「なんだ、これ。」
「えっと、これは――」
「いやいい、私が説明しよう。」
怜の手の上に乗っていたミクさんは、そこから飛び降りて俺のほうに歩いて――――――――――来ようとしたが、いかんせん、ベッドを上るにはねんどろの体じゃ高すぎたようだった。どんなにジャンプしても届かない。
・・・・・・
なんて可愛いんだ!!!!
でも、いい加減かわいそうというか終わりが見えなさそうなので、俺は無言で手を差し出した。その手にちょこんと乗るしぐさもいちいちかわいいし、もうなんだろうね。小動物を飼いたくなる人の気持ちがわかるね。
ミクさんは一つ咳ばらいをした後
「えーでは気を取り直して、この現象について説明するかな。昨日、自分の事を神だという人が君の意識に干渉してきたことは覚えているね?」
「ええまあ・・・」
「それと似たようなものだ。今回は意識に干渉ではなく、物体に憑依だけれどもね。」
「・・・・・・」
つまり、ミクさんがしゃべったり、動き回っていたのは実は男のしぐさであり、俺はそれに萌えていたと。
・・・・・・いやこれはこれでありか?可愛さに大切なのは外見!おっさんが中身でも、表面が美少女なら、かわいいと思うだけならセーフさ。
「いやはや、意識に干渉するのには結構準備とかが大変なんだよ。こっちの方はコストは低いし。いいことづくし。ただ、ほかの人の協力が必要なのが難点かな」
藤田ボイスなのは最大の謎だけれども・・・・・・まあいいか。
「んで、なんであなたがわざわざこんなことを?」
「怜がサポートするとは言ったものの、つきっきりでできるわけではない。性別の問題もあるしね。だから、それを解決するために私がこうして物体に憑依しているのだよ。これなら、君への助言をしやすくなる。だから、半年程よろしく頼む。」
「ああはい、わかりました。」
・・・・・・あれ?
「てことは、あなたは俺につきっきりなの?」
「まあそうなるな。」
「学校とかにもついてくるつもり?」
「あたりまえじゃないか。」
「・・・フィギュア、壊れそうな気が・・・・・・」
「・・・ああ、それは大丈夫。私が憑依しているものは車にはねられでもしない限り壊れないほど強化されるからそこは安心していいぞ。汚れたりしても、憑依する前の材質とか全部無視するから洗っても別に何の問題もない。」
「・・・・・・ならよし!」
おお!オラ、フィギュアが壊れないってことを知ったらテンションあがってきたゾ!なんかいろいろ突っ込みどころがあったけど、全部スルーするゾ!
ミクさんは話し疲れたのか俺の手から飛び降りて怜のカバンと近くまでより、がさがさ中をまさぐっている。そして一つのカプセルを持ってきて、怜の力を借りてねんどろの棚に上り(このとき、かざられていたねんどろはどかされている)
「ここら辺でいいかな。」
カプセルを開けると、たちまちミニチュアの部屋が出来上がった。どういった理屈なのかを考えるのはやめたけど、この部屋、DIVAルームにそっくりである。
「ここ、私の寝床にするから、そこんとこよろしく。」
「・・・」
たとえば、カイジが自分のフィギュアを持参して、「ここに俺の嫁たちを飾らせてもらうっ・・・!」なんて言ったのなら「てめえ!そこは俺のねんどろコレクションなんだ!勝手にいじくってんじゃねえ!つか自分の部屋でやりやがれ!」と激怒するところだが、
ミクさんが動き回っている(中身男だけど)
藤田ボイスでしゃべっている(中身男だけど)
そんな特異な状況なので
「もちろんかまわないぜ☆」
親指を立てて、そう答しまったのだった。
いろいろなことがあったので、時刻はもう9時半になろうとしていた。そういや、俺まだ何も食ってなかったな。いい加減飯を食いたいなぁ。でも料理できないんだよなあ・・・
「なんか思いつめてるようだけど、どうかした?」
「いや、そういやまだ飯食ってなかったなってさ」
「そういや、私もまだだったわ。ずっとあなたの事外で待ってたもの。」
「ちなみに、どのくらい?」
「うーん、30分以上?」
「・・・すんません・・・」
「いや、別にもう気にしてないし大丈夫よ。それよりお腹がすいたわ・・・・・・・」
「・・・なら、ここで食べていくか?あいにく誰もいないわけだし。」
「・・・気持ちは嬉しいんだけど、あなたって料理できるの?カップめんとかレトルトとかっていうオチはやめてよ?」
「うっ・・・・・・すまん、その通りだ。」
怜は軽く落胆していた。が、
「・・・なんなら、私が作っちゃっていい?」
「え?マジすか?」
「いいわよ。私も早くご飯食べたいし。」
「ちなみに、料理の腕は?」
「あなたよりは上手よ」
「じゃあ、期待して待ってる。」
「では、リビングに向かうとしよう。」
「って、お前も食べるつもりなの?」
「憑依はカロリーを必要とするんだよ」
いや、当たり前だろ見たいな感じで言われてもなぁ。しかもフィギュアが食べても、本体が食べなきゃ意味ないんじゃ・・・・・・・・・まあいいか、考えるだけ無駄か。フィギュアがしゃべってるだけでもとんでも現象なんだ。現代の知識じゃ考えもつかないようなことが起こっているのだろう。
いうだけあって、怜の料理はおいしかった。あんまり時間がなかったからと言って、簡単なラーメンだったのにもかかわらず美味しいってどういうことなの?
あと、ミクさんが怜の作ったラーメンを美味しそうにずるずるすすってた光景には萌えた。
「告白券は何枚か置いておくから、好きな時に使っていいわよ。」
「了解した。」
といっても、そんな面倒くさいもの使う気にはなれそうにないのだが―――――――――まあ黙っておこう。
「さて・・・と。じゃあ、私は帰るわね。」
雨は勢いを止めることなく降り続いている。そして、もう外は真っ暗。これは、送ってやるべきだよな。男として。
「夜だし雨だし、家まで送るよ。」
俺がそういうと怜は、手を顎に当てて考える仕草をした後、不自然にすら見える笑顔を――――――そう、静乃が俺をはめようとしてきているときのような表情を向けてきた。
「じゃあ・・・・・・お願いしちゃおうかな。」
いやまさか、そんなことは、出会ってすぐいじってくるなんてないだろうと俺は思っていた。
そう思っていた俺であったが
「・・・・・・。」
怜を家まで送ろうとした。その選択は間違いではない。だが、この場合はどうなのだろう。
怜の家が俺の家の真横だったのだ。
「あははっごめんごめん。ちょっとからかってみたかったんだよ~。」
「はぁ・・・・・・」
こいつもまさか、静乃と同じ人種なのか?俺はどうしてこうもいじられやすい体質なのだろうか。
深い、深いため息が口からこぼれた。
「まあまあ、そんなに落ちこまないで。その・・・ね、さっきの発言は素直にうれしかったわ。こんな感じで告白券もうまいことつかって頂戴ね。」
「そりゃどうも。告白券はまあ、時間があればね。」
そんな時間、果たしてやってくるのだろうか・・・
「じゃあ、また明日ね~」
「おう、また明日。」
怜が家に入っていくのを見送った後、俺は自分の家に戻った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って、また明日?