ちょっと用事があって少し抜けるわね。遼の試合には戻るわ。」

 「そりゃあ、怜ちゃんはここにいても特にすることもないしねぇ~…私たちの試合を見るって言っても、まだまだ先だし…、手か私たちも暇だね、試合開始30分前に集合、それまで自由。決まり!じゃあ解散!」

 部長はそう言ったものの、怜以外はその場を後にしなかった。俺は怜に用事の理由を聞こうとしたが、怜はもう人ごみに紛れてしまっていた。

 「まあすることないし、俺は試合見ることにしますよ。5階行くのは怠いんで、ここで見ます。」

 「そう?私とグラハムはちょっくらメンテするかな。栞ちゃんは?」

 「国広先輩が試合見るなら、私もそうします…。」

 「じゃ、また後でねノシ」

 「カタギリ、ではさらばだ。」

 部長とハムもこの場を後にした。残るは俺と柄谷。視線を落とすと、彼女は腕を組んで何やら考え事をしていた。

 「先輩、ちょっといいですか?」

 「ん?どうした?」

 「プレイについて反省しません?」

 「あ、確かにそうだな。さして試合を見たいわけでもないし。・・・・・・となると、ここじゃ騒がしいから、静かなところに行くか。ビル内にあるかな……」

 「別にビル内じゃなくてもいいじゃないですか。水薙中央公園に行きましょう。」

 「それはいい考えだ。そうしよう。」

 俺と柄谷はビルの外に出るため、下りのエスカレーターに乗った。

 

 

 「はあっ……はぁっ……一条さんっ……これ、どうにかならないんですかっ……?」

 椎名はビル内の裏道を走っていた。理由としては、5階に行くため。通常のエスカレーターでは人がよりついてとてもじゃないけど進めない。仕方なく、こんな裏道を使わなければならないのである。…残念ながら、これはかなり遠回りだ。

 「椎名さん!まだ半分以上この道を通ります!頑張ってください!」

 「真冬は運動は全然ダメなんですぅ~……」

 そうして、非常階段につながる非常口の前まで来た。一条は何も考えずその扉を開けた。それに続いて椎名も入る。

 

 

 

 そこにはとんでもない光景が広がっていた。

 

 

 

 「あっ……あ、アニキっ…!もうっ・・・・・!」パンパンパンパンパンパンパンパン

 「シモン!お前のドリルは天を突く(♂)ドリルだっ!俺のケツを貫けえええええ!!」

 「うっ……うああああああ出るううううううう!!」ドピュルルルルルルルルルルルルルルルル

 「っ……はぁ、いい出しっぷりじゃねえかっ……!腹ン中がパンパンだぜ……!(恍惚)」

 「俺もっ……もうからっぽだよ……」

 階段の踊り場で、二人の男性が、互いのケツを掘りあっていた。そんな暑苦しい姿と、階段に蔓延している精液の生臭い臭いに一条は思わず顔をしかめる。無理もない。彼はノンケだから。だが椎名は、

 「キタキタキターーーー!!!グレンラガンのシモンとカミナコスでの師弟プレイ!!まさかシモン×カミナとは!やっぱりこれは素晴らしい!すばらしいで――ぶっぱぁっ!」

 椎名は目を爛々と輝かせ、そして大量の鼻血を出してその場に倒れてしまった。彼女の顔はすごく幸せそうであった。

 そんな騒動もあったので、踊り場の男二人はこちらに気付き、一条と目が合った。

 「すす、すいませんでしたーーーーー!!!」

 一条は椎名を抱えて階段を駆け下りたのであった。なぜ俺が逃げなければならんのだ、と思いながら。

 

 

 「ハム、ちょっといい?」

 「なんだ?」

 国広と栞ちゃんは試合を見ている。一方、ハムと私は現在機体の最終調整に入っていた。

 「私が、文脈に関わらず、“気合”って言葉を言う時まで、スサノオとアレは使わないでもらえる?」

 「……何故だ?」

 ハムはこちらに疑問を投げかけている。まだ――黙っていたい。おそらく準決勝で当たる相手、そして決勝。それを見越して、ね。

 「理由は秘密。だから、武御雷で頑張って。」

 「それは、勝利につながることか?」

 「ええ、勿論。」

 「了承した。」

 話が早くて助かる。

 

 

 「こ、これは…………なんてことでしょうかっ……!」

 「恐ろしいものを見ました……。ここまですさまじいのは中々ありません。全国大会レベルですね………。」

 「A+、A、ばかりの戦いで、“戦力ゲージは無傷”というとんでもない結果を出しましたっ……!さらに戦闘ステージ、都市部での戦闘でしたが、ステージ4分の1が“蒸発”しましたっ…!その蒸発に巻き込まれて……。まさに圧勝っ……!ランクが“SS”でもこれはすごすぎるゥ!!」

 「チーム《大罪(カルマ)》……・・・・この予選での優勝の最大の有力候補ですね………。」

 会場の解説者たちは、そんなことを言っていたのだった。相手が弱すぎるのでそこまで嬉しくもないが、褒められるのは嫌いじゃない。ただ………その、解説者の片方が鼻つっぺしてたのがなんとも間抜け面で、微妙な気持ちになったのだった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。