タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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2-1-4 生徒会の来訪

 7月10日 土曜

 

 

 いつものように俺はパルフェでせっせと料理を運んでいるわけだが……今日はある方々が来店していた。

 「あ~涼しい~冷房が最高にいいですね~」

 「だらけるのもわかるぜ…俺も外の暑さにはうんざりしていたからな…だから今現在、最高っす。」

 「ははは……にしても、キド君はこんな気温でよくフードをかぶっていられるね…。大丈夫なのかい?」

 「……慣れていますので。」

 生徒会の面々が訪れているのだ。

 俺のシフトがもうすぐ終わるという頃、彼らは来店した。こういったことは過去にも何度もあって、決まってすることといえば生徒会の会議である。それならこんなところでせずに学校でやればいいのではないかと思い、緋色先輩に一度尋ねたことがある。すると「コーヒーを飲みながら、ケーキ食べながら、だらだらと会議をしたいこともあるんです。」と返された。言われてみれば、確かにそうだなと、当時感心していた。彼らは多いときは1週間来店し続けたこともある。………ちなみに、俺はその輪の中には入っていないぞ?邪魔をしてはいけないという配慮の上だ。(決して誘いを受けていないだけどか、そんなのではない。そんなのでは……泣)だから、このこと自体は別に珍しくもなんともないのだが………

 「だれだあのキドとか言う………人。」

 俺は仕切り版越しに彼らを見ていた。

 生徒会の面々と同席しているということは、新しい役員か?そうだよな。キド……木戸さん?木戸君?これは結構重要だぞ。ええと、確か生徒会誌に詳細が載っていたような……あああああ駄目だ!普段読み飛ばしてるから覚えてねえ!覚えていることといえば新規役員は二人いるということ…………って、じゃあなんであの場には新規役員が一人しかいないんだ?もう片方どうしたの?もう既にはぶられちゃったの?・・・・・・・・・まあいいか。それより木戸という人だ。フードをかぶっているから遠くから見るだけじゃ判断がつかない。注文をうかがったとき、もっとしっかり見ておけばよかった…。悔やんでも仕方ない。ほかに何か特徴はないのか?遠くからとはいえじろじろ見るのはまずい。相手に気付かれたら終わりだ。……ああいや、読書に集中しているから多分本人は気づかないだろうけど、周りの奴らが気付くかもしれない。だから、早急に終わらせるっ!

 木戸の服装を見る。ノースリーブっぽいパーカーを着て、下は………ダメだっ!奴は奥に座っているからわかるわけないだろ!(現在、彼らは窓に面したテーブル席にいて、奥から木戸、ウィナー先輩、反対側は朱鳥、刹那。)しゃあない。上半身だけでイメージしろ。奴はノースリーブみたいな服を着ている。てことは、腕が露出しているわけで……きれいな白い腕だなあ……。

 「…………国広君、何やっているんですか?」

 反射的に体がびくつく。ゆっくりと後ろを向くと、そこには両手にトレイを載せた緋色先輩が立っていた。

 「いったい何をしているかと思えば・・・・いったい貴方は何を――」

 そこで、先輩はさっき俺が見ていた方向へ目を向けると、

 「ふふっ、ああ、そういうことですか。」

 「え?まさか俺が何を考えているか分かったんですか?」

 どうでもいいが、さっきの緋色先輩の笑い方は素敵であった。俺じゃなくてもうっかり惚れそうだ。

 「大方、あのフードを被った人は何者なんだろうって思ったんじゃないですか?」

 「……おっしゃる通りです。」

 そうだ、最初から先輩にきいときゃよかった。でも私語は厳禁とか言われてるしなあ。……まいっか。

 「彼は新しい役員で、神前鬼道というんです。男ですよ。」

 「へ?男?」

 てことは、俺は男の腕に見とれていたのか………二次ならそういうのもありだが、三次はだめだ。だから、俺はもう駄目だ……。

 「はい、驚くのもわかります。彼、中世的な顔立ちしてますし、トーンもどことなく……ってそんなことより、これ、4番テーブルに運んできてください。」

 「あ、すんません。今行きます。」

 

 

 

 シフトを終え、着替えを済ませた後、裏玄関にて会長を発見した(上は胸元がリボンの形をした可愛らしいデザインをしている白色のトップスカットソー、下はスキニ―ジーンズ。ふつくしい。ふつくしい!大事なことなので二回言った。)ので、会議の内容を聞き出そうとして見た。なぜそう思ったのかって?なんとなくだよなんとなく。

 聞くところ、なんとあっさり教えてくれた。

 「文化祭のバンドの楽曲を考えるだけですよ。」

 「え、サラッと言っていいんですか?」

 「別に隠しているわけでもないですし。………ああそうだ、どうせなら一緒に曲目考えてくれませんかね?」

 「え?曲目?いいんですか?さすがにそこはシークレットなんじゃ…」

 「ええと……そうですねえ……」

 その場で先輩は長考、そして出された結論は――

 「彼らを待たせているのは申し訳ないですし、まあこの後暇でしたらついてきてください。」

 という、まったく予想外のものである。そのとき、俺は戸惑っているかのように演じていた。内心は、ついにお誘いを受けたということに対して心を弾ませていたのであった。

 

 遼「ええと、どうも国広です。」

 

 朱鳥「おおー国広!こんなとこで会うなんて奇遇だな!」

 

 遼「いや、このテーブルには俺がオーダー受けに行ったよな!?その時にあってるよな!?」

 

 結衣「まあ腰かけてください。話はそれから始めましょう。」

 

 そういって、先輩は刹那の方を一瞥、そしてカトルの隣に座った。危険を察知したのか否か。刹那はといえば見るからにテンションが下がっていた。で、空いている席は刹那の隣しかないため、俺がそこに座った。

 

 刹那「……チッ」

 

 遼「んん?何やら聞いてはいけないような音を右側から聞いてしまったゾ?」

 

 結衣「気にしたら負けです。……では、国広君、何か一言。」

 

 な、なんだその無茶振り!?

 

 遼「えー…なぜこの場に俺がお呼ばれしているのか、俺自身もよくわかっていないんだけど、できれば露骨に嫌そうな顔をしないで、遠回しに俺に去るように言ってくれれば俺のメンタル的にもうれしいというか…。」

 

 朱鳥「ちょっ、そんなにネガティブになるなって。俺とお前の仲だろ?そのくらい俺は構わないぜ。」

 

 真……お前はなんていいやつなんだっ……!今のお前、最高に輝いて見えるぜっ……!だから、俺の目の前に空のグラスを置いてきたことなんて全然見えねえぜっ……!

 

 カトル「僕たちの趣味って偏ってるから、一般的な意見も聞きたいしね。歓迎するよ。」

 

 カトル先輩……貴方はなんて優しい方なんだっ……!今のあなた、最高に輝いて見えますっ……!だから、伝票を俺の目の前に寄せてきていることなんて全然見えないぜっ……!

 

 刹那「はよおごってください。」

 

 ちょっwwwwwダイレクトすぎやwwwwwwwwケーキの皿寄せてくんなやwwwww

 

 キド「……なら自分も。」

 

 あんたも便乗せなくてええ!!

 

 遼「ひ、緋色先輩助けてくださいよ!」

 

 と、視線を前に向けて初めて気付く。先輩のこのスマイルっ……!先輩っ……天使やっ……!これは俺を助けてくれるってとらえていいんだな!?

 

 結衣「アイスティーをよろしくお願いしますね」ニッコリ

 

 先輩っ……悪魔やっ………天使の皮を被った悪魔や…………

 

 遼「あ、あはは……」

 

 目をぱちくりさせたところで、空のグラスが2つ、皿が一枚、伝票という現状は変わらない。もう苦笑いしかできなかった。

 

 カトル「……なんて、さすがに冗談だよ。」

 

 カトル先輩は伝票を自分の元へ戻した。それを皮切りに、朱鳥、神前がグラスを自分のところへ引き寄せて行った。

 

 遼「はあ……一瞬焦りましたよ。本当におごらなくちゃならないのかって。」

 

 朱鳥「俺は軽く期待してたんだけどなー。国広って人がいいから頼めばなんかおごってくれそう。」

 

 遼「借りもないのにおごらないって。てか、俺って今までにお前におごったことあったか?ないだろ?理由もなしにおごるほど俺は優しくねえぜ。」

 

 結衣「国広君、どうしても…ダメ、ですか?」

 

 遼「そんな上目使いしたところで俺の気持ちはかわら……やだ、可愛いじゃないの。……って、会長!俺を誘惑しないでください!」

 

 刹那「……はよおごれ。」

 

 遼「刹那は変わらないのね。てか白い方なのに言葉づかい荒すぎやろ。」

 

 朱鳥「おい国広、中河のあられもない姿の写真やるからおごってくれ。」

 

 遼「そんなウソには騙されないぞ。第一お前に入手できるわけがないじゃないか。」

 

 朱鳥「おい国広、会長のあられもない姿の写真やるからおごってくれ。」

 

 遼「おっしゃ任せろ。パフェでもなんでもどんと来い。」

 と、俺が流れるままに買収されたわけだが、ここでなぜかみんな黙りこくってしまった。……いや理由は分かるよ?現実から目を背けたいんだよ。

 

 朱鳥「・・・・・・・・・と、このように、国広は会長の写真で簡単につられてしまう男であることが証明されたな。」

 

 刹那(青)「この外道がっ……!会長のプロマイドにはつられ、私のプロマイドには見向きもしないっ……!その螺子曲った精神っ…駆逐してやるッ!」 

 

 遼「え、いつの間に青くなってんの?しかも白外してるし。」

 

 カトル「うーん、遼君は誰にもつられないって踏んでいたんだけどね。」

 

 結衣「予想と反してちょっと引きました。」 

 

 遼「ファッ!?」

 

 てか予想ってなんだよ。事前に相談していたのか?俺を嵌めるプロセスを考えていたのか?いや待て、俺がここに来ることは緋色先輩の気まぐれ、だから完全に予想外のはず………いや、その全体がそもそも違っていたのか。

 

 遼「先輩……まさか……。」

 

 俺は訝しげに会長を睨むと、会長は輝かしい笑顔で、

 

 結衣「はい、嵌めました。」

 

 と、えげつない言葉を突きはなったのであった。

 

 朱鳥「昨日生徒会内でお前の話が上がってな。理由は聞かないでくれ。で、キドはお前の事を知らないだろ?そこでだ、ただ普通にお前の事を説明するのもつまらないから、こんな形で教えてやろうと思ったんだよ。あと、生徒会の集まりにお前を呼んだことなかったし、ついでに呼んでみるかってわけだ。」

 

 刹那(青白)「で、どうですかキド君、この歩く混沌(カオス)についてわかりましたか?」

 

 キド「……まあわかりました。とりあえず、あまり近寄りたくはないですね。」

 

 遼「ファッ!?」

 

 カトル「ははは、初対面から手厳しいねえ。」

 

 遼「いやあんたらのせいだよ!大体誰だよ言いだしっぺは!」

 

 朱鳥「サーセンサーセン。」

 

 遼「謝る気がないだろおおおおおお!?!?」

 

 クソッ…俺は奴らの手のひらで踊らされていたのかッ……。

 

 結衣「まあ許してください。お詫びにドリンク一杯御馳走しますよ。」

 

 遼「え?いいんですか?」

 

 刹那「そこは遠慮した方がいいのでは…?」

 

 遼「ですよねー。」

 

 出会いがしらの騒動がいったん落ち着いた後、会長が木戸さんに自己紹介をするよう言った。木戸さんは俺に小さく会釈をした。……こいつの目、静乃に近いものを感じる。でも静乃程末期でもないな。さしずめ、死にかけの魚のような眼とでもいったらいいか。じと目ってのも印象強いな。

 「……神前鬼道です。」

 「こうさきか……あれ、まさか神様の神に前後の前っていう字を書く?」

 「……すごいですね、珍しい苗字なのに。」

 「その名字で有名な人がいるんだよ。神前暁って偉大な方がな。……ってすまん、べらべらしゃべっちゃって。――えー、多分会長とかから説明受けてるから俺についてなのる必要もないかもしれないけど、まあいっか。俺は国ひ――」

 「こいつは国広遼、出会い頭の会話からわかるように下半身で動く変態で、男であろうが食い散らかす下品なやつだ。お前も括約筋を引き締めておけよ?」

 「ファッ!?」

 ちょっ…真なにいってんすか?

 「でもまあ、普段は大丈夫ですよ。とはいえ、会話しれっと下ネタを盛り込むのはいただけませんが。」

 ちょっ…刹那さんなにいってんすか?

 「・・・わかりました。」

 そうやってあからさまに椅子を遠ざけるのやめてもらえません!?

 「・・・・・・はあ、キド、今のはほとんど出鱈目ですから、信じてはいけませんよ。」

 「……そうなのですか。」

 彼は遠ざけていた椅子をもとの位置に戻し、座りなおした。

 てか、会長がいくら俺をフォローしてくれたところで俺への初期印象が良くなることはないんだよなあ…。超糞から糞へとジョブチェンジした程度か。

 「……あれ、会長、今“ほとんど”って言いましたよね?完全否定しませんでしたよね?てことは会長にも俺は変なイメージを持たれているということですよね?」

 会長は無言であさっての方向を向いていた。

 「あ、あはは、はははは、はあ…。」

 乾いた声が思わず漏れる。

 そっか、そうだったのか。

 辛いなあ。

 「国広、そういうこともある。ドンマイドンマイ!」

 「いや、だから事の発端はお前だからな?」

 「遼君落ち着いてください。少しうるさいですよ。」

 「いやうるさくさせてるのはお前らのせいだからな?」

 「ええと、気を悪くさせてしまったのは申し訳ないんですけど……あれほど普段から騒ぎ立てていたら、そりゃあ、ね?」

 「で、でも会長との会話では気を遣ってそう言った発言はしないようにしていたはずじゃ……。」

 「確かにそうですね。でも、別口から貴方の話が入ってきたり、話してるのを偶然見かけてしまったり、していましたから。伊藤君と話しているときの貴方を見てしまったときはちょっと引きました。」

 「…………」

 確かに、カイジと話しているときは二次元の話に限らず下の話もガンガンしてた。周りの目も気にせずしてた。他人なんてジャガイモって考えてるからさ……。でも、ジャガイモ畑の中にダイヤモンドが混じっていたんだな………

 「もう勘弁してください。」

 「ワロスワロスwwwww」

 「なにワロてんねん!」

 指さして嘲る朱鳥は本当にうざったらしいことこの上なかった。

 

 

 結局同じような会話がループしかけたところをカトル先輩がとめ、本題に入った。それは学際のバンドの楽曲決めというもの。……一般人からの意見を求めようと俺は呼ばれていたが、俺はいわずもがなオタで厨二だったから、結局偏った意見しか出なかった。ナイトメア、シドなどV系バンドの曲をやることとなった。決めた後は普通に解散。途中まで刹那と帰ったが、まあ特に変わったこともなく、普通に別れた。………なんだか、今日は本当に疲れた。帰ったらすぐに寝ようそうしよう。

 

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