「はあ…鬱だなあ…」
別室に移動して、買ったばかりの水着を袋から渋々取り出した。一緒の場所で着替えるのは嫌であったので、各々違う部屋を使わせてもらった。
「にしても…この部屋使ってよかったのかなあ…」
緋色先輩に指定された部屋に入ると(まず扉が重かった)、眼前には音楽機材が広がっていた。ギターにベース、コンポは勿論キーボードまでもあった。そしてパソコンラックにおかれるデスクトップ。多量のコードが繋がれていて、一部キーボードに繋がれていた。部屋には窓はなく、そのため空気は少し悪い。割りと散らかっていて、ラックの上には楽譜が散乱していた。
「そういやあ、緋色先輩は音楽できる人だったっけ。」
この学校の学園祭、生徒会は余興としてバンドを組んでいて、そこには先輩もいたのだ。確かそのとき担当してたのはベース。……ここは彼女の制作部屋なんだろう。初めて入ったけど、本当に色々置いてあるなあ。あ、棚の上にあるあの箱は……
……なんか、部屋を漁ってるみたいで居心地が悪いな…さっさと着替えてしまおう。
栞「………」
有希「……」
怜「………」
刹那「(うぅ…折角会長の水着をこんな間近で見ることができたのに…時と場所のせいで素直に喜べません…)」
龍華「ええと…状況を把握しよう。まず左は中乳。これは予想ついてた。しかもニーハイというエロさ。次に真ん中は美乳、これも予想はついてた。長年の付き合いだし。それでさ…右は予想は…つかないよねえ……」
栞「ちょっと前まで胸についての言い合いがバカみたいですね…」
静乃「…はぁ…(視線が…視線が刺さるなあ…)」
栞「着やせするタイプだったんですねそうだったんですね。」
静乃「…帰りたい…orz」
刹那「ちょっと四つん這いなんて…止めてください!そうやって谷間を見せつけて……(泣)」
結衣「(よかった。うまい具合に意識が向けられてます。まさに不幸中の幸いです。)」
静乃「ああー…じゃあさ、もうさっさととっちゃってくれない?」
龍華「ふっふっふ…これは期待が高まる…じゃあこっちの部屋に…」
有希「え?ここで撮らないんですか?」
龍華「だっていい写真とれそうにないんだもの。あと、ついてこないでね。撮影の邪魔だから。」
有希「…ショボン」
龍華「ごちそうさまでした。」ツヤツヤ
結衣静乃刹那「」グッタリ
有希「写真見せてください!」
龍華「……正直あまりに完成度が高すぎて、これはむしろ流出したら大事件になりそうだぜぇ…」
有希「え?一眼レフで撮ったんですか?…まあいいや、どれどれ~……うわぁ。」
栞「これは…」
怜「まさしく…」
有希栞怜「グラドルだ[です]〔ね〕」
栞「無駄にハイクオリティですね…。いったいどこでそんな技術を…。」
有希「これはほんっっっとうに、第三者には見せられないね…。」
怜「元々の素材がいいのと撮影技術が相まって大変なものが出来上がってしまったようね…。」
結衣「…この写真を、流出させたら…」ゴゴゴ
龍華「いやいやだからしないって(笑)ここにいる人にしか渡さないって(笑)」
刹那「ほんと、助かりましたよ…(会長の生写真…生写真!!)」
静乃「(刹那…安心しているというよりはむしろ喜んでるよ…そんなに会長の写真ほしかったんだ……。)」
有希「これは兄さんに見られないようにしなくちゃ……ってあれ?今何時?」
結衣「そういや…もう6時ですね。皆さんは時間は大丈夫なんですか?」
龍華「ゆいー、おなかすいたよー、手作りの夕御飯が食べたいなー」
結衣「貴女はちょっと黙っていてください。」
刹那「か、会長の手作り…食べてみたいきも……ハッ!?いえいえ、今のは忘れてください!」
有希「そういや、たしか兄さんと同じところでバイトしてて、たしか厨房を任されているとか…」
結衣「え、ちょっとこの流れは…」
栞「い、言えない…実は今日の晩御飯は親が用事で居ないからカップ麺渡されてるなんて言えない…(いや、さすがに会長さんに迷惑ですよ!)」
結衣「あれ、もしかして考えてることと逆転しちゃってます?(汗)」
怜「いや、さすがに申し訳ないし図々しいでしょ。食材を買ってくるくらいはしなきゃ。」
結衣「あ、あれ、もうここで食べてくことが前提に…(いや、考えましょう。もう追い払うことが難しい雰囲気になってしまった。なら、それをうまく利用できないかどうか…。たしか、夏休み中に新作料理を出せとか小鳥遊さんに言われてたっけ。一応内容は考えてあるけどまだ人に出したことはない。だから、みんなに試食してもらうのも悪くないかも。)」
龍華「……なんか、私の他愛のない一言で大変なことになっちゃったな…これは想定外。いいよ結衣、そんな無理しなくてもっ――てあれ?おーい、聞いてる?」
結衣「…じゃあわかりました。栞さんの夕飯事情が悲しいことになっているので、作りましょう、皆さんの夕飯。」
静乃「(…え?いいの?てっきり追い返されるのかと…。まあぼくも食べてみたいし、変に口出しするのはやめておこう。……にしても、ただでとはいかないだろうなあ。買い出しと、手伝いかな。それが妥当かな。)」
刹那「ありがとうございますっ!!」
栞「夕飯が素晴らしくなりました!」
有希「伯父さんに連絡しなきゃ…」
龍華「…なんか、私のせいで…気を使わせちゃってごめんね…」
結衣「いえ、いいんです。その代わり、これから店に出す予定の料理を皆さんに出すので、感想頼みますよ?」
怜「そんなことならぜんぜん、いやむしろ喜んでやらせてもらうわ。」
結衣「ありがとうございます。……ちなみに、この中で料理できる人は?」
有希「私はできますよー!伯父さんと交代で作ってますから!」
静乃「ぼくも人並みには。」
怜「私もできるわ。…生きてく上で必要な能力だったから。」
結衣「てことは…さっきから一言もしゃべらない龍華と栞さんと刹那はできないと。」
刹那「返す言葉もありません…」
栞「できたらカップ麺なんて食べずに自炊してますよ…」
結衣「ええと、ちょっと待っていてください。…………あ、この材料は足りませんね。……………はい、このメモに書かれているものを3人で買ってきてください。お金は後で皆さんで割り勘です。」
龍華「イエスマム!!じゃあ栞ちゃん、刹那ちゃん、行くよ!」
栞「ちょっ…場所は大丈夫なんですか?」
龍華「私はこの土地の人間だからオールオッケー。」
刹那「おお、いつも頼りないだけにすごく頼もしく見えます…」
龍華「ちょっとそれは聞き捨てならないなあ…でもほんとのことだから反論できない…。まあいいや、じゃあ行ってくるね!」
栞「また後でです!」
刹那「できるだけ早く戻ってきます。」
結衣「どうですか?」
怜「すっっっっっごく美味しいわ!!」
龍華「このつけパスタ…つけ麺を意識して作ったんだろうけど…最初は抵抗感があったけど、いざ食べてみると…味が濃厚でいいね!」
有希「でも、合うタレは限られるかな?」
静乃「うん、見た目の問題もあるしね。」
刹那「これっていくらくらいで出すんですか?たしか会長のバイト先の店のメニューって結構高かった気が…」
結衣「そうですね……野口さんが一枚ってところでしょうか?」
怜「野口?」
有希「怜さん、千円って意味です。」
怜「ああなるほど。」
龍華「まあ妥当だろうね……にしても、千円のものを格安で食べることができるなんて、ほんと、ねだってみるもんだよね。……で、走行しているうちにもう8時かあ…。ま、食べてすぐ帰るのは気分悪いから、お腹休めのためにもTwitterでもみるかな。」
有希「なんかやりたい放題だね…」
龍華「うーん、めぼしいものやってないなあ……あれ?このつぶやき…」
[高校生の友達が水薙市東区◯◯〓条□丁目で性的暴行を行われました。]
[3時ごろから7時ごろまでの記憶がなく、意識を取り戻したのは公園です。]
[友達は『街から家へ向かうため電車に乗っていたことは覚えていたが、気付いたら公園の草むらにいて、何者かに襲われていた。』そうです。]
[しかし友達は下腹部を除く外傷がなく、どのようにして意識を失わせられたかが特定できていません。また、襲った相手もわかりません。]
[犯人は現在もまだ付近にいる可能性もあるので、近くの人は十分警戒してください。絶対に許せない。]
そのつぶやきを読み上げた後、リビングは凍りついた。数秒沈黙したが、体感的には数十秒ほどであろう。皆表情は険しかった。いつもおちゃらけてばかりである宮永先輩でさえも。
「……あれ、ちょっとこのアカウント……私この人知っています…。うちの学校の生徒ですよ!」
有希は場の静寂を破って、宮永先輩のスマホを覗き込んでそういった。声は震えていて、額には脂汗が浮かんでいた。
もし、水着を買ったあと緋色先輩の家にいかず、皆が各々の家に帰ろうとしていたら、こうして強姦魔に怯えることもなかった。だけれど、それならば強姦魔の行動時間と被ってしまう。すると、ニュースで報道される被害者がぼくたちになっていたかもしれない。そう考えると、この家に来たのはよかったのだろう。だけど、身動きをとれないのは事実。いったいどうすれば……
「…皆さん、今日は私の家に泊まっていってください。」
「……いいの?」
「皆さんの身を危険にさらすことなんてできません。…まあ寝床はちょっと万全とは言えませんが…」
「そんな、寧ろ泊めてくださることで感謝がつきませんよ。寝床なんてぼくは気にしませんよ。」
「そうです!只でさえ会長さんには夕飯つくってもらいましたし!」
「皆さん……」
「じゃあ今晩はお世話になります!……でもその前に、まずはそのことを伯父さんに連絡入れなきゃね!」
「……てか思ったんだけどさ、その時間帯は私とかが夕飯の買い出しに出掛けてるときだよね…。よく襲われなかったなあ。」
「さすがに三人も一緒にいれば教われはしないでしょう。」
「ですよね~」
皆で食器を洗ったあと、シャワーを使わせてもらい、なんだかんだで時刻はもう10時であった。人間、自分に関係の無いことは忘れてしまうことが多いもので、あのニュースのあとしばらくしたら、もう夕食時のテンションに戻っていた。で、現在、寝る部屋を探すのを口実に緋色家の部屋漁りが始まったのである。緋色先輩が風呂に入っている間に、宮永先輩と栞と有希が発端となっていろんな部屋に行き始めた。最初は刹那や怜がそれを止めていたが、いつのまにかその二人も乗り気になって、部屋を物色し始めたのだ。…え?ぼくはって?ダルいからリビングのソファの上でゴロゴロしながらテレビでもみてるよ。
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「……何か言いたいことはありますか?」
静乃以外「……いえ、何もございません。」
あーあ、やっぱりこうなった。探索に勤しんでいた五人は、緋色先輩のシャワーが終わったあと、即刻緋色先輩に捕まった。しかも見つかったタイミングが悪かった。緋色先輩のダークマター、つまりは中二な品が数々おかれてある自分だけの聖域に、皆が踏み入れていたからだそうだ。結果緋色先輩は、顔には出さないけれど怒り心頭、皆が正座させられていた。ああちなみに、皆は緋色先輩のパジャマを借りている。下着だけで寝るのには抵抗ある人もいるだろうし、来た服で寝るのも違和感があるし何より汚れている。刹那と緋色先輩は変な男に襲われたんだから、尚更ね。
「まあ、寝床は十分に用意できないといったのは私ですし、だから、よく眠れそうな場所を探すのは……かろうじて、かろうじて理解できます。けれど、貴女方がしていたのは、完全に荒らしですよね?しかもよりによってあの部屋を…」
「…い、一応私は止めたよ?あの部屋はまずいっー―」
「私が見たときには貴女も一緒になって荒らしていましたよね?」
「……いやぁみんなに流されちってさぁ(笑)」
「確か今日の夜は雨予報でしたっけ…龍華も災難ですねえ…」
「マジすんませんそれだけは勘弁してください。」
うわぁ土下座だぁ…
てか緋色先輩が本当に怖いな…覇気は言い過ぎだけど、言い知れぬ何かを感じる。
「…まあさすがにそんなことはしませんけど……。あ、誰が発端ですか……って、そんなことはわかりきってますね。刹那と榊さんは反省しましたか?したのならもう足は崩していいですよ。」
「つ、疲れたわ…」
「本当にすいませんでした…」
2人は直ぐ様足を崩し、楽な姿勢をとっていた。うーん一人ソファに座ってこの光景を眺めるのはなかなかいいな。
「ちょっと…静乃?なにか言いたげな顔ですねぇ…?」
刹那がぼくを訝しげに見てきた。
「え?ああいや、別に何も。ただテレビが面白いだけだって。」
「明らかに私たち見て笑ってたわよね!?」
「被害妄想はいけないぞ。そんなことよりほら、足痺れてるんならソファに座る?」
「あ、それもそうですね。」
言われて2人はソファに座った。…なんとか話題を逸らすことができたが…いけないいけない、笑ってしまっては駄目だ。こらえなければ。
「あ、あの~…私たちは~…?」
未だ正座をさせられたままの宮永先輩が恐る恐る声をかける。みると、栞も有希も辛そうな顔をしていた。全身はぴくぴく動いていた。もう足が痺れてしかたがないのだろう。
「もうダメですぅ!!」
「お願いしますっ!!もう二度とこんなことしませんからっ!!」
有希も栞ももう必死だった。緋色先輩の方に目を向けると、先輩は迷っているのか、手を顎にあてて俯いていた。
数秒後、
「会長、物には触らないようにしますので、さっきの部屋をもう一度みてみたいです!!」
「あ、私も。」
って!!あんたらもかよ!
「……まあいいでしょう。でも貴女たちだけで行くのは気が進まないので、私が連れていきます。」
っていいのかよ!
刹那達は先輩に連れられてさっきの部屋に向かおうとしていた。
…でもぼくもみてみたいな。いったいどれほどすごいのかを。
「あの…ぼくもみてみたいかなぁ…なんて、駄目でしょうか?」
「構いませんよ。」
ぼくはソファから立ち上がろうとした際、
「じゃあ私達も―」
「貴女達はそのままでいてください。」
一閃、宮永先輩の言葉を遮断した。もう宮永先輩たちが限界そうで、可哀想なので、助け船を出してみよう。
「…まぁ緋色先輩、もうそろそろいいんじゃないでしょうか?さすがに可哀想に見えてきますよ。」
ぼくはそう緋色先輩に告げると、先輩は暫し俯き唸った。が、その表情はソファに座っていた私のみわかった。ほんのかすかに、かすかに口角が上がっていた。
「……萩原さんがそういうなら、まあ今回は許しましょう。静乃さんに感謝してくださいよ?」
おお、まさかこんなにあっさりと…いや、当然か。いくら怒っていたとはいえ、いつまでも許さないままっていうのも……いや待てよ、もしあっさり許していたら、宮永先輩は懲りずにまたやらかすかもしれない。けれど、自分からではなく他の人が許させる形をとると、相手が受ける印象は変わる。…一度考えると、もはやそうとしか思えない。あの笑みも不可解だったし…。ちらりと緋色先輩に目を向けてみる。けれど、特に不思議な点は見えない。ぼくの気のせいだったか…
「じゃあお先に失礼!」
「部長さん!もう変なことしちゃダメですよ!もうあんな目に遭うのは御免ですからね!」
「あ、待ってよ2人とも!」
もはやテンプレだよね、行動早すぎでしょう。
「宮永先輩が変なことしないよう私が見張ります!」
「じゃあ私は刹那が暴走しないよう見張るわね。」
次いで例と刹那がリビングを後にした。ぼくも腰をあげ、先輩部屋に向かおうとしよう。先輩はみんなが向かった方をぼんやりみていた。動きそうになかったので、ぼくは先輩を横切ろうとした。その瞬間、
「先ほどのフォロー、ありがとうございます。」
耳元にその言葉が入ってきた。ハッとして振り返ると、先輩は微笑みを浮かべていた。
「…やっぱりだれかが助け船を出すのを待ってたんですね?」
「あ、やはり気づいていましたか。まさにその通りです。竜華がちゃんと反省するように調整しました。私がいっても彼女は反省してくれませんから……。でもどうしてわかったんです?」
「ええと…」
わざわざそう導きだした過程を言う必要はないよね。先輩はそこまで知りたがってるわけではなさそうだし、何よりだるいし。
「なんとなくです。」
「そう…“なんとなく”ですか…」
…なんか見透かされてる気もするけど…ま、いっか。
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うーん、はっきりいってこの部屋、
色が“黒い”な…
壁にはV系バンドのポスター、置いてある物にはそのバンド関連と思われるギターやピック、あとマンガ、どれも黒基調。マンガにおいては見たこともないやつばかりだったけど、唯一わかったのがコードギアスかな。遼が一時期それにはまってて、言動が気持ち悪いことになってたから悪い意味でよく覚えている。
…てかこの部屋にもギターあるのか…じゃあ着替えに使った部屋のやつは…身内のものなのかなあ。
「す…すごいです…やっぱり会長さんはすごいです…」
「こういうのって…やっぱオタク―」
「私はちょっと趣味が人とは違うだけで、オタではないですよ。」
…緋色先輩の言葉にはちょくちょくよくわからない単語が混ざってるんだよなあ…。
「あれ?これってギターじゃないですか?会長ってギターできたんですか?」
「ええと………天海さんは是非とも去年の文化祭には参加しましたか?」
ああー…やっぱ生徒会のバンドはサプライズだったのか。なら言い渋ったのもわかるな。
「へ?去年?参加してないです。学校説明会だけ行っとけばいいかなって思っていたので。」
「そうですか…」
…あれ、たしかパンフに生徒会の余興については載ってたっけ?たいてい載ってそうなもんだけど…覚えてないなあ。
「あれ、会長はギター弾けないはずじゃ?だって姉さんが…」
「それ以上は言わないでくださいね。…まあいいです、もう言ってしまいましょう。私はギターと言うよりベースを弾きますね。ベースを弾く人は生徒会にはいませんでしたから…」
…じゃあこの部屋に置いてあるギターはやっぱり緋色先輩自身が……って、これベースじゃん。よくみたら弦四本しかないじゃん。
「ちなみに、有希ちゃんはまず根本的に勘違いしてるからね?これ、弦四本だから(笑)」
「…た、たしかに四本ですね…。てかそれよりも!」有希は視線をギターから先輩に戻し、
「生徒会のにベースできる人がいないっていいましたけど、生徒会はバンドかなんかやってるんですか?」
すべての人の表情を窺ってみたわけではないが、有希のように疑問を浮かべていたのが2人……栞はどうかなあ……まあいいや、ぼくのように有希たちを微笑ましく思っているのは他に3人といったところかな。
「有希ちゃん、この学校の生徒会は、代々文化祭の時、余興としてバンドをやってるんだよ。私は去年の文化祭に参加したから覚えてるもん、ほんとだよ?」
「そ、そうだったんだ……じゃあ今ここで弾いてみてほしいです!先輩の腕前が知りたいです!」
あー、たぶん無理だろうな。だってさ、
「こんな時間じゃ近所迷惑ですからダメです。」
予想通りの受け答えであった。