タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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高校時代ふと頭に思い浮かべてたものを文字にしました。

大学在学中には完成させるつもりで、いつかなろうと渋にも上げようかと思ってます。

自身はただの理系大学生であり、文学に携わっているわけではないので文法は粗雑です。

それでもよかったら、ぜひご覧ください。




1 命をかけた恋人作り
1-1-1 死の宣告(前編)


人間は必ず死ぬ。

例外はない。

例外があるのは空想の中だけである。

死後の世界はない。

天国も地獄も存在しない。

死の先にあるものは無だけである。

人間は死と隣接して生きている。

些細なことで人が死ぬ。

そんな死と隣り合わせであるのに、

なぜか人々は“私が死ぬなんてありえない”

そう考えているのだ。

そんな現実。

 

それなのに、自覚しているのに、俺は、

―俺が死ぬはずがない―

楽観的な人々と、まったく同じであったのだ

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 無機質な電子音が鳴り、今見ていた夢が強制的にシャットダウンされた。パソコンで例えるなら、ブツッと嫌な音を立てて画面を落とし、再び電源をつけると青画面になってるような…。にしても、なんて中二病な夢なんだ。ひっでえポエムをシリアスな表情を浮かべて知らぬ男が朗読する。もしこれが夢ではなく現実で、このポエム(笑)を知り合いにでも見られたしまいには、俺は悶え死んでしまう。ほんと、夢でよかったよ。…………にしても、まったく嫌になるね、ほんと、朝は眠くて仕方がない。よし、二度寝をしよう―――

そんなことを思っていたら、制服に身を包んだ、髪を一つに束ねている小柄な一人の少女が俺の部屋のドアを乱暴にあけ、

 

 

 「兄さん朝だよ~起きないとブザーを鳴らしちゃうよ~。」

 

 

といいつつ俺に近寄って、警報ブザーを鳴らしてきた。時計のアラームとはけた違いのやかましい音が頭に響く。

しぶしぶ起き上がると、その少女…天海有希は呆れたような眼差しで、そして手を腰に当て、軽くふんぞり返りながら

 

 

 「ほんと、毎回毎回一人で起きてよね。いいかげん疲れ来るよ。」

 

 

いや、本当はすでに起きていたんだよ?ただ、二度寝をしようとしていただけなんだって――…なんてことはいつも思っているけど、言わない。昔は言っていたけれど、「だから何?」と返され続け、俺の心が先に折れた。馬の耳に念仏である。ポニーテール少女なだけに。

 

 

 「頼むから、ブザーじゃなくて普通に起こしてくれよ…。」

 「朝食出来てるから。早く降りてね。」

 

 

俺の話を聞くこともなく、用が済んだとばかりに早々と有希は部屋を出た。……俺の話が聞かれていないのも日常茶飯事。だってあいつ、耳栓しているんだもの。俺もリビングへと向かった。階段を下りる途中、寝ぼけていて足を踏み外しかけたのは忘れておきたい。

ちなみに、有希は俺のことを「兄さん」と呼んでいるが、俺の妹ではない。残念ながら義理の妹というオチでもない。有希は一歳年下の従妹だ。俺がいま高二だから、高一になる。とある諸事情により、この家に住むことになったのだ。

 

 

 

 今この家には俺を含め三人で暮らしている。一人は有希で、もう一人は、

 

 

 「まったく、毎回毎回有希に起こしてもらわないで一人で起きたらどうなんだ?ほら…さ…お前の見苦しいものを見せてしまう恐れもねあるかもしれんだろ…?」

 「叔父さん、食事前に汚い話はやめてください!食欲なくします!」

 「おおっと、失敬失敬。」

 

 

 そう、この下品な人が最後の一人で、国広与一という。俺の父親の兄にあたる人だから、俺にとっても叔父になる。職業は作家で、仕事場は家だ。だから、日中は家にいる。

 ちなみに、俺の両親はどちらもすごい人で、父は建築士としてロンドンで働き、母は父に連れ添っている。昔は家族全員で暮らしていたのだが、父が出世したため海外に行くことになった、という次第である。勿論、俺も普通ならロンドンに連れてかれるのだが、俺が駄々をこねて国内に残ると訴え続けたため今に至る。叔父さんは独身で、常日頃から嫁がほしい子供が欲しいとこぼしていたからwin-winの関係なのである。

 そんな事情は置いておいて、とにかく叔父さんは下品だ。そんなんだから女が寄り付かないんだよと昔言ってやったが、無駄だった。結局ほしいほしいと口に出すだけで、そのための行動をとっていないので、これはある種のパフォーマンスなんだなと理解した。それ以来、煽ること以外では何も言わないことにしている。

 

 

「つか、なんで有希は下品な話だって分かったんだ?直接的な表現はなかったはずだが?」

 「それはっ……それはそのっ………!」

 

 

真っ赤な顔でこっちを睨んでくる。そして俺への怒りをご飯に向けたのか、がつがつとかきこんでいた。おいおい食欲なくすんじゃなかったのか?……にしても、女の子のこういった反応を見るのはなかなか面白いよな。……なんてことを思ってしまうあたり、俺もダメなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 有希を宥めた後食事を済ませて、俺も制服に着替えた。玄関に向かうと、すでに有希の用意は済んでいた。玄関に座り込んで呆けていることから、暇しているということがわかる。そりゃあ、俺が起きた時に既に制服を着ているんだもの、早いのは当たり前。だけど…朝貴重な時間で暇ができるってのはすごいな。……だけど俺はそうなりたいとは思わない。理由は単純、少しでも長く寝ていたいからだ。あと、俺と学校に行くことを前提ととらえてくれているのが大変可愛らしい限りだ。家族の絆が深まっているように思える。

 …なんてことを考えながら、有希の姿をさっと見てみる。有希の制服姿もだいぶ見慣れたな。もう六月だもんな。

 

 

 「じゃあ叔父さん、行ってきます~」

 「行ってくるわ。」

 

 

 簡潔に俺はあいさつを済ませ、外に出た。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 六月だというのに……この暑さはなんなのだろう。まだ六月だぞ?それでこの暑さってなんなのだろう。まだ冬服期間だから余計暑苦しかった。熱中症で倒れそう。

そんなことを考えながら鬱気に歩いていると、

 

 

 「兄さんが今何考えているか当てて見せてあげようか?」

 「……言ってみな?大体あっていると思うよ…」

 

 

 そう言ってみると、有希は自信ありげに、

 

 

 「ああ、幼い少女をペロペロしたいっ……!ペロペロしたいお~」

 「・・・・・・」

 

 

・・・・・・は?

いや、今思っていたわけではない。朝からそんなことを思うなんて、本当にただの変態じゃないか。ただ、有希がこんなことを言うことに思い当たる節はある。昨日の晩、俺がやっていたゲームにそんなことをほざくキャラがいて、あまりにその言い回しがツボに入ったものだから、俺もついまねしてしまった。……いやまじでなんでこれ聞かれてんだ。

 

 

 「ごめん、想像の斜め上をいってたわ。」

 「……ねえ知ってる?部屋の壁って結構薄いんだよ?」

 

 

共同生活も長いのに、そんな事実を初めて聞かされた。・・・・・・・・これからはマジで音量に気をつけよう。いろんな意味で。

 

 

 「そ、そういや、もう学校生活には慣れたのかぁ?」

 

 

俺がそう質問すると、有希はため息を一つつき、またも呆れた表情でこちらを見て

 

 

 「…兄さん、唐突すぎて話題を変えようとしてるのが丸わかりだよ……。しかも、その質問も何回もされたし……もう一度言うけど、奇跡的に栞ちゃんと一緒のクラスになれたし、クラスメイトは親しみやすい人がたくさんいるから毎日が楽しいよ。」

 「そそ、そうかそうか、それは何よりだなぁ。」

 

 

俺はあさっての方向を向きながらそう言った。

 

 

 俺らが通う高校、聖祥高校は徒歩で通える距離に位置している。市内ではトップクラスの進学校だ。ほかの特徴としては、校舎が新しいこと。部活動が結構何でもあること。アニ研、重音部、天文部、オカルト研とか、アニメやラノベ世界にしかないようなのもある。そして俺はゲーム研究部の一員だ。

 学校までの道のりの中ほどまで行くと、曲がり角からは見慣れた顔の女性が出現した。足取り重く歩くその姿は…まさしく“出現した”という言い方がふさわしい。彼女は俺に気付くと、怠そうにこちらに手を振ってきた。……こいつも、暑さにまいっているのだろうな。

 

 

 「おっす、朝から怠そうだな。暑いからか?」

 「分かってるなら聞くなよ……ほんと辛いんだからさ・・・・・・・・・返事をするのが。」

 「返事がつらいのかよっ!」

 

 

色素が抜けたのかと思うほどの白に近い灰色、髪の先端がパーマがかったショート…パーマについてはもともとこんな感じだったらしい(ただ俺は、髪のセットが面倒だとかそんな理由で放置したからこうなったのだと勝手に思っている。)そして、彼女の特徴的なところはこの死んだ魚のような眼だ。そんな彼女は荻原静乃。俺がさっき見慣れた顔と言ったのは、静乃が俺の小学校からの幼馴染だからである。

 

 

 「静乃さん、おはようございます!」

 「ああ、おはよう、相変わらず遼の従妹とは思えないくらい美少女だな。ぼくにも分けて。」

 「そんな、私なんて全然ですよ、美少女なのは静乃さんじゃないですか!」

 「いやぁ、これは照れるなあ。」

 

 

確かに顔は悪くないと思う。むしろ小学時代は男子からモテていた。ただ、小学6年のある時を境にどんどん陰鬱な雰囲気へと変化していき、卒業時には今よりやつれた見た目になっていた。生気の感じられない瞳に、ひねくれた言動をするようになり、あまり関わりたいと思われていないのが中学からの話である。とはいえ、今は最底辺の頃よりは落ち着いて、関わりたくない最底辺のカーストから、ノーマルカーストに位置するくらいにいる。

 

 

 「……おいおい、俺抜きで話を進めるなよ~」

 「いやいや、有希ちゃんの髪の毛の手入れ具合は尊敬に値するよ。ぼくも見習わなきゃな。」

 「静乃さんは特別な手入れをしないでその髪って・・・すごくうらやましいです。」

 「…って、おいおい!俺の扱いがぞんざいじゃないか!」

 「……え?お前はぞんざいな存在だろ?今更気づいたの?」

 

 

バッサリ言いやがったーっ!いや、またそんなことを言われるのだろうと思っていたけどさ、やっぱり直接言われると傷つくものがあるよ!

 

 

 「あと、お前見てるとなんか暑くなってくるから離れて。」

 「ああはい、すんません……」

 

 

言われるがままに俺は二人から離れることにした。

彼女は俺への扱いがひどくぞんざいで、年々苛烈さが増している。もっとも、直接的な暴力とかはなく、あくまで言葉でのいじりなのだが、成長していく中でボキャビュラリーが豊富になっていくので、さまざまななぶり方をするようになった。けれど、そのなぶりの一端に俺へのリスペクトというか、超えてはならない一戦は超えないようにしているのが見受けられるから、不快に思っているわけではない。だてに年数長く付き合ってきていないので、そこらへんは互いに理解しているのだろう。

 

 

 「ああごめんごめん、暑苦しいのはほんとだけど悪かった。そんな離れなくていいよ~」

 

 

暑苦しいのは否定しないんだね……

静乃に言われた通り、俺は静乃たちに近づいた。

 

 

 「……そういや、さっき俺の事をぞんざいな存在っていったけど、あれってダジャレかな?かな?」

 「「・・・・・・」」

 

 

彼女らは歩く速度を速め、俺を放置した。

 

 

 

 

 俺のクラスは二年六組。静乃も六組である。で、有希と別れて二人一緒に教室に入ることになる。何も知らない人がこの光景を見ると、あたかもカップルが朝から登校してくるかのようにも見えるだろう。だがしかし、そんな愉快な勘違いをする人はいないだろう。…なぜかって?それは、周りから見れば俺は静乃のいじられ相手みたいな印象でしかないからだ。

俺らが教室に入ると、まず第一声、

 

 

 「おはよう遼っ…。昨日のこれゾン最終回は見たかっ…?」

 「静乃、おはよう。」

 

 

朝っぱらからアニメの話を吹っかけてきたのは伊藤修二、なんていうか、口調がほんと某ギャンブル漫画にそっくりだし、基本的にクズだし、なんでもうまくできないのに、こと賭け事になると覚醒する。そういうことから昔からカイジと呼ばれてきたようで、俺もそう呼んでいる。ただ、漫画のカイジと違うところを挙げるなら、こいつは二次の世界に(俺によって)染まりきっているところかな。

次に、静乃に簡潔な挨拶をしたのが中河刹那。肩をある程度飛び出すほどの長さの黒のツインテールで、前髪にはヘアピンを付けている。すらっとした長い足を白のニーハイで覆い、絶対領域がちらつくなんとも股間によくないすばらしい恰好。顔面偏差値もトップクラス、学内屈指の美少女である。この学校の偏差値も高いので、完全に神が二物を与えている。静乃とは中学からの知り合いで、つまり、俺も彼女のことは昔から知っている。ただ…

 

 

 「静乃、今度の武力介入はまったく成功する気がしません。何か有効な策はありませんか。」

 「ええっと……ようは、テストがやばいってことでしょ?神様に何とか頼んでみれば?」

 「この世に……神なんていませんっ……!」

 「あーはいはい、じゃあ、地道に勉強するしかないねー」

 「やはりそうなってしまうの……」

 

 

 そう、非常に痛いのだ。名前が名前なだけに、某ロボットアニメに影響されている。オタクなわけではない。たまたまそれを観たらはまってしまっただけで、俺みたいに今期は何が放送されるだとか、そんなことはしていない。・・・・・・・でも、いつも朝は痛々しいわけではないはずなのだが―――

 俺はカイジと他愛もない雑談をしていると、始業のチャイムが鳴り、

 

 

 「みんな!今日は六月八日だ!千歳の妹ちゃんの誕生日だ!妹ちゃん、誕生日おめでとうっ!」

 

 

 開口一番、俺らの担任、東雲先生はそう言いながら教室に入ってきた。

 

 

 「先生っ……!俺もっ……嬉しくて仕方がありませんっ……!」

 「俺もっ……!」

 

 

 俺やカイジ、一部の男子たちはみなしみじみと喜びの思いをかみしめていた。去年ふとしたときに東雲先生からその女性の写真をみせてもらい、あまりの可愛さにみんなファンになってしまったのである。教員の立場で他の先生の個人情報を漏らすことには問題があると思うけれど、女性の許可がどうやらおりた(らしい)のでこんなことをしているわけだ。普段の口ぶりは完全にアホで、よく教員に慣れたなと思ったりもした。けれど、大人としての最低限の立ち振る舞いはどうやらあるみたいだ。

 

 

 「千歳先生にはお祝いの言葉をかけてやるんだぞ!ただまあ、喜んでばかりもいられない。みんな、二週間後は考査があるからな。留年なんてしたくないのなら、間違っても赤点なんてとるんじゃないぞ!テストの点なんて教科書丸暗記すればいいんだからみんな頑張れよ!」

 

 

わかっている、みんなわかっているんだ。それが極論だということは。ただ、もう何度も言われてるから、口に出すのも面倒なだけなんだ。

HRを終え、また授業が始まる。今日は日本史、現代文、数学、英語、政経、物理だったはず。

そんなことを思いつつ、俺は次の授業まで眠ることにした。寝れるかどうかは知らないけれど。

 

 

 

 

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 昼休みを迎えた俺は、飯を食うために席を移動している。ちなみに、面子は俺、カイジ、静乃に刹那である。……常識的に考えて、俺とカイジはきもちわるい人種で、そんなやつらが女子と食事……しかも刹那は学内屈指の美少女ときたもんだ。普通は同席できることがあり得ないのだが……友達補正と、刹那を狙う輩への魔除け代わりとして同席させてもらっている。

 

 

 「それにしても、相変わらず安綱先生の数学は難しいよなぁ」

 

 

俺は取り留めもなくそんなことをつぶやくと、

 

 

 「わかる。前に勤務していた高校のレベルが高かったから、その名残で高くなっているってのがぼくの考え。」

 「正直、二年の最初で微分積分が出てくるとは思いませんでした。」

 「ああっ・・・・・・・・・鬼畜じゃねえかっ・・・・・・!」

 「前にいた高校が超進学校なんだっけ?そのノリを引っ張ってるっぽいんだよなあ。ウチはそんなにできよくないだろうに…」

 「だがまあ美しいからいいや」

 「ああっ………!」

 「…あっそう。ドヤってるのうざいからやめてくれ。」

 

 

 なんか二人とも呆れて飯を食い始めた。本当のことなんだけどなぁ……。女性にはあの美しさがわからないのかなあ。30代半ばの熟れた体にあのとろける声、なんど俺の妄想の餌食になったことか……。

 

 

 「あ、俺、日本史の課題まだ提出してなかった。ちょっと職員室に行ってくるわ。」

 

 

俺は席を立とうとすると

 

 

 「待ってくれっ……!」

 「何?」

 「鳥飯おにぎり……それに……飲み物もっ……!」

 

 

 ったく…俺をパシリに使いやがって…

 

 

 「ぼくはガラナでよろしく」

 「サイダーでお願いします。」

 

 

 ……畜生っ…カイジのを買いに行くって言ってしまったから、断るに断れねえじゃねえか。

 

 

 「はいはい、わかったわかった。」

 

 

 今度こそ、俺は職員室に向かった。

 

 

 

 

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 昼食中の先生方の邪魔をしないようそそくさに職員室を後にして、あいつらに言われたものを買って、教室に俺は戻った。俺は何も買ってない。来るべき決戦の時に金は貯めておくのさ……まずはあのアニメのBDを買うだろ?次は…

 そんな桃色の妄想をしていたらいつの間にか昼休みが終わっていた。次は兼元先生の政経か、五時間目だし眠くはなるが、あの先生寝てる人に割と容赦ないから、気合いと根性で乗り切らなきゃいけないな。

……正直進学校に珍しいのかな?普通寝ている人は自己責任と割り切って放置する。でも気にかけてくれるだけ、優しさを感じるんだよな。まあそれと眠くなることとは別問題なんだけどもね……

 

 

 

 政経の授業は、俺に関してはなんとかなった。というのも、カイジが爆睡していて、今回の怒りの矛先はカイジに全て向いたから、そしてその顛末を見てたら眠くなくなったからである。

 そして本日最後の授業は千歳先生の物理だ。千歳先生が教室にやってきて、物理の板書を書き始める。

 

 

 「えー今日は、万有引力について――」

 

 

千歳先生が黒板に文字を書こうとしたその瞬間、チョークが折れた。千歳先生の筆圧が濃いわけではない。チョークの方がもろかったのである。そんなことあるかと思うが、実際、この現象は割とよくおこる。前に先生に聞いた話によれば高校時代はもっとついていなかったそうだ。けれど、祓ってもらったらよくなったらしい。それでも、まだついて内部類の人だと思う。でもそれ以上に今が幸せだから、本人はさほど気にしていないんどと。

 

 

 長かった授業がやっと終わり、放課後となった。みんな帰り支度をしている最中、

 

 

 「遼っ・・・!これからこれゾン放映会をするつもりなんだが……お前はどうするっ・・・・・・?」

 「いや、普通に部活あるから。」

 「そうか……なら仕方ないっ……!じゃあなっ……!」

 

 

そう、今日は部活で…さらには重要なブリーフィングなんだ。

カイジには悪いが、こればっかりは譲れないな。

ちなみに、カイジはどの部活にも入っていない。麻雀部とかなら入ってそうだが、彼はアニメを見ていたいからどこにも入っていないのだ。

 

 

 「じゃあね遼、また明日。」

 

 

静乃はそう告げて教室を後にした。

彼女もどの部活にも入っていない。理由は簡単、怠いからだ。一方刹那はといえば、

 

 

 「刹那、お前は今日も執行部の活動?」

 「ええ、今日もCBの活動があります。といっても、今日は会議だから、武力介入は行わないはず。」

 

 

この通り、執行部に入っている。正式名称は『生徒会執行部』という。執行部と名前はついてはいるが、それは名前だけで、ほかの学校の生徒会と何ら変わりはない。

刹那と俺が話しているとき、ふいに白ブレザーの女性が現れ、

 

 

 「刹那、用意はできましたか、今日の会議は早めに始めます。」

 「はい、会長」

 

 

彼女は緋色結衣。この学校の生徒会長で、三年である。その端正な顔立ち、髪型は腰くらいまである闇色のロングのストレート。冷然とした態度に、高身長、美乳。敬語なのに体からあふれ出るオーラ。それらの要素によって、彼女は男性の女神であり、女性からは憧れの対象である。そんなすさまじいルックスなら、告白はされまくりらしいのだが……人気俳優やアイドルでよくある、重度のおっかけは存在しない。なぜか。それは、あまりにもしつこく追い回してきたファンを再起不能にまでおいやったからだ。恐ろしくて内容は誰も聞けていない。その女子生徒はあまりの恐怖で『会長は裏表のない素敵な人です』としか言わなくなってしまった。この実例を機におっかけは消滅し、彼女への恐れから告白する人は減り、遠巻きに眺める人も減った。なお、超多かったのが多少多めになった程度でまだまだファンはいる模様。(しかも、恐怖させてもらえるということでドMの男たちが一気にファンになってしまった。)

 刹那は緋色先輩に連れられていった。俺も部室へ向かうことにした。

 

 

 

 

 俺の所属している部活『ゲーム研究部』は六階に位置し、廊下の隅に部室がある。さらに、そもそもこの高校自体が広い。故に、正直ここからは遠くて移動がしんどい。なぜこんなところに位置しているのかと言えば、簡単な話、需要があまりないからである。野球部やサッカー部は生徒からの人気もあるので必然的に部員数は多くなる、したがって、部費も多く出る→生徒たちが活動を起こしやすいところに部室ができる。だが、このゲーム研究部は文化部で、なにより部員が四人であるため、かろうじて部活が成立しているのが現状だ。よって、部費は当然少ないし、あまり生徒の行き来しないところに追いやられてしまうのである。まあ、部費はゼロじゃないし、あんまり人がワイワイいるよりかは少ないほうが個人的には静かで嬉しいので…いいんだけどさ。でもやっぱりこの遠さは嫌になるよ。

 だるがりながらもてくてく歩き、部室についた。

 

 

 「こんちわーっす。」

 

 

 俺はそう言って部室に入ると、まず最初に第一声俺に挨拶をしてくれた。

 

  

 「国広先輩、こんにちはです。」

 

 

そいつは俺の後輩であり、有希と同じクラスである。彼の名は柄谷栞。肩に触れるか触れないかくらいの髪であり、少し青系統によった髪色。前髪にはリボンがつけられている。イメージとしては、これゾンのハルナをイメージしてもらいたい。そして、清純で物静かであり、控えめな性格であるので、初見だと文学少女ととらえる人がいても不思議ではない。実際に彼女は教室内や部室内で本を。読むことが多い。だが、その本の中身はゲーム攻略本やライトノベルであることは、あまり知られていない。(主にクラスメイト)

 そんな彼女の手に収まっているのは本ではなはシャープペン、広い長机にはノートと教科書が広がっている。どうやら、試験勉強でもしていたらしい。そして、

 

 

 「ちょっと遅かったじゃない。待ちくたびれたわ~」

 

 

回転いすに座ってくるくる回りながら俺に挨拶(?)をしてきたのは、我らが部長、宮永龍華さんだ。髪は栗色で、セミロング。全体的にパーマがかっていて、本人も髪の手入れにはかなりの気合を入れているそうだ。そして、

 

 

 「やあ、カタギリ。二日ぶりだな。」

 

 

 彼は武士道。『ぶしどう』じゃなくて、『たけ しどう』と読む。ただ、本人は「私の事はハムと呼んでもらっても構わない。」と言い出しているので、みんなハムと呼んでいる。あと、俺の事は、今はカタギリと呼んでくる。“形あるものはいつか壊れる。ギリギリでいつも生きていたいから、Ah~~!!”と俺が意味不明な歌を歌ってた時に居合わせてしまい、それからずっとカタギリと略して弄ってくる。

 あと忘れてはならないのは……彼は金髪で、黒を基調とした羽織を着て、顔に仮面をつけていることである厨二病であることだ……。正直街に出るときは隣で歩きたくない。知り合いと思われくない。どうしてこうなったんだろう。俺がアニメを勧めたからなのかな・・・。

 

 

 「じゃあ、全員揃ったところでブリーフィングを始めるかな。栞ちゃんは勉強を一回ストップしてね~。」

 

 

回転するのをやめ、立ち上がった部長はよろめきながら「きもちわるい…」と言葉を漏らした。気持ち悪くなるのはわかっているんだから最初からやらなければいいものを。

よろめきながら奥にあるホワイトボードに手をかける。そこで数秒気を落ち着けると、ホワイトボードを引っ張り出して…

 

 

 「では、フォースレイドライブの戦術についての会議を始めるっ!」

 

 

 …切り替え早いなあ…と、俺以外の二人もそう思ったことだろう。

 

 

 このゲー研はアーケードゲーム『フォースレイドライブ(通称FLD)』についての活動を日々行っている。といっても、ただFLDをするのではない。この部には全国大会出場という目標があるのだ。その目標に向かって、日々鍛錬を続けている。e-sportsにも指定されたし、今激アツなゲームといっても過言ではない。

 フルドは有り体に言えばガンダムVSシリーズに似たものであり、戦闘形式は2対2もしくは4対4のチーム戦というのも似ている。違うところは、機体のメイキングができるところか。ガンダムブレイカーとラクガキ王国を足して割ったみたいな。ともあれ自由度が高すぎて調整が難しいんだけど、そこが楽しくてみんなやっている次第である。

 

 

 「とりあえず、まずは今月末にある地区予選を突破することが最優先だな。」

 「確か、一回戦、二回戦、準決勝、決勝と構成されているトーナメントでしたよね?ブシドーさん。」

 「そうだ。私たちが参るのは4人1組の団体戦。一、二試合目が2対2。三試合目が4対4となっている。だが、一回戦目は特殊で、四チーム一斉の2対2対2対2のワンセット、つまりは4人のうち2人は一回戦には出ることができないのだ。そしてこれが四ブロックにわかれている。そのセットの中で上位二チームが2回戦に進み、もう片方のブロックの二チームとで2対2の試合。ただ、この組み合わせはランダムであることを忘れてはならない。準決勝も同様だ。」

 「2回戦は3セットマッチ。まあ、2回連続で勝てばそこで終わりだな。そして準決勝からは3セット×2セット+1セット。つまり、一つのペアで2ポイント先取したら1セット先取したとみなす。ただし最終セットだけは一回勝負だ。」

 「しかも準決勝は、同じMSを連続で使えないっていうのも重要だよなぁ。」

 「使い慣れているのがそのMSだけで、極めてる人にとってはつらいよねぇ……パーツは5か所以上替えなくちゃならないんだよね…………まあ、同じMSばっかり使っていると対策を簡単にとられてしまうから、システムとしてはギャンブル性がでて面白言っちゃ面白いのかなぁ~。勝ち上がることにリセットされるからまあいいんだけど。」

部長は物憂げな感じでホワイトボードにもたれかかってそういったが、ふと何か思い出したのか、

 「3セット目は4人で出るからいいけど、1,2セット目はタッグは固定だってこと、わかってるよね?どの組み合わせが一番勝ちにつながるのか、今日それについて決めちゃいたいんだけど、ダイジョブ?」

 「え?今ここで決めるんですか?」

 

 

 柄谷が意外な顔で部長を見ていた。部長は、首を横に振り、ぽりぽりと頭をかいた。

 

 

 「これからゲーセンに乗り込んで、いくつか実戦してから決めようと思ってる。だから、これから時間は空けておいてよ~。」

 

 

 それを聞いて、柄谷は肩をなでおろしていた。俺も正直ほっとしている。もし仮に部長が今ここで決めるって言ったら、俺は反対して現地で決めようと提案しただろうよ。それほどまでに今日決めたくはなかった。そもそも今日はしたくてもできないし。なぜなら俺は進学校では珍しく、バイトをしているからである。

 

 

 「今からですか?今ちょっとそんなに金持ってきてないですから、明後日にできませんかね?」

 「明後日?明日じゃなくて――あ、先輩明日はバイトの日でしたっけ。」

 「そうそう、資金をためないとな。」

 「そこは社会の経験のためとかにしときなさいよ……でもまあ、それなら仕方ないか。今すぐ決めなくちゃならないってわけでもないし。じゃあ明後日ってことで。」

 「心得た。」

 「わかりました。」

 「じゃあ、今日はもう特にすることもないので今日は解散!」

 

 

 あれ、作戦会議じゃなかったの?

 そんなことを思ってふと柄谷の方を見てみたら、そのきょとんとした顔から、彼女も俺と同じことを思っているのだろうと読み取れた。

 でもまあ、そんなあいまいな感じもいつもの事か。

 

 

 俺は今日はもう帰ることにして、玄関を出た。ちなみに、ほかの三人は俺の帰る方向とは真逆である。帰り道は、いつも一人だ。

 

 

 

 

 

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 「そもそも、俺はだれとの相性がいいのかってことだよなあ。」

 

 

 今日の部活でのことを思い浮かべながらぶつぶつつぶやきながら玄関を出て、家に向かって歩いていると、

 

 

 「……遼君、さっきから独り言って気味が悪いんですけど…」

 「うぉい!刹那、いつの間にっ…!」

 

 

 驚いて振り向いたら俺の真後ろに刹那がいた。ちなみに、朝ついていた青と白のヘアピンのうち、青の方は外されていた。

 

 

 「目の前に遼君が歩いているのが見えたから寄ってみたんだけど気づかないし……私、わりと走ってきていたんですよ?」

 「悪い、まったく気づかなかったわ」

 「向かってくる足音も聞こえてないってことは…何か深くて重いこと考えていたんですか――と言いたくなりましたが、どうせゲームとかのことを考えていたのでしょう?」

 「おおう、まさにその通りだぞ。あともう言っているぞ。」

 「ちょっとは否定をしてくださいよ…って、細かいことは気にしないでください!」

 

 

刹那はやれやれといった感じだ。

彼女はずいぶん朝と違っている。いたって普通な女性の言動だ。これは単純で信じられない話なのだが、ヘアピンの色で言動が変わるのである。本人曰く気合の入りが違うらしい。彼女は青のヘアピンのあるなしで厨二病のオンオフをしている。顔つきも微妙に変わる。青いほうの方がキリッっとしている。さてここで、白のヘアピンを外したらどうなるのかという疑問が浮上してくるのだが……正直俺にもわからない。

 

 

 「こんな早い時間にここにいるってことは…執行部の会議が早く終わったってこと?」

 「ええ、カトル先輩がちゃっちゃと議題に出ていた問題を解決しちゃったので、やることがなくて帰ってきました。」

 「さすが学校一のイケメンなだけあるな」

 「顔は関係あるのかどうか知りませんけど…。」

 

 

 彼、カトル先輩の本名はカトル=ウィナーといい、留学生である。クリーム色の髪で、知的なメガネ男子である。高貴な雰囲気が漂っているのは気のせいではなく、まさに彼はいいところの御曹司である。(バイオリンとか普通にプロレベル…いや、プロとまではいかないけどそれくらい上手に弾ける)男らしさからのかっこよさというよりかは誠実な紳士というか…。とにかく次元が違う。会長の緋色先輩、副会長のカトル先輩、彼らの次元が違うせいで、執行部は一部生徒から神格化されているらしい。その美女美男と一緒の空間にいたいがために執行部入りを目指そうとしている人も数多くいるのだが、採用基準がイかれているため執行部入りする人は全然いない。

 そして、刹那はそのイかれた採用基準を突破した。会長から聞いたところによると、「姉と同じく素質がある」からだそうだ。

 

 

 「カトル先輩と付き合うのと緋色先輩と付き合うならどっちが――?」

 「緋色先輩」

 「ですよねー」

 「聞いておいてなんですかその態度は!」

 「いや、あまりにも返答が早かったもので。」

 

 

そんなやり取りをしていると、刹那の家が近づいてきた。彼女の家は学校の傍なのだ。

 

 

 「じゃあ、遼君、また明日。」

 「おう、じゃあな」

 

 

 刹那は駆け足気味でその場を後にした。

 

 

 日が暮れたころ家につくと、有希は特に何かをしているわけでもなく、リビングのソファの上でごろごろしていた。

 

 

 「あぁ・・・・・おかえりなさぁい」

 「なんか眠そうだな。」

 「だって実際眠いんだもん……あー…眠い。」

 「そんなに眠いなら自分の部屋に行って寝てくればいいじゃないか。」

 「なんかねぇ……今って夕方でしょ?昼寝っていうわけでもないし……もう少したったら夕飯だし・・・すごく中途半端じゃん。もっと早く家についていたら寝てただろうけど…」

 「ああーそうかい。」

 

 

 軽く相手にするのが面倒になったので、とりあえず自分の部屋に向かった。

 

 

 夕飯を終え、テスト勉強を終え、特にやりたいこともなかったのでいつものようにあとは寝るだけとなった。ああ、また同じように毎日の繰り返し。別にうんざりはしてないさ。うんざりしていたとしてもどうしようもないしね。

 俺は部屋の明かりを消して寝ることにした。明日も一日頑張るぞい!なんて、糞みたいなことを思っていたが、この日みた夢から、俺の人生は大きく動くこととなったのだ。

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