江戸は本日も平和です ~銀魂短編集~   作:OTZ

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季節はずれなのは重々承知の上ですが、クレしんを見ていて思いついたので書いてみました。
万事屋冬のある日の一コマです。時期としては1月下旬あたりを想定しています。


第五訓 こたつとは最も身近なブラックホールである

 それは雪がふりしきる冬のある日の事であった。

 この日は依頼が解決して多少の金が入った為、夕食をこたつを囲んで三人でとっている。

 食事当番も新八の日だった為、没個性の平凡な料理が並んでいた。

 

―万事屋―

 

―今夜は江戸一帯に強烈な寒波が襲っており、大雪となる見込みです。明日の最低気温は……―

 

 結野アナの語るとおり、今日の江戸は非常に冷え込んでおり、ストーブや暖房なしでは室内と言えども容赦なく凍えるほどであった。

 

「ひぇー雪ですって、道理で寒いわけです」

「全く。どこもかしこも寒くていけねーや。江戸然り俺の懐然り新八の料理然り」

 

 銀時はカボチャの煮っ転がしに箸をのばしながら言う。

 

「あの。さりげに僕の料理貶すのやめません?」

「だってよお。お前の料理見ててつまんねーだもん。カボチャに寒ブリの煮物。おひたしに味噌汁。普通過ぎんだよ。もっとこうオリジナリティってのが欲しいよね。うん」

 

 と、言って銀時はカボチャを口に入れる。

 

「銀ちゃんの言うとおりネ。どうせなら冷やし中華とか夏野菜カレーとか華を出してみろヨコンチクショー」

 

 神楽は鰤の大根を口に入れながら喋る。

 

「神楽ちゃん。華とかそういうの以前にもう少し季節感ってものを考えようよ……。じゃあ銀さんならどんな料理だすんですか」

「雪見大福に寒天あんみつ」

「それ料理じゃねえええ! デザートでしょそれ!」

「料理ですー。俺の中ではデザートも立派なメインディッシュなんですー」

「もういいアンタは一生糖分とってろ。糖尿病になって全てを後悔しろ」

 

 新八はそう毒づくとカボチャの煮っ転がしを箸に取った。

 

「安心するアル。銀ちゃんはもう脳が糖に侵されてるネ。時間の問題ヨ」

「ならねぇならねぇ。だって俺がまともに動けなくなったら銀魂終わるもん」

 

 銀時は頬杖をつき、下卑た笑いを浮かべながら言う。

 

「何ゴリラに甘えてんだよ! つーか元も子もないこと言うなァァ!」

「ヘックシ!」

 

 神楽は大きくクシャミをする。鼻水が垂れた。

 

「おいおいくしゃみすんなよ。うつって前みたくウィルス・ミスになったらどうすんだ」

「うるさいネ。これは鰤の骨が変な所に入っただけヨ。銀ちゃんティッシュ」

 

 ティッシュは隣のリビングにあった。

 

「はぁ? 冗談じゃねーよこんなクソ寒いのに。新八」

「僕だって嫌です! 神楽ちゃん。自分の事は自分でやってよ」

 

 新八はうんざりしたような声で神楽に言う。

 

「何だよお前ら! レディには優しくするって習わなかったアルか」

「人前で鼻水垂らして平気でいられるレディなんか聞いたことねえよ。レディってのはな。礼儀正しくて、品があって、おしとやかで謙虚なそう! 結野アナみたいな人のことを言うんだよ。それでボンキュボンだったら最高だなぁうん」

「あの銀さん。話ずれてます」

 

 新八がさりげなく突っ込む。

 するとリビングの戸棚から誰かが落ちてきた。

 

「と、という事は! 品よく銀さんを見守って、礼儀正しく銀さんを見つめていてしかもボンキュボンな私はレディって事ね! 流石銀さん! やっぱり私の事理解できている人は貴方しかいな」

 

 と言いながら猿飛は銀時に抱き着こうとする。

 

「定春」

「アン!」

 

 こたつから出てきた定春は銀時の指示に従って猿飛にかぶりつき、そのまま外へ放り投げる。

 

―外―

 

「何よ! 私の出番これだけなの!? 最初は私の話だとか言ってたくせに酷いじゃないのよ!」

 

 猿飛は虚空に向かって叫んだが空しいものに終わった。

 

―万事屋―

 

「ま、邪魔が入ったが、そういうこった。分かったらさっさと鼻かんで来いガキんちょ」

 

 と言って、銀時はお椀に残った残りのご飯をかっ食らう。

 

「ちぇ。なんだよ。どいつもこいつも」

 

 最早これ以上の反発は甲斐なしと見た神楽は諦めてこたつから出て、寒い手足をこすりながらリビングへ向かった。

 

「あーさぶさぶ……」

 

 神楽は銀時の机の上にあったティッシュで鼻をかみ、ティッシュケースごと持ってこたつに戻ろうとする。

 

「神楽ー。悪い。台所からふりかけ持ってきてくんねーか」

「えー。自分で行けヨ」

 

 神楽は面倒くさそうに答える。

 

「神楽ちゃん。僕もついでに」

「おい男ども人の話きいてんのか!」

「うるせーな。どうせ立ってんだからはやく取ってこいよ。出んのも億劫なんだぞこっちはよ」

「ついでにとって来てくれてもいいじゃないかケチだなー」

「おい新八。お前さっき自分の事は自分でとか言ってたよな。そんな簡単に自分の意見変えて恥ずかしくないアルか」

 

 神楽は蔑んだ目で新八を見る。

 

「うっ……それは」

 

 新八は返答に窮する。

 それを見た銀時はかったるそうな声で

 

「ごちゃごちゃ言ってねーで早く取りに行けって。寒いだろーが」

「そ、そうだよ。それにそんな細かいこと気にしてたらモテないよ」

「お前に言われたくねーんだよ。このアイドルオタクが」

 

 これ以上の問答は無駄だと悟ったのかはたまた面倒だったのか、神楽は心中で復讐を誓いつつ折れて台所まで向かい、ふりかけを大袋二つごと持ってこたつに入る。

 神楽はもう二度とこたつから出るかとばかりについでにトイレも済ませた。

 

―――――

 

 それから十分程が経過して食べ終わり、各々が食器を重ねる。

 

「はー食った食った」

 

 銀時はそのまま畳に倒れこんで天井を仰ぎ見る。

 

「銀さん神楽ちゃん並みにおかわりしてましたもんね」

「ああ。まともに飯食ったのかれこれ4日ぶりだったからな。はぁ。この調子で毎日仕事入ってくれば俺も苦労しないで済むんだがなぁ」

 

 そう言いながら銀時は体を横にしてジャンプを読む。

 

「新八の割には旨かったアルよ。後片付け宜しくネー」

「はーい」

 

 新八は運んできたお盆に食器を全て載せて、台所に向かう。

 そして一枚目の皿を洗った時点で漸く

 

「は、謀られたっ……!」

 

 と大きく後悔する。あまりにも自然な流れだったため、パシリ・雑用係としての本能に抗えず唯々諾々と従ってしまったのだ。

 そもそも神楽が没個性だと罵っていた新八の料理を褒める事などまずありえない。その時点で怪しいと気づく余地はあったが、新八の割にはというワードでその怪しさを緩和させた。神楽はやはり策士であったことを後悔しながらやってしまったものはしょうがないとばかりに黙々と皿を洗った。

 

「ちくしょう……ちくしょう」

 

 と自らの迂闊さに涙しながら。

 一方こたつに居る銀時と神楽は示し合わせたかのように新八に面倒事を押し付けることに成功した為ほくそ笑んでいた。

 その後、新八はみかんにお茶にいちご牛乳などなどいろいろな物をもってこさせられた。

 

「くそ、ちっくしょおおおおおおお!」

 

 と言いながら怒りを叩きつけるかのように新八はお盆を置いた。

 

「おい、なにそんなに怒ってんだよぱっつあーん」

 

 銀時はニヤニヤしながらその様を見ている。

 

「いや……別に……」

 

 せめてこの怒りをこれ以上発散させない事が二人へのささやかな抵抗であると思い新八は堪え、こたつの中に入った。

 

「細かいことを気にしてたらモテないアルぜ。ぱっつあーん」

 

 神楽は鼻くそを飛ばしながら意趣返しとして先ほどの新八の言を用いる。

 新八はしばき倒したい衝動に駆られるが、思う壺になる事を恐れなんとか抑えた。

 

「そういや新八、風呂は沸かしただろうな?」

 

 銀時はパシリついでに新八に風呂を沸かすよう言っていたのだ。

 依頼は朝から夕方まで続いていたためお腹が空いていた三人は何よりも食事を優先していた。

 

「あぁ。はい。あと10分もすれば沸きますよ」

「そうか。じゃあ疲れてるし、俺が先に入るわ」

 

 銀時がそう言うと、神楽がクレームをつける。

 

「えー、いやアル。おっさんの入った残り湯で玉のような私の肌けがしたくないネ」

「んだとコラ! 世界中のお前ぐらいの娘たちはなぁ。皆そんなの我慢して入ってんだよ! 我がままは許さんぞ」

「じゃあせめてお湯張り替えさせてヨ」

「ちょそれはダメだよ! 今月かなりカツカツなんだから水道代もガス代も無駄に出来ないんだって」

 

 新八は今月分の家計簿を見せる。なるほど赤字ギリギリである。

 

「無駄とは何ヨ! 新八、お前はそういう繊細な乙女心が分からないからいつまで経っても」

「だーもう分かった!」

 

 銀時は頭を掻きながら言う。

 

「え? 先に入っていいアルか?」

 

 神楽は目を輝かせながら尋ねるが、銀時は顔をすごませ

 

「ふざけるな。じゃんけんだ。これなら文句ないだろ?」

 

 と、拳を作って前に差し出す。

 

「そうですね。これなら後腐れないし」

「上等アル! 一番風呂は私のものネ!」

「冗談じゃねえよ。今日一番働いたの誰だと思ってんだ!」

「僕だってさっきまで寒い中皿洗いまでやったんだ! 一番風呂は僕のだっ」

 

 三人は火花を散らせ、そして

 

「じゃーんけーん、ポン!」

 

 と三人ほぼ一斉に手を出した。

 

「やった! 僕の勝ちだっ!」

 

 新八はパー。二人はグーを出して新八の一人勝ちに終わった。

 これを面白く思わない二人、特に銀時はいちゃもんをつける。

 

「何言ってんの。お前それ負けだよ?」

「は? 何言ってんですか?」

 

 新八は当惑気味な表情を見せる。

 

「銀ちゃんの言うとおりネ。夜兎族では地球と真逆のルールアルよ」

 

 神楽は冷や汗をかきながらでまかせを言う。

 

「いや何言ってんの今更神楽ちゃん。そんなの今に至るまで聞いたことないよ」

「そーそー。俺実はお前らに今まで黙ったけど夜兎族だからさ。あっちのルールで考えちゃって」

 

 銀時は迫真めいた声で言う。

 

「一番風呂入りたいが為に勝手に設定捏造すんじゃねえよ! 冗談じゃないですよ。このゲームは僕の」

「じゃーんけーん」

「オィィィッ! 勝手に始めてんじゃねーぞ!」

 

 結局元のルールでやり直し、神楽が一番風呂になりましたとさ。

 

―居間―

 

 三人とも風呂に入り終わると、金曜ロードショーをやっていた。

 この日の演目は『魔女の宅急便』であった。

 神楽はパン屋のおやじに見入り、新八は家計簿をつけつつチラチラと見ている。

 

「いやーやっぱりパン屋のおやじはいいアルなー。寡黙な職人という感じがしてかっけえアル」

「神楽ちゃん毎度毎度チョイスが渋いよね」

「たくあんなガキ向けの映画見て何が面白いんだか……。おっ、ここで卍解か……」

 

 銀時はブリーチを読みながらテレビに背を向けていた。

 

「いい年こいてジャンプ読み耽っている奴に言われたくないアル」

 

 神楽はお茶を啜りながら銀時を貶す。

 

「バカヤロー。ジャンプは心が少年でさえあれば子どもから大人まで受け入れる懐の広い漫画なんだよ。お前のは違うじゃん。所詮ガキしか見ないじゃん。大人も見てるってお前それあれだよ。親御さんがついていってみてるだけだよ。付き添いと思い出補正にすぎねーんだよ」

「んだと! ジブリ汚す奴は例えムスカでも許さないネ!」

「あぁ!? やんのかコルァ。鏡花水月でてめぇの記憶改竄すんぞ!」

「ちょっと二人とも落ち着いて。銀さんあんた斬魄刀すら持ってないでしょうが」

 

 そのような感じで金曜ロードショーの時間は過ぎていく……。

 

――――

 

 金曜ロードショーが終わると、テレビを電源を消した神楽は大きく背伸びした。

 

「はー。今週も終わっちゃったアルなー」

「さてと、じゃあそろそろ寝る準備しましょうか」

 

 新八は家計簿を閉じながら言った。

 

「えーいーよ。俺ここで寝るし」

「私もここで寝るアル」

「こたつなんかで寝たら風邪ひきますよ……っと」

 

 新八はこたつの電源を切った。

 

「おい何すんだよ」

「こうでもしないとあんたら布団で寝ようとしないでしょ。ほら、こたつ引き上げて」

 

 新八はコンセントを振り回し、ため息をつきながら言う。

 

「たくこれだからこいつが泊まりに来るとめんどくせぇんだよな……」

 

 銀時は愚痴りながら渋々起き上がって、新八と一緒にこたつ机を隅においやる。

 

「はー全くしょうがないアルな……。定春。いくアルよ」

「アン」

 

 神楽も押入れで寝ようと定春に乗っかって、居間を出ていこうとする。

 

「ちょっと神楽ちゃん歯は磨いたの?」

「うーん……明日磨くからそれでヨロシ」

 

 神楽は少々眠たそうな声で答える。

 

「ダメだって歯は毎日二回以上磨かないと虫歯になるよ。ほら洗面所に」

「うっさいアルなー。細かいことを気にするとモテないって言ったのお前だろ。自分の言葉に責任もてヨ」

「不潔なやつはそれ以上の問題だろうが!」

 

 そんなこんなで三人はそれぞれの部屋と押入れで眠りにつく。(新八はリビングのソファ)

 こうして万事屋の一日は終わりを告げるのだ。

 

―丑三つ時―

 

 神楽は寝る前にお茶を飲み過ぎたため、睡眠中に起きてしまった。

 

「ト、トイレ……」

 

 神楽は重たい目をこすりながら厠に向かい用を足す。

 

―三十分後―

 

 銀時も急にご飯を食べすぎたせいで腹を壊し、腹が悲鳴をあげながら壁に手を遣って厠に向かう。

 が、開けようとしても鍵がかかっている。

 新八は寝ている為、おそらく神楽が入っているんだろうと思った銀時は何回もノックする。

 

「おい、神楽。出てこい」

 

 しかし、いっこうにでてこようとしない。

 嫌な予感がした銀時は厠の入り口に耳をそばだてる。

 寝息が聞こえた。

 銀時は絶望する。神楽を起こそうと何度となくドアを叩くが、反応はない。酢昆布を使っておびき出そうとするもベタな寝言を言うだけで甲斐なし。

 

「うごおおおおおお! オチがこれってどういうことだよおおおお!」

 

 銀時は肛門と闘いながらドアを叩き続けた。

 こうして万事屋の一日は始まるのだ……?

 

―第五訓 こたつとは最も身近なブラックホールである 終―

 

 

 

 

 

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