アヴェンジャー「ジャンヌゥウウウウウウウウウ!!!!」
第十八話 英霊召喚
ウェイバー・ベルベットは自身の才能を信じてやまない。
確かに魔術師として、ベルベット家の血統は三代しか続いておらず、蓄積されていく魔術刻印の密度も、世代を重ねることで少しずつ開拓されていく魔術回路の数も、由諸正しい魔術師の末裔たちには些か劣るだろう。だが、ウェイバーにとって、そういった歴史の差などは経験の密度によって覆せる。例え際立った数の魔術回路がなくとも、術に対するより深い理解とより手際の良い魔力の運用が出来るなら、生来の素養の差など埋め合わせが効く―――そう信じて疑わなかった。
そんな彼の書いた魔術協会の旧態依然とした体制を糾弾すべく構想に三年、執筆に一年かけた『新世紀に問う魔導の道』はあろうことか、ウェイバーが軽蔑してやまない降霊科の講師…ケイネス・エルメロイ・アーチボルト…『ロード・エルメロイ』によって破り捨てられたのだ。ウェイバーの十九年の生涯において、その屈辱的な出来事は忘れる事は無い。ケイネスにされた事を憤りながら日々を過ごしている時、ウェイバーは風の噂を耳にした。あの名にしようロード・エルメロイが近く極東の地で行われる〝聖杯戦争〟のサーヴァントを呼びだす触媒を得るため、時計台で名高いバルトメロイ家と謎の一族と共に中東にある遺跡で何かを発掘しているという噂だ。
それを耳にしたウェイバーは〝聖杯戦争〟―――――その競技の詳細を調べ、自身の才能を括目させる場だと認識し興奮していた。そんな彼にさらなる幸運が舞い込む。
管財科の手違いにより、本来、ケイネスの元で開封される筈の中東…イランのサマワから届けられたさる英雄の聖遺物――――一般郵便と共に弟子のウェイバーに取り次ぎされたソレが聖杯戦争におけるサーヴァントの触媒だと直ぐに気が付いた。
彼はその日のうちにイギリスを後にし、極東の島国へと向かった。
そして彼は極東の彼方、運命の地、冬木市において、マッケンジー老夫婦を騙し、住み込みながら、ある聖遺物をウェイバーは撫でていた。
〝刀〟である。見た目は日本刀の様な剣の形をしており、刃は天の星々を詰め込んだかのように輝き、鞘も豪華では無いモノの、質素ながら無駄なく洗練されていた。4600年前の物とは思えぬほど、刀もそうだがソレを納める鞘も、劣化などしておらず美しく輝いていた。本当に人間が作り出したのかさえ疑いたくなるほどに。
しかし、ある意味、人間が作り出したモノでは無いのかもしれない。何せ、この刀を生み出したのは神の血を受け継いでいる古代ウルクの王の一人である――――ウル・ルガル。彼の名高いギルガメッシュ叙事詩の主人公である半神半人の王ギルガメッシュの息子にして、古代最古の発明王として知られる彼が生み出したモノであり、聖遺物である。神の血を引いてるのだ…人の業を越えるモノを彼が作ってもウェイバーは何の驚きはなかった。
寧ろ、そんな王を自身の使い魔として、従えさせられると歓喜していた。
今宵、その英霊は召喚に応じ、ウェイバーの膝下に下る。彼を栄光の聖杯へと導くために。
しかし、ウェイバーの認識は甘かった。
そもそも、彼がサーヴァントを唯の強力な力を有した〝使い魔〟と認識している時点で間違いである。英霊たちはサーヴァントと呼ばれはするが、使い魔では無く〝英霊〟だ。
ウェイバーや現代の魔術師達とは比べ物に成らない程の力を持ち、只々従う使い魔では無く彼らにも生前の人格を有している。そのため、英霊たちにとって譲れぬ矜持や誇りを穢し、彼らの機嫌を損なう真似をすれば令呪を発動する前に殺害される事すらありえるのだ。そもそも、生前、王として敬われた人物を使い魔として呼び出そうとする魔術師たちは大概、それなりの敬意を持って接す。人として基本的な行動であり、それが出来なければ死ぬからだ。そんな事を想定すらせず、王と呼ばれる人物を呼びだし、力を借りておきながら自分が上だと無礼を働こうとするウェイバーは大馬鹿であり、殺されても文句が言えないのである。他の平行世界で彼が自身のサーヴァントに―――イスカンダルに殺されなかったのは本当に運が良いのだ。そんなことを露知らず、ウェイバーは呼び出す。
観測者にして裁定者、世にある数多の財宝を集めた暴虐の王と相対し、人の欲望を暴虐の王と同じく是としながらもその欲望を導き、世にある数多のモノを生み出した王を。
*
ウェイバーは首尾よく召喚を成功させた、だが、ウェイバーの認識する処の〝使い魔〟というのは、あくまで召喚者の傀儡である。しかし、召喚陣から出てきたものは――――…
まず最初に、血の様に紅く、燃え上がっているかのように輝く双眸の一睨みだけで、ウェイバーは魂を抜かれた。まるで自身の全てを見通すように、目を合わせた瞬間に、そのサーヴァントが、自分より圧倒的に強大であることを、小動物めいた本能的直感で察知した。
目の前に立ちはだかる美丈夫の―――圧倒的な存在感。巨漢ではないものの、背が高く引き締まったしなやかな筋肉に、長くも短くもない綺麗に整えられた髪は金色に輝き、人間離れした美貌。服装は金と群青をあしらった鎧を身に纏っている。そのサーヴァントが漂わせる雰囲気は気品のある王の風格―――ケイネスのように威張り腐った貴族の様なモノとは天と地の差…月とスッポンだ。そして、確信もする。この男を怒らせたら自分は死ぬと。
「サーヴァントランサー…召喚に応じ参上した――――問おう。汝が王である私の威光に綴らんとする愚かな魔術師か?」
本来ならば三大騎士クラスの一つを呼べたことや、ステータスが非常に高い処に喜ぶはずだが、目の前に居る男の口から発せられる言葉はどれも威圧感があるため、ウェイバーは縮こまり、自身を馬鹿にされていることさえ気が付かず、必死に言葉を紡ぐ。
「そ――――そう!ぼぼぼぼボクが、いやワタシが!オマエ…いや、ア、アナタのマスターの、ウ、ウェイバー・ベルベットです!いや、なのだッ!マスターなんです!」
「契約は完了した。では、小僧――――拠点に案内しろ。お前の様な貧弱な魔術師でも工房の一つぐらいはあるだろう。」
「うっ――――そ、それが。」
民家に寄生しているだけのウェイバーにイギリスなら兎も角、冬木の地に工房なんて言う大層なモノは持っていない。その事を正直に話すと目の前に居るランサーは鼻で笑った。
「君の計画性の無さはつくづく愚かだな。まぁ、良い。まだ挽回は出来るし、若気の至りとして、目をつむってやる。とりあえず、その民家に帰りさっそく情報収集するぞ。」
「えっ?」
正直、ランサーは自分の事を馬鹿にするだけで終わりだと思っていたので、ウェイバーは素っ頓狂な声を上げる。
「何を呆けている。どうせ行き当たりばったりで、参加者達の事や聖杯戦争についても、基本的な事だけで碌々調べてないのだろう?情報と言うのは戦争で下手すれば武器よりも重要だ。情報があるかないかで勝負が決まる事がある。他の参加者たちが得ている情報を知らないのであれば、かなりの足かせになるぞ。私を呼べたことに興奮するのも良いが、これは戦争であり、殺し合いだ。気を抜けば直ぐに死ぬ。私だって負けるつもりは無いし、お前をむざむざ殺させるつもりもない。さっさと民家に案内しろ。」
「ぐっ…。」
そう言われ、ウェイバーは何一つ言い返すことも出来ず、拠点にしているマッケンジー夫妻の居る民家へ案内した。道中、本来ならば一つや二つ、言い返したり反発していたのかもしれない。けれど、ウェイバーも其処まで馬鹿ではないし、愚かでもない。
彼に言われたことは非常に正しい。自分は唯、衝動的にこの聖杯戦争に参加した。そのため、参加するであろうマスターたちや御三家に対する情報も上辺だけしかない。それがどれだけ不利であり、無謀か。体が貧弱であっても、それなりに頭がよく、情報を整理する事が出来るウェイバーは嫌でも理解できた。熱に浮かされていた頭が急激に冷めていく。徐々に不安にもなった。けれど、サーヴァントであるランサーが聖杯戦争に乗り気なのと、情報収集を手伝ってもらえると同時に『むざむざ殺させるつもりはない』という言葉を思い出し少し安堵する。
かくして、ウェイバー・ベルベットとウル・ルガルの聖杯戦争――――最弱のマスターと最強のサーヴァントによる戦いが始まった
*
某日 ロンドン。
「余の最愛たる妃の寝所を穢したとあらば、自らの末路は想像していよう?選べ。神の獣に食われるか、一族諸共にここで消し飛ぶか。――――――ああ、令呪を用いようとは思うなよ。貴様の言葉が届くよりも、我が光が此処を灼く方が早い。」
ケイネス・エルメロイ・アーチボルト…時計台で神童と持て囃される彼は聖杯戦争が始まる以前から既に命の危機にさらされていた。目の前に居る自身の呼んだサーヴァント…ライダーによって…彼の背後には黄金の船が展開している。
双眸の黄金の眼からは鋭い殺気が放たれ、普通の人間であれば気絶するであろうが、ケイネスは体を震わせながらも意地で立ち、その眼から離さず見つめた。
彼もまた、サーヴァントに対する見解はウェイバーと大体似たようなものである。故に、自分が呼び出したサーヴァントによって命の危機に瀕しているのは屈辱であり、恐怖だ。何故、彼が呼び出したサーヴァントによって殺されかけているのは至極明解である。
なにせ、彼はライダー――――オジマンディアス…建築王、また太陽王の異名を持つ、エジプト史上最大最強と謳われるファラオ。その最愛の妃であるネフェルタリの聖遺物を用いて彼を呼び出してしまったからだ。自身の最愛の妻が眠っている場所を荒らされたと知れば、誰だって怒る狂う。ケイネスだって、もしソラウの墓を荒らされれば怒り、その者を殺そうとするだろう。故に自分が今、殺されそうになっているのは仕方ない事である。けれど、ケイネスは思う。まだ、死にたくないと。そのため、ケイネスは腹を括り、ライダー…いや、ファラオにたいして進言する。
「不敬を許しと欲しいとは言わない。誰であれ、最愛の妻の寝所を穢されたとあれば怒るのが当然だろう。それに、私が欲しいのは聖杯では無い。故に聖杯は貴方に献上しよう。私はただ、魔術師としての誇りに掛けて戦っている勇姿を、愛する妻にただ見せたいのだ。戦場で死ぬ覚悟は出来ている、しかし、このような場でまだ死ぬつもりは無い…っ!」
そう息を荒げながらもケイネスは真実を語る。確かに自身の経歴に花が付くのは良いことだ。けれども、それ以上に愛している婚約者のソラウに褒めてもらえる方が何十倍も良い。決死の覚悟で語ったケイネスの言葉にライダーはほんの少し目を見開き考える素振りをすると返答する。
「余は光輝であり、余は天であり、余は寛大である。その命、暫し預ける。覚悟があると言ったな。ならばその想い、その願い、果たして余のマスターの願いに足る物かどうか、余自らがこの目で確かめるとしようではないか。――――但し。よもや、つまらぬものであれば。即刻、貴様と妻は我が光輝に灼かれて蒸散するのみとしれ。」
彼の背後に展開していた宝具は消え、そう言い放ったライダーのケイネスを見つめる瞳から殺意は消え失せていた。
そして、漸く『ロード・エルメロイ』にとっての聖杯戦争が無事開始された。
マスター:ケイネス・エルメロイ・アーチボルト
真名:オジマンディアス
◆ステータス
筋力:B
耐久:B
敏捷:B
魔力:A
幸運:A+
宝具:EX
◆スキル
対魔力:B
騎乗:A+
カリスマ:A+
神性:A
皇帝特権:A
◆宝具
・闇夜の太陽の船
・熱砂の獅身獣
・光輝の大複合神殿
ケイネスとソラウの二人による質の良い魔力供給により、フラグメンツのマスターの時よりもステータスがUP。チートである。後スキルのランクは予想です。公表されれば変えます。
マスター:ウェイバー・ベルベット
真名:ウル・ルガル
◆パラメーター
筋力:A+
耐久:A+
敏捷:A+
魔力:EX
幸運:A-
宝具:EX
◆スキル
・対魔力:EX
・魔眼:EX
宝石級にも値する直死の魔眼を保持。色々な生物やモノを見て理解してきたため、どんなモノでも殺せる。
・黄金率:A+
・カリスマ:A+
・神性:A(EX)
ある惑星の原住民達に神として崇められている所為で上がってしまった。本人は上がっていることに気が付いていない。
・高速神言:A++
もはや言語では無い。口を動かすことなく一瞬で発動させる。
・無窮の創造:EX
どんな状況や精神状態でも望めばモノを作り出すことが出来る。
・魔術・魔法:EX
第一魔法の使い手であり、神霊の御業では無い魔術の起源を生み出した存在のため、あらゆる魔術体系を熟知している。魔法は第六まで一応、使用可能。
◆宝具
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ウルさんの見た目は『神々の悪戯』っていう乙女ゲーに出てくるトト・カドゥケウスって奴の2pカラーですね。後、魔力の少ないへっぽこウェイバーで何故、チートステータスなのかは後々説明します。