昨日は晩飯も食わずに早い時間から寝たため、ものすごくはやく起きた。携帯を開くと、時刻は6時と表示されていた。あ、いうほど早くはなかったな。ま、早いことには変わりないし、二度寝できるような時間でもなし。たまには早くから準備しよう。アラームがなる前に起きたのは久し振りかもしれないなあ。
洗顔し、トイレで漫画でも読みつつクソしていたら、扉越しで有希の声が響いて来た。
【伯父さん!兄さんが……兄さんが消えたっ……!朝起こしに行ったらいなくて…アラームがガンガン鳴ってて……それで……それで……!】
あー…アラーム止め忘れてた。
【お、落ち着け有希!ヤツはトイレにこもっているだけだ!】
俺がトイレにいるとき叔父さん来たしね、わかるよね。
【な、なんだ…… ……】
って、そんなに俺が一人で起きたのが珍しいのかよ…有希は俺をなんだと思っているんだ…。
俺はクソを終えると、再び部屋に戻り、制服に着替えた。そして、竜崎を胸ポケットに入れようとーーしたところで思い出した。
「そういや、避けられたんだったな。」
昨日、竜崎は怜と一緒に帰ったのだ。…きっと、神界人同士で話があるんだろう。
……一ヶ月位前の状態に戻っただけなのに、もの悲しく感じる。
「あ、そうだ。」
俺は急いでリビングへ降りると…
「間に合わなかったか…」
既に食卓にはみんなの食事が用意されつつあった。……勿論竜崎のも。
「ん?どうしたんだそんなに急いで…」
「あー…今日は竜崎の分の飯は要らないって言おうとしたんだよね…」
「ほう、こりゃなんでまた?」
「なんか用事があるとかで晩からいないんだよね。」
「成る程。じゃあ竜ちゃんの分は遼が食えよ?」
「おーきーどーきー」
「じゃ、いって来ますわ。」
「伯父さんいって来ますね。」
俺と有希は一緒に家を出た。そしていつもなら玄関前では怜が待ち構えているのだが…
「あれ?怜さんいないねぇ…私たちが早すぎた?いや、いつもと同じ時間に出たはず……うーん、わかんない。」
案の定、怜は居ない、か。
「ああそういや、怜は確か用事があるとかで先に行くとよ。」
勿論そんなものは嘘だ。いや、本当はそうなのかもしれないが、確認はしていない。…学校にはくるよな?
ふうん、と有希は納得し、学校へと足を進めた。それにつられるように俺も向かった。
「あれ、今日は怜、いないんだな。」
道中静乃と遭遇したので、一緒に学校へと向かうことにした。相変わらず瞳には色がなく、毛先がちぢれていた。
「ああそれなら、今日は早くに行くらしいですよ。」
俺が口を開こうとしたら有希に先に言われてしまった。
「…………早く?」
……あれ、よく考えてみれば、同じクラスの静乃に同じ言い訳しても、通じなくね?むしろ怪しまれるんじゃね?てか実際怪しまれてね?
「兄さんがそう言っていましたが……あれ、違いましたか?」
おおおおおおい有希いいいい!余計なことををををを!
…いや、静乃ならちょっと考えたら俺に吹き込まれたって理解するか。しかもそう考えると、やつは間違いなく俺を弄りにくるっ…!『ぼくはそんな話は聞いていないなあ。クラスの用事も怜は無いはずだし。遼が何か隠しているんじゃないか?人には言えない何かをさ。昨日の晩とか様子が変じゃなかったか?』『言われてみれば…兄さん!いったいこれはどういうことですか!』ってなるのが目に浮かぶっ…!頼む、それだけはまじで勘弁。何でもするんで、許してください!
「…………ああ、そういやそんな話をしていた気がする。」
って、あれ?なんか話を合わせてきたぞ?
思わず驚いてしまい、静乃の方を見てしまう。すると、彼女は不敵な笑みを浮かべ、『ぼくに感謝しろよ?後でいじり倒してやるから覚悟しろよ?』と言わんばかりであった。
「ほえ~静乃さんでも忘れることってあるんですね~。完全超人ってわけでもないんですね~」
いやいや、これ、おそらく演技だからな?てか完璧超人って思ってたのかい。
学校に到着後、階段にて有希とわかれた。そして何事もなかったかのように階段を上がろうとした時、
「……で、さっきのあれはなんなの?」
…やっぱり気づいていたのね。
「ふぇえ、いったい何の事いってるかわかんないよぉ…」
俺はふざけてとぼけてみると、その態度にあからさまに顔をしかめ、そして…何もしてこなかった。蹴りがくるかとビクビクしていたが、逆にこれはこれで気持ち悪い。…って、俺は決して蹴ってもらいたくてこんなことしたわけじゃないぞ?ついやっちゃった時に蹴られるかもって気づいたんだよ。
「………ごめん、調子こきました。」
「ぼくは謝罪を求めているわけではないんだけど。」
「じゃ、じゃあどうしろと!」
「ねえ、いつまで惚けてんの?まさかぼくが言いたいことがわからないわけじゃないよね?」
「…そっすね。」
「………まあいいや。じゃあ聞かせてもらうけど、昨日怜と何があった?」
やっぱり確信していたのか。
「………ごめんそれは言い難い。」
「まあ、ぼくも無理に聞きたいわけじゃない。でもま、何かはあったんだな。」
「…ああ。10時頃からちょっと怜と出かけててな。そこでちょっと揉めちゃって。」
「…………え?10時半?」
静乃はやけに驚いてこちらをみていた。鳩が豆鉄砲をくらったような顔とでもいったらいいのかな。腐った目つきに少し生気が戻った気がした。…そんな驚くこと?
「……ふぅん。」
相槌し、静乃は前を向き階段を登り始めた。それに続くように、俺も階段を登り始めた。…あの間は何だったのだろう。
階段を登り切り、教室へと足を進めていた時、ふと静乃がこちらに振り返った。
「そういや、ちゃんと待ち合わせ時間よりは早くについたの?怜のこと待たせてない?遼のことだから時間ぴったりについたんじゃない?」
「なんだそんなことか。大丈夫大丈夫、家が隣だったことが救いだったぜ。変に駅前で待ち合わせとかするわけないじゃん。勿論、家の前から一緒にいったゾ」
「………そっか、それもそうだよね。」
彼女はくるりと前を向き、足を進めた。
教室に怜はいなかった。HRが始まっても来ることはなかった。
了