8月13日
先日は遼と出かけ、今日の晩は会長たちとセッション…けれども、その前にやる事がある。お盆なので、先祖の墓参りだ。萩原家の墓は家の近くにあるため、午前に参って昼までに終わる。昼は出前を取って家族で食べるのが恒例となっている。ぼくの伯母と母はとても仲が良く、墓参りも一緒にいく。そして数年前からぼくの伯母の娘…すなわち従姉が結婚したから、今はその夫である千歳先生もといハルキさんも交えての行事となっていた。
「それにしても静乃ちゃん、数週間ぶりにあったけど結構変わったね。」
帰宅後ハルキさんはそんなことを言ってきた。…実はその話題、今日が3回目である。初めは伯母に朝あった時、次にお墓のある場所に遅れてきたぼくの従姉、そして帰宅後の今。…なんでみんな揃いも揃ってぼくが1人になった時に話しかけてくるんだ。
「……気のせいですよ」
まあでも、言われて悪い気はしない。しないけど、こうも繰り返されるとうざったくもなる。
「ハルキさんは相変わらずお変わりないですね。ああでも、今は学校にいるより幸せそうに見えます。となりに奥さんがいるからですかね?幸せなことですねぇ」
「……まあ否定はしないさ。」
微笑むハルキさんは間違いなく幸せそうに見えた。ぼくの従姉は間違いなく幸せをつかんでいる。ぼくもいつかは、こうなるのだろうか。
「あら久しぶり静乃ちゃーーーーあれ!?なんかすごい爽やかオーラ出てる!」
夜になり、セッションをしようと会長行きつけのスタジオに入ると、すでに準備していた宮永先輩がそこにいた。プール以来会えてなかったので、本当に久しぶりなわけだが、宮永先輩は変わりなくとても元気であった。そして開口一番のセリフがこれである。今日4回目だ。また、神前と会長も既に準備万端。ぼくが最後の到着だ。
「……気のせいじゃないですか?」
「いやいや、瞳の輝きが全然違うよ!ねえ結衣に神前?」
宮永先輩は神前と会長に質問を投げかける。神前と会長はニヤつきながらこちらを見た。……百歩譲って神前は昨日出くわしてしまったからわかる。けれど緋色会長はなぜだ?
「……昨日男の人と出かけてからじゃないですかね?」
「マ?静乃ちゃんやるねえ!相手は誰?同じ学校の人?やだなあもう隠さなくてもいいじゃんねぇ!」
興味津々、目をキラキラさせてこちらに話しかけてくる宮永さん。そんな目でぼくを見ないで欲しい…
「…………まあ隣に誰かいたのかもしれませんが、ぼくが元気に見えるのはそいつのおかげではないですね。間違いなく。……昨日あのアミューズメントパークのマッサージを受けにいったんですよ。すごく良かったんではまっちゃいました。」
「なんてこといってますけど、昨日自分がばったり出くわした時はなかなか楽しそうにしてましたよ。国広先輩と。」
「……なんだ国広か。ならまあ……そうねぇ……」
あれほどウキウキしていた宮永先輩は急に興味をなくし元いたところに戻っていった。そんな姿を、会長はニヤつきながらみていた。だからなんで会長は思わせぶりな態度をしてるんだ?
「腐れ縁の国広には可能性はないね。大方互いの利益のために止むを得ずといったところだろうねえ。」
「……そうなのですか?」
「うん。だって小学生からのつるみでしょ?もしそんな中なら今頃とっくにくっついてるだろうし。けどそうじゃないならいい友達なままだろうねえ。あとあいつは気持ち悪いからないでしょ。ないない。いいやつだけどね。」
「……はいはい、無駄口たたいてないでさっさとやりますよ。龍華、いいですか?静乃さんも迷惑でしょうし。」
会長はにやつきながらもフォローに入ってくれた。・・・・・・そうさ何のためにここに来たのさ。さっさとやるぞ。
ぼくはケースから楽器を取り出した。ちょっと乱暴にケースを置いてしまったからか、大きな音が出てしまった。いつもならこんなことないのに、どうして・・・・・・
そのあとは何事もなく練習が進んだ。あえて気になった点を挙げるなら、神前が時折不敵な笑みを浮かべていたのと、会長が生暖かい目でこちらを見ていたことだろうか。二人の真意はわからない。でも聞くとだるい展開になりそうだったから。何も聞かないことにした。