7月29日 水曜
照りつける日差しは相変わらず燦々と降り注ぎ、疎ましく思ってしまうのはいつもなのだが、今日に限ってはその暑さはむしろ好都合。なんせ…
「夏だ!水着だ!プールだ!」
そう、今日は待ちに待った新設のアミューズメントパークに行く日なのである。部長からただ券もらってから早2週間、最初は乗り気じゃかったが、拝めるものがな……
「くっ……!この日のために昨日抜きまくっておいてよかったぜ……!あいつらの前で勃ちっぱなしになったもんなら……!」
「おいおい、それは大丈夫なのか?フラフラなんじゃないのか?逆に心配になるぞ。」
カイジが涙を流しながら喜んでいるのを見て、うんうん、と俺は頷き、朱鳥は心配をしていた。会長や刹那の水着を見て勃っちゃったら空気が悪くなるどころじゃない。俺はまだ警察のお世話にはなりたくないんじゃあ。だから俺も(たぶんカイジほどではないにしろ)抜いた。
「少年の…水着…フフっ…」
「おいハム、間違っても追いかけまわしたりはするなよ?……まあ萩原のたわわなものを見られると思うとそそられるのはわかるがな…」
ハムと朱鳥が不敵な笑みを浮かべていた。わかる、わかるぞその気持ち…。やつのおっぱいはマジででかいからな。まあ、昔から見てるからということであまり性欲は掻き立てられないが…たまにクラスの男どもがあいつの話をしてる時、ふとムラムラしてしまうんだ。
…なんてひどい話をしている現在、俺ら男四人はアミューズメントパーク前でたむろしている。人が多いから、早めに集まって目印になろうということである。実際、四人それぞれがそれぞれを見つけるのに時間がかかったから、女性陣がバラバラに来た時はさらに時間がかかるだろう。もっとも、女性陣はバラバラで来るのか、それとも集団で来るのかは知らないが。今の俺らは完全な思いつきで動いているからな。
「おーい遼ー!」
俺を呼ぶ声が前方から聞こえてきた。目を凝らしてよく見ると、怜や静乃、会長に…って、全員いるやんけ。
「お待たせしました。」
「すみません待たせてしまって。」
「いえいえ会長!そんなことはありません!」
「俺らは今!」
「まさにちょうど!」
「「「きたとこですから!!!」」」
ハム以外の3人が息ぴったりに、しかも謎のポーズを取っていたので、全員が笑っていた。部長と有希は指差して、柄谷と会長はクスッと、静乃と刹那と怜は腹を抱えて笑っていた。ーーよし、打ち合わせ通りに事が進んだな!朱鳥の提案もやるじゃないか。
「ではまあ茶番はさておき、行くか。」
朱鳥はそういうと先陣を切って巨大アミューズメントパークへと足を向けた。俺らもそれについていった。今日は楽しい1日になりそうだな!
「いらっしゃいませ。」
「すみません、この券を使いたいのですが…」
朱鳥が先陣切ったものはいいものの、奴はタダ券を持っていなかったので、結局部長がやりとりすることに…なんともなさけない。
「かしこまりました。それで、当テーマパークのプールなのですが、利用なさる時はフロントまでおこしください。貴重品を管理するためのキーをお渡ししますので。」
店員がそう告げると、朱鳥はこちら側に振り向いた。
「どうする?先にプールに行く?」
「うーん、そのほうがいいんじゃない?先に入って程よく疲れた後、のんびりしたいし。」
「いや、それは静乃だけなのでは…まあいいです。皆さんはどう思いますか?」
刹那がそう言うと、皆反対意見は特に述べることはなく、頷いた。
「では、今から利用します。」
「かしこまりました。では、こちらをどうぞ。」
そういって店員が渡してきたのはゴム製の腕輪である。
「こちらはフリーパスの目印となる腕輪になります。これを身につけていれば、すべてのアトラクションが無料で楽しめますので、ご着用お願いします。くれぐれも、落とさないようにお願いします。」
俺らは言われるがままにこの腕輪をつけた。なるほど、水に濡れても大丈夫なようにゴム製なんだな。
「じゃあ、それで行こう!」
俺の提案に誰も反対はせず、そのまま午前はプールに直行することになった。…プールにケータイは持ち込めないし、目に焼き付けなきゃ…
野郎四人とカトル先輩は更衣室に向かい、各々水着に着替える。カトル先輩の肌は驚きの白さで、思わず見とれてしまった。
「カトルさんの肌すっげー綺麗っすね。日焼けで大変なことになりそう。海じゃなくてプールでよかったっすね!」
「そうなんだよ朱鳥君。…まあでも、この肌をさらすのはあまり好きではないから、上にこれを着るんだけどね。」
そういってカトル先輩は、ノースリーブのパーカーを羽織った。水に濡れても大丈夫なものらしい。白い肌、つやのよさそうな腕に俺は性別を忘れ見惚れてしまい、そんな自分に気付き、頭を振った。
「それに比べてハムといったら……」
朱鳥はハムへと視線を向ける。…うん、言いたいことはわかるよ。布面積がね、やばいもんね。
「ブーメランっ…パンツっ……俺には真似できないぜっ……!」
そう、三角形で、布面積の最も少ないあの水着を恥じることなく穿いているのだ。堂々と仁王立ちしている姿は惚れ惚れしてしまう。
「でも、似合ってるんだよなあ。ハムって細マッチョだし、何もおかしくない。」
「私の趣味はプログラミングと筋トレだからな」
なんだよそのインドア系男子…
「俺らの体は…ガリガリではないが………ハムと比べるとっ……」
カイジの言おうとしていることはわかる。平たく言えば俺ら3人は表準男子なのだ。
「……まあ、表準なだけいいじゃねえか。ビザデブとかじゃないんだしな。それより、準備できたんなら行こうぜ。女子たちが散り散りになる前に拝んでおきたいぜ。」
「ほんとこれっ……!プールに来て男女が睦まじく遊ぶのは漫画の世界がリア充しかありえないっ……!現実は一緒に行ったとしても……男子は男子、女子は女子で遊ぶのが関の山………!」
「それな。」
哀しい現実を再確認して、俺らは更衣室を出て巨大プールへと向かった。
女子の着替えをただ待ち続けるのはそわそわして仕方なく、カトル先輩とハム以外の3人は周囲の女性の品定めをしていた。カトル先輩はベンチに座っていて、ハムは何も考えず近くのプールで泳いでいた。
「あのおっぱいはどうよ?」
「舐めまわしたいところだ」
「右に同じっ……!」
「じゃああのロリっ娘は?」
「ロリのくせに巨乳とかおかしいでしょ。アンバランスで美しさに欠けるな。」
「飛鳥っ……!お前はわかっていないっ……!だからこそいいんだろうがっ……!」
側から見ればなんてゲスい会話をしているんだと思う。当人の耳に入ったら通報されそうだ。
「興奮するのはいいけど行動にうつすなよ…?」
「ははっまさか……ん?」
男のものではないその声を不審に思って、3人が一斉に振り返ると、そこには着替え終わった静乃と刹那がいて…
「お、おう、当たり前じゃないか!一体何を言っているんだ静乃は」
「…え?なんで動揺してんの?え?まさか本気?まじひくわー。一回死んできたら?」
…違うんだよ静乃。おれが動揺してるのは底が理由じゃなくてその……君のその豊満なおもちが…
左右を見渡すと、カイジや飛鳥も俺と似たような雰囲気であった。…感じることは皆同じなんだな。
静乃の水着はいわゆるパレオというもので、腰に大きい布を巻きつけている。白を基調として、ハイビスカスが散りばめられた控えめにも鮮やかさを取り入れたものだ。一方水着本体は真っ白。髪の色が灰色なことから視線をまずパレオに向けさせるような…そんなカラーバリエーションである。あまり視線を集めたくない、目立ちたくないという思いが滲み出ているのがわかる。ただ……その豊満なバストが自己主張しているから、その作戦は失敗に終わりそうだがな…。いまの彼女は腕組みしてこちらを呆れた眼差しで見ているのだが、腕におっぱいが乗っている。乗るってどういうことだ乗るってよ。
刹那の方は白と青を使った鮮やかなビキニ。静乃よりほんの少し布面積が少ない。控えめのおっぱいであったことが救いだろうか。もし山盛りおもちであったら、ハムは今頃…なんて思っているとプールサイドからハムが上がってきた。引き締まった体に水が滴り、ブーメランパンツがてかる。濡れた髪をかきあげるその様も素晴らしいものがあり、周囲の女性客の目を一瞬奪ってしまうほどであった。
「む?少年?少年ではないか!…今日の君は本当に素敵だ。素敵すぎて直視できない。」
…現段階でこれなのだ、さらにてんこ盛りおもちだと…
「…いや、今のあなたも十分目に毒というか…ねえ静乃?」
「…ハムってこんなにムキムキだっけ?」
静乃はたまらず目をしかめていた。
「なんでも筋トレが趣味だそうだよ。きいたところによると」
「だってさ刹那。」
「そこで私に振るんですか!?」
静乃はびくついている刹那を見てにやにやしながら
「え?だってこの前『細みの体で筋肉質ってやっぱり最高ですよね!』って言ってたじゃん。」
といった。相も変わらず転換が早いこと早いこと。
「言ってませんよ!ねつ造しないでください!」
「よかったねハム、刹那の好みらしいしちょっと二人で遊んで来たら?」
……なんかやたらグイグイ来るね静乃。こんなに積極的にあいつらをくっつけようとしてたっけ?むしろ刹那を男の魔の手から守ろうとするタイプじゃないっけか。
「そうか!ではゆくぞ少年!」
ハムは嬉々として刹那の手を取り、早々とこの場から去って行った。刹那はそれを振り切る間もなく連れてかれて行った。
「……萩原って刹那とハムをくっつけようとしてるの?」
不審に思った朱鳥は静乃にそう聞いた。なるほど、変に思ったのは俺だけじゃなかったみたいだ。
「いやなに、ぼくと刹那が一緒にいると、ほぼ間違いなく刹那目当ての下心丸出しの輩がきそうじゃない?そうしたらさ、ぼくも巻き込まれるじゃない?それってすっごく面倒くさいことにならない?……ほら、ぼくの水着って泳ぐためでなく水辺にただいるだけみたいなやつじゃん。つまりそういうことさ。じゃ、ぼくは近くのチェアに座ってのんびりするね。」
そういって静乃はサングラスをかけ、俺たちの横を通り過ぎて行った。
「…自分の平穏のためには友をも売るのか…」
俺のつぶやきが聞こえたのか、静乃はこちらを振り向かず手を振ってさっていった。
「……なあっ……遼………朱鳥……………!」
「なんだ、カイジ。」
「いつものレイプ目がサングラスで隠れてしまい………そして近くの椅子に座って優雅にジュースでも飲んでる姿を………想像してみろ………!」
ぽわわんとあたまにその光景を浮かべる。
「「なんて美しいんだっ………」」
むしろあいつ一人になってしまったことで狙われやすくなったのではないかと、満場一致で思ったのであった。