7月23日 木曜
「学力テスト?」
季節は夏休み直前の夏、休みに浮き足立つものもいれば、授業がなくて残念だと捉える珍しい人もいる。俺は前者だ。休みなら一日中ゲーム作ったりエロゲしたりできるからな。しかし、浮足立っている人たちはすぐに足を地につけ、どころか、机に突っ伏してうなだれ始める。……そうだ、何事もなく休みにさせてくれるほど教師たちは甘くない。そこで課されるのがこの学力テスト。期末考査と違うのは、成績に反映はされないことと、アホみたいに難しいこと。平均点が35点とかいう……。このテストは、自分の偏差値は全国的に見てどの程度なのか、大学合格ラインはどこかなど、より入試に特化した、この学校独自のテストである。過去の先輩方の膨大なデータをもととしてるので、恐ろしいくらいあたる。大学受験なんてどうでもいいと考えている人にとってはこのテストは面倒極まりないなのだが、そんな人はこの学校には1割もいないので、皆必死とならざるを得ない。嫌々ながらもね。あと、生徒のやる気を焚きつけるためか、上位者は公表されたりもする。教科、学年順位は印刷されて皆に配られるのだが、全学年含めた校内偏差値は張り出されるもんだから一部の上位層は物凄くやる気になる。一年生は上級生を押しのけようとして、上級生は下級生に負けないように。ちなみに俺はいつもプリントに載ったり載らなかったりしている。………そういや、数日前に恋人作りに真剣に取り組もうと思ったが、テストもあったので、ひとまずそれは置いてあるだけなのであり、決して頭の片隅に追いやったりなんてしていない。ほんとだぞ。
「そうそう、面倒くさいよなあ。死ぬほど難しいし、でもかといって対策せずに挑んで泣きたくないし。」
「対策必要なほどおかしいレベルなの?」
怜は単なる好奇心で静乃にそう聞いてきた。静乃はその難しさを知っているから、軽く怜に同情するようにして話した。……あのおぞましさをしらないからこうも平然としていられるんだ、ぼくにもそんなころあったなあ、一年の時に………みたいな感じですかね?
「うん。英語なんかは一定点は単語帳から出たりするから、そこをとらなくちゃいけないのさ。国語も古文はそうだね。数学は………未習範囲が出ないということだけで、既習は全てだね。」
「静乃はいつもどのくらいっとっているの?」
「ぼく?ええと、遼に勝つか勝たないかだから……まあ載るか載らないかの瀬戸際くらい。過去最高は学年15位。」
「え?お前そんな上だった時あんの?」
「一年の時にね。そういう遼は?」
「…………17位」
「涙拭けよ。」
静乃は俺を嘲笑い…いや、鼻で普通に笑ってきた。くっそうちょっと俺より順位高いからって調子こきやがって……今に見てやがれ。
「二位差なんて差というものでもないだろォ。」
「ふうん、どちらにしろどちらもすごく取ってるのね……カイジや刹那は?」
「俺はっ…………」
そう言ってカイジはピースした。
「え?下から二番目?惜しいじゃない。あと一つ行けば一番になれるわよ!」
「上から二位と露ほども思ってないのね……ある意味カイジは信用されてるのな……」
「くっ……!」
「私は無難な順位ですね。毎回毎回100番なんですよ。」
「ある意味才能だよなあ………」
無難な順位だと刹那は答えているのだが、実は100番は悪くない数字である。100番なら普通のペースで勉強していったら、千葉大や横浜市大とかの合格レベルの標準に達すると考えてよいからだ。ちなみに、17位をコンスタントにとりつづけられる学力なら阪大や京大を目指せる。………もっとも、俺はまぐれでとったものなので、今はだいぶ順位は落した。まあこのペースなら東北大に挑戦してみるか北大で堅実に行くかといったところか。
「まあともかく、近々そのテストがあるんだが……怜なら実際のところ理数だけなら載りそうだよな。考査でも愕然としたもの。普通理数で満点なんてとれるのか?」
「あああれね…………いや、煽るつもりは全くないのだけれど、むしろあの内容で満点近く取れないのはちょっと……」
「ほほう………言いますなあ………まあ俺も理数は3教科合わせて1ミスずつだけど!」
「……無駄に強がらなくても……勝てない的に対してそんなこと言っても哀れなだけだよ。言ってて悲しくならない?」
「そのセリフは俺に点数勝ってからいって欲しいなあ静乃さんよぉ。あれれ?確か合計点が………俺よりマイナス20位じゃあありませんでしたっけ?」
「………理数はお前に勝てないって諦めてるから。それにぼくを煽りたいなら全部の合計点で勝ってからにしてくれない?」
「………あれは科目選択の差だ。同じ土俵に立ってないんだから仕方ないだろ。………じゃあそこまで言うなら今度の学テの点でもかけるか?」
「………勝負したところでぼくのメリットないし。」
「お?おお?散々人を煽った挙句勝負となると逃げるのか?おいおいそりゃあないぜ。でも、そうだな………俺が負けたらなんでも言うこと聞いてやるよ?」
「…………ん?」
「………何でもは言い過ぎた。」
「なんでもするっていったよね?じゃあ仕方ないから受けてあげるよ。ぼくも公序良俗に反しない程度ならなんでもしてあげる。」
「そうやって予防線張って……まあいいや。怜も勝負しようず。条件は俺らと同じで。」
「……そのまえに聞きたいことが。全体の点数配分ってどうなってるの?」
「ん?ああ……今度のやつは国数英が200ずつ。理科は各100だな。計800満点。どんなにできるやつでも合計点は700は越えないな。600越えても東大圏内。ましてや700越えるんだったら鼻くそほじりながらでも受かるレベルだな。」
「……なるほど。わかったわ。折角なのでやってみようかしら。」
テスト当日。その日まで俺はみっちり勉強した。それなりに自信もあった。いざ受けてみると、難しすぎてぶったまげそうになったが、なんとかくらいつけた。おそらく6割いっただろう。英語は半分で、国語は4割だとは思うが。手応えのほどを聞いてみたところ、静乃はいつも通りといい、怜はコメントを控えた。きっと怜はできなさすぎて何も言いたくないんだな。まったく、哀れなことだ。理数はお任せあれみたいなこと言っておきながら、なんと不甲斐ない。
そうやって上から怜を見下していた俺が実は見下されていて、どころか崖から蹴り落とされていたと知ったのは、夏休み明け初日の授業でのことであった。
中河刹那…ツインテ白ニーソで会長と静乃LOVE。髪につけているヘアピンの色で性格が変わる。異性から人気が高いが、本人はそれが嫌で、遼とカイジが魔除けとなって男を寄り付かせないようにしている。