タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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1-2-1 テンプレ展開

 翌日、食卓ではミクさんがあたかも最初からいたかのように一緒にご飯を食べていた。有希と叔父さん曰く、「可愛いは正義。だから問題ない。」だそうだ。ただ、この可愛いは子犬を見てると癒されるのと似たようなものである。俺のように、“萌え”ではない。

・・・あと、叔父さんに「なぜラーメン用の器が3つ流し台にあったのかな?ひょっとして・・・」なんてことを聞かれ、肝を冷やしたが、何とかごまかした。

 

 

昨日の言葉はもしやと思い、外に出てみると―――前にはコンクリの壁しか見えなかった。左右を見渡しても人影なんてなかった。

朝、軽く肩すかしを受けた俺であったが、教室の様子を見ると朝に発生していた期待がぶり返してきた。カイジの席の隣に一つ机が追加されていたのだ。

あれ?これってフラグ?

俺が教室に入ったのを見かねると、カイジは目を輝かせてこっちにきた。うれし気に話しかけてきたが、案の定なことを言ってきた。とりあえず考えないことにして、俺は机に突っ伏した。

 

 

東雲先生がどうやら教室に入ってきたらしく、先生も案の定なことを言ってきてしまった。

 

「みんな!今日は転校生が俺らのクラスに来たぞ!」

「「うおおおおおおおお!」」

 

男子たちの歓声がすげえ。まじすげえわ。こんなにけたたましくなるなんて・・・。

あまり盛り上がれていない俺に気付いたらしく、俺の隣の席に座っている静乃が軽く訊ねてきた。

 

「どうした遼?浮かない顔をして・・・嬉しくないのか?ちらっと聞いた話では、相当な美少女らしいじゃん?もうもえもえきゅんなんじゃないの?ああ気持ち悪い。リアルではよしてくれよ。」

「いや、そういうわけじゃないけど・・・」

「・・・これだけ言われて塩反応なんて・・・不思議なこともあるもんだな。」

「そういうことにしておいてくれ。」

「おいおい、いったん落ち着けお前ら。――では、入ってきてくれ!」

 

黒板横のドアが開かれ、転校生が教室に入ってくるのだが、案の定彼女だった。

 

「榊怜です。これからよろしくお願いします。」

 

さわやかで、あまりにもおしとやかにあいさつをする彼女に、俺は軽く営業スマイルなんじゃねえかと思ってしまった。まあ実際、俺の事をさげすむような眼で見てきたり、蹴りいれてきたりと、なかなか活発なんだが・・・その風貌からはとてもじゃないが想像はできないだろう。

 

「この動き・・・トキ・・・!」

 

ちょっとお前は黙ってろ。

 

「じゃあ、伊藤の隣の席に座ってくれ。窓側の一番後ろの隣の席だ。」

 

怜が席に移動しようとした際、偶然俺と目があった。そして何事もなく―――――と思っていたのだが、怜の顔は驚きに満ちていた。だが、何もアクションは起こさず俺の隣を通り過ぎ、席に着いた。

後ろでカイジがhshsしていたのにはスルーしておこう。

 

 

 

 昼休みになると当然というかなんというか、怜の周りには男女問わず人が群がっていた。加えて、他クラスからも見物に来た人もいて、教室内はすさまじいことになっていた。ちなみに、俺はというと・・・・・机に突っ伏して寝ようとしていた。いや違うな、寝たふりをして怜が変なことを口走らないように聞き耳を立てていたといったほうがいいな。まあ、だからと言ってすぐ行動に移せるかどうかは話は別だけれど。

 

「榊さんがこの土地に越してきたのは親の都合とか?」

「まあ、そんな感じかな。ちょっとわけあって今は一人で暮らしてるけど。」

「もう一人暮らし・・・すごいです!」

「いったいどこらへんに住んでいるの?」

「西区ね。だからこの学校には割と近いのよ。」

「って・・・・・・・・・・西区ってことは遼と同じか・・・」

 

おいカイジ、余計なことを質問するんじゃねえよ。

 

「ええそうよ。だって遼の家の真横だから。」

 

このとき、あたりには静寂な空間が広がっていた。だが、それもつかの間、また再び周りが盛り上がっている。ただし、“悪い意味で”だが。

 

「衝撃の事実が発覚したぞおお!!」」

「遼!どういうことだ!しかも、もうすでに名前呼び・・・説明しろっ!」

 

突っ伏してる俺を無理やり揺さぶるクラスメイトの男たち。これほど奴らに殺意を抱いたのは生まれて初めてだ・・・

 

「どうもこうも、ただの隣人だよ。引越しの手伝いとかをしたからある程度の面識はあったんだよ。」

「じゃあどうして名前呼びなんだっ!それ以外の特別な関係だからじゃないのか!」

「んなわけねえだ―――」

「ひどいっ・・・!せっかく・・・・・・・昨日は遼が晩御飯作ってって言うから、作ってあげたのに・・・!」

 

てめえ、雰囲気に流されて何言ってやがるっ!俺をおとしいれたいのかよっ!

 

「制裁だっ・・・!」

「おいまてって!違う!誤解なんだ!」

 

俺の言うことに耳を貸さず、カイジを含め周りに群がる男子たちに羽交い絞めにされ、どこかへ連れ去られた。

それ以降の事は、あまり覚えていない。気づいたら俺は自分の席についていた。どうやら6時間目が始まっていたらしい。あと、なんか額がすごく痛いんだが。なんていうか、火傷?あと、樋里掌にも火傷があるんだが・・・・・

 

 

「怜、ちょっと来い。」

 

俺は放課後になるとかなり強引に怜を教室から連れ出した。このとき、カイジとかがなにやらいろいろと言っていたが、そんなことは気にしない。

人気のない場所につき、俺は怜に対峙する。怜は俺が何を言わんとしているのかわかっているようだ。

 

「昼間のあれはなんだ。」

「あはは、ごめんごめん。からかいたかっただけなんだって。いやあ、静乃がからかうだけあるよ。君、いい反応するね。」

 

けらけら笑っている怜をみて、なんかおこるのも疲れてきたな。もういいやこの話は。

 

「変なことは言わないでくれよ・・・」

「はいはいわかったわかった。てか、私をこんなところに呼び出してる時間はあるの?今日は部活があるんじゃなかったっけ?」 

「お!そういやそうだった。―――――なんでそんなこと知っているんだ?」

 

俺は部活があるなんてことはしゃべっていない。なぜこんなことがわかる?

 

「そりゃあまあ、神の視点で見てたからさぁ」

 

・・・そうだった。こいつは神の使いだったから、そんなことくらい知ってて当然か。こちらの常識が通じないって、不思議な感覚だな・・・

 

そんなことを話していたるとき、カバンの中からがさがさと音が聞こえてきた。

―――ああ、ずっと埋もれてたからな。出してやらないと。

俺はカバンの中に埋もれていたミクさんをつまみあげた。なんでこの場にミクさんがいるのかと言えば、学校に向かう前にミクさんにそういわれていたからである。ほんと、学校にフィギュア持ってくるやつとかイタいことこの上ないから、できれば避けたいのだが・・・・どうしようかね。

 

「ちょっ・・・つまむな!手のひらに乗せろ!」

 

自分で持ってるのは面倒だから、怜の手のひらに乗せた。

 

「君はひどい奴だな。何時間もカバンの中に放置して・・・次からは制服のポケットに入れた状態をし続けてくれ。」

「・・・なんで?」

「憑依の兼ね合いで、今は神の視点で物事を見ることができない。だから、君のぴったりついていないと、事態がつかめないだろ?」

「・・・まあそうか。」

 

なんか可愛いしな。ポケットからちょこんと顔を出しているミクさん。くうぅ!たまんねえ!が、それを日常的にやるのは・・・

 

「では、先の事もたまっているし、向かうとするぞ。」

「・・・そうだな。」

 軽く首肯して、怜に別れを告げてその場を後にした。ひとまず、痛々しい見た目は今日が甘んじて受け入れることにした。今後、なんとかうまいことやりたいな・・・

 

 

 今日はFLDのメンバー調整の日だ。そんなわけなので、俺は行きつけのゲーセンに行くことにした。ちなみに、現地集合となっている。

 行きつけのゲーセン『アドアーズ』はここから電車に乗って5分、歩いて5分という、かなり近いところに位置している。そして、かなり建物自体がでかい。だから、もちろんゲームの種類は多いし、人のレベルも高い。切磋琢磨するには最適な場所なのだ。素晴らしいだけあって、地区大会、関西大会の会場にもなっている。

 俺がついたころ、既に柄谷が来ていた。

 

「あ、先輩、こんちわです。」

「おお、ちわーっす。ほかの人は?」

「部長さんは掃除で少し遅れるそうです。グラハム先輩は知りませんけど。」

 

そのとき、柄谷の視線が俺のポケットに向けられた。…いや、正確には、俺のポケットからちょこんと顔を出している“ミクさんに”だな。

 

「先輩・・・・・・イメチェンですか?(笑)」

「まあ、そうかな。可愛いだろう?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ・・・・・」

「え?ちょい待ち、なんだその冷めた反応は!」

「説明が必要ですか?」

 

視線が冷たい。まあわかってるよ。普通の高校生はねんどろを持ち歩かないってことは。それ故にそういう態度になることくらい、わかってるけどさぁ・・・

もう、軽く泣きたい。

 

「遅れて申し訳ない。」

 

ハムはよくわからん羽織をまとい、仮面をつけていた。マジで痛々しいことこの上ない。そんな彼は部長を引き連れてやってきた。部長が軽く息を切らしているということは、ある程度は走ったんだな。別に走ってまで急ぐ必要もないんだけどな・・・それともこいつが部長をせかしたのだろうか。

 

 

 部内でのすべての組み合わせで実践したが、これといって最高の組み合わせになるってことはなかった。まあ、実力が拮抗しているってのも大きいけどね。その実践の成果としてランクが上がったりしたのはよかったな。ちなみに、ランクはD~SSSとなっていて、今回の戦闘で俺はA+に上がった。ちなみに、ブシドーがB+、柄谷がB+、部長がAとなっている。

 

「ある程度やったけど、国広をどう組み込むかがカギになるだろうね。」

 

部長はそんなことを俺に言ってきた。柄谷とハムは今タッグ戦を行っている。俺と部長は今、休憩中なわけだ。

 

「そんなに僕は重要なポジなんですかね。」

「まあぶっちゃけ部内で一番うまいからね。戦力を固めるか分散させるかだよ。だからまあ、私が決めるというよりは国広が自分で選んだ組み合わせの方が一番力を出せるんじゃない?正直誰と組んでも違和感かなったんでしょ?それなら、国広の意見を尊重したい。どうする?」

 

長考しているとき、ポケットの中がもぞもぞ動いているのに気が付いた。目をやると、ミクさんが「話があるからいったん人気のないところに行け」とでも言いたいのか、首をふるふるしたり視線で訴えてくる。まあ、時間がほしいのは俺も一緒だ。

 

「そうですねぇ・・・とりあえずトイレ行ってきていいすか?」

 

 

トイレの個室に駆け込んだら、ミクさんは俺のポケットからでて小さな棚の上に登った。

 

「よく私の意向に気が付いたな。褒めてやるぞ。」

 

どうやら、俺の考えていたことは正しかったようだな。

 

「そりゃどうも。ちなみに、気が付かなかったらどうなっていたんだ?」

「その時は、声に出す他ならないな。普通に考えて、フィギュアは喋らないからね。いろいろと面倒なことになりかねないから、その手段をとらなくてよかったよ。」

 

確かに、あの場でミクさんがしゃべってたら周りに気付かれて厄介なことになってたな。

 

「ですよね。それよりなんで呼び出した?」

「ああ、それはだね・・・」

 

ミクさんはしばらく溜めて、そして

 

「これは一種の“ルート分岐”なんだってことを知らせたくてね。」

「ああ――」

「ここで選んだ相手とは大会当日まで多くの時間を過ごすことになる。つまり、より親密になれるチャンス。そして、大会を勝ち上がりでもすれば、そのときにはともに喜びを分かち合い、より親密になれることは間違いない。そのとき、双方において高まっていた好感度が恋愛感情に変化してもおかしくはない。まああくまでも、そうなるための“フラグ”を立てるだけだがね。」

 

つまり、ここで俺がブシドーを選べば、ゲー研内でのフラグを一個立てないことになるのか。

 

「とまあ、私が話したかったのはこのことだ。これを頭に入れておいてくれよ。」

「了解した。」

 

とはいったものの、ルートとか、そんなことは頭の隅に追いやっていた俺がいた。だってリアルだぞ?二次元と三次元を一緒くたに考えるのは二次元への理解のない馬鹿な大人のやることだ。俺は違う。けれどまあ、竜崎がそんなに言うなら・・・少しは考えるか。

 

 

「すみませ~ん。」

 

トイレから戻ると、そこには柄谷とハムもいた。どうやらもう対戦は終わったみたいだ。

 

「いや、大丈夫だよ。んで、どうする?」

「そうですねぇ・・・」

 

柄谷は長距離射撃が主。俺が特攻しているときのサポートに回るっていう戦術もなかなかいい。

ハムとの二人で特攻をかけるってのも悪くない。

部長とじわじわ削っていく戦いも相手にとっては嫌な戦法でいいと思う。

誰と組んでもうまくいけそうな気がする。でも・・・

 

「柄谷とタッグを組もうと思います。」

 

果たして、この選択は吉と出るか凶と出るか・・・。

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