保健室で数時間横になった後、俺は帰路に就いた。赤い空の光が、俺の影を伸ばしていく。そうしてやがて、影だかどうだかわからなくなり、溶けていった。ぐちゃぐちゃな気持ち。寝ても覚めても変わらない。自分の心のキャパを超えている気がして、どうにも落ち着かない。どうしてこうなっているのだろう。何のせいで・・・。
―――――いや、いい加減目をそらすのはやめよう。
俺は嫌なんだ。静乃が誰かと仲良くすることが。付き合ってもいないのに、独占欲だけがある。俺は彼女が好きなんだろうか。いやでも、いまさらそんなことを認めるなんて・・・・・・。だって、もし認めてしまったら、きれいになった静乃に惚れたということだ。結局、外面しか見ていない。ちょっと見た目がよくなったら惚れるって、そんなの好きと言えるのだろうか。
―――――いや違うだろう。これはアイドルにはまるのと似た感情なんだ。アイドルを見てかわいいなって思う気持ちと、変わらないんだ。
無理やり自分を丸め込む。これが本心だ。本心なんだ・・・・・・
家に着くと、リビングには入らずすぐに自室へこもった。アニメもゲームも漫画も何も手がつかない。眠って紛らわそうにも、保健室で寝ていたから、どうにも眠気はやってこない。仕方なく、スマホの電源を切って勉強に打ち込むことにした。頭をひねる数学なら、余計なことを考えずに済むだろう。というか、考えている余裕はないだろう。
どれくらい時間がたったのかわからないが、有希が部屋に入ってきた。
「兄さん、いい加減にしてよ!どれだけ呼んでると思ってるのさ!もうご飯だよ!」
そういわれて、はっと部屋の時計を見る。もう3時間も立っていた。時刻は9時。ずいぶん遅い夕食だが、叔父さんの仕事のキリがよくなかったのだろうか。
「ごめんよ。勉強に集中しすぎてた。」
「あれ、そうなんだ。ずいぶん珍しいね。オタ活で集中するならまだしも・・・なにかあったの?」
「何って・・・・・・」
そう有希に言われたせいで、忘れていた今日の出来事を思い出してしまった。そうして、しまい込んでいた負の感情が体をめぐる。
「・・・・・・別に何にもないさ。」
俺は部屋を出、リビングへ向かった。夕飯は中華丼であった。ぐちゃぐちゃに餡とご飯を混ぜ、がつがつと掻き込んで食べた。腹いっぱい食べると、やっと眠気が来てくれたので、布団に入って目をつむった。さっさと明日になってほしい。明日になれば、忘れるだろうと・・・・・・
このとき、俺はスマホの電源は切りっぱなしだった。いつもならアラームを設定してから寝るところだが、そんなことは忘れてしまっていた。