女の人の叫び声が目覚ましとなり、俺の意識が戻った。足をばたつかせてなんとか脱出した時、そこには汚物を見るような目で睨みつけている怜がいた。次に取る行動は驚かせてしまったことへの謝罪か、それともどうしてこんな格好で妹の部屋にいたのかの説明か…いずれにしても、面倒臭いことになりそうだと感じていた。
「あなた一体何がしたかったの?」
怜はベッドに腰掛け手足を組み、俺は硬い床に正座られていた。当たり前の結果といってしまえば全くもってその通りである。
「悪気はなかったんだ。ただいつも俺を起こす時に使っているブザーを借りようと思ってさ…」
「……え?ブザーであなた起こされてるの笑うんだけど。って、そんなことはどうでもいいわ。普通に考えて留守の妹の部屋に侵入して、加えて不可解な場所で寝るって相当の変態ね。見損なったわ。このグズ。」
怜の言葉の一つ一つが俺に重たくのしかかってくる。俺はますます縮こまるばかりだ。
「…返す言葉もございません。」
「まったく……会長の家から裏技使ってこっちに急いで戻ってきてまず起こったことがこれとは…まあいいわ。竜崎のところに行って準備しなさい。終わり次第細かい調整をするから私の家の家に来て。時間が勿体無いわ。10分でやりなさい。」
怜はそういうと、俺を残して部屋を出た。その足取りは速かった。
俺は自室に戻った。当初の目的を果たそうと、ブザーを手にハウスの中を覗き込んだ。そこには……
「うん、モーニングコーヒーは最高に美味しいな。やはりコーヒーはブラックに限る。」
優雅な朝を楽しんでいる竜崎がいたのだった。
「…………チッ。」
「おや国広君、おはよう。早起きとは中々感心だな。今日デート練習するってことを自覚していたのかな?」
「……そうですよ。」
畜生っ…あんだけっ…こいつを苦しめようと苦労したのにっ…こんな事って…
むしゃくしゃしたからとりあえず鳴らす事にした。
「ちょっ、お前なにしやがる!早く止めろーーー!!!!」
「あ、ごっめーん☆手が滑っちゃった☆てへぺろ☆」
「お前ここにそれ持ってくる時点で悪意しかないだろ!」
「むしゃくしゃしたからやった。」
「あのさあ…」
「てかいいの?口調が素に戻ってるぞ。」
「………素?何の事だ?」
「またまたとぼけちゃって………まあいいか。デートの練習するんでしょ?どんな準備すればいい?」
「ん…そうだな…まあ顔洗って歯磨きして、朝ごはんを食べる事かな。それが終わったら、怜の家にいくぞ。」
それが準備って……
ひどく拍子抜けした。ともあれ、怜は急いでいたように見えたが、デートの練習と言われどんな服を着るべきか無駄に悩んでしまったため、言われた3倍の時間がかかってしまった。まあ、謝ればいいか。