8月20日 ~神前side~
肉と肉が激しくぶつかる音が路地裏に響き渡る。自分はそれを遠巻きから見ていた。
生徒会室で萩原静乃か記憶を失っていると聞き、事情を問いただしてやろうと思ってこの男のとこまで来たはいいが、こんなことになっていた。・・・まったく、この男共はどこから女の子の情報を手に入れてくるのだろう。こうも何度もパコりまくってるのをみると、呆れてくるレベルである。というか、後処理は全部自分がしてるのに、こいつ、好き放題にやりすぎだろう・・・。“チケット”は有限なんだぞ。
今まさに少女を犯している男と、その後ろから彼はとあるアミューズメント施設で見つけたのだが、異常なまでの性欲を持ち、なおかつ人生破滅しても悲しむ人がいなさそうということで利用しているわけだが、その、できればもう少し面がいい人がよかった。醜悪な豚がいたいけな少女を暴力的に犯すよりは、イケメンが紳士的に犯す方が十分にましである。――――――――無い物ねだりをしても仕方ない、自分はやつがヘマしないよう見張ることに専念しよう。そして、終わったら問いただしてやろう。
――――――――嗚呼、なんて醜いのだろう。
目の前の糞共の行い。
虚ろな目をして涎を垂らし、なすがままになっている少女。
そして――――――――その行為を容認している自分。
まったく、"あのクソ野郎"と似たことをしている自分が嫌で嫌でたまらない。できることならこんなことはしたくない。けれど、自分の使命と自分の好みを天秤にかけた時、傾く秤は明らか。仕方ない、ことである。
糞共の行為が一通り終わった後、自分は女性の身だしなみを整えた後、自分はウィンドウを眼前に表示させ、あるシールを女性と男共の服に貼り、ウィンドウ上のとあるボタンを押した。すると、一瞬にして透明になった。自分も続けて透明化した。
「・・・よし、もういいぞ。これをベンチに運んで終わりだ。」
「り、了解っ!フヒヒッ!」
「キモタク先輩、俺が担ぎますよ。」
姿は見えないが、細身の男はおそらく少女を担ぎ上げ、表通りへ足を向けた。
人気のない公園のベンチに放置した後、透明化を解除して、人通りの多いところに出、その足で近場の喫茶店へ入った。
「おい、キモタクさんよ。」
「な、なんだ・・・?」
「お前ら、あれだけ念押しをしていたのに、チケットを燃やして処理したのか?」
こちらが圧をかけると、豚は自分に怯えるように震えてこちらを見ていた。
「そ、そんなことしてないんだな・・・。あれだけ脅されたら・・・。そ、そもそもあの女にチケット使ったのは俺じゃなくて・・・直紀だし・・・。」
「おい、チケットをどう処理した?」
単刀直入に細身の男に尋ねると、男は頭を掻きながら答えた。
「非常に申し上げにくいんですけどね、ズボンのポケットに突っこんだまま洗濯物の中に入れてしまいまして・・・。朝起きたら母親が洗濯してましたね・・・。母親からどやされたときにはじめて自覚しました。マジで不覚です。」
何が不覚だ。ぶっ殺すぞ。人の脳みそいじくっている自覚があるのか?・・・いや、自覚がある人間が、平気でレイプなんてするわけないか・・・。
こいつらに管理させるのがそもそもの間違いなんだろう。けれど、自身で保管するのもリスクが・・・。
「・・・百歩譲ってそれが事故だったとしよう、けれど、チケットのチャームにかかっていたなら今までの女と同様のプロセスをたどれたはずだ。どうして犯さなかった?」
「お、犯さなかったんじゃなくて犯せなかったんだよ・・・。神前さんらがいるときに話しかけにいったじゃないですか?でもあれでの感触が微妙だったんですよ。再確認も込めて帰り際に突撃しようとしましたが、キモタク先輩が・・・」
「か、カラスに襲われて・・・・・・追いかけられて・・・・・・川に落ちて・・・・・・」
「いやーほんと、大変だったんすよ?もう再び会うどころではありませんでしたね。」
デブのエピソードは心底どうでもいいが、細身の話には思わず首を傾げてしまう。チケットによるチャームがかかれば、正直一目でわかる。自分がかけているわけではないから、こちらから判断は聞かないが、使用者はわかるはずだ。それに、あれだけいろんな女に使っていたら、見分ける力もついているはずだ。なのに効かなかった?おまけにあんなに敵対的とか・・・たとえこの豚がむかっても、そこまでひどい対応はされないはずだ。
・・・脳内にガードチップを埋め込んでいる?いや、そうするためには彼女をあっちの世界に連れて行かなきゃ無理だ。なにより、そんなことをするメリットがない。じゃあ・・・すでに別のチケットのチャームにかかってるとか?もしそうなら理解はできる。チケットの効果の重ねがけはできないから。榊怜の持っている"最新型のチケット"が使われた相手に対しては、告白券の重ねがけをしようとした後、2枚目の告白券を破いたところで何も起こらない・・・・・・記憶破壊が行われることはなかったはずだ。しかし、現実の萩原静乃に起こっている事象と矛盾している。自分の持つ”旧型”が使われた相手に対して、重ね掛けをしようとし、その後破いたら、記憶破壊は行われる。しかし、旧型はここにあるのとデブに渡したものを除いてもう存在しない。あの糞共が重ね掛けをする線は薄い。なぜなら、その辺の女なんてやりたい放題なのに、なぜ同じ女を取り合う必要があるだろうか。しかも体はさておき表情が終わっている女に・・・。そしてもちろん、自分は萩原静乃に告白券を使用してはいない―――――――――――というか、"できない"。だから、重ねがけの線も薄いはず・・・。
・・・いったいどういうことだ?