7月1日
重苦しく瞼が上がり、ぼんやりと視界に映るのは見慣れない天井、それもそのはず。昨日は家に帰ってないもの。
開きかけの瞼を再び閉じ、ぎゅっとしてから再び開ける。数秒前とは打って変わってクリアに見える景色が広がる。あれ、布団が跳ね除けられていないな、珍しい。
俺は体を起こそうとしたそのとき、ある違和感を覚えた。
「……なにか温かいものが俺の右側にあるな。」
俺は特に気にかけもせず布団をめくった。……本当になにも気にかけていなかった。そしてその光景をみて、寝起きの不鮮明な頭では到底理解できるわけもなかった。
………なんだこれ?
俺、いつの間にか柄谷の布団に入ってたりしてないよな?
慌てて辺りを見回したが、特に変わったことはない、俺が昨日寝た部屋だった。
………じゃあ柄谷が勝手に入ってきたのか?………いやそんなはずはない。やつは同年代の男と簡単に寝ることができるようなビッチではないはず………いや俺が知らないだけか?本性はヤリマンビッチ?てことは俺……
「柄谷に寝込みを襲われた!?」
俺、Dの称号を捨ててしまったのか!?嬉しくもあるがこんな捨て方あんまりだ!………じゃあよ、寝込みを襲われたならよ、俺だってキモチイイことしていいよな?柄谷をπタッチしてもいいよな?
俺はπに触れようとそっと左手を近づけーーーーーーーー
「……やっぱりやめよう。」
最後の最後に、俺はチキってしまった。俺は何もみていなかった、何も知りなかった、そういうことを柄谷に思わせるのが一番なんだ。あ、先輩、おはようございます。随分と長く寝ていたんですね。って思わせることが一番。下手に起こしてギクシャクなんてしたくない。
俺は目を閉じた。
………
……
…
鈍く機械音を響かせて紙が印刷されるまでが緩慢に感じられ、ひどくじれったい。ようやっと印刷が終了し、私は飛びついてその紙を見た。いつもと同じことしか書かれてないのだが、そこには大きな変化が見られた。もしやと思い、私は"彼"とコンタクトを取った。が、期待していた事は起こっていなかった。
「……やはりまだまだ……」
私はそのプリントを床に投げ捨て、部屋を後にした。
「………こんなことするから、部屋がプリントまみれになっていくのよね。」
さすがにケースとか使って整理しようかしら、と思った。
「にしても……」
この英文字と数字が書かれているこのプリント、『国広遼に対する周りの女性の好感度』を示したものであるけれど、誰がどの番号なのか、まったくわからないのよね。竜崎に聞いても“私の機関”に聞いても教えてくれないし…。まあいいわ。今日の感じだと、おそらく柄谷栞と宮永龍華の好感度が高まったんじゃないかしら?この調子で続けば………
「いや、よそう。そんな希望を持つのは。」
私はリビングへと戻り、椅子に座ってペンをとる。
「……勉強しよう。また遼にとやかく言われるの、嫌だしね。」
陽の光がリビング内に満ちていく。ぽかぽか陽気に照らされて、私は教科書とノートとをにらめっこしながら、ペンをゆっくり走らせるのであった。
了