タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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4-2-1 Shutdown

8月20日 木曜

 

 

 

 

 けたたましい音が耳元で鳴らされ、飛び起きる。最近はなかったが、有希が満面の笑みでブザーを鳴らしていた。これが嫌だからアラームをセットしていたのに俺は無意識にアラームを・・・・・・いや、俺昨日アラームセットしてないな。完全に俺の落ち度だった。

有希はすでに制服に身を包んでおり、時刻は7時半。どうやら・・・・・・

 

「・・・めしの時間か。あいよ、今行くよ。」

 

俺は寝巻きのまま部屋から出た。

 

 

 

食卓には既に竜崎が飯を食っていて、モッキュモッキュさせていた。食卓テーブルには叔父さんと俺と竜崎の分の飯が・・・・・・あれ、有希は?

 

「竜崎、有希はどうしたの?」

「ああ、彼女ならとっくに出て行ったよ。なんでも朝に用事があるんだってね。君を起こしてくれただけやさしいよね。感謝してるのか?」

「そんなの・・・いわれずとも・・・けれど、もう少し無難に起こしてくれてもいいんだけど・・・・・・」

「まあいいじゃないのさ。―――――――そうそう、今日は久しぶりに君の学校に行こうと思っていたんだけど、ちょっと野暮用で行けなくなった。」

 

そういや、学校始まってからはまだ来てなかったな。まあ、来たところで正直意味あるのかとは思うけど・・・・・・

 

「うん。」

 

俺は目の前の飯をぺろりと平らげると、洗面所に向かった。顔を洗って、制服に着替えて玄関に向かうと、なぜか竜崎が玄関横の小棚の上に立っていた。

 

「じゃあ行ってらっしゃい。」

「・・・見送りなんて、どういう風の吹き回し?」

「ははは、たまにはいいじゃないの。とりあえず今日も頑張って来いよ!」

 

竜崎はグーサインをこちらに向けた。ほんと、なんなんだろうこいつ・・・・・・

 

 

 

 

「・・・・・・顔色は悪くない。どうやら、寝て起きたことで、嫌なことは忘れることができた・・・ないしは立ち直ったのかな?」

 

 

 

 

 

 

家を出ると、横の電柱に持たれながら一人の女性が俺を待っていた。待っていたと断言できるのは、俺と目と目が合った瞬間こっちにやってきたからである。

 

「おはよう遼。昨日はごめんなさい。」

 

怜はすぐさま俺に謝ってきた。なんのことだろうか・・・なんて思ったが、そういや保健室に行くときこいつ俺を煽ってきたなアンタ病気にならないでしょとかかんとか。

 

「別に謝ることじゃないさ。実際、あれは風邪じゃないしね・・・」

「あ、ああー・・・・・・やっぱり。」

「やっぱりって・・・それは思ってても言わないでおくのが正しい選択だと思うぞ?」

 

そうして気づく。俺はさほど、昨日のことを引きづっていない。むしろ、精神状態は良くなっている。

 

「まあ、馬鹿は風邪ひかないっていう怜の煽りは、君のおごりが見えて少し不快になったけどね・・・」

「・・・ああなるほど。あなたはそう考えていたのね。てっきり――――――――いや、何でもないわ。とりあえず、学校向かいながら話しましょう。遅刻するかもしれないわ。」

 

そういわれスマホを見て時間を確認―――――しようとしたら、電源が入ってないことを忘れていた。そして腕時計を見た。腕時計があるならスマホを触る必要はあったのかと言われれば、ない。完全に癖だろう。

 

 

静乃と鉢合わせるT字路に入ったが、彼女は見当たらなかった。いつもこの時間帯なら出くわしてもおかしくないのだが、見当たらなかった。昨日のことがあったから、いけなかったことを謝ろうと思ったが・・・学校ですればいいか。

 

 

学校に到着し、教室に向かっている最中、廊下の曲がり角で刹那の後ろ姿が見えた。声をかけようと近寄ったら、だれかと話していることがわかった。丁度死角になっていてだれとしゃべっているのかはわからなかったのだが、まあ謝るだけなら・・・と思い声を掛けたら、なんとそこには―――――

 

「お、国広じゃあないか。もう体調は大丈夫なのか?」

「りょ、遼君!?」

 

いや、驚きたいのはこっちだよ。朝からハムと刹那が楽しそうに話しているなんて・・・昨日いったい何があったんだ?―――――そうだ、昨日のこと謝らないと。

 

「行けなくてごめん。埋め合わせは必ずするから・・・・・・」

「いや、きにしなくていい。体調不良は誰にでも起こりうる。国広が元気になったのなら、それでいいさ。」

 

は、ハム~~~~~!!!!!なんてイケメンな奴なんだ。

 

「それに、こうして少年と仲良くなれたのだから、むしろおつりがくるくらいさ。」

 

さわやかに笑って見せるハムは、マジで人が変わったとひしひしと感じさせられた。こいつ、厨二が抜けたらこんなやつだったのか。

 

「・・・いや、なに仲良くなった気でいるんですか。私はそんなつもりないですよ?」

「ええ?それはほんとうかな?それは・・・悲しいな・・・」

 

しょんぼりするハムを見かねて、刹那がわたわたして「いや、別に嫌いなわけではないですけど・・・」とフォローを入れていた。

・・・昨日いったい何があったんだろう。あとで刹那から聞くか。いやでも、こんなありさまだし話してくれなさそうだな・・・会長あたりに聞けば、客観的な情報が得られるだろうか。静乃に直接聞くのは・・・ちょっとためらうな・・・

 

 

教室に入ると、静乃は突っ伏して寝ていた。これは寝たふりなのか、ガチで寝てるのか、いったいどっちなんだろうか。

 

「おはよう・・・・・・・遼・・・・・・」

 

カイジがこちらによって来る。こいつは変わらないな・・・

 

「なあカイジ、静乃ってずっと寝てんの?」

「萩原?そうだな・・・・・・俺が来た時にはすでにこうだったな・・・・・・」

 

まあ、起きた時に謝ればいいか・・・

 

 

 

昼休み、日光がうざったいとのことで遮光カーテンが閉められているから外の様子は分からなかったのだが、ふとカーテンを開けて窓の外を見てみると、あたりがものすごく暗かった。(勿論この時間にしては、である)そしてなんと、静乃はまだ眠り続けていた。マジでどんだけ寝てんだ。既に4時間は寝てるんじゃないのか?

 

「おいカイジ見てみろよこれ。」

「ん?なんだ・・・うおおっ・・・なんて天気っ・・・!暗雲立ち込める・・・・・・何かが起こりそうな予感っ・・・!」

 

カイジは溌剌として窓の外を見ていた。そんな様子を見ていた周りのクラスメイトも窓の外に注目し始めた。窓の近くにワイワイ人が集まってきてちょっと鬱陶しかったので、俺はその場を離れた。振り返った時、静乃はその場から動くことなく突っ伏していて。刹那がそれに寄り添っていたのが見えた。

 

「なあ刹那、なんでそんな静乃寝てんだ?何か知ってる?」

「そうですね・・・・・・私が8時にここに来た時には起きてましたよ。なんでも、眠れなかったみたいですね。」

「・・・眠れないようなことが、まさか起こったのか?」

「眠れないようなことって?」

 

寝かせてくれなかったんじゃ?なんて思ったけど、んなわけないよな。

 

「まあそれはそれとして・・・昨日は無難に終わったの?神前は静乃と仲良くなれたの?」

 

言葉にすると、チクリと胸を刺す。けれど、聞かずにいられなかった。

 

「うーんどうでしょう。帰りもどこかによることなく解散しましたしね。・・・・・・ああそうそう、一人変な男に絡まれましたね。」

「変な男?」

「ええ。なんか、『この料理頼んだはいいけど、アレルギー起こしちゃう食べ物入ってたので、よければもらってくれませんか?まだ手を付けていないので。』とかいって渡してきた人いたんですよ。渡すとき、私たちの顔をじろじろ見てきたので、不振だなと思いまして・・・けれど、そのあと何もなかったんですよね。料理は仮面の人―――――いえ、武君がもらってしまいまして、普通に平らげましたけど、彼の体に何も起こりませんでしたし・・・・・・」

 

それは・・・確かに謎だな。なんなんだろう。

 

「まあいいや。にしても、こいつ寝すぎやしないか?いくらなんでも4時間も寝てるぞ?」

「そうなんですよね・・・。さすがに私も不安になってきたといいますか、普通にご飯食べたいので、無理やり起こそうかと。」

 

ゆさゆさと揺さぶるが、起きない。どれだけ眠りが深いんだ・・・

ちょうどその時、刹那の立っている通路を通ろうとしたカイジが、足元に置いてあった運動部のクラスメイトのエナメルバックにつまづき、刹那を押してしまった。そして刹那は静乃を揺さぶっていたもんだからそのまま勢いよく静乃を押し倒してしまった。大きな音がして、周りが静まり返った。

 

「うわっ・・・!すまん中河っ・・・!」

「ご、ごめん静乃!押し倒すつもりなんて全くなくて・・・あれ?静乃?・・・え?なんでこれでも起きないの・・・?」

 

刹那の呼びかけには全く応じず、勢いよく隣の机にぶつかったのに痛がる素振りも見せず、そんな姿はさしずめ―――――

 

「―――――――伊藤、近くにいる先生を呼んできて。今すぐ!」

「お、おうっ!」

 

カイジはすぐさま教室を抜け出て行った。周りの生徒もこの事態が異常だとわかると、不穏なざわつきが広がっていった。

 

「あんまり揺さぶると帰って危険よ。ちょっとどいて!」

 

怜の叫び声に応じてすぐさま刹那はその場を離れる。怜は静乃の手首に指を当て、脈を測っていた。そのあと、胸に手をあて、呼吸の有無を調べた。

 

「・・・大丈夫、脈はあるわ。呼吸も・・・ありますね。なのにどうして気絶したままなのかしら・・・。こんなスイッチ切れたみたいに動かなくなるなんて・・・。」

「・・・なあ怜、お前は何かわからないのか?」

 

人間の人知ではとうてい考え出でぬことでも、神界人なら分かるのではないかと思って聞いてみたけれど、

 

「わかるわけないじゃない。」

 

一蹴された。

 

「私は医者じゃないのよ。仮にそうだったとしても、朝からずっと突っ伏してたんでしょ?朝は起きていたのよね?」

 

怜は隣にいた刹那に確認をとった。刹那は大きく頷いた。

 

「ということは、寝ている最中に気を失ったということになるわね。そんなの、情報が少なすぎるわ。寝る前になんらかの兆候があったなら話は別だけど、そういうわけでもないし。」

 

とまあ、この有様である。

そんな話をしていたちょうどその時、カイジに連れられて教師である千歳先生と灯里先生が駆け込んできた。

 

「生徒が倒れたんですって!?一体誰が・・・」

 

厳しい顔つきをした灯里先生が辺りを見回していた。

 

「先生!萩原さんです!一向に目を覚まさなくて・・・」

「静乃ちゃ―――ああいや、萩原さんが!?・・・・・・わかりました。灯里先生は救急車を呼んでください。僕は一旦彼女を保健室へ連れて行きます。」

 

そういうと千歳先生は静乃を抱きかかえて――――――――俗に言うお姫様抱っこをして、そのまま教室を出て行った。

 

「――――――――――ふう。ええと、あなたたち次の科目は私の政経であってる?」

「え、ええそうです。」

 

生徒の誰かがそう答えた。

 

「そう、なら手間が省けたわね。萩原さんの件で私も外れるので、それまで自習していてください。私が戻ってきたら授業を始めますので。」

 

そう残して、灯里先生も教室を後にした。

 

 

自習時間は、みんな静乃のことが気がかりで、勉強をしてる人など一部しかいなかった。

灯里先生は戻っては来なかった。

俺は自習時間、ふと昼間のカイジのセリフを思い出した。

 

―――暗雲立ち込めるっ・・・・・・何かが起こりそうな予感っ・・・・・・!―――

 

もしかしたら、水面下ではなにかとんでも無いことが起こっているのかもしれない。それはまるで、昼間のあの雲のようにじわじわと・・・。

窓のそばの席というのもあって、窓の外を覗くのは容易かった。俺はカーテンを持ち上げて外を覗いてみた。そこに広がるのはまるで夜のように真っ黒な空であった。

静乃・・・いったいどうしちまったんだ?何があったんだんだよ・・・・・・?

 

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