夢の中で抱くもの(完結)   作:曇天紫苑

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「神様を見たことはたぶん、無いと思う。
 もし、神様にも願い事があるとしたら、それは何に願えばいいのだろう」

 『トップをねらえ2!』より


その世界は誰のために?

 

 暁美ほむらから発散される異様なオーラは、少なからず周囲の空気を変えていた。

 悲しげだった筈の鹿目まどかが、首を傾げている。

 

「ほむらちゃん、さっきって……?」

 

 自分へ向けられた言葉と考えたのだろう。詳しい話を聞こうと、鹿目まどかが近づいている。

 その姿を気遣わしげに一瞥し、暁美ほむらは首を振った。

 

「いいえ、まどかじゃないの。まどかじゃなくて、そうじゃなくて、今のは、そこの、百江なぎさに向けたの」

 

 遠い、遠い結界の先にいる、百江なぎさ。彼女を指さし、暁美ほむらは巴マミの敵意を弾き返した。

 百江なぎさは何を言われているのかを理解していないだろう。それは承知の上で、暁美ほむらは説明する。

 

「だって、こくか。私はあなたの正体を全く知らなかったわ。あの子と会話したのは、さっきが最初だったのでしょう?」

 目を丸くしたまま聞き入れていたこくかは、そこで何かに気づいたらしい。

「……ああ、そういう」

 

 こくかが酷く笑いだした。あまりにも大声だった。

 暁美ほむらの声で笑い、喉が潰れる寸前まで笑い、咳が止まらなくなるまで笑い続けた。

 

「ああ。ああ……なんってバカらしいのかしら! 何、戦う必要なんて一つも無かったじゃない……無意味な事をしてしまったのね」

 

 鹿目まどかの前だからか、こくかはすぐさま大人しくなった。だが、今も溢れ出す寸前の笑みが浮かび、時折笑い声が漏れてしまっている。

 使い魔達がついに戦いをやめた。こくかの喜悦が伝わって、動けなくなったのだ。

 流石に周囲の視線を無視できなくなったのか、こくかは満面の笑みで手を叩いた。

 

「暁美さん。ありがとう、やっぱりあなたって私より少し大人だと思うわ。思慮深いもの」

「……気づいたのは今よ。百江なぎさと最初に会話をした時点で気づかなかった方が恥ずかしいわ」

 

 暁美ほむらは意識的に目を合わさない様にした。

 こくかも同じ風に考えているだろう。が、表向きには機嫌の良さそうな態度しか示さない。巴マミに向かって微笑んでいる。

 

「巴さん。結構な遠回りをしてしまったわね」

「どういう、こと?」

 

 巴マミは焦りを浮かべていた。全く理解が及んでいないのだろう。

 そんな戸惑いを受けて、こくかは得意げに髪を撫でた。

 

「だって、百江なぎさはまだ死んでないわよ」

「……えっ?」

 

 告げられた内容を巴マミが飲み込むのは、少し遅れてからだ。

 

「でも、なぎさは確かに円環の理から……」

「なら、どうして私が悪魔だって知っていたの?」

 百江なぎさを見つめると、こくかは暁美ほむらを指さす。

「……そこの暁美ほむら以外には、誰にも言わなかったのに。あなたは知っていた。どうして?」

 

 核心に触れると、こくかは自分の髪を掻き上げようとした。やはり、長さが足りずに手が空振り、どこか不満げだ。

 鹿目まどかが話に全く付いていけないのか、ひたすら首を傾げている。その姿に目を向けると、こくかは鹿目まどかへ優しげに笑いかける。

 戸惑いつつも、鹿目まどかは笑いを返した。こくかは目に涙を浮かべ、彼女から目を逸らす。

 

「……百江なぎさが私を知っている筈がない。だって、あなたは円環の理から来たんでしょう。円環の理から、暁美ほむらを」こくかは自嘲した。「暁美ほむらをインキュベーターから助けに」

 一呼吸置き、また言葉を続ける。

「私はその後で悪魔となった。なのに、どうしてあなたは私の事を知っているの?」

 

 百江なぎさが結界から身体を出していた。話を聞こうとしているのだろう。戸惑い、疑問を浮かべながらも、耳を傾けている。

 こくかは唐突に美樹さやかへ声をかけた。

 

「美樹さやか、私は悪魔なんだけれど、何か言う事は?」

「……は? え、何の話よ?」

 

 言葉の意味が何一つ分からなかったのか、美樹さやかは何度かまばたきをする。

 それは、彼女が何も知らないという証だ。こくかは満足げに頷き、百江なぎさへ向き直る。

 

「ほらね?」

「いや、あのっ、でも」やがて、百江なぎさが自分の頭を押さえた。「あ、あれ……? そう、なのです。わたしは、魔法少女なんか、知らない……?」

「……ほらね?」こくかは繰り返した。

 

 彼女達の会話を正確に理解できたものは、恐らくこの場に居ないだろう。

 だが、巴マミはおぼろげにも飲み込めたのか、希望を見出した様子で、そして縋る様に声を漏らす。

 

「それじゃあ、百江さんは……」

「夢が終わっても百江なぎさは続くみたいよ。目的達成よ、良かったわね」

 

 嫌味の様に付け加えられた一言。だが、それは優しさに満ちていた。

 

「……なんだ、そうだったのね。そっか、戦わなくて良いんだ」

「マミ……」

 

 巴マミは魔法少女の姿を解除した。その声には安堵と、少しの罪悪感が乗っている。

 どれほど楽しげに立ち回っても、やはり心の中では思う所があったのだろう。巴マミは安心したのか、百江なぎさを抱きしめている。

 

「……分かったら、この夢を維持するのをやめて貰えないかしら」

 

 こくかの一言に、百江なぎさが頷いた。

 そして、この世界に漂っていた空気が僅かばかり変容する。優れた感性が無ければ気づかない程度の、些細な違いだ。しかし、大きな意味を持っている。

 

「さあ、まどか」

「あ、あのさ。さっきから、何の話を……」

「まどか、気づいて。ここは、あなたの夢の中よ」

 

 鹿目まどかが急に黙った。妨害が消えたことで、些細な一言でも意味が生まれている。彼女の中で、記憶が弾けているのだ。

 しばらくの間、鹿目まどかは考え込み続ける。そして、こくかが心配そうに見守る中、彼女は顔を上げた。

 

「……あ。そ、っか」

 

 何もかもに気がついた。そういった表情だ。

 鹿目まどかが気づいたと同時に、夢の世界が歪んだ。崩れる前兆が起きている。

 

「だったら、みんなは本物じゃないんだね。こくかちゃんも?」

「うん、私はまどかの夢の登場人物だよ」

「ほむらちゃんや、みんなも、なんだね……」

「……さあ、そうでもないかも」こくかは、嬉しそうに会話をした。「さ、そろそろ朝よ。早く起きなきゃ、今日は美樹さん達と一緒に学校へ行く約束でしょう?」

 

 夢の世界は半分が削れている。見滝原は形を維持できなくなり、幻の様に消えていく。

 そんな自分の夢が崩れる瞬間を鹿目まどかは切なそうに見つめ、小さな溜息を口にした。

 

「……ちょっと残念かな。魔法が使えて、みんなの役に立てて、すごく楽しかったのに」

 こくかは大きく首を振った。だが、こくかが何かを言う前に、鹿目まどかが指を立てる。

「ちゃんと起きないとね」

 

 夢を自覚したと同時に、鹿目まどかの姿が消え始めた。

 

「でも、折角だから……」

「?」

 

 鹿目まどかが呟くと、その場の景色が変わる。崩れかけの空は天井に、半分消えていた足下は床に、大きめの丸いテーブルと、小さな椅子が七つだけ。

 テーブルの上には七種類のケーキと、ティーカップだ。

 椅子に腰掛けると、鹿目まどかは手招きをした。

 

「起きる前に、ちょっとだけ、みんなでケーキでも食べよ?」

 

 世界はもう、一つの部屋にまで縮小していた。

 急な誘いに、こくかは明らかに戸惑っている。だが、鹿目まどかの言葉を飲み込むと、とても嬉しそうに頷いた。

 

+

 

 

 

 空の皿と、中身のないティーカップを眺めると、こくかは緩みすぎた口元を少しだけ引き締める。

 もう、何時間話しただろうか。

 夢の最後は時間すら引き延ばされて、鹿目まどかの気が済むまで終わらなかった。それまでは、ケーキもお茶も無限に現れていたのだ。

 

「楽しかったっ、色々と話しちゃったね」

 

 カップを置くと、鹿目まどかは満足そうに頷いた。

 巴マミと百江なぎさ、美樹さやかと佐倉杏子、暁美ほむらと、鹿目まどか。そこに部外者を一人足した七人は、飽きずに楽しく夢を振り返っていた。

 ナイトメアとの戦い、夢の中で見た多くの事。その全てを、彼女達は幸せと共に語り合った。

 だが、それも終わりだ。飽きはしなくとも、区切りはある。

 

「……うん、楽しかったね」

 

 こくかは目元を何度か手で拭い、嗚咽を咳払いで誤魔化している。気を抜けば漏れ出す感情を、何とか堪えている。

 

「みんな、ありがとう。この夢は本当に楽しかった」

 

 鹿目まどかは、全員に感謝を送った。

 最後に暁美ほむらとこくかの二人へ顔を向けると、どこか寂しそうに微笑んだ。

 

「ほむらちゃんと、こくかちゃん。二人とも、私の夢の中だけの人なんだよね」

「……」

「もう、会えないのかな?」

 

 こくかがびくりと震えた。だが、すぐに目元を隠して、穏やかな表情を見せる。

 

「そう、かもね。でも悲しまないで。大丈夫、私が居なくても、まどかにはあなたを愛してくれる人が沢山居る」

 

 暁美ほむらが相槌を打った。彼女もまた、寂しさを見せない様に立ち振る舞っている。長年積み重ねた感情を抑える術は、今も力を発揮していた。

 

「……まどか、もう行かないと」

「うん」

 

 残念そうな顔はしていても、鹿目まどかは迷わず目覚める道へ進んだ。夢は夢なのだ。

 

「それじゃあ、また夢を見る時が有ったら会いましょうね」

「またね、こくかちゃんも、ほむらちゃんも」

 

 鹿目まどかは手を振って、彼女達から背を向けた。

 

「待っ」

「駄目よ」

 

 一瞬だけ、こくかが手を伸ばした。だが、その手は鹿目まどかを捕まえるより先に、暁美ほむらが掴み取る。 

 暁美ほむらは首を振った。もちろん、彼女の言いたい事はこくかも分かっている。

 

「また、会いたいな」

 

 小さく振り返り、鹿目まどかはそう呟いた。そして姿を消した。

 

「……まどか」

「嘆く事は無いわ。あの子が消える訳じゃない。元の世界に戻るだけ。こくかも、分かっているんでしょう?」

「ええ、分かってる。分かってるわ……分かってる、のよ」

 

 目元を隠すと、こくかは壁に背中を寄せる。

 それも僅かな間だけで、すぐに不敵な笑い顔へと戻っているが、無理をしているのは明らかだった。

 誰もその様子に言及しないのは、一種の優しさだろうか。こくかから目を逸らし、佐倉杏子が伸びをした。口元にケーキが残っていた。

 

「さあて、あたしもそろそろ起きないとね」

 

 椅子から立ち上がり、佐倉杏子は欠伸をする。

 テーブルと椅子が消えた。ただの広い部屋が残っているが、それもすぐに消えるだろう。

 巴マミと百江なぎさが目を合わせ、手を繋いでいた。

 

「百江さんも早く起きないと遅刻するわよ?」

「は、はいっ」

 

 二人は仲の良さを見せつける様に身を寄せ合い、どこか申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「みんな、ごめんなさいね」

「謝るなよ」

「え?」

「そいつを助けたかったんだろ? 謝ったら、その気持ちまで間違っていた事になっちまう」

 

 「だから、いつも通り笑ってくれよな」佐倉杏子がそう告げて、巴マミは困った様に百江なぎさの頭を撫で回した。

 憎しみ合う事も、責める事もない。ただ、この優しくも温かかった夢の中を懐かしむ様だ。

 

「そういえば、夢が覚めたら記憶はどうなるんだ?」

「さあ? 覚えておきたい気持ちが強かったら、覚えておけるんじゃないかなぁ」

 

 こくかがデタラメな返事をした事は、佐倉杏子にとっても分かりやすかっただろう。

 佐倉杏子は呆れた風に肩を竦め、溜息を吐いた。

 

「起きてみれば分かるか。おしっ、起きるとすっかな」

 

 佐倉杏子は自分の頬を抓った。多少痛かったのか、顔をしかめている。

 自分が起きない事が不思議だった様で、今度は美樹さやかの頬を抓った。

 

「いたっ、こら、何すんのさ」

「あ? ほら、もしかしたら、これで起きられるかもしれねえじゃねえか」

「いや、無いから。そのままにしていたら起きられるから」

「ほら、マミさんとなぎさだって」

 

 巴マミと百江なぎさはほとんど完全に消えている。言うべき事を言って、後は満足したらしい。

 最後に軽く手を振って、彼女達の姿は消えた。残した言葉は、「ちゃんと覚えていたら、外で会いましょう」だ。

 

「さっさと起きやがって。ほら、さやかも起きねえとな」

「うん……そう。そうだねっ!」美樹さやかは声を大きくした。

「?」

「いやいや、何でもないよ。でも、あたしはまだ、ほむらと話したい事があるからさ、先に起きていいよ?」

「遅刻しても知らねえぞ?」

 

 美樹さやかが心配ご無用と親指を立てた。

 指が多少なりとも震えていたが、佐倉杏子は言及しない事に決めたらしく、もう一度息を吐き、腕を組んだ。

 

「そうかよ。さっさと起きろよな」

「あんたはあたしの姉か何かか」

 

 向けられた言葉を楽しげに受け取り、佐倉杏子は腰に手を当てる。

 その姿が消えはじめた所で、彼女は少し驚いた。だが、すぐに不敵で頼もしい表情となり、別れの挨拶も明るく済ませた。

 

「じゃあな、楽しかったぜ」

 

 姿が霞み、程なくして佐倉杏子は完全に夢の中から消えた。

 同時に、こくかは自分の姿を偽る事をやめた。元の形だ。暁美ほむらの姿だ。元の黒く長い髪へ戻り、軽く髪を掻き上げている。

 鹿目まどかはまだ目を覚ましていないのだろう。だが、ほとんど起きているのか、もう夢の世界は形を留めていない。

 残るは、こくかと、円環の理から訪れた暁美ほむらと、美樹さやかのみ。

 

「これで私も、円環に戻るのね」

「……」

 

 暁美ほむらは髪を掻き上げた。そして、真摯な顔つきでこくかへと顔を向ける。

 

「こくか」

「何か言いたい事が?」

「ええ。まどかの事、お願いするわ。私はもう終わった身だから、何もできないけど……あなたは違う。この外側にいるまどかに私達は不要かもしれないけど、それでも、何か有ったらいけないから」

 

 淡く、少し残念そうだった。暁美ほむらにとって、鹿目まどかを助けるというのは、生きている限り続けなければならない事だ。そう、死んだ暁美ほむらには、続ける権利がない。

 こくかは面と向かって返事はしない。ただ、暁美ほむらの目を見つめるだけだ。そこから何かを読み取り、暁美ほむらは緊張を解いた。

 こくかが軽く肩を叩くと、暁美ほむらの姿が消える。その間際に、こくかは一言だけ口にした。

 

「それは、あなたがやりなさい」

 

 最後の一瞬、暁美ほむらが顔を上げる。だが、言葉を口にする前に、その身体が消えた。

 

「あいつも行っちゃったかぁ」

 

 一連の流れを見届けた美樹さやかは、感慨深げに伸びをした。

 身体が透けているが、驚きはないのだろう。むしろ、最初から分かっていたかの様だ。美樹さやからしい明るさで、その声音は少しだけ軽い。

 

「あなたは、円環に戻るのね」

「まあね。でも、あんただって、みんなの居る世界に行く気はないでしょ?」

「あら、そう思う?」

「違うの?」

「……違わないわ」

 

 お手上げだ、こくかは両手を挙げた。

 悪魔の身は、今もまるで消えない。美樹さやかの不思議そうな視線を感じながらも、悪魔は説明などしない。

 

「佐倉杏子に挨拶はしなくて良かったの? 二度と会えないのに……」

「いや、そうだけど。杏子には出きるだけ知らせたくないし、杏子の居る世界には、その世界のあたしが居るんだろうしさ。あんまり、ワガママも言えないでしょ」

「そうね。困らせるのは感心しないわ」

「あんたが言うと、何か変な感じがするね」

「大きなお世話よ」

 

 悪魔は美樹さやかから目を逸らし、消えていく世界を眺めた。

 そして、多少の躊躇いを重ねると、彼女は美樹さやかに問いかけた。

 

「本当に、人間へ戻る気はないの?」

「うん、無い」はっきりとした回答だった。

「……願えば、取り戻せるかもしれないわよ」

「良いんだって。あんたが我慢してるのに、あたしが戻るってのも、何か負けた気がするしさ?」

「何それ」こくかが眉を寄せる。「美樹さんってやっぱり分からないな」

「あ、その反応、ほむらっぽくない。よく分からない演技が染み着いちゃってるんじゃないの?」

「……ま、ね。この演技は疲れるから嫌いなんだけれども、悪くなかったよ。新鮮だったし、まどかとの関わり方も少し違って見えた」

「そうと知った後だと、ほむら以外の何でもないけどね」

「言わないでよ、これでも完璧に別人のつもりだったんだから、恥ずかしくなるでしょ」

 

 悪魔は目を伏せた。その外見が時折こくかへ変わりそうになるが、暁美ほむらの形自体は一つたりとも歪みはしない。

 美樹さやかとの会話は打ち切られた。元々、この二人に長々と続く話題などないのだ。

 寒々とした雰囲気に負けたらしく、美樹さやかが頭を掻いた。何度か口を開いては咳払いをして、最後に口元へ笑みを浮かべた。

 

「色々有るし、分からない事も山ほど有るけど。悪魔とか何言ってるのか分からなかったけど。あんたは暁美ほむらだった訳だ。それなら、別に文句も言わないよ」

 美樹さやかはもう一度咳払いをした。

「それに、まあ、楽しかったしさ」

 

 彼女は、悪魔とは目を合わせない。

 悪魔もまた、美樹さやかの目を見なかった。ただ、意外な言葉を告げられて、悪戯っぽく笑う。

 

「そうね。ええ、随分と喧嘩も売られたけれど」

「うっ、それは忘れてよ。あんただって散々煽ってきたじゃない」

「……鬱陶しかったんだもの」

「うわっ、言い切りやがったよ」

 

 それ以上の会話はなかったが、どこか冷たかった空気は、多少なりとも暖まっていた。

 機嫌を良くした様子の美樹さやかが、自分の両手を眺めている。もう間もなく消えると悟ったか、彼女は明るく楽しげに手を振った。

 

「じゃ、また」

「ええ、また会いましょう。美樹さやか、そして……」

 

 こくか、暁美ほむら、あるいは悪魔は背を向けた。

 急な態度の変化に、美樹さやかはさぞ訝しんだ事だろう。消える寸前の美樹さやかが、悪魔の背中へ声をかけている。

 

「ねえ、一体……」

「おはよう、鹿目まどか」

 

 たった一言。たった一言だ。それだけで、美樹さやかの居た場所から何かが吹き上がった。

 それは、突然現れた。いや、現れた訳ではなかった。美樹さやかという形を上書きする様に、姿を見せたのだ。

 美樹さやかの形をしていたが、それは美樹さやかでは無かった。

 背を向けた悪魔には、その姿は見えない。だが、その雰囲気、その空気、その存在感。全て、間違えられる筈もない。

 背後に光臨した何者かは、ゆっくりと近づいてきている。悪魔は振り向きたい衝動を全力で抑え続けた。

 

「ねえ、この世界はやっぱり、あなたが……」

 

 背後から伸ばされた指が唇に置かれる。きっと、小悪魔の様に微笑んでいるだろう。

 悪魔は涙した。決して声を漏らさない様に、静かに泣いた。その滴が、背後の誰か、何かの指を伝っていく所が見えた。

 溢れる涙を拭いもせず、悪魔は深呼吸を一つ。

 

「……美樹さやかの中で見ていたのね。いえ、むしろ、あなたは百江なぎさの記憶だったの? まさか美樹さやかを演じていたの?」

「どうかな。私がさやかちゃんの真似をするのは難しそうだけど」

 

 聞こえてきた声は、まるで遙か彼方から響く様でありながら、近距離で囁かれている様でもあった。

 その超自然的な、明らかに人ではないと分かる音の響きが、彼女の正体を分かりやすく示す。

 悪魔、悪魔? 暁美ほむらは微笑んだ。血を吐く様に蒼白で、気絶するほどに幸せそうな顔で。

 

「少し、思ったの。やっぱり魔法少女がいないからまどかが生まれるというのは、出来すぎている」

「そうかも」

「そんな真似が出来るとすれば私だけど、私の筈がない。私でなければ、誰? あなた? それとも……あなたを助けようとした誰か?」

 

 問いかけても、背後の何かは動揺一つ起こさない。当たり前の事として、当然の様に話すだけだ。

 

「ほむらちゃんが考えれば良いと思う」

「……そう。答える気は無いのね。良いわ。それで構わない。私はあなたが誰なのか知らない。だから敵にもならないし、味方でもない。そうね?」

「……」

「だから、私はあなたの顔を見ないし、あなたの名前も呼ばない。構わないわね」

 

 最後の部分は声が震えていたが、暁美ほむらはそれでも言い切った。

 何とも言えない沈黙が広がる。背後に人の物とは到底思えない力が溢れようと、悪魔は決して振り返らない。

 

「ねえ、振り返っても、いいんだよ?」

 

 だからこそ、その一言は悪魔の誘惑だとすら思えた。

 暁美ほむらは、自分が血の涙を流しているのではないかと錯覚した。拳を小さく握り、夢の外にいる鹿目まどかの幸福を思い返し、溢れる感情を胸の中に片づける。

 

「……もし、そうするとしても。そういう事は私達の世界でやりましょう。ここは夢の中で、この外に広がる世界は、私達が生きた場所じゃないんだから」

「そ、っか」

 

 背後の何かは納得したらしく、それ以上、振り返る事を求めはしなかった。

 暁美ほむらは内心で安堵の息を吐きながらも、油断せずに背後へ意識を集中させ、慌てて考えない様にした。悪魔の優れた五感は、集中するだけで相手の姿を察知してしまいかねない。

 

「……まどかは」

「えっ?」

「まどかは、きちんと起きられたのかしら」

 

 どの鹿目まどかを指しているのか、背後の何者かはすぐに理解したらしい。

 

「あー、まだ、ちょっとだけ寝ぼけてるみたい」

 

 鹿目まどかは起きていた。つまり、夢はもう終わっているのだ。だが、夢が崩れても、背後の何かは小揺るぎもしない。悪魔も、まるで変わらない。

 そこは、夢の中ではなかった。

 

「ねえ、ほむらちゃん」

「何かしら」

「あのね、もう一人の、あのほむらちゃんだけど」

「……言いたい事は、何となく分かるわ。分かってる。問題にならないなら、あなたの好きにして良いわよ。あいつはきっと、私の仕業だと思うでしょうね」

 

 背後の何者かの視線は、非常に柔らかい。敵同士とは思えない程だ。

 そんな物を浴びせられ続ければ、結末は身の破滅だ。暁美ほむらは、その包み込まれる様な優しさに背筋を凍らせ、逃げる算段をつけた。

 

「……もう、行くわ」

「え? もう? 折角久しぶりに話ができたんだから、もう少しくらい……」

「いえ、あんまり話すのも、ね」

 

 暁美ほむらは力を振るった。早く、背後のものから逃げられる様に。

 すると、背後の誰かは何も言わず、残念そうに手を離す。

 安堵と、残念に思う気持ちが広がり、暁美ほむらは思わず不敵な笑顔を顔に張り付けた。

 

「それじゃ、また会いましょう? 今度は、敵として戦う事になるかもしれないけれど、ね?」

 

 悪魔は手を振り、己を律する。声が震えない様に、たまらず振り返って、その顔を見てしまわない様に。

 

 

 

+

 

 その朝にはとても気持ちの良い日が昇っていた。

 白い雲が流れる中、それに合わせて鹿目まどかは走っている。約束の時間には間に合うが、それでも走るのだ。

 その先には、見慣れた友達の姿があった。青と赤の髪にめがけて手を振ると、二人は軽く手を挙げた。

 

「おはよー!」

「おはよ、まどか」

「おう、早いじゃねえか」

 

 美樹さやかと、佐倉杏子。二人は制服姿で、川沿いの通学路に立っていた。

 普段と変わらない二人の姿だ。その手に指輪は無い。

 鹿目まどかは少しばかり苦笑して、その場にいない一人を探す。緑の髪をした少女は、そこに居なかった。

 

「仁美ちゃんは、上条君と?」

「うん、みたい。仁美も頑張るよね、道、結構違うのにさ」

「ふーん……そうなんだ……」

 

 鹿目まどかは少しばかり肩を落としつつ、学校で話せば良いかと気を取り直す。鞄を両手で持ち、深呼吸を一つ。それだけで世界中の何もかもが輝いて見えた。

 思わず鼻歌をはじめてしまいそうになり、周囲の目に気づいて、やめた。頬を軽く掻き、気恥ずかしさを隠す。

 傍目にも分かる程度に嬉しそうな雰囲気が溢れていたのか、周囲の人々まで笑顔になる。

 

「まどか、あんた何だか機嫌良さそうだね」

「えへへ、まあね。すごい夢を見たから」

 

 佐倉杏子が目を瞑った。口元が嬉しそうに歪んでいるが、話に割り込みはしない

 

「へえー、良い夢だったんだ」

「うん、楽しかったよ。ちょっと大変だったけど」

 

 記憶の中で思い出を振り返り、鹿目まどかは片手を頬に置く。

 美樹さやかが興味深そうな目で見ている。それに気づくと、鹿目まどかは夢を話すという気恥ずかしさに「えへへ」と声を漏らす。

 

「あのね、お昼の私は普通の中学生なんだけど」

「ほうほう」

「実は、夜の見滝原を守る魔法少女なんだ。それでね、みんなで一緒に戦ったり、遊んだり……そういう感じの夢だったんだ」

 

 話を横で聞いていた佐倉杏子が、妙になま暖かい笑顔を浮かべた。

 どうなんだよ、と聞かれ、美樹さやかが感想を口にする。

 

「ん、ちょっと子供っぽい?」

「も、もうっ、さやかちゃん。からかわないでよぉ」

「あはは、でも可愛い夢じゃん」

 

 気を取り直して、鹿目まどかは空を見上げた。今、この場にはいない人物の姿をそこに見ながら。

 

「最後には夢だって分かったけど、本当に楽しかったんだよ。転校生の子が居て……」

「ん? 転校生って?」

「夢の中の学校に転校してきたんだ。可愛い子なんだよ。名前は」

「暁美ほむら、でしょう?」

 

 横から聞こえてきた声に、鹿目まどかは慌てて振り向いた。ある筈の無い声、居る筈のない人の姿が、そこにあった。

 その人は、変わらず黒く長い美しい髪を掻き上げて、微笑みと共に佇んでいた。

 

「えっ!?」鹿目まどかの驚愕は止まらない。「ほ、ほむらちゃん!」

「おはよう、まどか」

 

 小さく手を挙げながら、暁美ほむらはゆっくりと近寄った。

 柔らかで優しい表情が、鹿目まどかにだけ注がれる。佐倉杏子が鞄を落とし、慌てて拾い上げている内に、暁美ほむらは彼女達のすぐ目の前にまで来ていた。

 

「ほむらちゃん、だよね? え、ほんとに?」

「本当の私よ。この間、あなたのお部屋にお泊まりしたばかりの、暁美ほむら」

 

 夢の中を知らなければ、決して知らない筈の事だ。鹿目まどかは喜んで手を伸ばし、暁美ほむらの手を握る。

 傷一つない、綺麗な手だ。その手を鹿目まどかがゆっくりと引き寄せると、暁美ほむらは躊躇無く応じた。

 

「初対面なのに、同じ夢を見るなんて!」

「ええ、不思議な事も有る物ね。私も、本当に驚いたわ」

 

 暁美ほむらは鹿目まどかの背後へ視線を送る。

 そこには佐倉杏子が立っていて、首を傾げていた。

 

「ほむらちゃん?」

「……ううん、何でもないの。それよりも、貴女に会えて嬉しいわ」

「私も、本当に嬉しいっ」

 

 手を握り合うと、鹿目まどかは勢い良く抱きついた。

 暁美ほむらは驚きの声をあげたが、すぐに瞳へ正気を戻し、彼女の身を力強く抱き支えた。

 

「ま、まどか?」

「あっ、えと……うん、ごめん」

「い、いいえ」

 

 感情が爆発した上での突発的な行動だったらしく、鹿目まどかは恥ずかしそうに笑いながら、身を離す。

 しかし、距離は変わらず近いままで、幸せそうな表情は簡単に変わるものではない。

 美樹さやかが抱いた戸惑いと佐倉杏子の中にある驚愕の間で、二人はお互いの存在を確認しあっていた。

 

「現実だと初めましてだよね、ほむらちゃん。私は鹿目まどかだよっ」

「ふふ、私も驚いたわ。それと、私は暁美ほむら。ほむらで良いわ」

「知ってる!」

「私も、まどかの事はよく知ってる」

 

「さ、一緒に学校へ行こうよ。夢の中でもずっと一緒だったもんね!」

 

 鹿目まどかは軽く手を引いた。ほんの少しだけ、暁美ほむらは躊躇した様に見える。

 だが、それも一瞬だけだ。彼女は穏やかな面持ちのまま、鹿目まどかの背についた。

 

「ええっ、こちらでも仲良くしましょう」

「うん。よろしく。あ、ほむらちゃんはもう知ってると思うけど、紹介するね……」

 

 鹿目まどかは明るく楽しく、幸せをまき散らしながら手を振り、美樹さやかと佐倉杏子に声をかけ、誇らしげに暁美ほむらを紹介した。

 その声音には、暁美ほむらへの疑いなど、欠片も含まれてはいなかった。

 

+

 

 暁美ほむらは、鹿目まどかの存在を心の底から感じ取った。

 繋いだ手の温かさ、柔らかな表情、友達として直に感じられる優しさ。その全てが、かつて遙か遠くへ消えてしまった物だ。

 

「ねえ、まどか」

「んー?」

「ううん、なんでもない。まどかに会えて本当に嬉しいわ」

「わたしもそうだよ。あ、でもさ」

「何?」

「ほら、ほむらちゃんって、前は三つ編みに眼鏡だったよね? その格好はしないのかなー、って」

「…………あれは、夢の中での姿だから」

「そうなんだ。とっても可愛かったから、ちょっと残念かも」

 

 他愛の無い会話を鹿目まどかを交わす。ただそれだけで、暁美ほむらは十分すぎる程に、幸せだった。自分には過ぎた幸福だと、そう感じるほどだ。

 胸の奥に幾つか刺さる罪悪感と、それを越える多幸感に包まれながら、暁美ほむらは穏やかな表情を維持し続けた。

 その握られた手には、ソウルジェムの気配はない。

 そこに魔法少女という概念は存在しない。少女達の人生を歪めた力は、ここには欠片も無かった。

 ただ、暁美ほむらの視力や身体能力は、魔法少女の時と相違が無かった。誰かのコンプレックスだったのだろうか。それとも、誰かが望んだのか。

 

「あら、みんな揃ってるのね」

 

 巴マミが合流してきた。言うまでもなく百江なぎさも共にいる。恐らくは夢を完全に覚えているのだろう。暁美ほむらを不思議そうに眺め、すぐに表情を取り繕っている。

 巴マミと百江なぎさは、二人揃って並んでいる。手を繋ぎ、互いの存在まで繋ぎ合わせようとしているかの様だ。

 

「マミさん! あれ、なぎさちゃんも」

「ええ。百江さん、ほら、挨拶」

「えっと……おはようございます、なのです」

 

 巴マミ達は当たり前の様に挨拶をしているが、一般人にしては、感情の切り替えが素早かった。当然だろうか。曲がりなりにも、彼女達は魔法少女だったのだから。

 自分に向けられた警戒の視線に、暁美ほむらは朗らかに手を振った。何一つ争う理由がなく、また戦う意味もない。

 

「……ほむらちゃん?」

「えっ、ええ。巴さんに、百江さんね。よろしく」

 

 巴マミの視線が、「なぜあなたがここに居るの?」と尋ねている。少なくとも、暁美ほむらはそう感じた。

 小さく首を振り、自分でも理由が分からない、という意志を示すと、巴マミは警戒を緩めていた。

 

「私が聞きたいわ」

 

 鹿目まどかには気づかれない程度に、暁美ほむらは疑問の息を吐いた。

 この世界に居ない筈の暁美ほむらが、何故か居る。そして、それは魔法少女の在る世界から来た暁美ほむらだった? あり得ない。

 そんな真似が出来たのは、あの場でただ一人。

 

「ねえ、そうなんでしょう」

 

 振り返った暁美ほむらは、遠くに咲いた桜の木々へ目を向ける。その中の桜に隠れて、黒く長い髪がなびいていた。

 今、どんな顔をしているのか。暁美ほむらには全て分かる。酷く邪悪で、不敵な作り笑い。きっとそういう物だ。

 誰が見ていなくても。そうするのだろう。

 

「このカッコつけ」

 

 悪魔と名乗った気取り屋の、密やかな笑い声が風に流れる。

 

「ほむらちゃーん」

「ええ、今行くわ。色々と話したい事もあるの」

 

 そして、全ての魔法が消えた。計算された奇跡が消えた。魔法少女というものは、この世界にはありえないのだから。

 ただの暁美ほむらは学生の中に混ざり込み、もう振り返る事は無かった。





 『暁美ほむら』
 巻き込まれた人。悪魔となった暁美ほむらとは違って、既に魔獣との熾烈な戦いの末に円環の理へ導かれた、かつての魔法少女。しかし、夢の中へ紛れ込んだ際に記憶を落としており、自分が既に魔法少女ではない事、円環の理の一部として取り込まれている事を忘れていた。
 もう一人と比べると繰り返した回数が少しだけ違い、経験した内容も僅かに違う。けれど気持ちは本物で、心も強さも変わらない。
 ほんの少しでもボタンをかけ違えれば悪魔になってしまうかもしれなかったが、魔法少女も魔女も居ない今、もうその心配は無い。
 現実では、魔法少女の時の感覚が抜けず、つい時間操作を行おうと左腕に手を置いてしまう癖がついた。ただ、もし本当に力を使うべき場面が現れた時には、どこかの悪魔が手を貸して、また時間を止めるだろう。
 鹿目まどかと再会した日のラッキーカラーは紫色。最近では、鹿目まどかに勉強を教えるのが日課となっている。毎日が楽しくて仕方が無く、鹿目まどかと過ごすあらゆる日常が愛する対象となっているのだろう。些細な悩みは幾つか有るものの、全く気にしていない。一週間に一度程桜並木の前で誰かに話しかけているが、それを見た者は居ない。私以外は。


 『美樹さやか』
 巻き込まれた少女。円環の理に導かれ、インキュベーターの陰謀から暁美ほむらを救う為に出向いた
 筈だったが、何者か……仮に『誰か』とするけど、その存在が動いた事によって、何故か魔女も何も関係無い、ただの鹿目まどかの見ている、ただの夢の中へと飛んでしまった。
 しかし、本人は暁美ほむらの結界に入り込んだと思いこんでいて、だからこそ接触してきたこくかを敵視した。誤解は溶けたが、敵視する気持ちは変わらなかった。ただし、美樹さやかの敵意には慣れていたので、こくかが自分の中身を見せる事は無かった。
 自分の知る暁美ほむらより、暁美ほむらが僅かに穏やかで落ち着いている事が引っかかっていたが、既に死んでいるからだとは思い至らなかった。
 実は特に悩みも苦しみも持っていなかったので、励ましのパーティを開かれた時は内心少しだけ居心地が悪く思っていた。

 現実では、夢の中とは全く関係が無い美樹さやかが存在していて、普通の少女として生きている。
 夢が溶けた日のラッキーカラーは赤色。
 最近では、予定が合わずに悩む志筑仁美の相談に乗っていて、時折ストレス発散の為に二人っきりでカラオケに走る。初恋を吹っ切った為か、かつての初恋相手に女の子の扱いを教える事も有った。コンサートはきちんと毎回見に行っている。
 悩みは、暁美ほむらの性格が掴み辛い事。鹿目まどかと仲が良いので、距離を縮めようとしているが、一線を乗り越える事が出来ていない。多分、難しいだろうなぁ。


 『巴マミ』
 夢に取り込まれていた一番年上の少女。魔法少女とは全く関係の無い世界の住人であり、魔法少女としての記憶は百江なぎさが円環として知り得た事を与えられた形となる。そして、彼女の両親は普通に生きている。本来ならば魔法少女のシステムが無ければ両親もろとも死んでいる筈だというのに?
 ……基本的に善の人だが、百江なぎさが既に死んでいる事を否定する為に戦った。誰よりも夢の中の世界を大切に思っており、その中での出会いを全力で楽しみ、愛していた。可愛い後輩達と過ごした時間は、覚めた後も宝物の様に記憶の中へ埋まっている。
 こくかを撃った感触は覚えているが、後々で本人が生きていた為かそれほど重い物とはなっていない。

 夢が溶けた日の朝、両親へ朝の挨拶をした瞬間に泣き出してしまった。ラッキーカラーは白。
 最近ではチーズケーキを自作する事がお気に入り。自分で作ったケーキを合わせて、夢の中で魔法少女をやっていたメンバーとパーティを開いている。魔法少女の時の感覚が抜けずに髪のセットを魔法で済ませようとしてしまうのが悩み。いいなぁ、綺麗なウェーブのかかった髪……私は縛らないとダメで。
 

 『佐倉杏子』
 巻き込まれた少女。その中で一番に無関係だった。暁美ほむらと共に世界の真実を探っていたが、本人はそれなりに夢の生活を楽しんでいた。
 夢の中では美樹さやかの家に住んでいたが、現実では家族が存命の為、教会で暮らしている。勿論犯罪を働いた事も無く、魔法少女として力を使った経験があるはずも無く。口振りは乱暴だが、性格は穏やかで強い優しさを持っている。

 夢が溶けた日の朝、少し頭痛に苛まれながらも、切ない様な悲しい様な夢を見た気がしていた。ラッキーカラーは青。
 最近では、風見野にあるリンゴ農園で手伝いをして、アルバイト代を稼いでいる。何故リンゴ農園を選んだかは本人にも分からない。悩みは特に無く、毎日を家族と一緒に貧しいながらもそれなりに過ごしている。ただ、もう少しお金が欲しいと思ってはいる。でも、家族と暮らせて良かったと思うの。


 『鹿目まどか』
 楽しい夢を見ていた普通の少女。既にあらゆる時間軸から消滅している筈だというのに、魔法少女が存在すらしない世界で生まれる事が出来た。暁美ほむらにとっては人生の全てをかけて守り助けたい人間。
 魔法少女になる前の鹿目まどかと性格は全く変わらず、控えめな性格を含めてごく普通の少女。自分には特徴が無い、何も取り柄がないと思っていて、特徴の塊の様な巴マミや暁美ほむらに小さな憧れを抱き、自分より強く優しい美樹さやかや佐倉杏子を素敵な人達だと思っている。
 しかし、魔法少女の夢を見た時、一番に嬉しかったのは、誰かの役に立つ事ではなく、誰かと一緒に魔法少女が出来る事だった。
 そして、その気持ちは、覚めてからも胸の中に有る。加えて、暁美ほむらが様々な面で鹿目まどかを魅力有る人間として扱う為か、最近では自分を卑下する気持ちがかなり薄まった。二年生の間には消えて無くなるだろう。

 夢が溶けた日の朝、よく分からないけれど楽しい夢だった事を胸に抱き、同時に暁美ほむらが夢の中の架空の人物だったと思い込んで心から残念に思った。ラッキーカラーは黒。
 最近では、暁美ほむらと互いに相手の自作弁当を食べる事で競い合っている。美味しい物を作って喜んで貰おうと頑張る為か、料理の腕が上がりつつある。父親から教わっているからか、暁美ほむらより伸びが早い。一人暮らし経験者の優位が有る為に今はまだ暁美ほむらの方が上だが、越えるのは時間の問題。
 悩みは特に無いが、ナイトメアが居ないかと夜中に外を見てしまう事が有る。もう居ないのにね。期待しちゃってるのかな?


 『ベベ』
 ある意味では巻き込まれた小学生の女の子。円環の理として暁美ほむらの結界に進入する筈が、気づけば夢の中に住む事となり、その場が目的地ではない事に気づきながらも、少しずつその場から去りたくないという気持ちが強まったというのは本人の思いこみ実ははあわたのしのきおにしくてその心が動いたためにそうした方向の彼女は巴マミにににベベのなぎさのベベとして活動しながら、巴マミを騙し続けているという罪悪感と戦っていたが、ある時誰よりも早く世界の真実に感づいた巴マミが、ベベではなく、百江なぎさとしての彼女に触れてきた。
 実は巴マミが違和感に気づいた時、一番最初に問いつめた相手がベベだった。明らかに人の形をしていなかったからだ。疑われてしまったベベは泣き出してしまい、人間の姿に戻る。そこで巴マミは謝罪をしながらぎゅっと抱き締め、詳しい話を聞く事で、百江なぎさの生存を目指すと決めたのだった。正体を知られてからも関係は続き、互いに家族の様な繋がりが有った為か、誰も居ない所では百江なぎさと巴マミが一緒の布団に入って寝る事も多かった。むしろ夜はいつも添い寝をされていた。

 夢が溶けた日、自分が生きている事に心の底から安心して、思わずベベの話し方で友達に挨拶をしてしまい、恥ずかしい思いをした。巴マミとは登校中に出会い、二人は泣きながら再会した。ラッキーカラーは黄色。
 最近では、巴マミの手製チーズケーキを食べるのが日課。チーズ好きは全く変わっていない。悩みは無く幸せ一杯だが、本当に自分が生きていて良いのかは、本人もまだ考える余裕が無い。それはきっと、もう少し後の話だね。
 ね。ぇ


 『魔魔詐衿悪悪悪魔こくか円円環円環魔悪魔円環悪魔円環』
 存在するにしてもその事がそれ自体が嘘の塊固まりらしい
 悪悪魔を名乗っった気取り屋が自らを隠すす為に作り上げた人格、の様に暁美ほむらが演じた操りった人形人型の様な存在物。内は暁美ほむらそのものだがが、外面は取り繕われ割れている。
 基本の基本的に基本は暁美ほむらなので弱さも強さも弱さと強さもそのままま。ただし、ハンカチで頭の血を拭いてあげ貰った? 経験が有る。もう一人の暁美ほむらには無いの無い。
 はっきりといってしましまいますと到底善人とは呼べないものでございますが、しかし彼女の胸にいだきしてしは最も大切な重要になりますれににゃれば。悪魔などと名乗る事に僅かながら若干ながら少しながら格好カッコ付けを感じざるを得ないのかそれとも違。。。。、、、悪魔よりには暁美ほむらが似合いしかし口調と対の態度は些か遠ざけられていた様にも見えないではないが見えないの様な気がしないでもない。
 魔女魔女の結界のヌシであると告げ言った理由の意味は多分鹿目まどかの夢に観賞しているものを見つける為だと思うんだ。きっとそうしてくれるから。

 夢ががと溶解溶け、彼女に存在もててている。後にほが残っら、彼女被っていた皮完全消え。ラッキーカラーやややっぱり紫紫紫紫
 最近で。最近? 最近。
 そんなそんそんなそんな物は無かった。
 あり得なかった。
 なぜなららららららら彼女は彼女のののつくつくつくしたつくるつくった世界守るしかそれもそれもそれもそれも私の事を考えてくれるから?


 [『『『誰か』』】]
 えええ円環の理にかんかんかん干渉しししししししたなにににかあえて『だれれれか】とした。百江なぎさととと美樹さやか、そしそしそ暁美ほむらを送り込んだかもかもかもしれななしいいないないいない。もしかししたたしたらこスではないものにないからこそ今はもう人の人ではあってそこに生きている生きていないかつて人だった様なそうで無かった様なこれを書いているかもしれなかったかもしれないがやはり違い。魔法少女も魔女も魔獣もいないいないいない世界偽界世界が世界を作ったかもしれなかったかも。かなめかなめめめまどまどまどまどを存鹿目まどかにしたしたしたのかもしれない。永遠の少女なるものが我々に高さを教え教えていない。永遠にして少女的に見えるものが魔法少女を高みへと持ち上げ、持ち上げた? 引き上げた? 円環の理に感傷干渉観賞できるとすればそれはインキュベーターではないないないないのは悪魔かそれそれともにがいねねねん。私はなにもなにも世界なんか作ってないないないないないけれど私が裂かれ裂かれた裂かれの時に偶然全然全うまれ私のがんぼうぼうぼうぼう形になこのせかせかかかかかかつまり私わたし私は見ていただけ私がほむほほらちゃでも私はパパとママとタツヤと、みんなで一緒に一緒に一緒に暁美ほむらをまきまきここここここここ悪魔なんてなんて名乗ったほむらちゃちゃちゃちゃに気づいて貰ったからさやかちゃかかかちゃんにのこみきさやかのきづい利用誰が誰が誰が私私それとも私は私が、鹿目まどかが友達とお別れするなんて嫌だよね






 ね?
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