7月14日 水曜
「は?プールに行こうって?」
7月中旬、夏休みも近づいてきた頃、遼はそんな提案をしてきた。
「面倒くさいからぼくはパス。」
「ちょwおまww話だけでも聞いてくれwww」
遼が懇願してきたので、渋々話を聞くことにした。ちなみに、今は学校での昼休みであるため、この場には他に怜、刹那がいる(あと伊藤)。
「最近この辺にかなりでかいアミューズメント施設ができただろ?プール以外にも、ボウリング、ゲーセン、スポーツコート、飲食店とかたくさん。要するにそこに行こうぜって話。」
「へぇ、そんな面白いところがあるのね…」
「あれ?たしかそこって人気がありすぎてなかなか入れないって話を聞きましたが…」
「なんと宮永部長が独自のルートで一日フリーパスを手に入れたらしい。かなりの枚数あるから、たくさん誘えって言う命を受けたんだよ。勿論金なんて要らない。タダですよタダ!」
「なるほどなぁ…」
ぼくもその施設の話は知っている。何しろ規模が規模だから。多少興味はあったが、かなりの順番を待ってまで行きたいとは思っていなかった。
「無料であそこに行けるなんてなかなか素晴らしいじゃないですか!静乃もそう思いますよね?」
「えー面倒だよ。ぼく以外で楽しんできなって。」
「どうせ暇なんでしょう?高校生らしいことしましょうよーねー静乃ー」
刹那が駄々をこねはじめ、今度は刹那に対してめんどくささを感じていた。
「じゃあ行くってことでいいの?」
遼の目は輝いていた。そんなに嬉しいのか…これは断りづらい…。まあ断る理由がないことも確か。
「じゃあ行かせてもらおうかな。ちなみに、他の人は?」
「部長、柄谷、有希、そしてここにいる5人。まあ部長のことだからカトル先輩とか会長とかも引き連れてきそうだな。」
「…つまり、あの男は居ないんですね?」
刹那はやけに真剣な顔つきで遼に問いただしてきた。遼は明後日の方向を見ながら腕を組んで考えてるそぶりを見せた後、
「あ、たぶんくるんじゃないかな。」
なんて、微妙にはぐらかしているが、これは間違いなく、くるであろう。第一、ゲーム部の部長から提案された時点で、ゲーム部員の彼に話が届かないわけがない。次に、宮永さんは適当な人だから、どうせ彼に『刹那ちゃんも来るかもね~だから来た方がいいよ?てか来いや。』くらいはいいそう。うん、それはあるな。
「……辞退しようかなぁ…。」
刹那の言うあの男とは、遼のいる部活の部員の一人で、武士道って人。この前のゲームの大会の時、刹那と対面して、「乙女座の私にはセンチメンタリズムを感じずにはいられない。まさしく愛だっ!君と私は(ry」などと訳のわからない言葉を並べて、それいらい刹那にやけに接近するようになったのだ。当然刹那はそれに迷惑していて、なんどもきつい言葉を投げ掛けても、決して心は折れなかった。……まあ、刹那は刹那でなんだかんだ言いながらちゃんと相手をしてあげてるんだよね…。案外いいコンビなのかもしれないな。秋くらいには案外くっついてたりして。
「えぇ…一度言ったことを撤回するのかよ~…」
すると遼は席をたって、刹那の元へよって耳打ちをした。かなり小声だったから、私には聞き取れなかった。が、遼が話終えたときの、刹那の表情で何となくわかった。目を見開き、何やらにやけはじめて、そして妄想をかき消すように頭を振った。
「しょ、しょうがないですね…。あの男がいるのは仕方ありませんが?まあ、この機会を逃すといつ行けるかわかりませんし?仕方ないですね~」
刹那…落ちたな…
「よし、今度こそ決まりだな。詳細は後程連絡するわ。」
「りょーかい。…ちなみに、さっきからなんでカイジは黙っているの?」
「ああ、確かにそうだな。」
「こんなっ……!ラノベみたいな展開にっ…!俺なんかが加われると思うとっ……!嬉しくてなっ…!」
なるほど、伊藤らしいな。そう謎に感心して、再び箸を動かした。
〈今日の昼、刹那になんて耳打ちしたの?〉
家に戻って、遼にそうメールを送った。聞こう聞こうと思っていたが、なかなか聞くタイミングが見つからなくて、結局最後まで聞く暇がなかった。
返信はすぐに来て、
〈会長の水着姿ってね(笑)単純だよほんと(笑)〉
そんなぺらぺら言っていいものなのかと一瞬思ったが、まあそれに関しては薄々気づいていたし、深く考えるのはやめた。
〈やっぱり会長関連だったか…。来なかったときどうするの?〉
またも返事はすぐ来て、
〈俺は一言も、会長の水着姿が見れるとはいっていない。会長の水着姿という言葉を呟いただけだ(笑)〉
…悪どいやつだなぁ…
返信はせず、ぼくは携帯をベッドに放り投げ、部屋を後にした。さあ、今日も“制作”がんばるぞ。