超次元ゲイムネプテューヌ 「紫」の系譜   作:ナイル

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disk3 立ち込める暗雲

 ほんの数分前まで、少女のすすり泣く声が響き渡っていたプラネテューヌ教会の聖堂。現在ではその声すら無く、内部は静寂に包まれていた。

 

 そんな静寂に包まれた空間の中でマコトは、先程まで自らの腕の中で涙を流し続けていた妹に、優しく問いかけた。

 

「落ち着いたか?ギア」

 

 そんなマコトの問いに、彼の腕の中で蹲っていた少女、ネプギアはゆっくりとマコトから離れると、泣き腫らした両目に溜まる涙を指で拭い取りながら今度は先程のような無理やり作った物とは違う、心の底からの笑顔を浮かべながら答えた。

 

「うん、大丈夫だよ。私が一人じゃないって事は分かったから……」

 

 自分の言葉の意図を理解してくれた事、そして先程までの状態が嘘のように澄み切った笑顔と瞳で自分の事を見つめている妹の様子から、マコトは今の彼女の状態が言葉通り「大丈夫」なのだと判断する。

 

「そっか。悪かったな、思い切り殴ったりして。痛かっただろ?」

 

 ネプギアの顔に手を伸ばし、自身が叩いた事によって少し赤くなっている彼女の左頬をさすってやりながら、マコトは謝罪する。あまりにも悲痛だった妹の姿が見ていられず、彼女の事を想って怒りの感情を表に出したマコトだったが、それとは別に妹に対して手を挙げた事に対する罪悪感故の行動だった。

 

 そんなマコトに対してネプギアは、

 

「ううん、最初はなんで、どうしてって思ったけど、お兄ちゃんが起こった理由、分かったから……。私の方こそごめんなさい。私、自分が一人ぼっちで、誰も助けてくれないと思ってた」

 

 そう言いながら立ち上がり、強い意志を秘めた瞳でこう続ける。

 

「いーすんさん、アイエフさん、コンパさん、それにお兄ちゃん。皆さん、本当にご心配をおかけしました。情けない姿も見せちゃったけど……、私は、今度こそ本当に大丈夫です!」

 

 胸の前に持ってきた拳を力強く握りながら宣言するネプギア。そんな彼女の様子に、それまで状況に流されるまま、内心ハラハラしながら見守っていた女性たちは安堵のため息を吐きながら口を開いた。

 

「ギアちゃん、苦しかったり辛かったりしたらいつでも私やあいちゃんを頼っていいんですからね?」

 

 と、コンパ。先程まで泣きじゃくっていたネプギアが、正しい方向に向かって強く意思を固めたことに感動したのか、その瞳には少量の涙が溜まっている。

 

「マコトがアンタを殴った時には何をするのかと思ったけど、気付いたのが私だったらきっと同じ事をしてたわ。もう二度とこういうのはナシにして頂戴ね?」

 

 腕を組みながら壁に寄り掛かっているアイエフは、片目を瞑って軽く笑いながらネプギアに微笑みかける。

 

「まさかネプギアさんがそこまで思い詰めていただなんて思いませんでした。ですが、それを無事乗り越えられたのは周囲の方だけでなく、貴方自身の強さ故にです。ですから、もっと自分に自信を持って下さいね」

 

 イストワールはネプギアの今後の為に、彼女自身の強さを諭すための言葉をかける。限りなく近い距離でネプギアを見続けた彼女としては、それまで努力を続けてきたネプギアに、その努力は無駄ではないと伝えたかったのだ。

 

「改めて分かったか?お前の周りにはこんなにも温かくて優しい人たちが居るんだ。大事にしろよ、ギア」

 

 そしてマコトはネプギアの頭を撫でてやりながら、改めて彼女の周囲は優しさで溢れている事を妹に教える。四人のそんな言葉を受けたネプギアは、満開の笑みを浮かべて、

 

「皆さん……。ありがとうございます!!」

 

 四人に、まっすぐな感謝の気持ちを伝えるのであった。

 

 さて、ネプギアが本来の元気を取り戻した所で一件落着、ハッピーエンドと行きたいところだが、ここで一人の少女―――アイエフが爆弾を投下する。

 

「あ、ところでさっきから気になってたんだけどネプギア、アンタ何時からマコトの事を『お兄ちゃん』なんて呼んでたのよ?私が知ってる範囲では確か『マコトさん』って名前で呼んでなかった?それにマコトも、前はネプギアの事を『ネプギア様』って呼んで敬語で話してたのに、今は『ギア』なんて呼んでるし。アンタ達、一体どういう関係な訳?」

 

 そう。先程からマコトもネプギアも、思考に余裕が無い状態であったためにお互いに普段プライベートで接する時と同じ態度で会話をしてしまっていたのだ。彼らが兄妹である事を知っている本人たちやイストワールは違和感無く会話をしていたが、それを知らない―――というより隠されて来た―――アイエフとしては、彼らの会話の様子が、自分の記憶にあるものと大いに異なっていたため、違和感を感じずにはいられないのであった。

 

「あ、それは私も気になるです。マコトさんとは今日初めてお会いしましたけど、私にはお二人がお仕事だけの関係にはとても見えないです。ズバリ、お二人はどういうご関係なのですか?」

 

 マコトとはこの時が初対面のコンパだったが、彼女にもどうやら彼らが他人同士には見えなかった様だ。

 

 彼女たちは純粋な疑問から二人に質問をしているのだが、隠し事をついうっかり漏らしてしまった形であるネプギアとマコトは気が気では無く、ネプギアは「あ、えと、その……、あははは……」と、乾いた笑いで誤魔化すことしかできず、一方のマコトは「あちゃー」などと言いながら、右手で両目を覆って天を仰いでいる。

 

 そして誰がどう見てもやらかしてしまっているのにも関わらず、何とか誤魔化す手段を模索する二人に、イストワールが更なる追い打ちをかける。

 

「ネプギアさん、マコトさん。アイエフさんとコンパさんには本当の事をお話ししてもいいのではないのでしょうか?お二人とも悪い人では無いのですし……」

 

 そんなイストワールの言葉に、ネプギアは「あわわわ……」と言いながらあたふたするが、マコトの方は、「ハァ、流石に誤魔化しきれない、か」と、頭を掻きながら呟くと、アイエフとコンパの方に向き直り、口を開いた。

 

「アイエフ、コンパさん。これから言う事は他言無用で頼むよ?……それじゃ、改めて。……日頃妹達がお世話になっております。(わたくし)、ネプテューヌとネプギアの兄をやらせて頂いております、マコトと申します。どうぞ宜しくお願い致します」

 

「「へっ?」」

 

 プライベート用の口調から一転対外用、つまり仕事用の口調に切り替えながら改めて自己紹介をするマコトの言葉に驚いた様子のアイエフとコンパ。そんな二人に、マコトは再びプライベート用の口調に切り替えて、心底面倒臭そうに続ける。

 

「だから、ネプテューヌとネプギアは俺の妹だっつってんだよ。要は俺とギアは兄妹同士だってことだ」

 

 そう。この少年、マコトはネプテューヌとネプギアの兄、つまりここ「革新する紫の大地」プラネテューヌの管理者である、守護女神パープルハートとその妹、女神候補生のパープルシスターに連なる、もう一人の「紫」の系譜に当たる人物である。

 

 そんな事実を意味する彼の言葉にアイエフとコンパは一度顔を見合わせると、

 

「「ええええぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!??????」」

 

 大音量の絶叫を、昼下がりのプラネテューヌ教会中に響かせたのであった。

 

 

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 プラネタワーそのものを揺るがしたのではないかと思える大絶叫から数分後、プラネテューヌ教会内部の聖堂には、アイエフとコンパに質問攻めにされた事によって疲れ切った表情をしているネプギアとマコトの姿があった。

 

 そんな二人を尻目に、彼らを質問攻めにした人物の片割れ―――アイエフが一人納得したように頷きながら誰にともなく言葉を発する。

 

「成程ね。つまりマコトはネプ子、それにネプギアとは違って何も特別な力を持っていない、どちらかと言えば一般人の部類に入る人種だから女神の兄妹ってことで騒がれたくなかったって訳ね」

 

 そんなアイエフの言葉に、若干ぐったりしながらも全力で嫌味を込めてマコトが返す。

 

「ああ。現にたった今それが原因でお前らに酷い目に遭わされたからな」

 

 その言葉を受けたアイエフは、傍目にはとても綺麗に見えるが、それを向けられた者は震えあがるであろう清々しい笑顔を浮かべながら、マコトに告げる。

 

「何か仰いましたか?我が敬愛するパープルハート様の兄君であらせられる マ コ ト 殿 ?」

 

「イエ、ナンデモゴザイマセン」

 

 彼女の恐ろしい笑顔と、かなり棘のある言葉に気圧されたマコトは、思わず片言で機械的な返事を返してしまう。

 

 アイエフはそんなマコトに呆れた様な眼を向けて鼻で笑うが、今度はコンパがマコトの着ている服について質問をする。

 

「良く見たらマコトさんの着ているパーカーってねぷねぷの着ているのと色が違うだけでデザインは同じですよね。あまり売ってるところを見ないですけど、そのパーカーってどこのお店で売ってるですか?」

 

「ああ、こいつは今は絶版になってるモデルで、俺とテーヌが着てるのはそれを真似て俺が作ったんだよ。いやぁ、俺が昔着てたのをテーヌが欲しがってなぁ。そん時にはもう製造されてなくて店頭在庫はカラーが微妙だったから思い切って作ってみたら上手く行ってさ、それ以来俺のもテーヌのも手作りって訳」

 

 なんでもなさげに言うマコトだが、残りの四人はその言葉に黙りこんでしまう。それもその筈で、服の縫製、特にパーカーなどを作るのは非常に手間のかかる作業であり、いくら市販品のコピーとはいえ、そう簡単に素人が出来るような事ではない。そのため、全員驚きのあまり声が出ないのだ。

 

 しかし、静まり返った空間でぽつりとネプギアが呟く。

 

「……ずるい」

 

「へっ?ギア、今なんつった?」

 

 あまりにも唐突で、脈絡のない言葉に思わずマコトはネプギアに聞き返してしまう。そんなマコトに対して、ネプギアは掴み掛らんばかりの勢いで捲し立てる。

 

「お姉ちゃんだけずるいよ!お姉ちゃん、あまり物持ちの良い方じゃないのにあのパーカーだけは大事に着てると思ったら、お兄ちゃんの手作りだったなんて!お兄ちゃん、私にはそういう物くれた事無いのにお姉ちゃんにばかりずるいよぉ!!」

 

 その場でごねる様に騒ぎ立てるネプギアに対して、どのように対処していいのか分からないマコト。他の三人の力を借りるべくそれとなく彼女たちの方に視線を向けると、

 

 アンタが悪いわ。自分で何とかしなさい。と呆れ顔でアイコンタクトを送って来るアイエフ。マコトは心の中で彼女に対して呪詛の言葉を吐きながら、次の人物へ視線を向ける。

 

 次にマコトに視線を向けられた女性、コンパは困ったような表情で笑いながら指で頬を掻いている。駄目だこの女、最初に話を振った癖に使え無さ過ぎる。マコトは心の中でそう結論付けてから、頼む、お前だけが頼りだ。と、最後の砦であるイストワールに向けて視線を動かす。

 

「マコトさん、ネプテューヌさんもネプギアさんも貴方の妹なのですからそういう差別は……」

 

 が、なんとイストワールに至ってはネプギアの側に回り始めていた。そのため、マコトはもはや誰に頼ることもできず、イストワールに対しても心の中で呪詛の言葉を吐きながら全力で頭を回転させ、とりあえずではあるがこの場を乗り切れそうな言葉を弾き出す。

 

「わ、分かったから。今度お前にもなんか作ってやるから。だから機嫌直してくれよ、ギア」

 

 困ったように―実際問題苦し紛れなのだが―マコトが言い放った言葉を聞いたネプギアは、先程までの様子が嘘であったかのように、その表情を笑顔に変える。

 

「本当!?絶対に絶対だからね?約束だよ!?」

 

「ああ。絶対に絶対、約束だ」

 

 そう言いながらマコトがネプギアの頭を撫でると、ネプギアは嬉しそうに目を細めながら、「えへへ、お兄ちゃんからプレゼントだぁ……」と声を漏らす。

 

 そんな彼らの様子を壁に寄りかかったまま見つめるアイエフは小さく溜め息を吐くと、驚いたように呟く。

 

「まさかネプギアがあそこまで子供っぽい姿を見せるなんて……。でも、ああやって甘えられてる姿を見てると、マコトがあの二人のお兄さんってのが分かる気がするわ」

 

 そんなアイエフの言葉に、彼女の隣で微笑みながら兄妹の様子を見つめていたコンパが続ける。

 

「私もあんなギアちゃんを見たのは初めてです。ねぷねぷと一緒に居る時は楽しそうにしてはいましたけど、あんな風には甘えてなかったですし。ギアちゃんはマコトさんの事がねぷねぷと同じか、それ以上に大好きなんですね」

 

 二人の言葉通り、ネプギアは普段あまり見せない蕩けきった笑みを浮かべながら、マコトに撫でられているが、日頃真面目な姿を見せ続ける彼女のそのような姿は、彼女との距離が近い二人にとっても、今まで見た事の無い姿だった。

 

 そんな二人に、いつの間にか二人の傍に移動してきていたイストワールが小さく微笑みながら告げる。

 

「ふふっ、ネプギアさんは以前からマコトさんにだけはあのように年相応の姿で甘えるんです。ネプギアさんが最初に懐いたのもマコトさんでしたし。それに、お二人には信じられないかも知れませんが、普段はネプテューヌさんと彼を取り合って喧嘩をすることもあったんですよ?」

 

 イストワールが優しく微笑みながら告げた普段のネプギアの姿に、アイエフとコンパの二人は、心底驚きながら言葉を零す。

 

「嘘……、ネプ子とネプギアが喧嘩!?そんなの一度も見たことないわよ!?」

 

「あのギアちゃんがねぷねぷと喧嘩だなんて……。信じられないですぅ……」

 

「それだけ彼女たちがマコトさんの事を慕っているのですよ。とっても優しくて色々な事が出来る自慢の兄だと二人とも口を揃えて言いますから」

 

 日頃ネプテューヌとネプギアの言っている事を言いながらくすくすと笑うイストワールの話に聞き入るアイエフとコンパ。和やかな雰囲気を放つ三人に、ネプギアの頭を撫でるのを止めたマコトが、それまでとは一転、真剣な様子で声をかける。

 

「なあ、出来ればいつまでもこうやって和やかに雑談でもしていたい所だけど、流石に状況が許してくれないな。って事で、そろそろ真面目な話をしないか?」

 

 そんなマコトの一言に、その場に漂っていた和やかな空気が霧散し、一気に真剣な空気へと切り替わる。マコトの隣に立つネプギアを始めとし、それまで表情に笑みを浮かべながら会話をしていたイストワール、アイエフ、コンパの三人も、それぞれ表情を真剣な物へと切り替える。

 

 そんな彼女たちに対して、まずはマコトが口を開いた。

 

「さて、俺はたった今状況が許さないという言葉を口にした訳だが、その状況というやつが詳しく分かっていないのも事実だ。そこでギア。辛い事を思い出させる事になるとは思うんだが、三年前にギョウカイ墓場で一体何があったのか。それを俺達に教えて欲しい」

 

 マコトの放ったその一言に、ネプギアは一瞬暗い表情をするも、すぐにその表情を決意に満ちた物へと変えて力強く頷いた。

 

「……っ、分かったよ。……三年前、ギョウカイ墓場に向かった私たちを待っていたのは一人の女の人だった」

 

 静かに語り出すネプギア。そんな彼女の言葉に、四人は黙って耳を傾ける。

 

「その女の人、人間ではなかったように見えたんだけど、すごく強くて、お姉ちゃん達が四人がかりで戦っても勝てなかった……。私は、見てる事しか出来なくて、お姉ちゃん達は手も足も出なくて、それで、その人が、私に向かって、手に持った、鎌を……っ!!!」

 

 途切れ途切れになりながらも三年前に自身が見た事を説明するネプギアだが、最後の部分ではやはりというべきか強く言葉を切って、隣に居るマコトの腕に抱きついてしまう。抱きつかれたマコトは、それを優しく受け止めて軽く背中を叩いてやるが、それでもネプギアの呼吸は荒く、全身が震えていた。

 

「余程怖い思いをしたんだな。苦しいだろうに、頑張ったな。ありがとう、ギア」

 

 自身に縋りついて震えるネプギアを右手で軽く抱きしめてやりながら、マコトは彼女を労った。

 

「……今度はギアを救出したっていう数日前についてだ。これに関しても俺は何も知らないからな。イストワール、アイエフ、コンパさん。頼めるか?」

 

 そう言ってマコトは三人の方へ視線を向ける。視線を向けられた三人の内アイエフが、小さくええ、と言いながら説明を始める。

 

「……私とコンパがイストワール様の指示でギョウカイ墓場に向かったのは今日から数えて三日前の事よ。目的は、三年前にギョウカイ墓場に向かって以来連絡の途絶えている女神達の安否確認」

 

「名目上安否確認としていますが、彼女達が捕らわれているのはほぼ確定。実際にはシェアクリスタルを用いた、女神の救出作戦でした」

 

 淡々と語るアイエフの言葉に補足説明を加えるイストワール。そんな彼女達に続く形で、コンパが口を開く。

 

「幸い、捕まっていた女神さん達の所には簡単にたどり着けたです。ですけど、いよいよシェアクリスタルを使って救出、となった時に妨害を受けたです……」

 

「妨害?……さっきのギアの話に出てきた奴か?」

 

 妨害という言葉を聞いたマコトが顔を顰めながら問いかけるが、その問いには彼の腕の中に居るネプギアが答える。

 

「ううん、違う……。お姉ちゃん達と戦ったのとは別の人だった……」

 

「ネプ子達が戦ったのは普通の女性っぽい見た目の奴だったみたいだけど、アイツは全身真っ黒でなんて言うか巨大ロボットって感じのメカメカした見た目の奴だったわ」

 

「ですけど、あの真っ黒い人もすごく強かったです……。結局隙を見て救出できたのはギアちゃん一人。その上ギアちゃんの必殺技でも傷一つ付けられませんでした……」

 

 コンパがそういった瞬間、マコトの腕の中でネプギアが小さく震える。そんなネプギアの様子から、その黒い人物との戦闘もまたネプギアにとって、死の恐怖と同等のトラウマになっているのだろうと考えるマコト。

 

「プラネティックディーバで傷一つ……。こりゃ思ってた以上に厄介だな……」

 

 顎に手を当てながら呟くまことは、更に言葉を続ける。

 

「テーヌたちをたった一人で手玉に取ったその女性もそうだが、お前らが戦った黒い奴ってのも恐らく女神にタイマンで勝てる程度のスペックは持ってる。……何より、そんな奴が大した戦力の残って無い俺達に対する警戒に当たってるってのがヤバい」

 

 先程以上に真剣な空気を纏って考察を続けるマコトに、イストワールが問いかける。

 

「その黒い人物が警戒に当たっているという事が危険とはどういうことですか?」

 

 アイエフとコンパも、イストワールと同様にマコトの言っている意味が理解出来ないのか、首を傾げながらマコトを見つめている。

 

「俺達の側の最高戦力である四人の女神が捕らわれてるんだ。最低でも女神にタイマンで勝てるような実力を持ってるような奴に対して勝ちに行ける戦力がこっちにあると思うか?」

 

 そんなマコトの言葉に、彼の腕の中で未だに震えているネプギアが小さく呟く。

 

「そんなの、ある訳ないよ……。私だって傷一つ付けられなかったのに……」

 

 他の三人もネプギアと同じ考えのようで、苦い顔をしながらも頷いて見せる。そんな三人の様子を確認しながら、マコトは更に言葉を続ける。

 

「そうやって考えた時に、そいつをそこに置いておくってのははっきり言っておかしいんだ。捕虜の見張りなんて腐りやすいポジションに明らかにオーバースペックな人材を置いてる理由は一つしかない」

 

 そこで言葉を区切り、一旦深呼吸をすると、マコトは苦虫を噛み潰したような表情で続けた。

 

「……そんな人材をそこに置くだけの余裕がある。つまり向こうにはそいつを腐らせても困らないだけの戦力があるってことだよ」

 

「なっ……!あ、あんな化け物と同等かそれ以上の奴が犯罪組織にはまだまだいるって事!?」

 

 マコトの言葉の意味をいち早く理解したアイエフが、驚きのあまり大声で叫ぶ。

 

「現状そう考えるのが一番しっくり来る。そうでなきゃそんな奴が看守をやってる事の説明が付かないんだ」

 

「そんな……。あんな人がまだまだいるなんて……」

 

 二人の強敵の恐ろしさを肌で味わっているネプギアは、マコトのその仮説に、ただ絶望して震える事しかできなかった。

 

「兎に角、そんな化け物共を相手にしなきゃいけない以上、俺達自身の実力の底上げは必須になるんだが、果たしてそれだけでどうにかなるか……」

 

 マコトの一言に、絶望という名の沈黙に包まれる一同。しかし、そんな沈黙を破る者が居た。

 

「一つだけ、一つだけ方法があります」

 

 決して大きな声ではないが、力強い声で語るイストワール。その言葉はまさに、絶望という暗闇に差し込んだ、一筋の光であった―――




ネプギア「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」

はい。という事でお送りしました第三話。みなさんこんにちは、作者のナイルです。マナーモードギアちゃん可愛い。

今回のお話は個人的な感覚ではギャグ八割シリアス二割で書いたんですが、正直言ってあんまりギャグっぽくないな、と(汗

以前から思っていた事なんですが、僕ってテンポのいいギャグ描写苦手なんですよね。なのでギャグのつもりで書いた前半部分だけで執筆時間の八割を使ってます。それくらい難産でした(笑)誰かギャグ描写のコツ教えてください!なんでもはしません!

そして次回からいよいよ彼らの旅がスタートします(予定)。それに当たって、第一次設定吐き出しが次かその次あたりのお話で終わるので、それと同時にマコト君の設定資料みたいなのを投稿しようと思ってます。

という事で今回はこの辺で。次回もお楽しみに!



イストワール「私に考えがある」←正直最後の場面このセリフにするかどうかでめっちゃ悩んだ。
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