したがって、今回の話が10話になります。
第10話 「激突戦域」
「そんなわけで、トロわんお願い!学年別トーナメントで私と組んでー!じゃんけんで負けて、私だけ残ったのー」
学年別トーナメントを前にのほほんさんがトロワに拝み倒していた。
いつも組んでいるメンバーが奇数だったため、じゃんけんで負けたのほほんさんだけが取り残されたようだった。
「一夏はシャルルと組むようだからな。俺も相方を探していたところだ。よろしく頼む」
そしてそれはトロワもしかり。
男子も奇数であり、一夏はシャルルと組むとのことだったので、自然とトロワが残る形となった。
「ありがとー、感謝感謝ー」
のほほんさんがいつもの表情で感謝しているところですれ違った女子の会話を耳にする。
「ねぇ!第3アリーナで代表候補生が模擬戦やってるって!」
「行こう行こう!」
「模擬戦なんだよおおおお!」
その話は手前にいたのほほんさんの耳にも入ったようで、
「トロわんはどーする?」
どうする?と聞きながらも行きたいオーラが体からひしひしと出ているのが見て取れた。
「行こう」
一も二も無く、トロワはのほほんさんを引き連れてアリーナへと向かっていった。
アリーナに到着した頃には既にセシリアと鈴のコンビがラウラと戦闘している最中だった。
「ほへー、ドンパチやってるなぁー」
「だが、ラウラには何もダメージを与えられていないようだな」
冷静に現状を分析する。
加えて、
(・・・あれがAICの力か・・・)
初めて見るAICについての情報をリアルな戦闘を見て頭に入れていく。
「トロワも来てたの?」
いつの間にか一夏とシャルル、そして箒がトロワの隣に来ていた。
「ああ。ついさっきだがな。それにしても、あれがAICの力か。直に見るとその性能に驚かされる」
「驚いているようには見えないけど?」
トロワの変わらない表情にシャルルが突っ込みを入れる。
「AIC・・・すごい能力なんだな・・・」
対して一夏のほうは渋い顔をしながら模擬戦を見ていた。
「本当にわかっているのか?」
なんとも抽象的な感想に箒がむっとした表情で一夏の方に振り向く。
「ああ。あれを見ただけですごさがわかるさ・・・」
「それと、操者の技術もあってか、的確な場面で使っている」
トロワも見たままの感想を述べる。
「あの二人相手に無傷だもんな・・・。やっぱ本場の軍人だな・・・」
ラウラと鈴・セシリアの二人組みの試合運びを見て一夏は険しい表情を崩さなかった。
アリーナでは鈴とセシリアが二人がかりでラウラを攻撃していたが、戦いの経験値とISの相性でラウラにほとんどダメージを与えることができずにいた。
それどころか、数的に有利な二人のほうがダメージを多く負っていた。
二人はラウラの攻撃で地面に叩き付けれていた。
「ったぁ・・・」
「くぅ・・・」
そしてラウラは追撃をすべく、一気に加速して二人に詰め寄る。
「このッ!」
鈴が肩の衝撃砲にエネルギーを貯める。
「甘いな。このタイミングでウェイトのある空間圧兵器を選択するとは」
エネルギーを貯めている衝撃砲に向けてラウラは肩のキャノン砲を発射する。
砲撃は鈴の左肩に着弾、衝撃砲が爆散する。
「きゃあ!!」
「とどめだ!」
「させませんわ!」
鈴とラウラの間に割ってはいるセシリア。
直後、『ブルー・ティアーズ』の腰部からミサイルビットを発射させる。
自殺行為に等しい、至近距離でのミサイル攻撃がラウラに直撃し、爆発を起こす。
その爆風で鈴とセシリアが地面に叩きつけられる。
「この至近距離からミサイルだなんて」
「とりあえず、無事では済みそうにも―」
と、セシリアが爆発の煙が晴れた箇所を見ると、ラウラが特にダメージを負うことなく、その場で佇んでいた。
「・・・これで終わりか?ならば、私の番だ」
そしてラウラは腰部からワイヤーを放ち、鈴とセシリアの首を締め付ける。
「ッ・・・」
「グァッ・・・!」
首を絞められ、声にならずに息だけを吐き出す二人。
「・・・フッ」
その後はただただラウラが二人にありったけの暴力を振るうだけだった。
「ひどい!あれじゃあシールドエネルギーがもたないよ!」
「あのままだったら死んじゃうよー!」
シャルルとのほほんさんが焦りの表情を見せる。
「やめろ!ラウラ!やめろおおお!!」
一夏が観客席のアリーナのバリアを叩く。
そんな一夏に気づいてラウラはニヤリと笑みを浮かべ変わらず暴力を振るい続ける。
「!あいつ・・・!」
(鈴とセシリアをダシにして俺を誘っているのか!?)
ラウラの本意に気づいたとき、一夏は自分の体の血が頭に上る感覚を覚えた。
(乗って、やろうじゃんか!!!)
一夏は『白式』を展開、一気に『零落白夜』を発動させ、自身の前に展開しているアリーナのバリアを叩き割る。
「その手を、離せえええええええ!!!」
「フッ」
ラウラは突っ込んできた一夏の方に振り返り、片手でAICを展開する。
(何だ・・・、体が動かねぇ・・・!これが、AIC・・・!?)
「感情的で、直線的。絵に描いたような愚か者だな」
「くっ・・・!」
AICが展開されている中でも『零落白夜』は『白式』のエネルギーを吸い続け、次第にその刃を小さくする。
「やはり、敵ではないな。私と、シュヴァルツェア・レーゲンの前では有象無象の一つでしかない!消えろ!!」
ガシャン、とラウラが右肩のキャノン砲を一夏に向ける。
「くっ!?」
直撃を覚悟した時、一夏とラウラの間に銃弾の雨が降り注いだ。
シャルルが自身のISを展開し、ラウラと一夏の間に割って入った。
「くぅ!?」
突然の攻撃にラウラが一夏から距離を離す。
「一夏離れて!」
「ちっ、雑魚が・・・!」
ラウラが毒づく。
ラウラが距離をとった隙をついて、一夏が倒れこんだ二人に近づく。
二人のISは既にエネルギーを使い果たしていたのか、二人ともすでにISスーツだけの姿になっていた。
「つかまれ!」
一夏がぐったりしているセシリアと鈴をつかむ。
「はい・・・」
「うん・・・」
「やらせん!」
ラウラがキャノン砲を構え、一夏をロックし始める。
(頼む白式、あと1回だけイグニッション・ブーストを使わせてくれ!)
「ハッ」
ロックが重なった瞬間、ラウラがキャノン砲を放つ。
それと同時に一夏の『白式』がイグニッション・ブーストを発動させる。
「何!?」
一夏の残エネルギーから使えないと踏んでいたイグニッション・ブーストの実行にラウラが素直に驚く。
「どこを見てるの!?」
その間もシャルルの足止めは続いていた。
「一夏、こっちだ」
一夏が自分の破壊したバリアの跡を見るとトロワと箒がとのほほんさんが担架を準備して待っていた。
「トロワ!悪いな!」
一夏がトロワに二人を預ける。
「気にするな。それより、二人を医務室に連れて行くぞ」
「よろしくな!」
一夏がシャルルとラウラの元へと戻る。
「箒、本音、一緒に来てくれ」
「あ、ああ」
「了解っ!」
トロワがセシリアを乗せた担架を、箒とのほほんさんで鈴を乗せた担架を動かし、保健室へと移動する。
(私にも専用機があれば・・・!見ているだけなど・・・!)
未だ戦闘が続いているアリーナを背に箒はただ悔しい想いを胸に秘めるのだった。
アリーナではラウラとシャルルで戦闘が続けられていたが、シャルルはAICの前で決定打を打てないでいた。
(やっぱり、AICはやっかいだね。攻撃が届かない・・・!)
「フランスの骨董品もここまでだな・・・。改めて、世代差を教えてやろう!」
ラウラが左手でエネルギーのブレードを展開し、
シャルルに斬りかかる。
しかし、その刃がシャルルには届かなかった。
ガシイイイイイイン!
千冬がシャルルとラウラの間に割って入り、生身の状態でラウラのブレードを刀で受け止めていた。
「教官!?」
想定外の乱入者に今度こそラウラの表情が大きく崩れ、驚きを顕にする。
「やれやれ、これだから餓鬼の相手は疲れる」
「千冬姉!?」
「模擬戦をやるのはかまわん。だが、アリーナのバリアを破壊までする事態になられては教師としても黙認しかねる。この決着は学年別トーナメントでつけてもらう。いいな?」
千冬が納刀し、三人に告げる。
「教官がそうおっしゃるならば」
「わかりました」
「ああ・・・」
「教師にはハイ、だ。馬鹿者」
三者三様に答えるが、一夏の返事に対して千冬が一夏をにらみつける。
「は、はい・・・」
「それでは、学年別トーナメント開始まで私闘の一切を禁止する!解散!」
パンッ!と千冬は手を叩き、その場は皆解散となった、
保健室に運ばれて診断された結果、セシリアと鈴の怪我は比較的軽傷だった。
しかし、
「なんで!?」
「私たちが学年別トーナメントに出れないんですの!?」
「お二人のISはダメージレベルがCを越えています。出場を許可できません」
山田先生より、学年別トーナメントの出場を認められない通告が二人に出されていた。
「私、十分に戦えます!」
「私もですわ!こんな結果では、納得いきませんわ!」
当然、納得のいかない二人は反論する。
「ダメというものはダメです!ここで修理に専念しないと、後が怖いですよ!」
優しい、どこかぽやっとした山田先生の、普段と違った強い口調に鈴もセシリアもこれ以上反論できなくなる。
「何、一夏がお前たちの敵をとってくれるさ」
「―ああ、任せとけよ」
トロワの一夏が静かに、そして力強く答える。
「一夏じゃなくてあんたが当たったらどうすんのよ」
鈴がトロワに突っ込む。
「無論、俺もお前たちの敵が取れるように全力を出す」
それはトロワも同じで、いつもの表情で、力強くそう答えた。
そして、学年別トーナメントの当日を迎えた。
全校を挙げてのイベントだからか、ほぼすべての生徒が何かしらの形でこのイベントに携わっていた。
それは男子メンバー3人も同じで、トーナメント開始直前まで来賓の対応や、会場の準備等の業務に追われていた。
それが終わり、3人は男子専用の更衣室に駆け込む。
「それにしても、スゴイ人だな、これ・・・」
「3年にはスカウト、2年には1年間の成果の確認、っていう具合かな?」
「ふーん、ご苦労なこって」
興味なさそうに一夏がぼやく。
そんなことよりも一夏の頭には参加できない鈴やセシリアの顔がよぎる。
(せっかく自分の力を披露する場に参加できないなんて、悔しいよな・・・)
それと同時に箒の顔もよぎる。
(結局、箒は誰と組むんだろう・・・)
そして、ラウラ・ボーデヴィッヒ。
あの圧倒的な力を披露したその存在を思い出し、一夏の心に自然と熱さがこみ上げる。
「一夏は、ボーデヴィッヒさんの対戦が気になるの?」
そんな一夏を見、早速察したのか、シャルルが声をかける。
「ああ、気になる」
「あまり感情的にならないでね。実力で言えば、多分、1年ではボーデヴィッヒさんが最強だから・・・」
「シャルルは見たことないだろうけど、トロワもなかなかのもんだぜ?」
「そうなの?」
シャルルがトロワの方に向き直る。
「さあな。一夏の買い被りだ」
「あの動きをしてどの口がそれを言うか」
とぼけるトロワに一夏が突っ込みをいれる。
「このトーナメントでトロワの戦いが見れればいいな。―っと、対戦相手が出たみたいだね―って!?」
「!」
対戦表を見た一夏とシャルルは驚きで言葉を失う。
トロワは無言でトーナメントの対戦表を注視していた。
そして、女子更衣室では―
「!」
箒は一夏と同じく驚きで絶句し、ラウラは口元をニヤリと歪めた。
トーナメントの対戦表の1回戦には
篠ノ之箒&ラウラ・ボーデヴィッヒ
vs
織斑一夏&シャルル・デュノア
と書かれていた。