7月19日 遼side~
日曜日、故に我は眠る…筈だったんだけど、なぜかアラームがやかましく鳴り始めたので、しぶしぶ起きて携帯を開くと、登校用のアラームがセットされていたようだった。
「一体誰がこんな時間にセットしたんだよ…って、俺しかいないか。」
乱暴に携帯を閉じ、再び横になった。平日の癖でついつい金曜日にアラームをセットして、土曜日に嫌な思いをする時は何度もあった。まあそれは、この学校が週2回土曜もこさせる嫌な制度を規定しているからだけど。まあそれを考慮しても、次の日が絶対に休みである土曜にセットすることなんて…
過去の記憶にフル検索をかけてみる。
「…やっぱりあり得ないな。」
きっと疲れているのだろう。昨晩は濃密だったし。
「ほんと、なんであんな危険なものを俺に強くオススメしてくるのだろう。なんだっけ?練習も明日する…と…か……」
頭に電流が走る。俺はそこで、完全に頭の中から抜け落ちていた昨晩の“就寝前の記憶”を思い出した。
『あー眠い、寝よう。…そーいや竜崎が明日は練習がどうのこうのって…考えんのも面倒だ、設定しとけ。』
…そういやそんなこともしたなあ。
なんで忘れてんだよ俺は。
体を起こして、顔を洗いに行った。
でさ、はやく起きたよ俺は。何のためってデート練習のためさ。でさ、奴も当然準備万端なんだろうなあとおもって覗き込んでみるとさ、奴、寝てんだよ。なんで竜崎は寝ているんですかねぇ…。
俺は竜崎が寝床としているハウスの前に立ち、やつを起こそう…としたとき、ふとあることが頭をよぎった。
「おお、これがあったなあ。」
踵を返して部屋から出、隣の有希の部屋への前に立った。
「おい有希入るぞー」
少し待ったが、あることを思い出し本人の許可もおりぬままドアを開ける。というのも、前日有希は会長の家にお邪魔しており、どうやら泊まって来るとのことでいないはずだからだ。もっとも、それなら掛け声もいらないのだが、完全にそのことを忘れていた。
「っと、あれを探さなければ…」
平日の朝はいつも俺を苦しめていたアレ、いつもは恨めしく思っていた。けれど、今日ほどアレを求める日なんて今後絶対にないわ。
机に目をやったが、無い。その周辺に目を向けたが、無い。もう時間は十分も経過していた。
「…となると…」
有希の眠るベッドに面向ける。ベッドの角、つまりは扉から見て左隅に小さな棚がある。そこには目覚まし時計や貴重品がおかれているのだが…
「もしかしたら…いやほぼ間違いなくあそこにおいてあるか…。でもなあ…」
いくら妹とはいえど、ここに手をかけるのはいささか踏み込みすぎのように思える。もしこの棚が、誰にもみられたく無い自分だけの空間だとしたら、そこに無断で手をかけるのは…てかそもそも無断でしかも女子の部屋をあさってるってのも問題ではあるが…
「…まいっか」
あとで謝ればいっか。
俺は奥の棚を調べるため、有希のベッドに乗った。ギシッと軋むベッド。
奥の棚をみると、予想通りソレはあった。ご丁寧なことに目覚まし時計の隣に置かれていた。
「さ、回収して部屋に戻るか。」
俺がソレに手をかけようとしたその時、
【ジリリリリリリリリリリリ!!!!!!!】
唐突に、本当に唐突に有希の目覚まし時計がなり始めた。こんな中途半端な時間に設定するか普通!?
急いで目覚まし時計の上のスイッチを押してアラームを止めたが、勢い余って体勢が崩れ、棚を置いているせいで生じたベッドと壁の間、隙間にひどい音を立てて頭から落ちた。そして、動けなくなった。今思い返せば、なんで有希をまたいで棚を調べようと思ったのだろう。ぐるっとベッドを回ればこんなことにはなってなかったろうに。
何もできない。動けない。動けないが、辛いわけでもない。むしろ安置なまであった。それ故に、早起きしたツケで眠気が俺を襲ってきた。ベッドの隙間の妙な暗さも相待って、次第に瞼が重く……
現在俺の上半身は隙間にすっぽりはまり、下半身が宙ぶらりんとなってしまっている。そんな状態で居眠りしたんだ。第三者からしてみれば、さぞ異様な光景だろう。すると、発見した時の行動は1つしかない。有希の部屋に時計の針の進む音以外の音が響き渡ったのは、それからしばらくしてのことだった。