タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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3-3-6 変わる思い

8月12日水曜

 

 また静乃とアミューズメント施設へ行く日が来た。今回もまた駅での待ち合わせ。前回同様、駅まで一緒に行く必要はないだろうとのこと。集合時間の10分前には着いていようと家を出、駅へ向かって歩いていると、ちょうど静乃とバッティングしてしまった。

 

「…おはよう。こんなところで会うつもりはなかったんだけど…」

 

少々バツが悪そうに俺を見る。タイトなダメージジーンズにチュニックを合わせたもので、普段のダウナーさをクールさに転換したような格好で、非常に可愛く見えた。また、瞳の濁りも多少マシになっているようにみえた。それゆえ、思わず彼女から目を逸らしてしまった。

 

「どうせこうなると思ったさ。まあ行こうぜ。」

 

俺は彼女に動揺を悟られないよう、急いで横に並び、歩き始めた。顔を見られないように…

 

 

 

 

 

 駅から降り、目的地へと向かう途中、フードを被った人とすれ違った。街中にはこんなクソ暑い中フードを被る不思議な奴もいるもんだなとふと思った。けれども…

 

「あれ、もしかして萩原先輩ですか?」

 

後ろからなんか声がして振り返ると、例のフードの人が近づいてきた。その人は被っていたフードを脱いでいたので、顔をよく見ると、同じ学校の生徒会1年の神前であることがわかった。静乃と面識があったんだ…あれ、どういうつながりだ?会長と静乃は仲良いから、そういったルートかな?

 

「……いや、人違いじゃないかな。」

 

なぜか嘘をつき、首をかしげる静乃。そんな彼女を、彼はにやけながら見ていた。こんな表情するやつだったのか。無表情を貫くやつなのかと…

 

「………へえ、自分のこと知らないフリですか?いいんですよ、あの事を言っても」

「おやおやドラム君、こんな所で奇遇だね。一体なんの用事で街中まで来たのかな?」

「露骨ですね…」

 

どうやら静乃はこいつに弱みを握られているらしい。一体どんな弱みがあるんだ?どんな関係なんだこいつと静乃は?てかドラム君ってなんだ?

 

「……まあいいです。で、隣の方は……ええっと、国広先輩でしたっけ?」

「あれ、俺のこと覚えてたんだ。数えるほどしか喋ってないからわからないかと…」

「まあその…………会長や萩原先輩の共通の友人ですから……。というか、そんなことより、もしかしてお邪魔でしたか?デートの最中ですよね?」

 

半分本気、半分からかいが混じった顔で俺らを彼は見ていた。否定しようと口を出そうとしたら、タッチの差で

 

「いやいや、そんなんじゃないよ…じゃないよね?」

 

いや静乃さん、なんで疑問形なの?自信持って否定してよ。照れちゃうだろ…

 

「…2人で出かけてはいるけど、それだけさ。君が思うような関係じゃないよ。友達同士で出かけることなんて普通じゃん?」

「……なるほど。」

 

神前は手を顎に当て何か考えているようだ。え?何を考えてるの?てかなんか言い訳じみたこと言っちゃったな。どうしてこんなこと言っちゃったんだろ。

 

「……まあいいです。ではまたどこかのタイミングでよろしくお願いします。デート、楽しんできてください。それでは〜」

 

置き土産を残して彼は去っていった。だからデートじゃないって…ないよね?

俺の頭の中で様々な思考が巡る。1つわかったのは無表情無感情のように思っていた神前は、意外と表情を表に出すということだ。普段のキャラは作っていて、こっちが本性なのだろうか?

 

「まあとりあえずいこっか。」

 

静乃はやや早足で歩く。俺はその半歩後ろついていった。神前の言葉に静乃がどんな表情をしたのかはわからないが、静乃の耳を見ると多少赤みを帯びているように見えた。これは照れなのか、それとも暑さにやられてるだけなのか…

 

 

 

 

 

 目的地に到達して、店員にカップル割を使いたいことを言った。今日受付したのは先週と同じ店員らしい。というのも、その店員が静乃のことを覚えていたからである。馴れ馴れしく話しかけてきたわけではなく、「先週もいらしてましたか?」「ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。」と、至って普通の対応。それゆえ、話はすんなり進んだ。こんなこともあるのだなあと思った瞬間、俺もバイト先の常連くらいは覚えてるなと幾らか共感した。にしても、2回目なのによくもまあ覚えてるものだ。たくさんの人を相手にしてるというのに…

まあ、深く考えることでもないか。

 

「前回SNSに投稿されたと思いますが、今回もよろしくお願いします。」

 

店員に言われた支持はすべて静乃に任せてるのだが・・・・・・こいつ、SNSの何に上げてるんだろう。今思えば、そんなことも知らなかった。

手続きを終えた後、静乃とマッサージルームへ向かう。

 

「そういや、SNSは何に上げてるの?」

 

先ほどふと思った疑問を静乃に聞いたら、

 

「ん?ああ、Twitterに上げてるよ。大丈夫。捨て垢作ってカップル共同垢って事にして、そこに上げたから知り合いには知られてないよ。」

 

とのこと。

 

「なるほど…てかカップル共同垢なんてあんのか。今の時代はどうなっているんだ……。なあ、俺もその垢見ていい?」

「ああ、別にーーーーいや、ダメ。」

 

何故かは知らないが、拒まれてしまった。この口ぶりからして、まずい事を思い出したってところ?

 

「………見せるものがないってのが建前で、本音はスマホを触らせたくないって事。変なところタップされたらやだし。なにせ壊れにくいガラケーをぶっ壊してる乱暴者だからなぁ。」

「いやあれはだな……」

 

事実ケータイを壊したことは否定できない。不慮の事故というわけでもなく、俺の不注意によるもの。何も言えねえ。

 

「よし、じゃあ今日も気持ちよくしてもらうかな!」

 

そこまで見たかったわけでもないし、何よりめんどくさくなって来たから話題をぶった切ることにした。静乃は俺のことをニヤニヤしながら見続けたが、何も言ってこなかった。見られたくなかったのは本当だったのだろう。

 

 

 

 マッサージを受けた後、前回とは違い今回はゲームコーナーに向かった。物足りなさがチラついて、静乃に提案したらこうなった。めんどくさがりの静乃が誘いを断らなかったのは、彼女の中にも物足りなさがあったからなのだろうか。それとも単なる気まぐれなのだろうか。

静乃は俺と一緒に遊ぶよりも、俺のプレイングが見たいとのことで、俺がいつものロボット対戦ゲームをやっている間、ずっと後ろから見てた。俺としても、一緒にやるには色々とレベル差があるから助かってるところはあった。

 

「おお、また勝ったね。初心者狩りして楽しいの?」

「いやいや、相手も強いし。てかそれ下手してもしなくても俺じゃなくて相手を煽ってる事になるからな?」

 

静乃は対戦が終わるたびに俺に話しかけて来た。煽りもあれば、純粋な質問もあって、彼女なりに楽しみを見出しているんだなあと感じた。ただまあ・・・・・・このゲームは連勝すれば次回の対戦も無料でやれる。連続で勝ち続けているため、かなり長い時間楽しめていた。俺は全然まだまだいけるのだが、静乃はどうだろうか。そろそろ飽きてきてるんじゃないかと思って後ろを見たけど―――――その表情からは疲れや飽きは見られなかった。だって何か考え事をしているように腕を組んでいたから・・・

 

「ねえ、ちょっと最後はぼくにやらせてくれない?」

 

静乃はそんなことを提案してきた。やはりそろそろ頃合いか。ただ、今俺のゲームアカウントを使ってるから、負けたらレートは間違いなく下がる。その辺の友達にはやらせたくないが、そんなことを今言うのも野暮なので、明け渡すことにした。

 

「難しいかもしれない。」

「大丈夫、操作は後ろで見て何となくわかったよ。」

 

俺は静乃と場所をチェンジするため立ち上がった。そうして後ろを見ると、先ほどは気づかなかったが、順番待ち以外にギャラリーがいるのがわかった。いつも俺ひとりが遊ぶ分にはこうはならない。だけどこんなことになってるのは・・・なんでだ?

よくわからなかったが、まあそんなことはどうでもいい。今は静乃のプレイを見よう。彼女は確かにキャラを動かすことはできていた。けれどやはり経験の差というか、扱いこなせているわけではなかった。それでも、敵の体力の半分弱を削ったのは健闘だろう。

 

「うーん、負けたけど楽しかったかな。刹那がはまる気持ちが少しわかったかも。」

 

そういって俺に向ける彼女の顔からは、とてもすっきりした表情がみられた。すごく心が晴れやかになった。これはきっと、自分の好きなゲームを楽しんでもらえたからだろう。

 

 

 

 

 ゲーム後は喫茶店に向かった。普通のカップルならプリクラくらいとるのかもしれないが、静乃も俺もカップルじゃないし、静乃は写真があまり好きではないはずなので、話題にすら上がらなかった。喫茶店でお茶した後は家電量販店へ向かった。というのも、静乃が俺のスマホを見かねて「保護カバーつけてないとか正気?また画面破壊するよ?それとも壊しては直しを繰り返したい変態さんですかぁ?」と煽りに煽って、半ば強引に連れていかれたのである。手帳型、ハードケースいろいろあったが・・・

 

「これ、意外と高くない?たかがケースに2千円もすんの?」

「まあそういうものだよ。遼にとっては手帳型より普通のアルミニウムカバーケースがいいんじゃないかな。一番シンプルで使いやすいし。」

「ほーん」

 

おすすめされるまま、俺は赤色のカバーを買い、店を出た。いい時間になっていたので帰路につき、駅へ向かった。

自宅の最寄り駅につき、家へと向かう。日は暮れはじめ、影が伸びていることがわかる。今日のことを振り返ってみる。静乃と一緒にアミューズメント施設へ行き、マッサージを受けゲームしてお茶飲んで電気屋行って帰る。その間他愛もない話をし―――――非常に楽しい時間を過ごせた。俺はそうなんだが・・・・・・静乃も楽しめていたのだろうか?少なくとも曇った表情は見せず、むしろ瞳の濁りがさらになくなっていたように見えたから、マッサージは満足できたはずだ。それに、本当に楽しくないなら目的がすんだら帰ることを提案していたはず。・・・・・・・・・うん。疑心暗鬼にならず、自分を信じよう。

 

「じゃあぼくはこっちなので。」

 

静乃と俺の家の分かれ道まで来た。俺は彼女に手を振って、前へと進んだ。視界の端に静乃がちらりとうつる。振り返ってこちらを見ているように見えた。確認しようと彼女の帰る方向を見ようとしたが、もし俺の勘違いで、逆にそんな俺を彼女がみたら不審がるだろうし、めんどくさくなりそうなのでやめた。どうしてこんなことも考えているんだろう。今までこんなことまで気にしたことはなかった。やっぱり俺の中での彼女の評価は変わりつつあるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遼と別れた後、ふと振り返ってみた。遼を一瞬視界にとらえたが、立ち止まらず進んでいたので、すぐ見えなくなった。なんでぼくはこんなことをしたんだろう。自分のした行動の理由がわからない。無意識であった。

 

「遼への認識は・・・変わらないはずだ・・・・・・・」

 

今も昔も腐れ縁、友達のまま。ただ最近ちょっと話す機会が多いから、変に勘違いしているだけだ。・・・・・・・・・ぼくが異性と“そういう”関係になるのはないだろう。こんな腐り散らして穢れたぼくなんて、遼には申し訳ないさ・・・・・・・・・。

 

 

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