『だから調べるの。静乃はどこまで覚えていて、どこから忘れているか。そして、これが“本当に記憶喪失なのか”を。それができるのは、唯一静乃の記憶に残っているあなたしかいないわ。』
静乃が記憶をなくし、そのお見舞いからの帰り道、一緒に帰宅していた怜はそう俺に告げた。これが俺にできることなら、俺にしかできないことなら、やるしかない。この怜の言葉は、うそには聞こえないから・・・
帰宅後、リビングには向かわずそのまま自室に入り、ひとまず俺は静乃の記憶喪失のラインを見定める方法はないものかと考えを巡らせた。とりあえずいつから変わったかを必死に思い出そうとした。―――――――――――――が、即座に思いつくほど簡単なことではなかった。
「そんな、小6のどの時期から急変したかなんてすぐ思い浮かべられるほど、俺はあいつを見てきてないし、そもそも昔のことだしな・・・」
全く見当がついてないわけではない。少なくとも冬休み明けにはダウナーな感じになっていたはず。あんまり学校には来ていなかったけど、逆にそれが印象に残って覚えていた。だけど、具体的な境目がどうしてもわからない。誰かに意見を求めたくて、俺は部屋を出て、有希のもとへ向かった。
「あれ、兄さんが私の部屋に来るなんて珍しいね。どうしたの?てか兄さん聞いたよ?なんでも静乃さんが倒れたんだって?そのお見舞いに行ったんでしょ?静乃さんは大丈夫だった?」
・・・有希の表情からは、深刻さがそれほど伝わってこなかった。おそらく、貧血か何かで倒れたんだと思っているんだろう。逆の立場なら、俺だってそう思ってるさ。
「・・・いいか?落ち着いて聞くんだぞ?」
俺は今日あった出来事をすべて伝えた。朝の寝っぱなしの様子、そして病院で目が覚めた時の様子、そして・・・記憶を・・・・・・
有希は「いやふざけないでよね笑」なんて返事をしたが、俺の顔があまりにもシリアスでったのか、彼女の顔から笑みが消え、驚愕と悲壮の混ざったような顔つきへと変わった。
「いや、うそでしょ?そんなことって・・・・・・」
「俺だってまだ信じられない。でも面と向かって言われちゃもう、どうしようもないというか・・・。そこでだ、どうやら静乃の記憶がすっぽり抜け落ちた時期を特定できれば、事態が進展するらしくて、それを知るための方法ってなにかないかな?」
有希は両手人差し指を頭に当て、ぐりぐりさせながらうなっていた。
「とりあえず卒アルみたら?小学生の卒アルの写真を見て、静乃さんが写っていてかつその表情を見れば、ある程度想像つくんじゃない?」
確かに、俺は卒アルをまだ見ていない。頻繁にアルバムなんて見ないから、そんな選択肢があることすら忘れていた。卒業したばかりの有希だからこそ、すぐさま出てきたんだろう。俺は有希に礼を言うと、すぐさま部屋に戻り棚から卒アルを引っ張り出してきた。小6の写真、クラス数は多くないから、写真に写る頻度も多いはず。しかも、静乃は人気者だったんだ。だれか彼かの写真には写っているはずなんだ。そして、その予感は的中した。
「8月9月までは写真に写っているな・・・。でも・・・・・・10月以降、一枚も・・・・・・・・・ない・・・・・・・・・」