7月13日 火曜
「みなさん、ここにアミューズメントパークのタダ券があります。」
バイトが臨時休業だったので、俺は部活に出席して、いつものようにプログラミングやらなにやらしてたら、部長が「あ、そういやあ」ときりだして、唐突にそんなことを言った。
「はあ……それがどうかしたんすか?くれるんすか?やさしいなあ部長は。」
俺は特に期待をしていたわけではなかったが、部長がそう言うんだからとりあえず乗ってみた。プログラミングする手を休めることなく、適当にあしらう感じでそう言った。
「うんそうだよ!皆行こうぜ行こうぜ~」
一同皆作業の手を止め、部長の方を見た。部長はチケットと思われるものを両手に持って、ふりふりさせていた。この姿だけ見るとただのアホだな、なんて思ったら吹き出してしまった。
「ちょちょ!国広失礼じゃないの?折角私が最近できたあの娯楽施設の優待券をタダでやろうとしてるのにさあ。私を笑うんだったらあげないよ?」
「いや、別にいいっすよ。さしていきたいわけじゃないし。俺、インドア派ですよ?」
「ふうん、そういうこと言うんだ…」
部長はニマリと笑ってスマホをいじりだした。いったい何が始まるのです?
「ほら、これみてみ。」
そういって俺にスマホを差し出すと、そこには一通にメール画面が開かれていた。差出人はなんと緋色会長である。
<へえ、あそこのタダ券とったんだ!
たまの気分転換にはいいかもしれないね。
わかった、行きますか。
新しい水着買わなきゃ~><
昔のやつはもうサイズ的に駄目だよね…>
会長の………水着………!?!?!?!?!?
ふおおおおおおおおおおみなぎってきたあああああああああ!!!!
あれかね?ロングパレオとかですかね?先輩はきっと黒が好きだから黒い水着じゃないすかね?しかも出るとこ出てるんだよね?レオタードなんてものは着ないですよね?いや、それはそれでエロいけど!とにかく!たまらん!妄想がはかどる!てかよく考えろ、部長の水着も見れるんだよな?彼女、普通に可愛いから、眼福なんじゃないか?それに柄谷もいくだろうし、控えめプリンも堪能できるのでは?
「行きます。行かせてください。」
「え?いかないんじゃないの?」
にやにやしながら俺の方を見る。クソッこれを見越していたのかっ…!
「先輩?急にどうしたんですか?部長さんのスマホ見てから急に態度が…」
「あ、栞ちゃんも見る?これこれ、男ってホント単純だよね~」
部長からスマホを渡され、柄谷はメールの文面を見る。そのメールと俺とを交互に見て、最後にはごみを見るような眼で俺を見た。
「美しいものを見たいと思うのは自然な欲求だと思うんだ。」
「はぁ………先輩は先輩ですねえ…」
ああ、なんか納得されちゃったよ。
「ま、はなっから国広は連れて行くつもりだったからね。国広にはほかの面子も頼みたかったし。」
「と言いますと?」
「静乃ちゃんと刹那ちゃん、怜ちゃんと…それに有希ちゃん誘ってきてよ。国広にはチケット6枚渡すから、あと一枚は誰でもいいよ。好きな人連れていきな。ほらあれ、伊藤とかいたじゃん。」
「なに!?少年だと!?」
今まで黙りこくっていたハムが急に元気なって話に食いついてきた。
「少年が行くのなら私もいこう。」
「おおーハム君話が早いねえ。よっしゃ、じゃあ国広、頼んだよ~。」
「まあいいですけど、でも、部長が直接誘ったほうがいいんじゃないすかね?ほらその、男から誘うよりも女から誘ったほうが来やすいとかあるんじゃないすか?」
俺が訝しげにそう言うと、部長は「まあ……うん……そうなんだけど……」とかいう煮え切らない態度をとっていた。
「ともかく、頼んだよ!」
強引に話を切り上げ、俺の肩をポンポンと叩き、ヘッドホンをつけて、ギターを使った作曲に入ってしまい、もう話はできそうにもなかった。だから俺も、作業に戻った。そうだな、明日話してみよう。にしても………部長はどういったルートであそこのチケットを手に入れたんだ?あんな人気な場所の、しかも優待券なんて、早々とれたもんじゃないし……うーん謎だ。まあいいか。