「・・・・・ふうん、本気、出したんだ。」
壁に寄りかかり、“彼女”のプレイングを映している巨大スクリーンを眺めていた。
ほかの3人は休憩スペース(2階)でくつろいでいる。相手の研究なんかせず自力で潰そうと考えているからだ………っていうのは建前で、本音は、一人はだるいのと、一人はなんか危なっかしいのと、一人はそれを監視しなくちゃならなかったってのだけどね。
にしてもなんでわざわざ……この程度の相手なら手の内晒さなくても余裕だったんじゃ……
……深く考えたってしょうがない。決勝で倒せばいい。
――関西大会行はもう確定しているけれど、優勝はしたいしね――
こちらは相手を一方的に叩きのめし、その足で6階に上がったので、対戦は後半からしか見ていない。しかも2セット目。
…1セット目はどんな試合だったんだ……
悶々としていてもしょうがない。この後の結果は見なくてもいいだろう。目に見えている。この暑苦しい空間に長居するのも嫌だ。涼しいところへ移動するとしよう。そうだな…非常階段がいいな。誰も使っていないだろうし、きっと風が吹き抜けていて気持ちがいいだろう。
私は非常歓談へと足を向けた。
―――そして、扉を開いたとき、体つきのいい男たちがいかがわしいことをやっていたのを目撃し、さらに階段は血で赤く染まっていた。あまりに恐ろしかったので、急いで元の会場へ戻った。
呼吸は荒かった。おぞましいものを見たのと、それに動転してダッシュしてしまったから。
何考えてるんですかあの人たち…こんな公共の場で……まさかこのゲーセンってゲイスポットなんですか?……うぇ……想像しただけでも反吐が出そうだ……。
会場に着いたとき、案の定試合は終わっていて、結果も予想通りであった。
では私もチームの元へ戻るとしよう――
そう踵を返したまさにその時、
「あれ、まさかあなたは――」
振り返ると……それは私の知る顔で、だけどこんなところにいる人ではなくて、あまりに驚いて、一瞬言葉が出なかった。
――いや、これは予想しようと思えばできたはずだ。なんせ、いつも一緒につるんでいる“彼”がでている大会なのだから。
「なぜ…こんなところに?」
目の前の女性………怜にそう聞かれちゃ、こう答えるしかない。
「それはこっちの台詞ですよ、怜さん。」
「くっそ、俺は井の中の蛙だったってことか。とんだピエロだぜ、笑えよベジータ。」
試合も終わり、俺らは休憩所(2階)でくつろいでいた。
「クッソワロタwwwwwwwwwwwww」
「いやまじで笑うなよ!?しかも笑い方なんだよこれ!?指さして笑うとかマジ勘弁してくれよ!?あと女性の使う言葉としてどうなんだそれは!?」
ゲラゲラ笑う部長に俺はもう………ああもう、面倒だ。ほんと、面倒!
「五月蠅いカタギリ。勝利して実に気分の良い私を苛立たせるな。」
「そーですよ先輩、ちょっと黙っててください。」
「・・・・・・・・・はい・・・。」
なんで、なんでこんなにぼろくそ言われなくちゃならないん?ねえなんで?
「てか怜は?」
「黙っててっていったじゃないですか。聞こえなかったんですか?ならもう一度言います。黙っててください。」
「栞ちゃん……国広は鳥頭だから……何階行ってもすぐ忘れてしまうんだ……」
「カタギリ、俺を失望させないでくれ。」
「ちょwwwあんたら言い過ぎやがwwwww」
・・・
・・
・
「すいませんでした。」
なんで謝っているんでしょうかねえ…
「で、さっきの話だけど、怜ちゃんは私たちの試合が終わった後どこかへ行ったみたいだね。国広にメールでも着てるんじゃないの?確認したの?」
「切り替え早いなあ・・・・・・・あ、確かにメール来てる。何々…静乃とちょっと刹那のところに行ってくるねって……?おいおい、この近辺にあいつらきてたのか。一緒に買い物か?気が早いこった。」
なーにがフラグがどうたらだよ、結局何にもしてないじゃないっすか。
……いやまてよ、これは決勝戦に呼んで、俺が華麗に勝つところを奴らに見せて、フラグを一つ立てる………なんてことはないか(笑)
「ほえ?静乃ちゃん来てたんだねぇ~、ああ、刹那ちゃんが呼んだのか。てかそれしかないよね。偶然ってことは考えにくいし。」
部長はふんふむと納得し、「ちょっと席を外すね、すぐ戻る」と言葉を残し、この場を後にした。次いで、グラハムが「白熱しすぎて仮面に傷が入った。ちょっと手入れしてくる」と謎の言葉を残して、この場を後にした。結果、この場にいるのは柄谷と俺だけ。
「……まあ部長の事には驚かされたが……」
後に続く言葉は頭の中では既に浮かんでいた。だけどそれを言葉という形に表わすのはちょっとした恥ずかしさがあった。照れといったらよいのだろうか。まあともかく、ぐぐもった。柄谷はそんな状態の俺を不思議そうに見ていた。
「……俺を信頼してよかっただろ?」
「いや最初っから先輩の事は信頼していましたって。てか今思い返せばお前を信じる俺を信じろって…あれって詭弁だし、なによりグレンのパクリじゃないですか。」
「・・・・・・・・・・・・・・・わかってたのか?」
「ええまあ。伊達に二次元イラスト描いてませんよ。」
は、は、恥ずかしいいいいいいいいいいい!!
めっちゃキメ顔で柄谷を説得しようとしていたのがめっちゃ恥ずかしいいよおおおおおおおお!!!!
実際に鏡を見て確認したわけじゃないけど、絶対赤くなってると思うから、思わず顔を手で覆い、テーブルに肘ついて、ただただ絶望した。
「まあでも―――」
「落ち込んでいた私を元気づけようと頑張ってくれたのは・・・・・・素直にうれしいと思いましたよ。」
「・・・・・・そうかよ。」
改まってそんな照れくさいことを言われちゃあ、俺の顔はますます赤くなるばかりであった。ほんの少し指を開き、柄谷の様子をうかがってみると、彼女も同様顔が赤かった。感じてることは同じなのだろうか。
「……っぷはは!先輩、耳まで真っ赤ですよ。」
「・・・・・・うるさい。」
恥ずかしいことをしてしまったけど、それをしなかったら今この柄谷とのほのぼのとした時間はなかったわけで…そう考えると、あの恥ずかしいことはしてよかったのだろう。そう、思えた。
ほどなくして、部長とハムが戻ってきた。さあ、今から決勝戦のブリーフィングが始まるゾ!
「決勝戦の相手は大罪―カルマ―という実に…実に厨二臭い名前のチーム、これから相手の戦力を簡単に説明するけど、心の準備はいい?」
「・・・そんな準備が必要なほど恐ろしい相手なんですか?」
「いや、言ってみただけ。」
「あのさぁ……」
「まあまあいいじゃんこれくらいの茶目っ気、許してちょんまげ。」
「「「あのさぁ……」」」
あまりにくだらないギャグに、部長以外の三人があきれ返っていた。
「え―じゃあまじめに言いましょうかね!まずランクから言うとA+、A-、B+、そして、SS。」
「SSですか……。」
柄谷が見るからにたじろいでいた。まあ無理もない。さっきみせた部長の本気、あれと同等の実力を持っているってわけだからさ。
「柄谷ちゃん、安心していいよ。彼女らと当たるのは私とハムだから。柄谷ちゃんと国広が当たるのはA+とA-の人たちだよ。」
「そ、それなら少しは気が楽です…。」
「おお、前回の奴らと似たような感じだな。」
……って、彼女ら?相手の性別まで見てんのか、部長の観察眼ぱねぇ。
「……うちらはもう関西大会行が確定してるから、決勝戦の相手の対策って不要っちゃ不要なんだよね。だから今回のアドバイスなしってことで。」
「「「・・・はぁ?」」」
3人がシンクロした瞬間であった。
「理由を聞きたい?聞きたいんでしょ?だが言わない!それが私のジャスティス!」
い、意味が分からない……
あれだけ用意周到な部長だ。しかも今回においてはあまり関係のない情報までつかんでいる。なのに言わないってことは……どうしてだ?
「・・・・・・ま、無対策の相手にどこまでやれるかってことだね。」
「・・・・・・・宮永、何か隠していないか?」
「ん?」
部長はその言葉が思いがけなかったのか、グラハムの言葉に呆けていた。
「……ああそうだよ。隠してるよ。ものすごいこと隠してるよ。だけどさ、すぐわかるよ。期待してなよ、面白いことになるからさ!」
グーサインを出してさわやかな笑顔を見せつけられたが、正直いらっときた。その風貌にってノンもあるが、それよりも、今までとは違い俺らに有益な情報を与えなかったことに不満が…。だけれども、部長は交友関係が広いんだなあと感心もしていた。
―だけど、それは思い違いだった。
部長の交友関係が広いんじゃない、“俺らが周りを知らなさすぎた”だけだった。だってさ、普通こんなこと想像しないって。
『それではっ………!決勝戦っ……!圧倒的実力で上から他者を叩き潰すっ・・・・・・・!SSランクをもつリーダー【ヒイロ・ユイ】を筆頭とするAブロック代表チーム大罪―カルマ―っ………!対するはっ……!チームワークを重視っ……!こちらもSSランクをもつ【Fate】を中心とするBブロック代表っ……!vibrioっ……!第一試合はカルマから【シン・アスカ】【カトル・Lウィナー】選手、vibrioからは【Norris】【carat】選手が出場しますっ……!』
『ではいざ尋常に…………ファイッ!』
まさか生徒会メンバー全員がフルドやってるなんて思わないって。