江戸は本日も平和です ~銀魂短編集~   作:OTZ

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第四訓 試験とは人生の岐路である

 かぶき町事件から半月。

 例の事件はおよそ400人に迫る負傷、死傷者を引き起こしたことは前回述べた通りである。

 しかし、真選組側も決して軽くない損害を被ったこともまた事実であり……。

 

―かぶき町―

 

 長谷川泰三ことマダオは今日も町をふらついていた。

 家を追い出され、自販機や路上で集めた僅かな金で酒を買ったり飲んだくれる日々。

 そして、同じように半ば死人のようにふらつく男が居た。

 

「よう。銀さん」

「ああ、長谷川さんか……」

 

 この時点で小銭といえども一杯ひっかけるだけの金はあった為、銀時と共に適当な酒場で飲んだ。

 そして適度に酔いが回ると勘定もろくに払わずに出ていき、店主に追いかけられ漸く撒けたところでマダオはぼやく。

 

「くっそお。どうして俺はいつもこうなんだ」

「そりゃあれだ。金もろくに払わずに出ていくのが悪い」

「いやあんた一銭も持ってなかったよね? 俺に全部払わせようとしたよね?」

 

 マダオは銀時に突っ込む。

 

「しゃーねーだろ。俺の希望は全部釘打たれた機械にジャラジャラ吸い取られちまったんだから」

「パチンコで負けたうえに酒おごらせるつもりだったんかい! あーあ。どうして俺の人生はこう……」

 

 マダオがそう愚痴りながら歩いていると、一つの張り紙が見えた。

 その紙には『新規隊士募集』の文字が書かれている。

 

―真選組屯所 広間―

 

 土方と沖田、その他暇な隊士達は送られてくる履歴書の山を捌きながら話している。

 

「土方さん。いくらなんでも俺らの隊士を一般から募るのは無茶なんじゃないですかねぇ。俺ら皆武州出身で構成されている筈なんですが」

 

 沖田の疑問に対し、土方はうんざりしたような様子の声で返す。

 

「仕方ねえだろ。死亡、重度欠損者合わせて43人も隊士が減っちまったんだぞ。七部隊出動だったから良かったものの、二部隊一気に潰されたようなもんだ。伊東が起こした反乱の穴埋めからさほど経ってねえのに全部武州で補えるほど、あそこに有望な野郎は多くねえんだ」

 

 そう言いながら土方は一瞥した百枚ほどの履歴書をまとめてゴミ箱に捨てた。

 

「あーあいいんですかィ。ろくに見てねーじゃないですか」

「いくら人手が足りないっつても全く素質のない奴を叩き上げる余裕も時間も俺らにはない。それこそ浪人共を斬るが如くさっさと判別しないととてもこの量は捌ききれねえ」

 

 真選組の一般公募が出されると、簡単に警察になれると勘違いしたのか無職や浪人たちが応募に殺到し全国から1万通を越える応募が来ていたのだ。

 

「分かりやした」

 

 と言いながら沖田は自分が処理する分の履歴書を燃やして見せる。

 

「おーい誰が浪士どもを燃やせと言った?」

 

 土方は切れるのを抑えながら、沖田の胸ぐらを掴む。

 

「いやーだって俺土方さんみたいな温いのと違って、いちいち浪士の顔なんざ見てないもんで」

「そういう事じゃねーよ! 一遍死ぬかコルァ!」

「全く、副長も沖田隊長も何してんだか……」

 

 そんな争いを山崎は傍目にしながら、一枚の履歴書に目が留まる。

 

「あれ……これって」

 

―かぶき町 どこかの路地―

 

「何してんだあいつら」

 

 これを見た銀時の第一声はそれであった。

 

「真選組ってあの武装警察のことだよな?」

「ああ。求人なんて初めて見たがな……。こんなマダオと(ピー)しかいないような街にまで求人を出すなんざよほど人手が入用らしい」

「ねぇ。人をさりげなく汚物と同列に扱うのやめてくんない!?」

「ま、俺は奴らに手を貸すなんざ御免こうむるがな」

 

 銀時はそう言いながら、求人広告を尻目に立ち去ろうとした。

 しかし、マダオは立ち去ろうとはしない。

 

「おい、どうしたんだ」

「銀さん……俺、ガキん頃警察になるのも夢だったんだ」

「え、初耳だぞそんなの」

「あの頃の俺は毎週夢が変わってたからな」

「何その週刊少年ドリーム!?」

「(ピー)亀を見て警官に、(ピー)ジョを見てスタンド使いに、(ピー)の拳を見て世紀末の猛者に、キン(ピー)を見てプロレスラーになりたがってたんだ」

「ピー音機能してねえどころか最後とんでもねえところで切れたァァ! 世紀末の猛者ってどうやったらなれんの!? 自分だけじゃどうしようもないよね!?」

「大人になって、そのほとんどが夢物語に過ぎない事に気付いちまったが……(ピー)亀だけは今、目の前にチャンスが転がっている!」

 

 マダオは希望を持ち始めた表情で語る。

 

「いや言っとくけどあっちの警察とこっちの警察じゃ意味が違うからね」

「確かに真選組じゃ毎日業務そっちのけで競馬中継聞いたり、ラジコンを操作する事も適わねえ」

「いや、そうじゃなくてもっと根本的なところで」

「でも、どんな形であれ、ガキの頃の夢を叶えられるチャンスなんだ。適うだけにな」

 

 マダオはグラサンの端を光らせる。

 

「上手くねーんだよ! つか話聞いてる!?」

 

 銀時は突っ込み疲れたのかぜぇぜぇとぜい息を吐いている。

 

「銀さん、俺これ申し込んでみようと思う」

 

 銀時は落ち着くと、安堵したかのような目でマダオを見る。

 そして、頭を掻きながら

 

「ま。どんな形であれ、夢を叶えようと努力するだけそこらのティッシュガチガチにしているガキよりはマシだ。せいぜい頑張れや」

 

 と言って、銀時はマダオと別れた。

 比較の対象おかしくね? とマダオは思ったが、銀時なりの応援なのだろうと思って収める。

 その後、マダオは飲み屋で払うはずだった金を履歴書と切手代金と公衆電話代に変えて封書を真選組に送った。

 

―真選組屯所―

 

「これ……確かマダオネアに出ていた人じゃないですか?」

 

 山崎は土方に尋ねる。土方は履歴書を読む。

 

「長谷川泰三……。そういやそうだったな。だが38ぃ? 体力勝負の職でこの年齢、しかも武道経験もろくに無いんじゃ使い物にならんだろ。シュレッダーにかけとけ」

「いやしかし土方さん。これはいい機会じゃないですかィ?」

「あ?」

「どうやってあの難関クイズ番組マダオネアで1000万分捕ったか聞き取って、隊士減少した分減らされた補助金を補か」

「どんだけ遠回りな事考えてんだよ! 俺らはそんな暇じゃねえんだ。インタビューしたけりゃテレビ局にでも新聞社にでも行け」

「いやいや、あのマダオを試験の場で人目見えたいじゃないですか!」

「そうだそうだ! 俺たちもマダオが見たい!」

 

 そうこうしていると、隊長や隊士たちの間からマダオコールが湧きあがった

 土方は何がこんなに彼らの心をひきつけるのか皆目見当がつかない。

 

―真選組屯所 試験場―

 

 それから一週間後、マダオは書類審査合格の報せを聞き、屯所へ向かい、試験場へ入った。

 試験監督は山崎で、説明が始まる。

 

「えー本日はご足労頂いて試験を受けていただきありがとうございます。皆さんにはこれより筆記試験を受けていただき、その後には副長と一番隊隊長による面接。最終試験に実技試験がひかえています。まず最初の試験」

「いや……あの」

 

 皆さんっていうか、受験者俺一人なんですけどおお!? とマダオは思った。

 

「あの、もしかして今日俺一人なんですか? 応募殺到しているとか聞いたんですけれど」

「いくら人手が足りてないと言っても、俺たち真選組の屯所というかねぐらはここしかないんですよ。となれば自ずと新たにここに連れてこれる人も少なくなるわけで書類選考の段階でばっさりともう予め切ってあるんです」

 

 バッサリしすぎじゃねえええ!? ふるい落とされ過ぎだろこれええええ。とマダオは思う。しかしこれはチャンスだ。一人しかいないということは俺自身をじっくりとみてくれるという証左。これは千載一遇の好機だとマダオは思考を切り替える。

 しかもそんな大多数の中から俺が選ばれたという事は向こうは俺の事買ってくれて……

 

「それにしても俺光栄ですよ」

 

 キタキタァっとマダオは思考を高ぶらせる。

 

「まさかマダオネアを制覇した最強のダメ人間がここに来てくれるだなんて」

 

 買ってくれたとこそこかよおおおおおおとマダオは急転直下の心持になる。

 

「副長や沖田隊長もどうしてマダオネア獲れたのか聞きたくてウズウズしてますよ。それはともかく、そろそろ試験始めますね」

 

 なんだこいつら単に好奇心で俺を通したの!? 長谷川泰三としてではなくマダオとして召喚したのおおお!? とどんどん気分を落としていく。しかし、何はともあれ受けに来たからには真剣にやろうと覚悟を固めた。

 

―40分後―

 

 試験時間は1時間。算学、国語、歴史などの一般常識を問う問題が多数を占め、一応エリート出身なのと多少は勉強してきていた為マダオでも苦心しながらどうにか進めることが出来た。

 しかし、最後の問題でマダオは大きな壁にぶち当たる事になった。

 

【問7】(心理学)[25×2=50]

(1)以下のシチュエーションで最適なマヨネーズを選べ

 彼は市中見廻りの末に3件の強盗犯を取り逃したため、精神的、肉体的に疲れ果ててへとへとであった。彼は三日前から残業続きで……(中略)

 

①ハーフ

②クォーター

③ヨード卵

④リアルマヨネーズ

⑤サラダマヨネーズ

 

 オィィィィ! なんだこのどうでもいい問題!? マヨネーズソムリエ? とマダオの頭中では様々な突っ込みが駆け巡る。しかし一応は試験問題である為マダオは苦心の末に疲れているためヘルシーなマヨネーズを求めているのではないかという思考のもと⑤を選択した。

 

(2)以下のシチュエーションで最適な行動を選べ

 彼は魔女宅を見てキキの健気さと可愛さに惹かれ、放送されるとキキが箒に乗って一瞬(ピー)が見える時だけ再編集して印刷するほどの変態である。

 そんなある日、転校生のKさんがまさにキキそっくりだったため恋に落ちてしまう。貴方は彼の友人として如何なる行動をとるべきか正しいものを選べ。

 

①励ます

②彼を禿げさせる

③Kを彼女にする

④Kを寝取った上で(ピー)や(ピー)や(ピーーーー)した所を写真と動画でまざまざと見せつける

⑤お前はKに合う男じゃねえ。と諦めさせる

 

 これも訳分かんねえよ! なにこれ本当に警察の採用試験んんん!? ④とか友達のやる事じゃねえよ下衆の極みだろ! などなどとマダオは考える。友達としてなら①が一番安全な気がするから①が一番妥当な選択であるとして配られたマークシートを塗りつぶそうとした。

 が、ここでマダオはリード文を見る。キキの(ピー)な部分全てをスクラップするほどの変態である。だとするならば⑤で穏便に諦めさせるのが妥当な選択なのではないかという思案も思い浮かぶ。その一方でそもそもキキの(ピー)な部分ってなんだ分かんねえよという突っ込みも生まれる。

 結局マダオは10分ほど長考した末に⑤を塗りつぶそうとした。1を消そうとしたが、結構強く塗ってしまった為なかなか消えない。懐かしい感じに捉われながらマダオは全問とき終える。配点をよく見たらこの大問で百点満点中の半分を占める50点配点。これを見て更に熟考することとなったが、そうこうしているうちに試験時間が終了してしまった。

 

「はい終わり! 次は面接なんでトイレ休憩10分はさんだら隣の部屋へどうぞ」

 

 山崎は答案用紙を回収し、部屋から退出した。

 マダオは7割は取れていると良いなと思いながら小便と下痢を済ませ、隣室へと向かう。

 

―屯所 面接会場―

 

 10分後、マダオは部屋から名前を呼ばれ、入室した。

 

「長谷川泰三です。よろしくお願いします」

「はい宜しく。まあそう気張らずに、おかけになってくださーい」

 

 土方が山崎から回されたと思われる解答用紙や資料を見つつ座る事を勧め、マダオはパイプ椅子に着席する。

 

「へー。本当にマダオネアに出てた人だ」

 

 沖田がマダオを見て楽な格好でそう言った。

 

「あぁ、はい。一応一千万円獲りました」

 

 と、マダオはさりげなく沖田に実績をアピールする。

 

「へー。凄いじゃねェか。で、その一千万何に使ったの?」

「え、えっと……」

 

 正直に言えば桜島家から肩代わりした借金の返済である。

 しかし、いくら肩代わりとはいっても借金歴がある事がばれるのは就職の上で不利になる事はマダオの戦績上明らかな事であった。ここは適当な嘘をついて切りぬけるしかない。

 

「その、就活費用に」

「へー。就活費用にねぇ」

 

 沖田はマダオの格好を一瞥。

 彼の格好は茶色い上下の簡素な小袖一枚である。

 

「それでその薄汚い格好でうちに来たのか」

 

 沖田は蔑んだ目でマダオを見ながら返す。

 バレタァァァァァ。すぐバレるって分かってたけどバレタァァとマダオは後悔する。

 

「えー。ええとですね。就活費用と言っても、服じゃなくて自分を磨くことにですね」

 

 マダオはその場で思いついた言い訳を言う。

 

「服もまともに着こなせない奴が、自分を磨くとか言う権利あると思ってんのか」

 

 資料を読み終わった土方は煙草を吸いながら、マダオに毒づく。

 えぇ!? なんで面接官が普通にタバコ吸ってんだよ! 副流煙で肺がんになったら訴えるぞ! などという思考がマダオの中に駆け巡るが何とかこらえる。

 

「まぁ。それはいい、今のは俺の考えだ。自分を磨くなどというのは人それぞれ……だがな」

 

 土方は煙草を灰皿にすりつけて、目を見開かせ、瞳孔も開く。

 

「こんな疲れている男にあっさりサラダマヨ選ぶようなセンスの男なんざ俺は認めねぇぇぇぇ!」

 

 何の話だァァァ! あの問題作ったのお前かよォォとマダオは思った。

 

「お前なぁ。残業続きで疲れていて、犯人何人も逃すようなヘマを犯すような男。明日からはそれこそ奮起していかなきゃならねぇんだぞ! そんな男にあっさりで済ませるとは薄情にも程があんだろ!」

 

 マヨネーズの種類一つにそんなに拘る奴にだけは言われたくねぇと思ったがグッとマダオは堪えて

 

「いやしかし、確か夜の状況ですよね? 夜にあんまり胃がもたれるものを食べるのは健康に良くないと思います! 本当に男を思うなら、敢えて夜はあっさりなサラダマヨネーズ。翌朝はこってりヨード卵100パーセント使用のマヨネーズで決めるのが常道ではないでしょうか!!」

 

 と土方相手に猛然と反論する。

 

「ほぉ。言うじゃねえか。二段構えとは中々考えてるじゃねえか。だが、解答欄は一つだけだ。しかも朝にこってりマヨネーズ食わせるのは間違っている。逆なら点はやったが、これなら0点だ」

 

 結局元の木阿弥じゃねえか! 俺の反論全然取り入れてねぇぇとマダオは思ったがこれ以上の反論は無駄だと悟り止めた。

 

「土方さんそれはさして問題じゃないですぜ」

 

 沖田は割って、土方を否定する。

 

「え?」

「問題は、諦めさせるなんて軟弱な選択をした事でさァ」

 

 結局お前もそこに行きつくんかィィ。最後の問題はお前がつくっかのかよォォとマダオは突っ込んだ。

 

「いいか。武士たる者。時には冷酷かつ非道な選択をしなければいけない事もあるんでィ。諦めさせるだけでなく、それ以上の決定的な絶望を下す必要に迫られる事もあるんだぜ。だからこそあの選択肢の正解は……④だ」

 

 タダのドSじゃねえかあああああ! と喉までこみあげてきたが耐えた。

 

「どうしてそこまでする必要があるんです! 写真や動画なんて明らかにやりすぎじゃないですか」

「おやおや聞いてなかったか。それ以上の絶望を与えるっていうのはな。諦めさせるだけじゃ足りねーんでィ。友達が寝取る。目の前でキスする。(ピー)する。(ピーーー)する。そしてそれを写真や動画にして送り付けるということでさァ。そん時のそいつの表情と言ったらサド心を大いに満たしてくれる極上の代物になりまさァ」

 

 いやだからこの小説全年齢だから! いくら色々伸びないからって変なものに媚びないでお願いだから! しかももうサドって言っちゃったよ! とマダオは心の叫びをする。

 

「まあ。面接はこんなもんでいいでしょう。土方さん」

 

 面接じゃねーよ。ただ自分の意見言っただけだよ! とマダオは突っ込む。

 

「そうだな。長谷川さん。次が最終試験だ。次は河原に行ってもらう」

 

―河川敷―

 

 河川敷にはネットが張られている。

 

「あの。ここで一体何を」

 

 マダオが尋ねると土方は煙草を咥えながら答える。

 

「ここで長谷川さんは山崎とバトミントンをしてもらう」

 

 そう言うと、山崎はユニフォーム姿で颯爽と登場する。

 

「長谷川さん。あんたミントンの経験は?」

 

 沖田はマダオに尋ねる。

 

「ガキの頃に何度かやったっきりで」

「素人同然か……。じゃあ。山崎から一点でももぎ取れたら合格という事にしましょうや」

「おい。そりゃいくらなんでも」

 

 土方は沖田に怪訝な表情で言う。

 

「大丈夫でさァ。な、山崎」

「は、はい! いくらなんでも素人には負けませんよ」

 

 山崎は自信たっぷりな様子で答える。

 一点決めれば全てがチャラになる……? そんな風に聞こえたマダオは尋ねる。

 

「あの……もし、俺が一点取れたら真選組に入れる……って事ですか?」

 

 土方は携帯灰皿に灰を捨てて言う。

 

「そういう事だ。今までのはあくまで顔見せとあんたの人となりを知るデモンストレーションに過ぎない。今回の実技試験であんたが真選組にふさわしい人物かどうか見させてもらう」

 

 マダオになってから最大のチャンスと言っていい機会である。ただ一点。一点を決めれば俺は晴れて真選組の仲間入り。ハツにも戻ってきてもらえるかもしれない! 今ここで踏ん張って果敢に点を取れば本当に脱・マダオだ! と自らを奮い立たせる。

 

「あ。マダオアル」

 

 その頃、河川敷の上には万事屋の三人組と定春が散歩がてら通りががっていた。

 

「本当だ! 長谷川さーん!」

 

 新八はマダオに呼びかける。

 マダオはすぐに気づき、手をあげて応える。

 

「何やってるアルかー! とうとう逮捕されるアルかー!?」

「違うわボケェェェ! 試験だよ。脱マダオがかかってるの!」

 

 長谷川はそう答えると定位置につく。

 

「脱マダオって、長谷川さん真選組に入るって事ですか!?」

「まーそういう事になるな。まさか本当に申し込んでるとはねェ」

 

 銀時は鼻くそをほじりながら目下を見る。

 

「へぇ……。頑張ってくださーい! 僕らここで見てますから!」

 

 万事屋三人の応援がある中、マダオはキリっとした様子で山崎を見る。

 

「俺が10点取ったら貴方の負け。その中であなたが一点でもとれば貴方の勝ち。それでいいですね」

「ああ。文句はねぇ。そのくらい単純な方が分かり易くていい」

「そうですね。それじゃ。いきますよ!」

 

 こうして、マダオの最後の試験が始まった。

 しかし、山崎にはミントンとカバディとアンパンしかない。そのアイデンティティがかかっているため相手は本気でいっていた。そんな中マダオがまともに対抗できるはずがなく、あっという間に9点とられてしまっていた。

 

―10分後―

 

「やっぱ……。ダメか」

 

 マダオは思わずそんな事を呟く。

 俺なんかが真選組に……マダオスパイラルを脱せられるはずがないんだという固定観念に縛られ始めている。

 そうさ、俺は自販機の下を探したり、段ボールで暮らすのがお似合いなんだと自嘲気味な笑顔を浮かべる。

 

「諦めてんじゃねえ!」

 

 そんな中、フィールドに銀時の声が響く。

 

「銀さん」

 

 長谷川は銀時を見る。

 

「あんた。そうやっていつもいつも逃げてっから、そうやって自分の枠組みを低く設定しているからいつまでたっても上に行けないんだろうが! 上に行きたければその枠組みを破壊し、上に上がる気概を持ってみろよ! それが出来なきゃいつまで経ってもマダオのままだぞ!」

「銀さん……!」

 

 マダオは諦めかけていた気持ちを奮い立たせる。

 そうだ。男はいつだって気概が無ければ壁を乗り越えられない。ここで一踏ん張りして、相手に……俺をバカにしていた連中に極上のスマッシュを決めてやる! とマダオは今一度心を奮起させた。

 

「フッ。これで最後ですね。じゃあ、いきますよ!」

 

 山崎はコートの左側から、羽根を打った。マダオは全神経を集中させて、その羽根を撃ち返す。

 

「何っ」

 

 山崎はマダオが撃ち返せるとは思っていなかったのかあわてて左側に行き、全力で応戦する。

 今までに見たことが無い速度の羽根である。

 

「ハツ……銀さん……みんな。見ていてくれ……これが、マダオの人生に終止符を打つ、最後の一撃ダァァァァッ!!」

 

 マダオは飛び上がって、スマッシュを相手側のコートに叩きつける。次の瞬間。羽根は相手側のコート内に落ちていた。

 

「やった……やった!」

 

 マダオはまた飛び上がって喜んだ。

 万事屋一行はその様子を嬉しそうに眺めている。沖田と土方も安堵したのか少々安らいでいるかのような表情だ。

 

「これで、これで、脱、マダオだあああああああああああああ!!」

 

 この瞬間からマダオはマダオではなく長谷川泰三とその名を戻し……

 

―河川敷の上―

 

「おや、こんな所で皆何やってるんだ」

 

 その場に近藤がやってくる。

 

「あ、近藤さん! 見てくださいよ長谷川さんがバドミントンで山崎さんに勝って脱マダオを……」

 

 新八の説明を聞いて、近藤はコートを見る。

 

「あれ……ありゃまさか」

 

―河川敷―

 

「おめでとう。よく頑張ったな。これであんたも真選組の一員だ」

 

 土方は長谷川と握手をする。

 

「はい! どうか宜しくお願いします」

 

 長谷川の顔は歓喜に満ちている。程度に差はあれど、公務員に復職できたのである。その喜びも当然といえよう。

 

「じゃあまずは真選組バズーカの扱い方から教えてやるよ。土方さんを的に」

「おい!」

 

 そんな三人の間に近藤が割って入る。

 

「あ、近藤さん。紹介する。これがうちに新しく入ることになった長谷川泰三……」

「やっぱり。こいつか……俺がタエフルエンザに罹っていた時、桂の事をズラっちなどと気安く呼んでいたの」

「え!?」

 

 土方はマダオをさっきとは全く違う目で見る。

 

「え、あれ、どうしたの」

「長谷川さん……ちょっと詳しくその件について聞かせてもらぇねぇですかい? 大丈夫。お手間はとらせやせんから」

「え……ええええええ!?」

 

 マダオはやはりマダオであった。

 

―第四訓 試験とは人生の岐路である 終―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回は予定している限りではラストの話です。
とりとして、万事屋をメインにしようと考えていますのでお楽しみに。
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