タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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4-4-1 目が覚めたら高校生になってたワタシ

8月24日 月曜

 

今日から静乃が登校する。

が、もちろん記憶は戻っていない。詳しいことは教えてもらえなかったが、竜崎や怜本人がそういうのだから(正確には、竜崎の世界の友人だが)告白券が原因なのは間違いないだろう。

・・・・・・なぜ静乃に対して使われているのか。他にも竜崎の世界から来た奴はいると話は聞いていたが、よりによってその相手がなぜ静乃で、なぜ燃やすような真似を・・・。

・・・・・・そもそも、なぜ、そんなものが彼らの世界で出回るのだろうと。どれだけ疑問を膨らませようと、、聞いたところで教えてくれないだろうし、少なくとも今ではない。すべてが片付いたら、問いたださないとならない。

話は戻って、今日から静乃が登校するが、当然学校の位置もわかるわけもないので、こうして俺は静乃の家の前で彼女を待っている。一緒に学校に行くためだ。日曜に刹那と遊んでいると思うし、刹那を呼んでも良かったのだが、まあ忘れてるしなあ・・・という背景もあり。

 

 

 「あ、おっはよう遼!」

 「随分元気いいな」

 「だって高校だよ?漫画の中で描いたような生活が待ってるかもしれないと思うとこうもなるさ!」

 

 

溌剌とした静乃を見るのはあまりに慣れなくて、なんとも言えない気持ちになる。

 

 

 「にしても・・・」

 「ん?どうしたのそんなまじまじと見て・・・照れるじゃん!」

 「いや、目が綺麗だなって」

 「ちょっとそれどういう意味さ!」

 「あーもうテンション高いなあ!後で写真見せるよ。俺が言いたいことがわかるから。」

 「ふーん?まあいいけど。それじゃ、行こ?」

 

 

・・・ぷくーっとほっぺを膨らませたり、天真爛漫な笑顔を見せたり、あまりに感情豊かな彼女を見て、思わず息を飲んだ。こいつ、こんなに可愛かったのか。

 

 

 「・・・遼君、今絶対こいつ可愛いなって思いましたね?」

 

 

びくついて声の聞こえるほうを見ると、そこには刹那が立っていた。こいつ、結局来るんかい。

 

 

 「日曜日会った時に私も思いました。これは麻薬です。ドラッグですよ。」

 「あ、刹那ちゃんおはよ~」

 「静乃、おはようございます。とてもかわいいですよ。この様子だと化粧も教えてもらったみたいですね。」

 「うん、お母さんに教えてもらったんだ―。もちろん、刹那ちゃんに聞いたやつもやってみた!」

 「ききましたかみましたか?これがあの静乃ですよ?ドラッグでしょう?」

 

 

こいつ・・・会長に向ける熱量と今同じものを感じる・・・。だけど、わかってしまう自分もいる・・・。

刹那は静乃の顔を見ると安心したのか、すぐさま学校へと向かっていった。なんでも、用事があったそうで。

用事があっても、静乃の顔を見に来る当たり、本当にいいやつだなと改めて思った。

 

 

 「いいか?絶対変な行動はとるなよ?記憶なくしてるって知られると色々厄介だろ?」

 

 

気恥ずかしさもあり、なんとか無理やり話題をそらそうと、そんなような話を、俺は教室着くまで口が酸っぱくなるくらいくどくど諭した。

 

 

 「はいはいわかったわかった。遼は心配性だなあ。私は子供じゃないんだから!」

 「バッカお前精神年齢12歳ダルォ」

 

 

胸に不安は残るものの、教室についてしまった。幸い、廊下で知り合いにすれ違ったりすることはなかったが・・・

俺は深呼吸して、扉を開ける。俺が入るのに連れて静乃が入り――――――――

 

 

「みなさんおはよーございまーす!」

 

 

元気よく後ろから声が響いて、そして聞きなれない声に、教室が一瞬静まり返った。このバカタレ、大きな声で挨拶するのが普通だと思ってんのか?必要以上に目立っているじゃねえか。

 

 

「ああ静乃、おはようございます。数十分ぶりに会いましたね!」

 

 

真っ先に声をかけ、とてとてと静乃に寄る。オオ刹那、君がすぐさま反応してくれたからあたりもあまり不審に・・・

そう思っていたのだが、刹那以外のクラスメイトもこちらに駆け寄ってきた。

 

 

 「おー静乃、おはよう。もう大丈夫なの?」

 「盛大にぶっ倒れたからねえ、心配もするさ。」

 「萩原っ・・・元気そうで何よりっ・・・・・・!」

 

 

ん?んん?どうしてみんなこうも普通に接してるんだ?

とそのとき、誰かがオレの制服の袖を引っ張っているのに気がついた。その人は刹那。ちょっとこっちに、と言われ、廊下に出る。

 

 

 「事前に打ち合わせしてたんですよ。」

 「え?打ち合わせ?」

 「そうです。今の静乃がどういう状態なのか、ということをクラスの人たちに話しました。記憶喪失というとあれなので、ちょっとところどころ忘れてるところがあって、人が変わった感じになってるって言っておきました。もちろん、悪い意味でなんて言ってませんよ?何も言わないほうが変に思われて静乃のストレスが溜まったら嫌ですし。」

 「なら、俺に教えてくれたって・・・」

 「なんか面白そうだったので。」

 

 

ふふ、と笑う刹那。こりゃ一本喰わされた。

 

 

 「・・・おいおい」

 「――――別に。一番の親友と思っていたのに忘れ去られて、挙げ句の果てにはこんな奴を覚えてしまっていることに嫉妬してるわけじゃないですよ?」

 「私怨じゃねえか」

 

 

そうツッコミを入れた俺であったが、刹那の顔を見た瞬間、これは失言だと察した。親友に忘れられてることは、俺が思っている以上に重たいことだ。一生心に残り続けるトラウマレベルかもしれない。それなのに・・・。

 

 

 「まあでも、あの日と比べたらだいぶ落ち着きましたよ。なのでまあ、そんな暗い顔しないでください。にしても、小学生の静乃はコミュ力が高いんですね、知りませんでした。日曜日に会った時点で何となく想像していましたが・・・ほら。」

 

 

刹那はそう言って、教室を一瞥した。俺は教室を覗いてみると、そこでは、静乃は不安などなさそうにクラスメイトと雑談を交わし始めていた。相手の名前もわからないのに何気にすごいな。

 

 

 「たとえ忘れられていても、思い出すかもしれない。それに思い出さなくても、また友達になればいいんです。―――いや、親友に。前もなれたんだから、次もなれますよ。」

 

 

刹那は少し寂しげにそう告げた。そのあと、静乃のもとに走って言って、一緒になって雑談を始めていた。

これなら、それなりにうまくやっていけるのかもしれない――――――――――――――――いやいけねえわ、普通に授業、わからんじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・であるからして、この単スリットによって・・・・・・」

 

 

壇上では千歳先生が物理の授業を行っている。今は一つの単元終わりということで、軽くこの単元のおさらいをしているところだ。千歳先生は普段の事業で復習を挟んでくれるから生徒に好かれたりしているのだ。ただ・・・・・・

 

 

 「じゃあこの例題の答えは・・・・・・」

 

 

そういって千歳先生は教壇の上にのっている割り箸を一本取り出した。

 

 

 「29番。ええと、このクラスの29番は―――――」

 

 

そう、割り箸で作ったくじによって当てる人を決める。こうすることで、誰が当てられるかが完全にランダムだから、授業に集中しなければならない。そこは嫌がられている。

って、29番は・・・。

俺は斜め前の静乃をみやる。当然、気づくわけもない。

 

 

 「えっと――――萩原か・・・」

 

 

静乃の記憶がとんでいることは千歳先生も承知のこと、だから、困る気持ちは察した。てか、つぶやいた瞬間やべって顔してたし。聞いたってわかるわけないんだもの。他の生徒は

 

 

 「え?私ですか?ええと、ちょっと待ってくださいね・・・⚪️⚪️だったりします?」

 

 

事情を知ってる人は目を丸くした。

答えがあっているだと・・・?

え?なんで解けたの?反射的に?

 

 

 「お、おう。そうだ、正しいぞ。では次に・・・」

 

 

あまりの出来事に千歳先生も戸惑いを隠しきれていなかったが、すぐ持ち直して、授業を進めた。

これはあとで静乃に聞きに行かなくちゃならんな。もしかすれば、記憶を取り戻す手立てになるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 「なーんか、勝手に出てきたというか、なんとなくこれかなって思ったんだよね。でも、なんでこれなんだろうって考えると、わかんないんだよね。ふしぎだなあ。」

 

 

俺に当てはめて言うなら、簡単な因数分解の問題を解くようなもの。簡単すぎて条件反射的に解ける、そんなもの。静乃は記憶はなくしているものの、考える間もなく手が動くものに関しては覚えているようだ。

俺は休み時間にこれを聞き出して、ノートにメモする。このノート、記憶喪失後の静乃の特徴を書き綴ったもので、この結果から症状を推測できるかもしれない、そう竜崎に言われたから、俺は書く。

 

 

 「お昼ご飯いこーよ。食堂行ってみたいな。ね、刹那ちゃんもいいでしょ?」

 「勿論です。一緒に行きましょう。けれど・・・あー・・・遼君も来てください。」

 

 

来てくださいなんて珍しいこともあるもんだ。けど、なんとなく予想はつく。ちょうど1時間前の休み時間中、クラスの男子からちらほらこんな声が聞こえてきた。

 

 

 『萩原ってあんなに可愛かったっけ?』

 『目の濁りが消えて、だるそうなオーラがなくなるだけでこんなに変わるのか・・・。』

 『あいつってもともとスタイルはいいじゃん?それで今日みたいな感じで毎日過ごしてたらさ、ものすごいもてたんじゃないか?』

 『な、あんな娘とヤりたいぜ。』

 『すごくわかる。―――あ、なんかむらむらしてきた。』

 『抜くのは家に帰ってからにしろよ?―――じゃあ俺はトイレに行ってくるね。』

 『汚ねえぞお前!』

 

 

なんてことがあった。マジで外見変わっただけでこれとか節操なさすぎだろ。いや、外見というか目と性格か。これ実質別人じゃないか?それならしょうがないのか???

 

 

 「あーじゃあ静乃ちゃん、明日一緒にお弁当食べない?」

 「あ、あたしもあたしも!」

 「わかった。じゃあ明日ね!」

 

 

なんてやりとりも今まさにされていた。男女問わず、もはや静乃はクラスの人気者なのである。

で、だ。さっきの男子みたく下心丸出しのやつが寄ってきたりするかもしれない。そういった奴らからの魔除け・・・いつもなら刹那を守るための魔除けが、今回は静乃を守るため・・・なんとも。

 

 

 

 

 

 

 

 「お、国広じゃん。」

 「部長、先輩、こんちわっす。」

 

 

食堂に向かい、俺はみんなの席を取り、静乃と刹那は注文をしに行った。そんなとき、席を探していた緋色先輩と出くわした。

 

 

 「なんか今日食堂混んでてさあ、空いてる席がなくて…そこって空いてたりする?」

 「あー鞄置いてあるところはダメですよ。けどその隣は誰もとってないですから空いてると思います。」

 「お、ありがとさん。」

 「ありがとうございます国広君。」

 

 

そうして先輩たちは俺の横の席に座り昼食をとりはじめる。俺がとっていたのは横長のテーブル席だったので、俺の隣に部長、そして部長の前に会長、といった席順である。俺も持参の弁当を食べようと思ったが、刹那たちが戻ってからにしようと思い直して、刹那を待った。

 

 

 「あれ、会長じゃないですか!」

 「あら、刹那。それに・・・」

 

 

刹那たちが戻ってき、隣に座っていた先輩に挨拶した。刹那は驚きの色、一方先輩たちは悲しみと驚きを混ぜたような色を見せていた。そりゃあ、静乃が記憶を失っていることを知っているのだから、こうもなろう。

 

 

 「刹那ちゃん、この人たちは?」

 「刹那ちゃん・・・か。」

 

 

先輩がぽつりとそうこぼす。静乃たちは席について、先輩の方を見やった。

 

 

 「え?私何か変なこと言いました?」

 「・・・いえ、別に。本当に記憶を失っているみたいですね・・・。わからないとは思いますが、私のことってわかります?」

 

 

緋色先輩はそう問うが、答えはもちろんノー。

 

 

 「ええと、ごめんなさい。でも気を落とさないでください。想起?だかしてれば治るみたいですから。にしても・・・ふたりともものすごく綺麗ですね!全く惚れ惚れしちゃいますよ!」

 

 

静乃の様子の違いに先輩らはたじろいでいた。そりゃあなあ、こんなにハイテンションな静乃なんて見たことないだろうからなあ。快活で、天真爛漫で、目も透き通っている。別人だよもはや。むしろ、どうしてああなってしまったんだと勘ぐるレベルだよ。

 

 

 「・・・いや、そんなことは。それより、今の静乃さんの方がよっぽど・・・ねえ?」

 

 

先輩は部長の方を見やると、部長は首を縦に振った。

 

 

 「静乃ちゃんってあんなに可愛かったなんて・・・ああいや、普段がダメというわけではなくて、その、いつもだとクールダウナー系というか、凛々しいというか、男性よりも女性から好かれそうなビジュアルじゃない?それが今日、こんなに快活できさくな姿見せられちゃうとさあ、カッコイイより可愛いなって思ったんだよ。多分やろうと思ったらできたんだろうね。やらなかっただけで。まったく、彼女の可能性は無限大だった・・・」

 

 

確かにその通りです!と刹那はふんすと言い切った。静乃はそんなことないですよ〜なんて言って、手をわたわたさせていた。

ちなみに、褒めて褒められての環境に居合わせている俺は、非常に、ひじょーに居心地が悪かった。だって話題に入れないんだもの。だから俺は彼女らの話を聞いたりしていた。

 

 

 

 

 

 

 

みんな食べ終わって雑談にふけっていた時、ふとあることに気づいた。

・・・ジロジロ見られてる気がす

俺は振り返ってみると、後ろの席のある男はこちらを振り向いていた。

 

 

 「なんだよ。」

 「いやなに、気になってさ。」

 「そんなジロジロみるもんですかね?」

 「そりゃあ、目新しいもんだからな。惚れちまいそうだ。」

 

 

なんて気持ち悪いことを言うこの男、朱鳥はニヤニヤして静乃の方を見ていた。彼は食堂では何も頼んでいないらしく、持参している菓子パンを頬張っていた。

 

 

 「気持ち悪いから前を向け。見世物じゃーーぞ散れ散れ」

 「あー会長!奇遇じゃん!」

 

 

俺の言葉を遮って朱鳥は少し大きめな声を出し、会長の方に向かって手を振っていた。

 

 

 「朱鳥、いたんですか――――――――って、いたことなんて最初から知ってますよ。普通に丸見えですし。」

 「あちゃーばれてたかー」

 

 

なんて言いながら、奴は俺の隣に座った。言い換えれば、静乃の前に。

 

 

 「ええと、萩原、俺のこと覚える?」

 「知りません。」

 

 

ぶっきらぼうにそう答えると、静乃は朱鳥に目も向けず眼前の食事を食べ始めた。クラス内のカイジに対してもこんな調子、というか、男にはみんなこうぶっきらぼうであった。とりあえず俺はそのことをメモした。〜面識のない男に対して辛辣である〜と。

 

 

 「え?それは酷いぜ。カレシの顔を忘れるなんてよお。」

 「は?」

 

 

自分でも意識せぬまま、素っ頓狂な声を出していた。声に出してたのは俺だけのようで、けれど周りも同様に驚きの色を見せていた。

 

 

 「それって本当ですか?」

 

 

不機嫌そうに静乃は朱鳥に聞いた。そりゃあ、記憶がないんだから、その可能性もあるわけで、けど相手は気にくわない相手。複雑な状況下なんだから、不機嫌にならないわけがないのだ。

 

 

 「マジマジ、萩原も本当に忘れちまったのか。ベッドの上で一緒に"キモチよく"なったことも忘れちまったなんてよお…」

 

 

こいつほんとシャレにならん冗談を・・・

 

 

 「おいあす―――」

 「・・・それ、本気で言ってます?私の“初めて”って、あなたが奪ったんですか?」

 

 

朱鳥のぶっ飛んだ発言よりもさらにぶっ飛んだ発言が左斜めから飛んできた。先輩方を含め開いた口が塞がっていなかった。てか、小6ってセックスの婉曲表現わかるんだな。俺わからなかった気がする。

―――あれ、これって俺の解釈が違ってたらアレなんだが、初めてを失った前提で話をしてないか?気のせい?俺の心が淀んでいるから?

 

 

 「え、ええと―――その・・・」

 

 

あまりにストレートに聞くもんだから、からかってただけの朱鳥はたじろいでいた。

 

 

 「なんてね。嘘ついてることくらいわかりますよ。変なこと聞かないでください。いっぺん死んでください。」

 

 

俯いてしまっていた朱鳥は静乃からの暴言を頭からかけられて、頭が上がらなかった。

 

 

 「馬鹿な嘘つくなよなぁほんと。」

 

 

静乃の記憶がないからって好き放題しやがって・・・

俺はちらりと静乃を見た。朱鳥の言葉に変に落ち込んでやしないか。そう思っていたら案の定、静乃は悲しそうな顔をしていた。

―――――そんな時、閉ざされていた静乃の口が開いた。周りか五月蠅くて聞こえないが、何か言っているように見えた。

口パクだけで言いたいことを読み取る技術など俺にないから、読み取るのは諦めたけどまあ、大したことではないだろう。

 

 

 「本当ですよ朱鳥。これは絞る必要がありますね。よく私の前でそんなバカげたことを言う気になれましたね?」

 「ヒッ!」

 

 

朱鳥はいまにも逃げ出そうとしていたのだが、会長の鋭い眼光にいぬかれて、動けないでいた。

 

 

 「すみません国広くん、この片付け、お願いできますか?私、たったいまやることができてしまったので。」

 「あっはい。」

 

 

下手に逆らって巻き添えを食らいたくなかったので、素直になる。

 

 

 「それと静乃さん、今日の放課後時間空いてます?ちょっと用事が。」

 「うーんと、大丈夫!」

 「俺の付き添いっていりますかね?」

 「それなら私も・・・あ、今日は早く帰るよう言われてるんでした。すいません力になれなくて・・・。」

 

 

会長も一応初対面だし。いくらこの昼時に仲良くなったとしても・・・。

 

 

 「いや、私がついてくから大丈夫。刹那ちゃんは来ても良かったんだけど国広くんは寧ろ来ないで。なに、いつもやってたことだからさ。いつもやってることをやらせるのって想起?だかにいいんでしょ?」

 

 

部長にしれっと来るなと言われたのは心に来るなあ。

 

 

 「・・・それでも心配なので、送り出すところまではします。きっと放課後一人で放り出したら、迷ってしまうだろうし。なんせこの校舎、広いので。」

 「わかりました。では、国広くんの方に連絡しますね。では、また後ほど。」

 

 

そう別れを告げると、会長は朱鳥と部長とともにこの場を後にした。朱鳥は借りられてきた猫のように変に大人しくて、滑稽であった。

 

 

 「じゃあ、俺らも行きます?」

 「静乃?大丈夫ですか?気を悪くしてませんか?」

 「大丈夫。気にしてない。けど、あの男とはもう関わりたくないね。私、記憶失って初めて不快な気持ちになったかも。」

 

 

苦虫を見るように朱鳥を見ていた静乃を俺は見ていたが、ものすごく懐かしさを感じた。ああ、いつもあんな目で俺を見ていたなあ。こんなにも懐かしく感じるなんて・・・。

俺は切なさに満ちたまま食堂をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「では、静乃を頼みますよ。」

 

 

放課後になったので俺と静乃は外に出た。そこにはすでに先輩達が待っていた。

 

 

 「ちょっと遼?私はあなたの娘じゃないんだからその言い方はちょっと・・・」

 「バッカお前、精神年齢は5年も離れてんだぞ?むしろお兄さんだろが。お兄ちゃんと呼んでくれてもいいんだぞ?」

 「うっわキモい。気持ち悪いわよこのバカ!」

 

 

キモいとバカしかいってこないあたりボキャビュラリーの少なさがよくわかるなあとふと思った。

 

 

 「国広・・・いやほんとそれはキモいよ?ねえ結衣?」

 「まあ国広くんですししょうがないですよ。」

 

 

ええーちょっと、俺の認識どうなってんの?会長も会長でひどいや。

 

 

 「じゃ、行きますか!私たちについてきてね〜」

 「じゃあねーまた明日!」

 

 

静乃はこちに向かって手を振ってきたので、俺もそれに応じて手をゆるくあげる。

にしても、彼女らのつながりってなんだ?会長と部長は親友同士だからわかるが、そこにどうして静乃が混ざるんだ?ううむ、わからん。とりあえず、俺も帰るとしますか。あーでもこのまま帰ってもやる事ねえなあ。いっその事ゲーセンに凸るか?いやでも、静乃がこんな状態なのに呑気に遊んでていいのだろうか?いやまて、そこまで俺が重く捉える話ではないはずだ。俺は奴の彼氏でもないし、でもあいつを単なる友達とみなすのはなんか違うよな?

・・・おお、これが友達以上恋人未満というやつですか。いつのまにあいつは俺の中で友達以上の存在になっていたんだろう。って、だいぶ話が逸れてた。遊ぶか、遊ばないか・・・

 

 

「よし、行こう!」

 

 

俺はゲーセンへ凸るため、家とは逆の方向に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず5クレしようと思い立ち、フルドのランダムマッチをした後、ゲーセン付近を散歩していたところ、ふと、ある二人組が目にとまった。

片方は熊のようにでかい体にパーマのかかった髪をもつデブ。その隣には対照的に華奢な体に低めの身長、ポケットに手を突っ込みながら、フードをかぶり、デブオタが話しかけているのを無視しているかのように歩いていた。

 

 

「これってナンパ?なのかなあ。」

 

 

にしたって、見るからに相手にされてねえなこいつ。デブオタは話しかけてはニヤニヤ笑い、ハンカチで汗を拭いていて、実に気持ち悪かった。Tシャツの脇シミの跡がくっきり見えて、くさそう。

 

 

「よくもまあ、隣のやつも振り払わないなあ。いや、振り払えないだけなのか?」

 

 

ずっと前を向き、首をデブの方に一切向けないものだから、顔はわからない。もしかして、恐れおののいて反応できていないのか?いやまさか・・・。

俺はなにを思ったのか、彼らの跡をつけていた。いや、跡なんてつけてない。たまたま行く方向が同じだっただけだ。うん、そうだ。

一旦空を見る。―――よし、心を入れ替えよう!俺は再び視線を前に向けると、彼らは立ち止まっていたのに気づき、俺はすぐさま横にあったベンチに座った。危ない、彼らが止まって俺も立ち止まると怪しまれるぞ。

ベンチに座ると都合よく新聞が落ちていたのですぐさま拾って広げ、彼らから俺の顔が見えないようにした。これ、今日の朝の新聞だな。そして、都合よく新聞に一つの穴――――――――彼らを覗くのには十分な小さな穴が開いており、そこから彼らを覗くことができた。華奢な方の人はデブの方にある紙を渡していた。おお、女のほうが観念してついに連絡先を教えたのか!なんて思っていたのだが、無地の紙にはなにも書いていないように見えた。むしろ、そんなことよりも、俺は女のほうにめがむいていた。フードをかぶっていてわからなかったがあの女・・・いや、あの男、神前じゃねえか。ん?てことはあのデブはなんで神前に話しかけていたんだ?もしかして友達とか?それなら俺の盛大な思い違いで終わるのだが・・・

なんて、俺は思いながら耳だけ彼らに傾けていた。するとどうだろう、なんとも奇妙な話が聞こえてきたのだ。

 

 

「あ、ありがとなんだな・・・・・・フヒッフヒヒッ!こっこれさえあればまた女の子たちとズッコンバッコン・・・・・・フヒッ!」

 

 

ふうん、あの紙があれば、女の子とやり放題かあ。そんな便利な代物があるなら、俺だってヤりてーよ・・・・・・

ん?

いや、ちょっと待てよ?

それに近いものあったような・・・

俺はわかりそうでわからないもどかしさを頭に抱え、混乱していた中、決定的な言葉が、神前の口から聞こえてきた。

 

 

 

 

 

「無駄遣いするなよ?お前に渡せる"告白券"はこれが最後だ。次こそはしくじるな。今度こそ、あの女を確実に犯せ。」

 

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