タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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4-1-2 錯綜する思惑

 波乱の成績発表後、教室に戻ると怜は一躍有名人と化していた。そりゃあ、外見の可愛さと、全校生徒相手を煽った畜生ぶりが合わされば、いい意味でもあるい意味でも注目を受けてしまうであろう。けれど、幸い悪い意味でとられることはなかった。むしろ、高難易度の問題でいびっていた先生たちに一矢報いたわけだから、英雄扱いである。ジャンヌダルクかな?

成績そのものは、英語が100点、国語が10点であり、国語が大きく足を引っ張ったものの2年生の中で3位。ずいぶんとがった成績だった。ちなみに、俺は自分が思っていた以上によくなくて、静乃に負けた。当然、彼女はそのことを猛烈に煽ってきた。

 

「じゃあ遼になにしてもらおうかなあ~~~~~」

「は?何の話だよおい。」

 

そういうと静乃はスマホを取り出し俺に向けてあるボイスを再生させた。

 

『お?おお?散々人を煽った挙句勝負となると逃げるのか?おいおいそりゃあないぜ。でも、そうだな………俺が負けたらなんでも言うこと聞いてやるよ?』

 

「それは・・・・・・・まぎれもなく俺の声・・・・・・」

「どうしようかなあ~~~~~~~~~こんなにぼくのこと煽っていたくせに負けるんだもんなあ~~~~~~~~~~~」

 

腕を組み、椅子に座って縮こまっている俺の周りをぐるぐる回る静乃。どうでもいいが、組んだ腕におっぱいが乗っていた。でかい。

 

「とりあえずこのお願いは大切にとっておこうかなあ~~~~~~~~~うん。じゃあ、遼、ヨ・ロ・シ・ク・ネ」

 

腕をひらひらさせて、静乃は教室を後にした。

 

「あんなに邪悪で楽しそうな静乃、久しぶりに見ましたね・・・・・・」

 

刹那が俺の横で軽く引いていた。確かに俺も同じ感想だ。楽しそうだなって。煽られたことはうざいけど、楽しそうならまあ・・・・・・いいか。

 

 

 

 

 

 昼休み、俺は飯を食っているとクラスメイトの声が聞こえてきた。

 

「国広!後輩がなんか呼んでるよ!」

 

ん?有希か?それとも柄谷か?と俺は教室の入り口の方を見ると、そこにはそのだれでもなく、フードを被った一人の男・・・神前がいたのである。

 

「あれ、神前君なんでこんなところに来てどうして遼を呼んでいるんだろう。何か接点あったっけ?・・・・・・まさかお前、男にまで手を出すような人だったの。マジ引くわ。でも安心した。男が好きなら刹那にも手を出さないもんね。」

 

相変わらずボロクソに俺をけなし、静乃は椅子を引いて俺からあからさまに距離をとった。一方、刹那は彼にひらひらと手を振ると、彼は軽く会釈をした。

 

「ちげーよやめろ俺をホモ犯罪者にするんじゃない。接点はなあ・・・・・・あれ?なんだ?まあ、待たせても悪いし今行こう。」

「私も行きます。私にも関係のある話なので。」

「「え?そうなの?」」

 

俺と静乃はほぼ同時にそう発してしまった。刹那は何か知っている?

食べかけの弁当を放置して、俺と刹那は彼の元に行った。

 

 

 

 

 

 彼は手招きして俺を人気のないところに連れて行き、そこでようやっと口を開いた。

 

「・・・・・・自分と今日の午後、お茶してくれませんか?」

 

・・・・・・え?

 

「はっはっはー俺とデートか?パンチの効いたジョークかな?」

「・・・・・・・・・」

 

・・・・・・え?なんでモジモジしてるの?なんで頬を赤らめてるの?え?ほんとに?お前ってホモなの?

俺は動揺を抑えきれなくて、目が泳いでしまった。

 

「いや、あなたのことが好きなわけではないんです。てかなんで照れてるんですか。本当にそっちのケがあるんですか?気持ち悪いんでやめてください。」

 

刹那がバッサリいってくれたおかげで、なんとか正常に戻ることができた。

 

「あっはい。」

 

じゃあ意味深な態度をとるのはやめて欲しかったですねぇ・・・

なんて、人のせいにしているが俺も動揺してしまったので問題はあるのは否定できなかった。

 

「ただその・・・・・・誘って欲しい人がいて・・・・・・」

 

あーそういう。つまりダシってことですね。

 

「・・・・・・あのなあ、そういうのは自分で誘うものじゃあ――――――――」

「こちらは会長と刹那さんを呼びます。既に了解は得てます。」

「ないの――――――――え?会長?」

 

そういやこいつ、生徒会役員か。会長を登場させてまで俺からとある人と会いたいのか・・・・・・・・・・・・

静乃と二人で出かけた時、やたらこいつは静乃と仲が良かった。まさか・・・・・・いやでも・・・・・・ちがったらあれだし・・・・・・・

 

「はい。」

「・・・・・・で、誰を呼べばいい?」

 

おれはこいつのお願いを聞いてやることにした。

 

「変わり身早いですね・・・・・・まあ私も人のことは言えませんが。」

「ええと、その…」

 

それから数秒彼は唸って、やっと口が開かれたと思うと、そこから発せられた言葉に俺は一瞬、言葉を失った。

 

「萩原先輩なんですけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

「ううむ、刹那は何を知っているんだろうか・・・・・・」

ぼくは彼女らが席を外した後、そんなことを考えていた。今この場にいるのは怜だけで、ちなみに伊藤はガツガツと弁当を食い終わった後、まだ食い足りないとかで購買に駆け込んで行った。

 

「・・・・・・私もさっぱり。というか、静乃はどうなの?彼と仲良い?」

「・・・・・・いや、ぼくもそこまで関わったことは・・・・・・街や喫茶店で何度か見かけたくらいだよ。」

 

ゴメン怜、それは嘘なんだ。だって何度もセッションしてるから。けれど、そのことは基本的には話すことじゃないから・・・・・・

まあでも街で見かけたというか出くわしたことは間違いない。

 

「その時に話しかけたりとかしなかったの?」

「あー・・・・・・何回か話したことあるかも。」

 

ゴメン怜、それも嘘なんだ。数回どころかSkypeのグループトークで緋色先輩や宮永先輩を交えて話してるんだ。

 

「――――――――ふうん。」

「ちなみに、怜はどうなの?ほら、同じパーカー族でしょ?こんなクソ暑い中パーカー着てる人なんて彼とあなたくらいじゃない?」

 

追求されるのも嫌であったので話題の中心を怜に移すことにした。

 

「いや、さすがにパーカー着てる人全員の仲良くなんてないわよ。それに、私のパーカーはその辺のものと違って高性能なの。その辺の人らと一緒にしないでほしいわ。なんなら着てみる?これ、全然暑くないどころかむしろ涼しいのよ?ちなみに、ガワはかなり暑いから内側のつまみを持って着てね。」

「はいはいわかったそうするよ仕方ない。」

 

怜はおもむろにパーカーを、ガワに触れないよう丁寧に脱ぎ、パーカーの裏側を支え、ぼくに渡した。そのパーカーはやけに軽く、薄い生地でできていて、そして本当に熱かった。風呂の温度と同じくらい熱いと・・・・・・

 

「いやホント熱いなこれ。まだ我慢出来る熱さだけども・・・・・・」

 

けれど着てみると、なぜだか本当に涼しさを感じた。

 

「え?え?どういうこと?なんでこんなに涼しいの?」

「まあ簡単に言うと、このパーカーは熱エネルギーを完全シャットアウトするもので、全ての熱エネルギーを反射しているのよ。だから、触った時やけに熱かったでしょ?」

「はあなるほど・・・・・・そう言われたらわかるけど・・・・・・」

 

ぼくはそのパーカーを脱ぎ、机にガワが外に向くよう置いた。どうして裏側はこんなに冷たいんだろうと裏側をまじまじと眺めた。そして、衣服には必ず付いている取り扱いのマークを発見した。そこには、どこか見たことあるようなマークもあれば見たことないのもあり、製造会社もかかれ・・・・・・

 

「ATLAS?」

 

思わず口に出してしまった。そしてそのしたに記載される8桁の数字・・・

 

「あーうん、そういう会社もあるのよ。まあ気にしなくてもいいわ。この世界にはない会社だもの。」

 

そういって怜は机の上のパーカーを取り、再び羽織った。ふう、やっぱり涼しいわねと声を漏らし、食べかけガワが熱いはずなのに、つまみもきにせず無理やり着ていた。結局つまみはなんだったのだろう。

・・・・・・ATLASなんて洋服会社は聞いたことがない。やはり怜のいうとおり、これは怜の世界のものなんだろう。にしたって、格好だけ見ると今の季節にはミスマッチ。ほんとう、神前も怜も不思議だね。

 

 

 

 

 

「え?お前静乃に気があったの?」

 

薄々予感はしていた。夏休み中、静乃と2人で出かけた時に偶然神前と出くわした際、俺に向けて言った「付き合ってたんですか?」というセリフ。あれは静乃が男のものになったかどうかの確認。そう考えると合点が行く。それに静乃はヤツをドラム君と呼んでいた。あだ名で呼ぶなんて、きっと俺の知らないところでよろしくやっていたのだろう。

なんてことを考えたが、ふと自分の発言を思い出し、野暮なことを言ってしまったことに気づいた。申し訳ない気持ちになったが、思いのほか相手に動揺が見られなかったので、ホッとした。

 

「・・・ええとその、ちょっとじっくり話してみたいなって、思いまして。それで、彼女と仲のいい先輩ならと思いまして。」

「・・・それなら、刹那が適任なんじゃないのか?ほら、生徒会繋がりだし―――」

 

俺がそう言いかけると、神前はちょいちょいっと手をこちらに振り、それはこっちへ来いとのハンドサインだとわかったので、近くによると神前は俺に耳打ちをした。

 

「刹那さんも誘ってほしい人がいるんですよ。口には出してませんが、おそらく仮面の人でしょう。それに、男1に女3とかバランス悪くないですか?」

 

・・・ん?

 

「ちょっと待て、ハムだと?」

 

俺も彼に耳打ちをして、刹那に聞こえないように話した。

 

「ええ。彼の話をすると、先輩はちょっと狼狽えるようになったんですよね。それで、試しに仮面の人はどうですかといったら口では嫌がりつつもまんざらでもない態度を取ってました。」

「なるほど・・・・・・」

「ちょっと、ふたりでこそこそなんなんですか?」

 

いい加減不審に思った刹那が俺らに声をかけた。

 

「いや、なんでもない。ともあれ、話はわかった。静乃には声をかけてみよう。もし奴が来るとなると・・・男女のバランスが悪いな。あと一人誰か呼ぶか。誰がいい刹那?」

 

半ば決め打ち気味に刹那に聞いた。刹那は自分に質問が来ると予測していなかったのか、ぽかんとしていた。

 

「え?私ですか?・・・いえ、特に要望はありません。強いて言うなれば、私の心の平穏をかき乱さないひとがいいですね。そう、あの男のようなのを除いて。」

「わかった。じゃあハムを誘っとくよ。」

「ちょっと私の話聞いてました!?」

「じゃあ、話は済んだな。じゃあこれにて解散!・・・あ、神前、連絡先交換しとくか。」

「ええ。」

「あのー、私の話聞いてます?それとも無視されてるんですか?」

「じゃあ俺は教室戻るんで。」

「では放課後に。」

「・・・はあ、もういいです。わかりましたよ諦めますよ。」

 

隣で刹那はげんなりとして、俺の前を歩いて行った。・・・確かに、いつもの刹那とは大違いだ。本気で嫌っているなら、諦めるなんてことはしないはずだ。けれど、こいつはたった今"諦める"と言った。・・・どういった心境の変化だ?一体何が起こっている?いや、"起こった"?まさか夏休み中に何か・・・?

まあ、いい。俺も教室に戻ってあいつを誘ってみよう。

・・・男3女3でお茶しに行くとか、これって合コンみたいだな。刹那はハム、神前は静乃、会長は…俺ではないな。俺と同じく、人数合わせにすぎなさそうだ。にしても、神前は静乃に気があるのか・・・・・・万が一、彼らがうまくいったら?彼氏彼女の関係になったら?・・・やつと静乃が・・・

 

 

 

 

「かくかくしかじかこういうことなんだ。今日放課後だめですかね?」

 

刹那と一緒に戻ってきて、やんわりと神前の気持ちを隠しつつ、静乃にお願いをしたところ、平常運転というかなんというか、彼女はあからさまに面倒臭そうな顔をしていた。

 

「まあたしかに暇っちゃ暇だけどもね」

 

足を組み腕を組み、彼女は俺を見上げた。(すごくこの場に関係ないが腕を組んだ時腕に胸が乗ってるのはわざとなんですかどうなんですか私とっても気になりますしかも汗でワイシャツが少し透けているような気がしているんですが気のせいでしょうか。)

 

「・・・・・・まあ、いいんじゃないの?行ってあげることで遼の顔もたつだろうし。」

 

怜に後押しをされたからか、ううむと唸って天井を見上げしばらくしたのち、頭は縦に振られた。

 

「よしきた!では俺はもう一人の男を誘ってくるぜ!」

 

 

 

 

とっとこ~走るよ遼太郎!

ろうかを~走るよ遼太郎!

だーいすきなのは~!に~じげん少女~!いえい!

 

ハム太郎の歌を鼻で歌いながら、奴はスキップしながら教室を出て行った。あまりの気持ちの悪さに、返事を取りやめようかと思った。

 

「・・・見てはいけないものを見てしまった気がするわ・・・」

「奇遇だね。ぼくもそう思ったよ。」

「気持ちわるい」

 

3人とも、抱く感想は同じであった。

 

「ちなみにさ、もう一人って誰なの?」

 

遼はあと一人男を誘うと言っていたが、誰とは言っていなかったので、事情を知ってそうな刹那に質問したところ、彼女は曖昧な返事だけした。知っているけど教えたくないってこと?つまりぼくと親しくないひと?いや、そんなひとは刹那が気を利かせてやめておいてくれるはずだよね?それなら・・・え?誰?

 

「・・・じきにわかりますよ。」

「何ももったいぶらなくとも・・・・・・」

「たしかに言えるのは、静乃の嫌いなひとではないです。そこは安心していいと思います。」

 

おおう、やっぱりぼくのこと考えてくれてた。さすがは刹那、好きだなあほんと。

・・・にしても、神前がわざわざ一緒にお茶したいだなんて・・・しかもこんな回りくどいやり方までして、どう言ったつもりなんだろうか。お茶くらいなら、それこそ緋色先輩とぼくと宮永先輩とで何度かしてるのに・・・。・・・ん?いや待てよ?遼はやんわりと隠してはいたけれど、神前がぼくに気があるからお茶したいみたいなことを言ってたよな?それだけなら、刹那を誘う理由はないんだ。ぼくと遼、緋色先輩に神前で十分じゃないか。なのに、刹那はいる。そして、刹那は残り一人の男を知っている。・・・これって、神前はぼくと会いたいんじゃなくて、神前は刹那とその男を会わせたいと考えられないだろうか。・・・おお、それなら合点する。我ながら冴えてるな。刹那も身を固めれば、ファンも減って落ち着くだろうし悪い話じゃないだろう。

 

「・・・まあわかった。じゃあ、放課後ね。」

 

よし、では刹那のためにぼくも参加してあげましょうかね。

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