結衣 「じゃあ、今度こそ会議を始めますよ。今日は目安箱の内容についてです。カトル、読み上げお願いします。」
カトル 「まず、3年の匿名の方からです。『ゲーム研究部の部費をあげてほしいです。』」
結衣 「却下」
龍華 「そんなぁ!」
朱鳥 「宮永先輩…あんたそんなこと目安箱に書くなよ…」
龍華 「だって直接言っても却下されるんだもん。」
結衣 「カトル、次。」
龍華 「まさかのスルーですか!」
カトル 「ええと、これも匿名で、『学校でバジルを栽培したい』だそうだけど…」
結衣 「学校で栽培する意図が解りません。家で栽培してください。次。」
カトル 「2年の方からで、『中河刹那を愛でる同好会の設立を所望する。本来彼とは私は運命の赤い糸で結ばれて(ry』」
刹那 「却下です!!」
龍華 「ハム…無茶しやがって…」
刹那 「あの男はいったい何を言って…これは駆逐が必要ですね。」
龍華 「(そんなことしたら、むしろ会いに来てくれたことに喜びそうだな~…)」
刹那 「次の情報はっ!!」
カトル 「『昼休みの体育館の利用についてなのですが…』」
朱鳥 「お、やっとましなものがきたか?」
カトル 「『球技しか認められていないけれど、バンド練習もしたい。』2年の秋山澪さんからです。」
結衣 「本当にまともですね…」
カトル 「ちょっとこの要望には応えられないかな…」
龍華 「え?なんで?ステージは空いてるんだから問題ないんじゃないの?」
カトル 「もし、バスケットボールがあらぬ方向に飛んで、楽器にぶつかったら?責任はいったい誰がとる?面倒なことになるのは免れないだろう?」
龍華 「なるほどにゃ~…」
結衣「では次にいきましょう」
カトル 「2年の方からで…あ、これは要望ではなくて質問みたいだね。『最近クラスでしゃべるフィギュアを持ってきている人がいて…しかもそのフィギュア、食べ物食べたりしてるんですよね…。これはペットに入るのですか?そうでないにしろ学校に持ち込んでいいんですか?』」
一同 「…」
結衣 「保留ですね。」
カトル 「次、『学園祭での生徒会ライブの今年度のボーカルは誰になりそうですかね?去年は中河さんでしたから今年も続投ですか?』」
結衣 「まだ考えていませんでしたね。刹那はそれでいいですか?」
刹那 「かまいません。」
カトル 「次は……ええと、これは…」
朱鳥 「どうしたんすか?」
カトル 「……いえ、なんでもありません。一年の匿名からで『生徒会役員は厨二病患者の温床と化してしまっている。早急に改革が必要だ。そもそも、役員の条件に厨二病であることを課しているニコラ教諭にも問題がある。今すぐ顧問と役員の総辞職をすべき。』であると……。」
一同 「………」
結衣 「これは回答に困りますね…」
朱鳥 「そう思うならあなたが次期生徒会長選挙に立候補すべきであると回答すればいいんじゃないの?ここ数年信任投票ばかりで選挙があまり白熱しなかったらしいし、おもしろそうだ。」
刹那 「私に対立するなら上等です。叩き潰してやりますよ。」
結衣 「じゃあそういうことで。」
「や、やっと終わった…」
気付けば時刻は五時。龍華は疲れはてて机に突っ伏した。
「では今日はこれで終わりです。――ああそうです、前にも説明したとおり、明日から仮生徒会役員の人が来ます。今回は2人です。でも私が見る限り…合格者は1人でしょうかね。では皆さん。また明日。」
皆がぞろぞろ解散していく。
会議終了の一声とともに、私は………
誰かが私の肩を揺さぶっている。ーああもう!鬱陶しいですね!
「もう…誰ですか?」
「あ、やっと起きた。」
眼前に龍華。彼女しかいなかった。他は…いない。窓越しに外をうかがうと、もうかなり暗くなっていた。
「…あれ?」
携帯で時刻を確認すると、短針は7を指していた。
「ものすごいぐっすり寝てたね~…みんな気を使って起こさなかったんだよ。」「私…寝てたんですね…。あれ、じゃあなんで龍華もこんな時間まで残ってるんです?」
「そんなの…言わせんなよ…わかってて言わないなんてさ…」
もしかして、気を使ってーかと思ったけれど、彼女が座っていた席の前の机の上に、紙が乗っていて、すべてを悟った。
「レポートですね…」
「結衣がここで書いてけっていったんじゃない。忘れそうだからって。」
「え?私そんなこと言いましたっけ?」
「うとうとしてたから記憶が曖昧なんじゃないの?」それは…有り得ますね…
「まあ、嘘だけどね(笑)」「そこ嘘吐く必要ありますか!?」
「ちょっと寝起きの結衣をいじりたかった(笑)」
「…」
「や、まあ、はいこれ」
龍華はそういって私にレポートを差し出してきた。
「私のリアクションにスルーですか。」
「まあいいじゃないの。…じゃ、私は帰るね。」
「え?」
彼女は自分の鞄に私物をおさめはじめた。
「あ…その…」
無意識のうちに私は龍華を呼び止めていた。
「わかってるって。冗談冗談。一緒に帰るよ!」
その言葉に、私は安堵とほんの少しの恥ずかしさを感じた。
「そういや部活といえばさー。」
私は龍華と肩を並べて自宅へと向かっていた。電車に乗り、水薙市の東区を歩いている。龍華は私の家の近くに住んでいるため、帰り道はほとんど一緒。今は住宅街に入った頃である。
「ん?何?」
「この前、部活停止期間中に無断で活動してたじゃない?」
「ああ、そんなこともありましたね。今日でその罰は終わりましたが。」
「ほんと、忘れていてほしかったよ…まあそれはいいとして、その時、部員から言われちゃったのよ。『大学受験大丈夫なんですか?』ってさ。その時ははぐらかしたけど、実際どうしたらいいのかなって。やりたいこともないしなぁ…。」
そんな話を聞いて、龍華も色々悩んでるんですねって、思った。
「結衣はどう考えてるのかなってさ。今までの進路から変える気でいるの?」
私は以前、彼女に自分の進路について話している。どの大学を目指しているのかってことを、高一の頃から。そして、今、その志望大が揺らいできていることも。
「…私も龍華と似た感じです。あの大学へいきたい。だけど、その先のことを考えると…」
「わかる。想定外だったもんね、あれはさ。」
「あんなことになるなんて思ってもみませんでした。だから、期待もしてます。話がくるんじゃないかって。」
彼女には私が言いたいことはすべてわかっている。龍華自信も関わっていたことだから。
龍華と別れ、家に着いた私は風呂に浸かりながら、あることを考えていた。進路についてである。私はいままで、国公立大学へ進学することを考えていた。理由としては、特に夢もないから(一応無くはなかったが、実現は非常に難しかった)、とりあえず偏差値の高いところに進んでいい肩書きを残そう、ということだ。だけど、去年の夏に入ってから、事情が変わった。道が、ひとつ増えた。それに進むか否か…
…そういや、随分長く湯に浸かっていますね…そろそろ上がりましょう。