タマゴのカラを割らないでっ!   作:すうどんたくろう

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4-4-7 アポなし突撃

静乃の登校2日目、やはり、条件反射でといていた問題は相変わらずやれる模様。4時間目まで、その様子はみてとれた。昨日よりも明らかに順応しており、刹那を含め今までつるんできた人たち、そして自分から今まで話してきてなかった人たちに触れ合って、仲良く談笑する様子は微笑ましいものであった。――――――これが、あるべき姿だったんだよな。死んだ魚の眼をした、ダウナーな彼女は、人格が捻じ曲げられた結果なんだろう。時間超越ものでよくある話だ。あるトラウマをきっかけに人が変わってしまったが、過去に戻ってそのきっかけを取り除いて現代に戻ると、人格が曲げられないまま成長していた、なんて。こうまざまざと見せつけられると、俺も昔を思い出してくる。まだ明るかったあのころの静乃を・・・・・・。まあ、思い出すって言っても、雰囲気だけで、具体的なエピソードはさっぱりなんだけどね。

 

 「さてと・・・」

 

昼休み、静乃は刹那に預けて、俺は教室を出た。行先はまず・・・部長のいる教室だ。会長に昼会いに行くのは難しい。ただでさえ会長の囲いが自粛して遠巻きに眺めるだけでとどめているのに、一般生徒―――とくに男子が会いに行くのはいささかハードルが高い。だから、同じ場にいた部長と話すのが楽でよい。

 

 「って、思ったんだけどね・・・」

 

部長のクラスに足を運んだが、どうやらいないらしい。近くの人に聞いても、よくわからないらしい。

思えば、昼休みに部長と会うなんて数えるほどしかない。行きそうなところはどこだ?部室か?

俺はゲーム研究部部室に足を運んだ。鍵は開いており、その中には――――――――

 

 「げ、国広君・・・」

 

ゲーム部顧問である梓先生が一人昼ご飯を食べながら仕事をしていた。

 

 「え?なんでこんな時間に部室に・・・」

 「いや、それ僕も聞きたいんですけど・・・なんですか、もしかして昼でも職員室から逃げてきたんですか。」

 

梓先生は視線をそらした。いやあなた、職員間でいじめられでもしてるんですか・・・

 

 「いやねえ、休み明けで忙しいのと?しかも2年生から一人倒れた生徒とかいるじゃない?しかも千歳先生の親族なわけで・・・。まあ、見てられないというか。そうなると、隣の席の私はその場にいづらくなるじゃない?だって、声かけないわけにもいかないもの。」

 「だからこうして逃げてきたと。」

 「まあ・・・」

 

わかるっちゃわかるけどさ・・・

 

 「まあ私のことはさておき、実際彼女、萩原さんは大丈夫なの?」

 「それについては現状はなんとか。昨日もどうやら昔のことを少し思い出したみたいですし。」

 「それはよかった!」

 

梓先生はほっと胸をなでおろしたように見えた。

 

 「千歳先生にも報告しておくよ。きっと喜ぶと思う。―――――――――――――――で、国広君はどうしてここに?いつもこんなとここないでしょ?」

 

それ、裏返したらいつもこの部室に昼に来てることになりませんかね・・・

 

 「いやその、部長に用があったんですけど、教室にいなくてですね・・・。もしかしたら部室にいたりしないかなって。」

 「ああー宮永さんね、たしかにちょっと前には来てたんだけど・・・」

 「ほんとですか?ちなみに、どこにいったか聞いてたりします?」

 「さあ・・・ああでも、緋色さんに連れられて行ったから、もしかしたら生徒会室に行ってたりするんじゃないかな。」

 「え?またなんかあの人やらかしたの・・・?」

 「うーん、そうは見えなかったけどね。部室にいた時もいつもよりは顔つきが落ち着いていたというか、緋色さんに連れられて行くときも、見つかったというよりは待ち合わせをしていた感じがして・・・」

 「なるほど、了解です。そしたら、そっちをあたってみます。」

 

俺は部室を後にして、生徒会室へ向かった。丁度その時千歳先生とすれ違った。梓先生が言ってたことを思い出すと、たしかに少しやつれたように見える。授業中はそんなに感じなかったのに。周りに生徒がいないところでは、素が出てしまっていたということなんだろうか。

 

 「先生、こんにちは。」

 「こんにちは国広君。梓先生は――――――――」

 「ああ、ゲーム部部室にいましたよ。」

 「了解だ。またあの人は・・・・・・」

 

やれやれといった体で、千歳先生は部室に向かった。千歳先生を気遣ったのか知らんが、その本人から連れ戻されるのは少し面白いな。

てか、下の名前で呼んでるのか。そりゃあ、愛くるしいしみんな呼んでるからそうなるのかねえ。

生徒会室をノックすると、そこから出てきたのはカトル先輩だった。

 

 「カトル先輩、お疲れ様です。会長と宮永部長はいらっしゃいますか?」

 「国広君、お疲れ様です。お二人なら僕は見てないかな・・・。学内にはいるとは思うけど・・・。」

 「了解しました。」

 「そうだ、静乃君は大丈夫かな?」

 

カトル先輩は神妙な顔つきで質問してきた。3年生が2年生の情報なんて仕入れようがない。今どうなっているか、知り合いなんだから、気になるのは当然だろう。

 

 「命に別状は――――――――って、そんなの登校してるんですから大丈夫なのは当たり前ですよね。記憶については、ちょっとずつ思い出してきているみたいですよ。」

 「それなら安心したよ。記憶を失ったって聞いた時の生徒会内の様子は悲惨だったからね・・・。朱鳥君はぐったりしてるし、いつも元気な鹿夫君も静かだったし、鬼道君はその話聞いたら少し仕事残ってたのに帰ったし、結衣君は呆然として――――――そして何か考え事をしてたみたいでさ。」

 

・・・そうだ、神前は生徒会じゃないか。それならば、なおさら会長たちに会う必要がある。神前本人に直接接触するのはマズイ。やはりなんとしても・・・

 

 「それは・・・。けど、安心してください。このペースなら何とかなりそうな気がします。幸い僕のことはまともに覚えてくれているので、なんとかしてみます。」

 「了解。健闘を祈るよ。――――そうだ、火急の用事なら、連絡を取ってみたらどう?やみくもに探すのも時間がもったいない。昼休みも終わってしまうしね。」

 「・・・確かに、どうして初めからそうしなかったんでしょうね。」

 

我ながらあほであるが、カトル先輩に言われたよう連絡を取るためスマホを取り出した。すると、そこにはメッセージが来ており、

 

 

龍華[ 国広、ちょっと怜ちゃんと連絡って取れたりしない?

    あなたと怜ちゃん、結衣を含めてちょっとお話したいことがあるなって

    あと、しゃべるねんどろいどもいたらなおの事いいかな。    ]12:52

 

龍華[ 怜ちゃん既読つかなくてね・・・

    お隣さんの国広なら何か知らないかなあ。できるかぎり早くに話したい。 ]12:53

 

 

・・・どうやら話したいのはあちらも同じみたいだ。

ただ、怜が休んでるんだよな・・・・・・今日の帰りに、あいつのところによるか?――――――――いや、状況が状況だ、まず竜崎に報告が先だろう。

俺は『怜は学校休んでいます。なので、復帰次第セッティングします。』と返事をし、教室に戻った。

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 「あのyoutuberの新着動画、20時ジャストに投稿されるって。」

 

帰宅後、竜崎は俺にそんなことを言ってきた。もちろん、他愛のない世間話ではなく、暗号の一つ。

 

 「了解。あとで確認するよ。」

 

俺はそう返事をした。俺も竜崎と話したいことがあったんだ。内密にね。

8時になると、俺はイヤホンを耳にして、ベッドに寝転んだ。そして頭に直接声が響き始めた。

 

 【もしもし、ちゃんと聞こえてる?】

 

竜崎が身を案じてとった策、それは念話である。竜崎曰く、会話は全て録音されているらしい。なので、なにか込み入った話をするためには、こうした念話でやろうということになった。

 

 【問題ない。大丈夫だよ。】

 【オーケー分かった。じゃあ早速だが、昨日今日の成果を教えてほしい。】

 【そうだね、まず、少し記憶が戻ったらしい。もっとも、その根本原因はまだ探れていない。】

 【なるほど、どんな記憶が?】

 【静乃はどうやらギターやベースが趣味らしくて、昨日緋色会長と宮永部長につれられてどっかに行った時、とある曲を聴いたら趣味の記憶が戻ったんだと。】

 【ふむ、記憶を下り起こすくらいだから、その曲には何かがありそうだ。で、その曲のタイトルは?】

 【それが、静乃本人は思い出せないらしい。なんでも、読めない漢字で書かれた曲らしくて・・・】

 【うーん、じゃあ君は緋色結衣と宮永龍華からその曲については聞き出せたのかな?】

 【それをやろうとしてやれなかったって言うしかないかな・・・。ただ、あっちはどうやら怜と竜崎と俺を交えて少し話をしたいらしい。】

 【なるほど、それならばその時に聞くのが手っ取り早いかもしれない。明日の午後でどうだろう。怜にはこちらから伝えておく。なに、奴は作業中だろうけどかまわん、あいつの家で実行しよう。】

 【了解。2人にはそう伝えておく。では、切るよ。】

 

竜崎は俺の言葉を聞くと、小部屋からとてとてとこちらに近づいてきた。

 

 「じゃ、そういうことでよろしくね。それと――――――――」

 

寝転ぶ俺の上に這い上がり、眼前でこういった。

 

 「そのイヤホン、実は裏のボタンを3回押したら、録音開始できるんだ。”自分のしゃべりたいことを、相手に確実に伝えるなら”そういう手段もあるよね。」

 

俺はすぐさまイヤホンをとった。すると確かに、爪楊枝でぎりぎりさせるくらいの穴があり、ためしにその辺にあった爪楊枝で押してみたら確かに押せた。

3回押したところ、頭の中に直接声が響く。

 

 【そのボタンがそちらからこちらに語り掛けるためのステップとなっている。怜はそちらからこちらに話しかけることはできないって言ってたと思うけど、実は嘘。それをできるように改造しておいた。今後、何かそちらからあればこうやって連絡してほしい。】

 

にっと竜崎は笑った。そして、俺の体から飛び降り、小部屋に戻っていった。

俺の持ってる情報は伝えた。だから、俺が次にやることは・・・

 

 「部長と会長に連絡しよう。明日の放課後、怜の家に集まろうってね。」

 

 

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