タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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2-3-2 彼女はヒロインレース脱落か?

 ~結衣side~

 

 「これであの男がこちらに来ることはないでしょう。」

 「刹那…ちょっと警戒しすぎじゃないですか?直接何かされたわけでもないわけですし…」

 「生理的嫌悪感と言うやつです。ミミズや毛虫を見て心躍る人がいますか?」

 

 

 可哀想に………。でも、彼の刹那への遭遇率はものすごく高いから、もしかしたら此方に来るかもしれない。いや、むしろ来て欲しい。ある2人の男たちが、喫茶店で舐め回すようにこちらをずっと見てきて、加えて店を出てからもこちらの跡をつけられていました。彼等の目的が刹那なら…人数が少なくなって、さらに人通りの少ない道に入った今は…

 

 

 「ちょっ…そ、そこの美少女!!」

 「キモタク先輩、それじゃ誰のこと言ってるかわかりませんよ?……すみません!ツインテール白ニーハイの娘と黒髪ロングストレートのお姉さん!」

 

 

 …嫌な予感は的中したみたいです。

 片方は…言ってしまえばピザデブ、吹き出物だらけの顔、髪はパーマがかっていているように見えるが、容姿に金をかける人間じゃなさそうなので、天然パーマなのだろう。額には脂汗が浮かんでいて、Tシャツの脇周りと首周りは汗で変色していた。見ているだけで嫌気がさす…そんな存在。対してもう一人は見た目は普通の青年で、なんとなく、お気楽な雰囲気を出していて絡みやすいように見える。相対的にマシに見えるだけ。でも、いずれも怪しいのは確か。

 

 

 「…もしかして、私たちの事をいっているのですか?」

 「はぅう!こ、声が凛々しくて…益々素晴らしさがま、増したんだなぁ…」

 

 

 ……キモい。刹那が彼に抱く生理的嫌悪感とはこういうものなのでしょうか。それならば、いよいよ彼が不憫に思えてきますね。ここまで嫌われるなんて。

 

 

 「ど、どうかな?今から俺たちとお、お茶でもしない?」

 

 

 刹那は彼らが現れてからびくついて私の後ろに隠れてしまっている。

 …私が何とかするってのもありだけど、ここは彼に来てもらいたいな…

 

 

 「い、嫌です!」

 

 

 刹那が私の後ろに隠れながら、彼らに反論した。声は震えていた。

 

 

 「あっはぁん!まさに俺好みの声!是非!是非とも俺らと一緒にっ!!」

 

 

 …逆効果だったようですね…

 時間を稼ぐか、走って逃げるか…どちらもあまり得策とは…

 あと、この人、ナンパ下手ですね…。初めて挑戦したんでしょうか?過去にされた陽キャの人達って本当に上手だったんだなって思い知らされますね…。

 

 

 「ええと…私たち先程お茶したばかりですので…更にもう一杯ってのは…。貴殿方も二杯目は辛いでしょう?」

 「そ、そういわれてみれば俺もさっきがぶ飲みしてたし…つ、辛いなぁ…。なあ、直紀?」

 

 

 場に沈黙が広がった。刹那はびくついたままで、デブオタはきょとんとしていて、細身は顔がひきつっていた。

 

 

 「に、二杯目?なんのことっすか?俺達はまだ―――――――――」

 「その台詞、隣の方がボロを出す前に言えば効果あったんですけどね。……店内でずっと私たちのこと、見ていたんでしょう?気付いてないと思ってたんですか?」

 

 

 刹那は状況が読み込めてないのか、頭の上には疑問符が浮かんでいるように見えた。困惑顔だった。

 

 

 「ゲゲゲ、直紀…気付かれてるぞ…どうする?」

 「どうする?じゃないっすよ!!何やらかしてるんすか!!」

 「…では、私たちはこれで。」

 

 

 踵を返して、刹那の手を引っ張って立ち去ろうとした。だが————————

 

 

 「まってくれよお!」

 

 

 刹那の手を引っ張って私が反対方向に向かったから、後ろに隠れていた刹那が出遅れてしまった。だからこそ、デブオタに刹那の反対側の腕をつかませる隙を与えてしまった。捕まれた瞬間、握った手から彼女が震えるのを感じた。

 

 

 「いっ…嫌です!離してください!」

 「せめて…せめて立ち話だけでも!」

 「先輩!いい加減にしてください!」

 

 

 細身が、デブオタの頭を思い切りはたいた。そうしてホールドが緩んだことから、刹那はピザデブから解放され、すぐさま私の背中に隠れた。

 

 

 「な、直紀…なにすんだよお!」

 「見てわからないんすか?失敗したんすよ俺達は!見てください、ツインテの娘が震えてるじゃないっすか!」

 「…!す、すいませんなんだな…」

 

 

 デブオタは反省の色を全く見せず、視線も合わせようとはしなかった。

 

 

 「ほんとうちの先輩がすいません…。お詫びといってはなんですが、なんか奢らせてください!ちょうどいいタピオカ屋を知ってるんですよ。ね、ね!露店ならすぐ終わりますしどうでしょうか?」

 

 

 ……そうきたか…

 細身の方、仲間の失敗を利用しましたね…

 

 

 「いえ、結構です。私たちが望むのは、今すぐあなたたちがこの場から消えてもらうこと、それに尽きます。」

 

 

 刹那、イライラが募っているのかどんどん言葉が過激になっていく。まだ彼方が下手に出ているからいいものの…

 

 

 「………さっきからさぁ…ちょっと可愛いからってさぁ?調子こいてないっすか?」

 

 

 ああやっぱり………ただでさえ面倒くさいのに、さらに面倒くさいことに………

 

 

 「さっきはナンパしに来たくせに…いきなり逆ギレですか?器の小さい人ですね…」

 

 

 せ、刹那何してるんですか!?相手を更に煽っちゃダメですよ!

 

 

 「先輩…。」

 「なんだ直紀…?」

 「もう、無理やりでいいんじゃないですか?」

 「む、無理やり!?そ、それは…。いや、そうだな、お、俺もそう思ってた。あんな強気な娘を無理矢理…ブッヒィ!!ムスコがムクムクしてきたんだなあ…」

 

 

 そういって、デブオタは刹那に、細身は私に掴みかかろうとしてー

 

 

 「か、会長!!危ない!!」

 

 

 刹那はデブオタをかわし、私と細身との間に割って入ってきた。そうすれば必然的に細身に捕まるのは刹那になるわけで…

 

 

 「…俺の目当てはお前じゃねえんだよ!!」

 「きゃあっ!!」

 

 

 細身は乱暴に刹那を倒した。

 刹那は横に倒れている。

 倒れているのだ。

 倒されているのだ。

 乱暴に。

 無理矢理に。

 私を庇って。庇われたのだ私は。

 こうなってしまった発端は私にあるのに………

 ……刹那はうずくまってこちらを見ていない。

 ……なら…

 ……それ相応のことをしないとね……

 

 

 「…相手が女だからって調子こかないでもらえますか?」

 「…はぁ?いきがるのも大概に——————————」

 

 

 細身が私に掴みかかろうとした瞬間、私はその腕を左手でつかみ、右手で細身の鳩尾に肘をいれた。そして、細身が怯んだ隙に、相手を右後隅に“崩し”、“大外刈”をかけ、相手を後に倒し、相手の頭を思いきり踏みつけた。まさか投げられると思っていなかったのだろう。受け身をとろうなんて思うわけもない。コンクリート下であることも加え、相手はあまりの衝撃に気絶していた。

 …ああ、さっきの衝撃で細身の方の財布が落ちてる。

 …フフッ…私たちに乱暴した罪は償ってもらいますよ…

 って、自分の世界に入り込みすぎていた。刹那はどうなっている?

 慌てて視線を向けるとそこにはー

 

 

 「ぐへへ…もう逃がさないよ…」

 「だ、誰か助け…」

 

 

 デブオタが刹那にはいよって、上に股がっていた。でかい男はそれだけで強い。マウントポジション。私も、あの巨体を投げるなんて、相手の動きを利用しないと絶対にできないんだ。ましてや、刹那の細腕でどかすことなんて―――――――――

 そう思ったその時、

 

 

 「少年に何をするかぁぁぁあ!!」

 

 

 一人の男が、ピザデブに、ドロップキックを決めた。

 

 

 「ひでぶっ!!」

 

 

 ピザデブは横に吹き飛び三回くらい転がった。

 

 

 「さあ、立てるかい少年?奴に酷いことされなかったか?」

 

 

 ハムさんは手を差しのべ、刹那は素直にしたがった。

 

 

 「え、あ…ありがとう…」

 「よ…よくも邪魔しやがってえええ!!」

 

 

 ピザデブがハムさんに襲いかかる。私が助け船を出そうかと思ったけど、刹那に”アレ”を見られるのは嫌だし、ハムさんもいたから私はなにもしないことにした。好きな人が襲われているのだから、こうなった彼は、きっとなんとかしてくれる。

 

 

 「しつこいっ!!」

 

 

 グラハムはデブオタを軽く受け流し、デブオタは勢いよくこけた。

 

 

 「少年は私と運命の赤い糸で繋がっているっ!お前らのような雑兵では話にならんっ!今すぐ少年から離れろっ!!」

 

 

 グラハムの剣幕にデブオタは尻餅ついたまま後ずさり、

 

 

 「は、はいぃ!立ち去りますぅ!……おい直紀!起きろ!!に、逃げるぞ!!」

 「………はっ!」

 

 

 細身は起き上がると、私を見て、だんだんと蒼白になり、

 

 

 「すいませんでしたぁ!」

 

 

 その場から立ち去った。財布、忘れてますよ。いいんですか?…まあ、ろくな額は残ってませんけど(笑)

 …警察に突き出すことも考えたけれど、誰もいない通りで起こり、かつ警察沙汰になってめんどくさいことになるのは私なのだ。危機は去ったのだから、これで良しとしましょう。

 

 

 「さて、邪魔が入ったが…あえて嬉しいぞ少年!!」

 「あ、う、うん…」

 

 

 ハムさんはいつものようだった。いつもなら刹那はここできつい言葉を投げ掛けるんだけど…それがなくて、彼女の瞳はどこか遠いところを見ていて、顔は僅かに紅潮していた。…あれ?刹那まさか…落ちた?

 

 

 「フフッ…いつもの威勢はどうしたんだ?そんなにあの雑兵が恐ろしかったのか?」

 「いや、そういうわけではなく…」

 「まあいい。兎に角脅威は去った。安心するといい。……では少年、いつもであれば、もっと君と一緒にいたいのだが、如何せん私には外せぬ用事が控えている。名残惜しいが…さらばだっ!!」

 

 

 ハムさんは踵を返し、その場から全速力でで去っていった。

 姿が見えなくなるまで、刹那はずっと彼の背中を見続けていた。いや、もしかしたら、ただぼうっとしていただけかもしれない。

 

 

 「刹那…まさか…」

 「…!いえいえ、そんなことあり得ません!なんであんな男なんかに…」

 「私、まだ何も言っていないですよ…?」

 

 

 刹那はみるみる顔を紅くして、黙り込んでしまった。……どうしてハムさんが来ない道を選んだはずなのに、彼が来てしまっていたのかということには突っ込みませんでしたね…

 

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