タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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1-4-1 決勝戦はみんなの心の中に

 「では、これより祝勝会を始めるよ!では、2チーム共に関西大会への出場決定に!」

 「「「「「「「「乾杯っ!!」」」」」

 フルドの大会が終わった後、どこかでワイワイ騒ぎたいと部長が提案し、部員が皆これに賛同し、さらに四人じゃもの悲しいということで会長たちのチームも混ぜての計8人で祝勝会をやることとなった。

 「にしても、四人だけならまだしも私たちまでお邪魔させてもらうなんて……」

 手に持っているコップの方に視線を落とし、申し訳なさそうにする会長。

 「いえいえ、本当に大丈夫ですよ!お父さんとお母さん、ちょうど旅行で居ませんでしたし。それより今は楽しみましょうよ!」

 「柄谷君、本当にありがとう。」

 とまあ、今は柄谷宅にいるわけだ。祝勝会をやろうにも、場所がなければ始まらない。俺やハムの家では狭すぎる。部長の家はさらに一駅こえるから、帰宅が厳しくなる。となれば、柄谷の家しか候補はなくなるわけで、ラッキーなことに家ががらんどうであったのだ。

 「にしてもさあ。会長たちがみんなフルドやっているなんて…さらには大会にエントリーしているなんて思ってもいませんでしたよ。朱鳥も教えてくれたっていいじゃないか。」

 俺はかねがね気になっていたことを口に出した。品行方正の会長とカトル先輩、刹那は全くやるイメージがなかったからな。ゲーマーの朱鳥は以前からフルド勢だということは知っていたのだが………いやまてよ、生徒会の連中ってみんな厨二だから、ゲームくらいやってて当然なのか?

 「まあ聞かれなかったしな。それに聞かれても言うつもりなかったし。緋色さんに堅く口止めされていたからな。もしばれていたら俺の身が……いや、なんでもない。」

 「ちょっと恐ろしい言葉が聞こえたのですが……気のせいですよね?」

 柄谷の問いかけに、朱鳥は、

 「………はっはっは。」

 否定も肯定もしなかった。まあ、どうせ脅しに使われたただのデタラメだろう。まさか会長が暴力的なことをするわけないし、あるとしても社会的に抹殺するとか?でもそんなの……いやまて、会長のおっかけの件がある。

 「なんか会長についてわからなくなってきたゾ!」

 「気にしないでください。朱鳥に言ったのだって、そんなの、ただの脅しに決まっているじゃありませんか。」

 「な、なんだ…ただの脅しか……あ……」

 ニッコリと微笑みを浮かべていた会長であったが、それとは対照的に沈んだ顔でいるカトル先輩、そして部長が素知らぬ顔でお菓子をぽりぽり食べていた。

 ……気にしたら負けだ。

 「ようはサプライズです。龍華から、部活単位でフルドの大会に出るという話を聞いていて、ちょうどその頃私たち執行部からも出場しようという案がでていて、だからせっかくなので驚かせようと思ったのです。対面せずにどちらも敗退という可能性もなくはなかったのですが、その辺の敵は相手になりませんし、龍華のチームがとても強いことは話に聞いていたので、順当に勝ち進めばぶつかるのは必然でしたしね。…・・・・・・・はあ、勝てると思ったんですがねー…」

 会長は不服そうな声を漏らし、ぐいっとジュースを飲み干した。

 そしてその手をカトル先輩に差し出し、察したカトル先輩は二杯目を注いだ。

 「グラハム先輩が予想外なことをしてくれましたから、一瞬…いや、ずっと不安でした…。」

 「それはこっちも同じだよ。刹那君が急に単独行動をとるものだから、作戦もうまく機能しなかった。」

 「ほんと、公はやらかしてくれたよ。」

 「どっちもイレギュラーがいたから、条件は同じかと思いきや中河はコスト3000のMS使ってるからさあ…タイマンでコスト2000のMSと戦うのはリスクがでけえんだよな。」

 「どちらも一回ずつ撃破してるしね。」

 ちなみに、本当にちなみにだが、等の本人たちはというと、柄谷と家に上がってすぐに「まだ満足できん!先程の勝負の続きをするぞ少年っ!!」「貴方の歪みは私が断ち切りますっ!!」なんてことをいって、乾杯後すぐテレビの前に陣取り、対戦を始めていた。……今の所はどちらも五分五分と言ったところかな?まあいいや。

 「しかも、グラハム先輩は基本単独行動が好きな人ですからね。対して刹那先輩は会長さんとのタッグが強みですし、ダメージは大きいですよね…。」

 「ま、これも私の策略ってやつかな!」

 「嘘乙。2セット目で動揺してたのが明らかにわかったぜ。」

 間髪入れずに朱鳥がツッコミを入れ、部長は少し縮こまってしまった。

 てか、あくまでも運がないから負けたってことにしたいのね。まったく…これが負け犬の遠吠えってやつか。」

 「……ほほう、いってくれるじゃあありませんか。なんなら再戦でもしますか?」

 「……へ?俺なんか言いました?」

 「先輩……ひどいすっとぼけですね。負け犬の遠吠えとか言っておきながら。」

 ……思っていたことがそのまま口に出ていたというパターンだな。

 「無自覚の悪意ってやつだな。」

 「OOですね!」

 会長は目を爛々と輝かせて朱鳥の言葉に反応した。カトルや部長はやれやれといった顔つきであったが、柄谷を含め俺はぽかんとしていた。そして、そんな俺らを見て会長は恥ずかしくなったのか、しゅんとしていた。可愛い。

 「……なんで会長がフルドをって聞こうとしていたが、確信したわ。」

 「……奇遇ですね先輩、私もですよ。」

 「うう…………まあ察しの通り、私はガンダムが好きなんですよ、ええそうです、ガノタな厨二ですよ!」

 半ば投げやりで言葉を吐くと、手元のジュースを一気に喉に流し込み、テーブルにコップを置い……いや、叩きつけたと言った方があっているのかなあ。

 そしてすかさずカトル先輩があいたコップにジュースを注ぐ。

 「まあ……ぶっちゃけ薄々勘付いてはいました。疑惑は確信に変わったというやつですかね。」

 「え、なぜですか!?今迄私の趣味について一度も話したことありませんよね?」

 「会長は気づいていないのかもしれませんが、会長の言葉遣いって結構独特なんですよね。今年の対面式とか印象的でしたよ。まるでガンダムWのトレーズみたいなエレガントな挨拶で……」

 「わーー!!やめて!やめてください堀り返すのは!!」

 「じゃあなんで後悔するような演説したんですか…」

 柄谷はポッキーをポリポリ食べながらじと目で会長に目を向けていた。

 「あの原稿書いたの、深夜ですから………」

 「あっ…(察し)」

 「……はい!この話はもう終わりです!やめやめ!ええと、さっきまでどんな話していましたっけ?」

 「無理やりですねえ……えっと………なんだっけなあ。」

 「再戦がどうのとかじゃなかったかい?」

 「それです!じゃあ今から…って、刹那たちがまだ終わってないですね。」

 「タイマンでこの試合時間っていったいどういうことです!?」

 俺はテレビ画面に目を向けると、なんと両者の体力はまだ半分しか削れていない。その理由は単純、攻撃をほとんど防ぎきっているのだ。

 「フッ…なかなかやるではないか少年ンンン!!!」

 「どこまでもしつこい男ですねッ!!」

 必死で戦っているその姿は非常に輝かしかった。そんな姿を見せつけられて、その勝負の決着を急かすようなことなんて、誰も言えるわけがなかった。

 

 

 あの後のことを話すと、ハムの勝負が終わるまでの間、カトル先輩や会長のフルド歴などいろいろなことを話したりした。(なんとカトル先輩はまだ一年目であり、逆に会長は5年位という。そら、こんだけやればSSランクにもなれるわな。)勝負が終わった後、4対4のチーム戦を行おうとしたが、長い勝負に疲れ果てた2人は参加できなかった。故に、2対2をローテーションで行うことにした。会長と部長のペアは異常なまでの強さだった。柄谷と俺が本気で挑んでも相手を一機も墜とせなかった。めげるわ。まあ一通りフルド対戦をした頃には時刻は7時。ヴァイオリンの練習が控えているということでカトル先輩がまず帰宅した。外に出て見送ろうとしたら、なんとお迎えの車が来ていた。すげえ(小並感)。緋色会長はその車に乗って共に帰った。カトル先輩と緋色会長は同じ東区に住んでいて、家もそれなりに近いらしい。刹那は姉が近くにいるとのことで、姉の車に乗るといって家を出た。…ああそうだ、見送ろうとした際、ぱらぱらと雨が降っていたのに気づいた。スマホの天気予報を見たところ、今晩は雷雨らしい。ほんとかよ、実に信用ならん。でも本当なら、俺も早めに帰った方がいいのかなあ。傘なんて持ってきてないしさ。

 なんてことをその時は思っていたのだが、現在はといえば…

 「クッソッ!俺が60R止まりだと……」

 「ごめん真、悪気があったわけじゃないんだ。」

 「あ、ダイジョーブですよ。宮永さんって確かプレイ歴浅いんだっけ?コールオブデューティ。それでこれならすごいとおもうぜ。俺も守りながら闘うってことがこんなに難しいってこともわかりました。」

 コールオブデューティのゾンビモードに興じているのであった。CODはFPSゲームで、ゾンビモードとはひたすら湧き出るゾンビをエンドレスに狩り続けるというものである。最初は部長と朱鳥ペアで、60Rというなかなかの結果を叩き出した。俺は普通にやったら50くらいだから、ちと厳しいかも。まああくまでも、“俺1人でやったら”の話だがな。

 「ささ、じゃあ次は私と先輩の番ですよ!」

 柄谷は眼を嬉々とさせていた。眼に椎茸でもできてるんじゃないか?

 「んー、じゃあいくか。ちなみに、俺は50Rで止まるレベルだからな?」

 「心配には及びません。なんせ私は80Rくらいまでいけますから、守ってあげますよ。」

 やだ…ちょっとかっこいい…

 「さすがフルドでも狙撃兵を使うだけあるぜ。こりゃ俺たちの記録も簡単に抜かされちまうかな。」

 そう朱鳥は予想を立てていた。

 

 

 だが、

 飛鳥と部長、そして疲れ果てて寝落ちしているハムは、その結果を知ることはなかった。

 

 

 このゲームは時間がかかるので、だいたいプレイ開始から30分たったころ、ひどく大きな地響きが外から聞こえてきた。あまりの大きさに驚き、俺らは一旦ゲームを中断した。大音量で鳴り響いていたBGMの音量が小さくなって、やっと自体を把握した。ざあざあと雨音が聞こえてくる。

 「な、なんだ!?」

 朱鳥が慌ててカーテンを開けると、案の定大雨ではないか。

 「あー……スマホは正しかったんだな……」

 朱鳥は呆然と窓の前に立って、外の景色を見ていた。

 「うーん、これはもう帰った方がいいよね…。名残惜しいけど、また月曜日会おう!じゃあね栞ちゃん!あ、傘借りてくね!」

 部長は急いで身支度を整えて柄谷宅を後にした。

 「…じゃあ俺も帰るか。ほらグラハム、起きろ。」

 「ぬぅ……折角私と少年が互いに汗を流し気持ちのいいことをしていたのに…それを妨げるとは非道なり!!」

 「るせぇ!帰るぞ!」

 ハムは半ば引きずられながら朱鳥と共に家を後にした。てか言い回しがやたらとエロかったな。

 一歩出遅れた俺は柄谷宅に取り残された。

 「あー…完全に出遅れたな。」

 「先輩は帰らなくてーー」

 後ろから柄谷の声が聞こえてきたが、瞬間、窓の外が真昼のように光り、すぐに大きな地響きが鼓膜を振動させた。あれ、なんか他の音も聞こえなかったか?

 「って、これかなり近くないか?光ってすぐ音が聞こえてきたしなあからたーー」

 振り向くと、そこには顔面蒼白の柄谷がへたり込んでいた。

 「っておい、大丈夫か?」

 「へ?あ……はい……」

 …どうみても大丈夫そうには見えない。漫画やアニメの世界だと、雷に対して異常に怖がる女子がいるが、まさか現実にもいるとは…。いや、でもこれは怖がっているという表現で収まらないのではないか?目は虚ろだし……雷に対して拒否反応を示している?過去にトラウマがあったのか?……気にはなるが、今聞いたところで答えが来るとは思えないので、胸に留めておくだけにしよう。

 「お前…いつも雷鳴ってるときってどうしてんの?」

 「その…お父さんとお母さんが……あ…でも今は……」

 両腕を交差させて自らの腕を掴み、あたかも寒いのかのようにぶるぶると身を震わせていた様子はもう、見ているのも辛かった。

 

 …

 

 俺はこんな柄谷を一人家に置いて帰っていいのだろうか?

 

 …

 

 今は豪雨で外には出づらい状況にある。傘を使えば行けなくもないが……いやでも……

 外の状況を客観的に知りたかったので、俺はテレビのチャンネルを入力切替からNHKに変えた。そしてデータ放送に切り替え。数秒の間があり、データ画面が広がったので、天気について見ると、案の定雷雨アイコンであった。電車は……わからないが、多分動いているだろうけど、止まっていることにしておこう。

 俺は腹を括ることにした。

 俺は柄谷の方を向き、膝をつき、手を地面につけ、頭を下げるーー所謂土下座をした。

 「柄谷さん!電車も止まって家に帰れないんです!こんな汚らしい私目をどうか今晩泊めていただけないでしょうか!オナシャス!」

 額を床に擦り付けて数秒、「へ?何か言いました?」と素っ頓狂な返事が聞こえた。

 「ちょっ、おま、俺の渾身の土下座を見ていなかったのかぁ!?」

 「いや、土下座はわかりますけど…」

 「…まあいいや。俺が言いたいのはだな………女の子にする質問としてはすごくゲスなんだが……今晩泊めてくれないかなってさ。外は雷雨だし、電車も止まっていて帰れないのさ。」

 かなりフランクにことを伝えてしまったことを少し後悔している。でもま、杞憂だったかな。

 「ああ、そんなことでしたか。いいですよ。ただし、お父さんの部屋を使ってくださいね。」

 あんまりにもあっさりと了承してくれたもんだから、ちょっと不安になってしまった。

 「おいおい柄谷さんよ、そんな簡単に男を泊めることを許しちゃいかんでしょ?俺な狼だったらどうすんの?」

 「……国広先輩にそんな度胸ないのは知ってますから。」

 そういった柄谷の顔はさっきまでの蒼白さと比べて少し元に戻っていた。神経衰弱気味だったけど、だいぶ回復してきたのかな。

 「……お前…そんなこと言うのなら、襲っちゃうゾ?」

 「そんなことしたら警察呼びまーー」

 タイミングよく雷の音が鳴り響き、柄谷の身体はぶるっと震えてーーこんな状態のやつを襲うなんて酷なことは俺にはできねえよ。もとよりする気はなかったけどさ。

 …こんな時、俺はどうしたらいい?抱き寄せてやればいいのか?……いや、そんなことしてみろ、今でこそ柄谷は普通じゃないから反撃してこないだろうけど、後々に響く。こんなキザなことできるのはリア充だけだ。俺にはできない。……けど

「収まるまでは近くにいるよ。」

 俺は柄谷と背中合わせになるように座り直した。

 

 

 雷の音が鎮まり始めるまで数十分、その後数分、頭の中でフルドのMSを構成するのに飽きてきたころ、「すいません、もう大丈夫です。ありがとうございました。」と、柄谷は立ち上がって俺に一礼した。

 「いいや、これくらいなんてことないよ。」

 「そうですか?でも…やっぱり申し訳ないです。何かお詫びを…」

 柄谷は指を前で組んでもじもじしていた。

 「お詫びって…泊めさせてもらうことがお詫びになってるじゃん。だから気にしないでいいよ。」

 「いえ!それでは私の気が済みません!何かもてなしを受けてください!なんでもしますよ!」

 ん?

 んん?

 「…今なんでもするって言ったよね?」

 「…先輩、今の顔、すっっっごくゲスいです。」

 …知らぬ間にひどい顔をしていたようだ。

 「じゃあそうだな……とりあえずシャワー浴びさせてくれ。」

 「やっぱり襲う気満々じゃないですか!段階踏めばいいってもんじゃないですよ!」

 「もう勘弁してください。」

 俺は泣く泣く二度目の土下座をするのであった。

 

 

 そこからは早くて、シャワーを浴び髪を乾かした後、柄谷の父親のベッドを使わせてもらい、寝ることとした。何気にでかいから悠々と使って寝れるぜ!

 布団にくるまってまもなくして、睡魔に猛烈に襲われた。………明日になったら雨は止んでいてほしいな。柄谷はどうして雷をこんなにも恐れているのかな。一人であいつは寝れるのかな……なんてことを脳裏にぽつぽつと浮かべながら、窓越しでも聞こえる雨音や雷音が部屋に響くもと、俺は深い眠りに落ちた。深い、深い眠りに。

 

 

 

 扉を開けると、ベッドの上には黒い大きな盛り上がりがあった。ただ、いつもよりはほんの少し小さな盛り上がり。主にお腹のあたりが。

 「って、すでに布団が跳ね除けられてるし。これ、一応ダブルベッドなんだけどなあ…」

 私はベッドに近寄って、落ちてしまっている掛け布団を拾い上げ、再びかけてあげた。

 ……こんな夜はいつもはお父さんに一緒に寝させてもらってるんです。子供かって笑うかもしれませんが、私にもよくわからないんです。こんな夜は誰かに寄り添っていないとダメなんです。どうして私の体はこんなにも雷を拒んでいるんでしょう。…だから、お父さんのいないこんな夜は…先輩が代わりになってくださいね。」

 年の近い異性と一緒に寝るなんて初めての事に緊張を感じてはいたが、それ以上に体を襲う今だに得体の知れない寒さと、ガンガン脳を揺さぶる睡魔に襲われ、私も眠りに落ちるのは長くなかった。

 

 

 

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