「――――――――――――――――――じゃあ、いい時間だし、俺はそろそろ帰るかな。月曜から学校行くんでしょ?それなら、俺と一緒に行こう。場所わからんでしょ?」
俺は聞けなかった。核心を突く話は、少なくとも今ではない。復学して、刹那とかと話しているうちに情報を漏らすかもしれない。今ここで俺が突っ込んで嫌われでもしてみろ。もう静乃が俺に何か重大なことを話してくれなくなるだろう。
「確かに・・・それはそう。わかった。一緒に行こう!あーでも、お父さんが送ってくれるかも・・・」
「なるほど・・・。でも、そうなったとき教室までの行き方がわからないでしょ?」
「そっか――――――じゃあ、お願い!」
ぺこりと静乃は俺にお辞儀をした。
「そしたら、俺のスマホの―――――携帯の電話番号教えておくよ。何かあったら家電からかけてくれればいいよ。」
スマホと言いかけて、すぐに訂正した。彼女のスマホ、おそらく使い方がわからん。しかも、おそらくロックがかかっているだろうし、それを無理やり開けようとするとずっと開かなくなってしまう可能性だってある。不用意なことを言いかけたと反省した。
「おっけー。じゃあ、当日は遼の家に行けばいいの?」
「うーん、それでもいいけど、なんか怖いし俺が迎えに行くよ。詳しい時間は家の電話に掛けるから、それで調整しよう。持っていくものとかは――――そうだ、日曜に刹那と遊ぶなら、その時に詳しく聞いたらいいんじゃないかな。制服はどう着るべきかとかも女の子同士なら話も進むでしょ。」
刹那あたりも一緒に行こうとか言いそうだな。でもそれはそれでいいだろう。静乃はやっぱり刹那と仲良くするべきだ。刹那の方には俺から説明しておこう。
「制服!」
静乃は目をキラキラさせていた。
「そっか、高校だもん制服着るよね。いやー一体どんな制服なんだろう。かわいかったらいいなあ。」
この辺はやっぱり小学生なんだなと改めて実感した。
「まあ楽しみにしておいたらいいさ。じゃあ、また月曜にね―――」
俺はそういって、静乃の病室を後にした。
8月22日 土曜
「―――――――――てのが、俺が静乃から聞いてきた情報になる。」
翌日、竜崎の方から『ブツがきたから怜のところに行こう。』と報告を受けたので、竜崎を連れて隣に住んでいる怜の家に向かい、昨日の顛末を報告した。ブツについては怜に隠さねばならない情報があるのは事実だし、怜と竜崎は腹の中に抱えいる思惑は別なのかもしれないが、少なくとも静乃を何とかするために情報が欲しいという点では共通しているし、しかものけ者にしてそれぞれに話すとあらぬ誤解を生むかもしれない。それならば、同時に説明するのが適当であろう。それに対する回答は、そのブツでなんとかするんだろう。
「なるほど・・・」
「これは・・・そうね。いやでも、それならば・・・・・・・・・いったいなぜ・・・“誰が・・・?”」
竜崎は黙りこくったままであり、怜は明らかに動揺していた。その動揺した怜の姿を見て、竜崎ははっとした表情を見せていた。怜はその竜崎の様子に気づいていないようであった。
「・・・部屋を変えたほうがいいかい?」
竜崎は怜にそう言葉を投げかけた。
「――――――――――そうね、変えましょう。」
怜はそう言うとソファから立ち上がり、リビングを出た。俺と竜崎は怜に連れられてとある一室に案内された。そこは、かつて怜の家で勉強会をした際に入ってしまったプリンターのみが設置された部屋であった。
俺らが部屋に入ると怜は扉を閉め、鍵をかけた。そこまで厳重にするのかと、いくばくかの不安を俺は感じた。
時間にしてはそこまで長くはなかったのだろうが、気持ち的には長い沈黙が発生した。怜が重苦しく口を開き、静寂を破った。
「・・・念のため遼に聞いとくわ。」
怜はいつになく真面目な表情で俺の方を見た。
「あなた―――――――――“告白券”を静乃に使った?」
思いがけない怜のセリフと、記憶喪失と告白券の関係性に何かがあるということに、俺は戸惑いしか生まれなかった。