8月18日 火曜
~怜side~
夏休み最終日、宿題も片付け終えた私はファイリングされたプリントに記載されている数字の羅列を眺めていた。
この夏、私は遼にあまり干渉して来なかった。唯一大きくしたといえば、7月下旬にアミューズメントパークに行ったときだろう。静乃がプールサイドで一人きりになった時、探しに行くか行かないか迷っていた遼の背中を押してあげただけ。けれどそれ以来、好感度チェッカーは上がり調子である。ここが分岐点だったのだろう。この日以来、ある女性の数値は上昇を続けた。竜崎さんに聞いて、上がった日に遼は何をしていたかを尋ねると、静乃と遊びに行っていたとのこと。もう確定だ。特に問題がなければ、遼と静乃は―――――
いや、安心するのはまだ早い。確かに遼に説明した目的である≪彼女を作ること≫というのが達成されたとしても、私の真の目的が達成されたかどうかは別問題だ。この目的は手段を択ばなければ容易く達成できる。しかしそれは、気が進む話ではない。それに、それができていればこの世界にこんな長居はしない。遼に選択肢は山ほどあるのだろうが、私には一つしかないんだ。一つしか選んじゃいけないんだ。
部屋から出、リビングに行くとそこには遼から借りたアニメのDVD―――タイムリープ物のがあった。暇つぶしに借りたものであったが、意外と面白くて見終えてしまった。
≪世界は多数の世界線から構成されている。我々は、そのうちの一つの世界線しか観測していない。けれど、今どの世界線にいるかの証明は、我々が他の世界線を観測できないからできない。≫
この世界の娯楽はなんとも面白いものがあるなと感心した。けれど、その論にすがりたい。我々の世界の解釈では
≪世界はあらゆる選択から得られた結果をノーマライズしたものであるから、変えようとしても収束する。むしろ、変えようとしたことも考慮されて世界は過去未来を作り上げている≫
というのが通説だ。けど、この論はあくまで同一時間における話だ。もし仮に、別の時間軸の人間が世界に干渉したら?それも踏まえてのノーマライズされた世界なのだろうか。証明はできていない。実験をして、結果を出し、それをもとに考察をする。それを行わないと判定できない。わかっていることは、“因果を取り除けば、そこから派生する事件は起きない”ということだ。だから――――――もしわれわれがどんな選択をしても世界はノーマライズされるのであれば―――――私の封印された第二の選択肢、因果の一つである彼、
≪国広遼をこの世界から抹消すること≫
これを行わなければならないのだろうか。
了