Fate/URUKU   作:カイネm

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時臣さんは不憫枠。


第十九話 開幕

 

草木も眠る丑三つ時――――などと言う表現は、日々、使い魔として走りまわされているネコアルク・フワワ…又の名をフンババには関係が無い。今の時期であれば、夜の闇にまぎれて聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントと魔術師たちによる愚かな駆け引きが交錯しているのだろう。しかし、フンババからしてみれば、英霊を駒として扱う身の程知らずな人間共の戦争など興味はなかった。そんな事よりも、人間たちによって食いつぶされる自然の方が気になった。使い魔になる以前のフンババは、森の守護神であり自然神―――大地や運河…大自然の化身であり、星の抑止力でもあった。故に、この時代の自然によって自身の力は左右される――――自然が食いつぶされている程、皮肉なことに力は高まっていくのである。自然が蔑ろにされているこの時代、自身の本体を顕現させれば、この星に生きる増えすぎた人々を駆逐することが可能な程に力が有り余る。しかし、主人のルガルの許可が無ければ本体を顕現させることは出来ない。そもそも、主人が本気になる相手や本体を顕現させる程の敵がいるのか疑問であった。しかし、その疑問は遠坂家に呼ばれているサーヴァントの正体に気が付くと払拭された。

主人に任されていたのは各陣営の情報収集であって戦闘では無かったが、アンズー鳥達に情報収集を任せ、ある場所に向かう。あの男が呼ばれているのだ…本来ならば主人に逸早く伝えるべきなのだろう。しかし、フンババはその男…ギルガメッシュに恨みつらみが色々とあるためそんな事もせず、ギルガメッシュに一泡吹かすためそこに向かった。

遠坂邸―――幾重にも結界が張られていたが、主人のルガルのモノと比べれば俄然マシである。ルガルの工房は正真正目本物の要塞だ。ルガルの本体がいる工房には神であろうが神獣であろうがアルテミット・ワンだろうが許可が無ければ絶対に入れない。入る前に力尽きるだろう。

そのため、現代の魔術師達からしてみれば遠坂邸は要塞化しているのだろうが、フンババからしてみれば、砂城の様に脆く消し飛ばすのは簡単であり、大地と同化して移動すれば結界など関係なく容易に館の中に侵入する事は可能だった。しかし、それをせず、フンババは正面から突入した。敢えて人型に成り、あからさまな殺気を飛ばしつつ、瘴気で遠坂邸の外壁と結界を解かし、庭園を彩る草木を枯らしながら、一歩、一歩、館へと足を踏みしめる。

その瞬間、稲妻の様に光り輝きながら空より飛来した槍をフンババは軽やかに躱す。そして、天を仰げば懐かし風貌の男が居た。

「一際、懐かしい殺意に当てられて出てきてみれば――――驚いたぞ。まさか、貴様が現れるとはな…フンババ…それも人型で……お前が居るといことはあ奴もいると事か…クククッ…斯様な偶然に巡り合うも、我が王たる証と謳うべきか!」

遠坂邸の切妻屋根の上で黄金の甲冑を身に纏った男―――主人と良く似た顔は高揚しており、さも嬉しげに言葉を紡ぐ―――古代ウルクの王、ギルガメッシュ。

「貴様の主はどうした?我が此処にいると知れば、何時ぞやの確約を果たしに来るはずだが……。」

「主にはまだ知らせてはいない。此処に来たのは私の自己判断だ。お前と戦うためにな。」

「良いぞ。王である我と戦う事を許す。かの森での戦いを再びやるのも一興―――――神話の再現といこうではないか!!!」

そうギルガメッシュが嬉々として叫んだ瞬間、何もない空間が光りだし、其処から何百もの数の宝具が四方を囲むように顔をだすと、さながら烈火の如くフンババに襲い掛かる。その一撃、一撃は普通の英霊であれば止めの一撃であり、大英雄であっても無傷ではいられず、下手すれば立つことすら儘ならない程、打ちのめされるだろう。しかし、フンババは自身の足を大地と同化し周囲の土が彼の一部であり生き物の様に蠢き触手と成り、四方から飛んでくる宝具を弾き飛ばしながら、一本の触手をギルガメッシュのいる遠坂邸の屋根を叩きつける。ギルガメッシュは即座に瞬間移動を可能にする宝具を用いて一瞬にして上空へと移動し回避する。ギルガメッシュの立っていた場所は触手を叩きつけられた衝撃で遠坂邸の屋敷は半壊し、瓦礫と化していく。

「どうした?ギルガメッシュよ―――貴様とて分かっておろう…自然を食いつぶす人間共に対する大自然の怒りによって私は強くなる…故に、その程度の宝具では倒せんぞ…さぁ、抜くがいい―――エアを。でなければ我が主に逢う前に脱落するぞ――――英雄の王よ。」

宝具を放った場所から土煙が消え、無傷なフンババの姿を見ると、ギルガメッシュはニヒルに笑い、宝物庫から乖離剣エアを抜き、この聖杯戦争を終わらせるには十分な一撃を惜しげもなくフンババに対して放つ――――。

 

数分前――――遠坂邸。

 

自身の張った結界がいとも容易く溶かされていくさまを見て、遠坂時臣は動揺した。相手がサーヴァントならば動揺もせず、ギルガメッシュを伴って堂々と戦いへと馳せ参じただろう。

しかし、此方に向かっているのはサーヴァントではない―――ステータスがない〝何か〟だ。眼帯を付けた若い男性の姿ではあるが、直感的にその〝何か〟が人でも英霊でもないとても恐ろしいモノだと理解できた。その恐ろしさで以前の自分では考えられないぐらい、足が竦み、冷や汗が止まらない。遠坂家の家訓を考える余裕がない程、ソレに対して時臣は畏れていた。

「時臣師!!!即刻、この工房から逃げましょう!!!」

時臣が恐怖で震えていると、自身の弟子である言峰綺礼が慌てた様子で部屋の中に入ってきた。その顔色は青ざめており、感情表現が乏しい彼とは思えなかった。

「き、綺礼…一体、アレはなんなんだ…アーチャーは…!ギルガメッシュは何処に!」

「アーチャーは敵を迎え撃ちに行ってます。敵の正体はアーチャー曰く〝フンババ〟だそうです。早く貴重品や礼装を持って逃げましょう!此処にいては戦いに巻き込まれてしまう!」

「フ、フンババだと!!!?そんな馬鹿な!!冬木の聖杯では神霊を呼べない筈だ!?」

フンババ―――――彼の名高いギルガメッシュ叙事詩に登場する森の守護神。あのギルガメッシュとエルキドゥですら、不意を突かなければ勝てなかったと言われる大自然の化身。そんな神と言っても間違いではない存在が此方に向かってきているのだ。冷静に考えればサーヴァントの一人が彼を呼んだと思えばいい物の、そんな事すら考えられず時臣は泡を吹いて気絶しそうになったが、気を奮い立たせ貴重品や礼装を持ち出し、遠坂邸に予め作っておいた隠し通路から綺礼に守られつつ脱出した。それと同時に庭園から爆発音を耳にし、体を震わせながら第二の拠点へと時臣は急いだ。そんな自身の姿を見て嗤っている綺礼に時臣は気付く事はなかった。

 

 

冬木の地で、さながら神話の再現が行われるなど、どの陣営のサーヴァントやマスター達にも予期せぬ事件であり、遠坂邸を観測していた魔術師たちを戦慄させるには十分な出来事であった――――こうして、聖杯戦争初戦が始まった。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

「なによ・・・これ・・・・。」

キャスターとして召喚されたコルキスの王女メディアは、遠坂邸で起こっている戦いを使い魔の目を通して眺めながら譫言の様に呟く。

「なんで神霊が参加してるのよ!!!!?冬木の聖杯は神霊を呼べない筈でしょ!!!そもそも、神獣が冬木中を彷徨ってるってどういう事!!!ふざけてるの!!!勝てる訳ないじゃない!!!」

メディアは思う。死した後も自分は神に呪われているのでは…と。

自身を呼んだマスター――――間桐桜。彼女は過酷な魔術処理の所為で心が壊れかけだったところをメディアに救われ、自身の事を慕っており、今では魔術の師弟関係だ。関係も友好なため裏切るような真似をする事なく有利に令呪を使用することもでき、魔力を集めるのに勤しめるだろう。そして次に、此方の陣営の主戦力であるバーサーカーのヴラド三世。彼とはマスターの間桐雁夜を通して、辛うじて意思疎通ができ、自身のマスターである雁夜を救ったためか関係は比較的友好なので問題は無く、彼を援護して戦うのがメディアにとっての戦略だった。

最初は順調だと思っていたものの、この有様である。アーチャーの真名がギルガメッシュだと分かった処で喜びは無かった。寧ろ、彼らの会話により神霊――――フンババを呼んだサーヴァントに対して心当たりがあるので返って絶望した。

そもそも、今現在、拠点としている柳洞寺――――自身のスキルを用いて神殿化させ、罠を数多仕掛けているものの、周囲に神獣…恐らく、フンババが呼んだのであろう怪鳥が品定めするかの如く監視している。戦いに来た訳では無いのが、メディアにとっての救いだった。あの手の神獣が暴れれば、罠など関係なく潰され殺されるのが関の山だろう。真面な会話があまり出来ないバーサーカーに山門の守りを任せてはいるが、逃げるための時間稼ぎにしかならないのが現状だ。神獣相手に彼の宝具が効くとは思えない。メディアが深いため息を吐くと、背後の襖がゆっくりと開く。其処には顔色が悪く白髪の弱々しい男性がいた。バーサーカーのマスターである間桐雁夜だ。血色の悪い顔色をしているがメディアと会った時よりも俄然、マシな状態である。なにせ、彼はメディアの手によって倒された今は亡き間桐臓硯により間桐桜と同じく拷問紛いの修業の所為で死にかけだったものの、メディアの魔術により、固形物が食べれるほど回復している。そんな彼は心配そうにメディアに対して声を掛ける。

「メ…メディアさん…どうしたんだい?そんなに叫んで…何か起こったのか?」

「すみません、雁夜様…驚かせてしまって…一先ずこれを見てください…。」

「此処は時臣の…!」

元遠坂邸と思われる屋敷の残骸を見て間桐雁夜は息を呑む。その残骸の上で未だに戦い続けているサーヴァントとサーヴァントではない〝何か〟の闘争は非常に激しく決着が見えなかった。

その光景を見て雁夜は複雑だった。優雅さの欠片も無く慌てて逃げる時臣の姿を見て溜飲が下がったものの、聖杯戦争が終われば葵や凛、桜の帰るであろう屋敷が破壊されてしまったのだ。時臣に対しては〝ざまぁみろ〟と思う反面、葵や凛、桜に対しては、帰るべき場所が瓦礫の山になっているのが憐れに感じた。

それにしても、自身のサーヴァント…ヴラド三世よりも明らかに時臣のサーヴァントのステータスは高く、一矢報いる程度は出来そうだが、戦闘を見ているとバーサーカーが勝てるかは微妙だった。

「一先ず、他の陣営と同盟が出来ないか模索してみます…。」

「あぁ、それが良いと思う。正直、俺達だけでアレに勝てるとは思えない。」

「えぇ・・・ほんとに・・・。」

二人して深いため息を吐き、この先に起こる聖杯戦争に対して愁いた。

 

 

 

しかし、彼らにとって絶望がまだ始まったばかりとは気が付く事は無く聖杯戦争の初日が過ぎていった。

 

 

 

 




サーヴァントステータス

マスター:間桐桜
真名:メディア
属性:中立・悪
▼パラメーター
筋力:E
耐久:D
敏捷:C
魔力:A+
幸運:B
宝具:C
▼クラス別能力
陣地作成:A
道具作成:A
▼保有スキル
高速神言:A
金羊の皮:EX
▼宝具
破戒すべき全ての符

頑張れメディアさん!!!間桐家の未来は貴女にかかってる!!!

マスター:間桐雁夜
真名:ヴラド三世
属性:秩序・善
▼パラメーター
筋力:B+
耐久:A+
敏捷:C+
魔力:A
幸運:D+
宝具:C
▼クラス別能力
狂化:E
▼保有スキル
信仰の加護:A+++
戦闘続行:A
無辜の怪物:A
▼宝具
串刺城塞

Apocryphaのヴラド三世ではなく、EXTRAのヴラド三世なので比較的性格が丸い。スキルの狂化は低いが信仰の加護により、精神異常をきたしてる為、それなりの意志疎通は出来るがほぼバーサーカーである。
さっさと臓硯を殺したかったが、自身のマスターが死ぬので歯がゆい思いをしていたところに、メディアによって臓硯が殺され雁夜が助かったので感謝している。とりあえず、山門を敵から守っているため、絶望的な状況を知らない。


キャスター&バーサーカー陣営は上手くいけば、聖杯戦争の最後まで残れたかもしれない。


※アンズー鳥・・・最高神エンリル及びその息子ニンギルスの象徴とされ、嵐などの大気の力・雷の化身たる聖獣。怪鳥と呼んでるのがコイツら。ちなみに、オジマンさんのスフィンクスみたく沢山いる。


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