基本的に地の文でカグラと言っている時は、前世の記憶の回想などを表します。
あと今回5000文字オーバーです。上手く話をまとめることができないからこんなことに.....許せサスケ。
戦艦の中。自分が帰れなかった自分の居場所が見える。
《カグラ少尉の反応....ロスト...》
《カグラ少尉が死んだ?嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ》
《敵艦いまだ進行中です》
《クッソがぁッ!援軍要請却下されました!》
《敵艦の目的はインダストリアル7?いったいなんのために?》
《艦長指示を!》
《.......これより我が艦は現戦闘区域より離脱する。繰り返す。これより我が艦は現戦闘区域より離脱する》
艦長の言葉を受け戦艦は戦域の離脱を開始した。
景色は暗転。暗闇の中にカグラはひとり立っていた。
《隊長は聡明なお方です。......敵との戦力差は把握していたでしょう?》
《私達の死に果たして意味はあったのですか?答えてください少尉!》
ーーやめてくれ。違う。部下たちを殺したかったわけではない。
《ヒッ......!ニュータイプ....化け物がぁあああああああ!》
《死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない》
ーー戦友たちの死の声。断末魔。聞きたくない。やめてくれ。
ーー皆の悲痛な叫びが聞こえる。俺にできることは全てした。あの新型との戦闘においてはいつもの力をはるかに上回る能力を発揮した。勝てないまでも大健闘だろう。
再び舞台は切り替わる。これは....最後の特攻の時だ。
ビームサーベルを握りしめ、敵の新型に突撃をかける。
太陽を背にし、敵の動きを止めた。こちらに落ち度はない。むしろベストの攻撃だ。
それでも刃は通らない。通らない。通らない。通らない。
勝てない。機体の性能でも。搭乗者の性能でも。
.........敵の反撃がくる。横から迫るビームサーベル。回避はできない。敵機に近づきすぎている。
身体がビームサーベルに断ち切られ....身体は....上下に.......
◇
「ッ!..............ハァハァ」
酷い汗だ。全身に鳥肌がたち、喉元まで酸っぱい液がのぼってきていた。
「また夢に見るなんてな.....いまだあの悪夢を振り払うことはできないようだ.....」
顔を洗い、気分を新たにする。
.....忘れることはできない。いや、忘れてはいけない。
顔を濡らす冷水により思考がクリアになっていく。
あの日の悪夢は自分の抱えた罪だ。カグラ・トオルの罪である。安易に忘れることはゆるされない。
カグラ・トオル......いや二度目の生を受けた彼の名は織斑 (おりむら) 徹 (とおる)。
戦乱の時代を駆け抜けた男は、今日から中学生となる。制服の袖に腕を通しながらふと思う。
「こうして学生として二度目の生を謳歌できているのもひとえに、千冬さんと一夏君のおかげだな.....」
この新たな世界に身を置いて早二年。戸籍すら存在しない子供を拾って自分の弟のように接し、家族としてくれた千冬。
驚くことに彼女は徹に戸籍を用意してくれた。....彼女の友には天才ハッカーでもいたのだろうか?知らぬうちに、戸籍を用意していた。
.....織斑 徹の名で....
同じ年齢の新しい家族に戸惑いながらも、すぐに一番親しい友人といえるほどの関係となった一夏。
彼の純粋な心はズタズタ傷ついた精神に光を灯した。
《トオルは今日から私達の家族だ。共に支え合い生きていこう。》
初めて徹が織斑家に入った時に贈られたこの言葉には、不覚ながら涙がこぼれた。
◇
「ん....なんか手伝うことある?」
真新しい制服に身を包んだ一夏が声をかけてくる。
「いや、朝食はもう少しで完成するから座っててくれ一夏君」
織斑家の朝食を作るのはいつも徹だ。
....アルバイトすることを決して許可してくれない千冬に対して、せめて食事と家事は担当させて欲しいと徹が自ら提案したことである。
今は家事や食事は一夏と分担してやっている。
食事は朝と弁当は徹、夕食は一夏。家事も分担してやっている。
意外なことではあるが、徹の料理の腕は素晴らしかった。
MSに乗るしか脳のない前世ではあったが、趣味と呼べるものも多少はあった。そのうちのひとつが料理作りである。
とはいえ一番の趣味はMSいじりだったし、それ以外のなにかにさほど興味があるわけでもなかった。
料理をすることが趣味となったのは知り合いに勧められたからだ。
最初のきっかけはMSの格納庫の整備長に
「このMS馬鹿が....少しは他のこともしてみたらどうだ」
と諭されたことだった。
カグラには、別段やりたいことがあるわけでもなかった。だからできることならMSをいじりたい。
しかし整備長はやけにカグラに趣味ということを覚えさることに必死であった。なにか趣味を見つけてくるまでは休憩時間、および自由時間のMSの格納庫への出入り禁止を命じるといった具合である。
食事中。戦友に趣味について相談した。すると
「このいつも変わらんレトルトの昼食をなんとかしてくんない?」
とのことであった。
その日以降は料理をするということに挑戦した。
一ヶ月後くらいに整備長に料理を振る舞うと、
整備長は不満気に格納庫への出入り禁止令を解除した。
実はこの時、整備長が真に期待していたことは、30を過ぎても恋愛の"れ"の字すら経験していないカグラにいいかげん恋でもしてもらいたいということだった。
同じ趣味をもつ女性にでも巡り合って欲しいなと考えて。
なにせMS馬鹿のカグラは機体が恋人とでも言いだしそうなくらい色恋に興味がなかったのだ。
それゆえ合コンなどを提案したところで絶対参加しないことは目に見えていた。
本人から言わせてもらえれば大層、余計なお世話であろう。
しかし真意に気づくことは今でもできない徹である。なんという鈍感さ。
何かが気に触ったのだろうか?
一夏がムスッ....とした雰囲気を身に纏い、ジト目でこちらを見つめてくる。
「徹さ....いいかげん君付けやめようぜ.....距離感じるぞ...」
「こればっかりは勘弁して欲しいね。人を呼ぶときに"君"や"さん"をつけるのは俺の性分のようなものでね。.....距離をとる目的で使っているわけでは断じてないから安心して欲しいな」
肩をすくめて、返事をする。
先の言葉は半分嘘で半分本当だ。
距離をとるために君付けをしているのではない。徹は自分でも驚くほどに一夏と千冬には心を許していた。
嘘というのは自分の性分というところだ。
徹は前世では30歳を越えていた身だ。いくら今は学生の身に過ぎないとはいえども、精神的におっさんの徹はどこか気恥ずかしくてついつい君付けになってしまうのだ。
「その理屈なら姉さんは問題ないことになるなぁ〜徹ッ!今すぐそう呼べ」
朝ごはんの匂いに釣られたのか千冬も起床してきた。
「ウグッ...........まだ寝ててくれて良かったよ......それと一夏君と千冬さんという呼び名を変えるつもりはないよ。諦めなさい」
年こそ、偽っているもののふたりには、本音で接している。
....前世の記憶があることはやんわりと千冬にのみ打ち明けた。千冬は真剣に聞いてくれた。聞いた上で
「話してくれてありがとう」
と言ってくれた。それ以上の言葉はなかったが充分だった。
嘘と思われているかは分からない。けれど、誰かに聞いてもらえた。
そのことは徹の心を軽くさせた。
「「チッ.....」」
君付けやめろと姉さんと呼べは一年以上前からずっと言われ続けている。
いくら恩のある相手にといえども、俺とて譲れないものはあるんです。
諦めてください。ふたりして舌打ちしないでください。無理なものは無理なんだ....と思いながら徹は気まずい朝食を終えた。
◇
登校中に一夏がふと思いついたように聞いてくる。
「なあ徹?お前って夢はあるのか?」
......夢...か?
カグラとしての夢は今叶っている。
戦うことのない平和な世界。それを築くことは徹の前世.....つまりカグラの夢であった。
カグラが望み続けてきた夢はここにある。ならば...カグラとしてはそれを守りたい。
戦いの世など前世だけで充分。今あるこの世界が戦争を行うことがないようにする。
それがカグラの夢だ。
しかし、一夏が質問を投げかけているのは織斑 徹の夢の有無だろう。
「ふむ....考えたこともない...な」
一夏ががっかりした目でこちらを見る。
ム....何か期待していたのだろうか?と徹は思う。
「.....お前はてっきりIS関連の職業に就きたいんだと思ってたよ。だってお前の部屋はIS関連の資料ばかりじゃな.....あッ!」
「おい一夏君、なぜそれを!
いや......本題はそこではないか。結論から言うと、それはないよ。俺はISがあまり好きではないのだから」
なぜ見つからないように自室に隠していたISの資料の存在を一夏が知っているのか?それはたいへん重大な問題ではあったからあとから追及すべきではある。
そうだ。ISなど嫌いだ。敵だ。......資料を集めているのは単なる敵情視察だ。
この世界には、前世にはない兵器があった。だが徹はその兵器が好きではなかった。
《インフィニット・ストラトス》
通称 "IS"。
何故、前世の宇宙世紀より遥かに技術的に劣るこの世界でここまで高度な兵器が開発されているのだろうか?
徹は、前世ではMSいじりが趣味とはいえども、兵器に総合的な評価を与えるには、まだ知識が足りていない。
だがそれでも、武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域、自己進化を設定され、戦闘経験を含む全ての経験を蓄積することで、IS自らが自身の形状や性能を大きく変化させることが可能.....搭乗者の命を守る絶対防御....。
これらの技術が前世では誰も実現できていないことは分かる。
この夢の技術は魅力的に感じる。
しかしこの兵器には女性しか乗ることができないという欠点がある。
.....この酷い欠陥が世にもたらしたのは、女尊男卑の世界観である。
前世でも似たような価値観、男尊女卑の考え方は存在していた。
そんなものは古い考えだと徹自身は思っていた。女性であろうが男性であろうが、能力のある人物は評価されるべきだ。
大切なことは能力であり、性別などはその人間の優劣の判断基準となることなど決してないのだ。
男女の能力差はある。だからこそオペレーターは女性が多いのだ。女性は並列処理能力が高いからだ。
それによりオペレーターが女性である確率が高いことには文句を抱くはずもない。
それは性別による差別ではなく能力による適当な評価の上での判断だからだ。
ーーそれゆえ能力の有無ではなく、性別のみで人の優劣をひとつ決めてしまう "IS" という兵器に良い感情はもてない。女尊男卑などという歪んだ価値観を世にもたらした兵器など己の敵と見て当然なのだ。
ーーだがこの考えは、自分を納得させるための言い訳にすぎない。
徹は断じてそんなことはないと言い張るであろうが、彼の深層心理に潜む感情は
(自分が乗ることができないなんて....つまらない)
といういたってシンプルな子供の我儘のような感情だった。
初めて "IS" をTVで見たときに、乗ってみたいと思ってしまったのだ。
アレは争いの火種となり得る。人を殺すのは容易であるし、この平和を崩すこともあり得る。
アラスカ条約など一度誰かどこかの国が破ってしまえばもろく崩れさるだろう。
そうすれば、戦争が起こる。ISを使用した戦争など宇宙世紀の時代。何十年も続いたあの地獄の再現になる。
....いや再現どころではすまないかもしれない。
この世界の人類は宇宙に進出していないため主な戦場は地球だろう。
主な戦場が宇宙であった前世の戦い以上に悲惨な戦いになり得る。
ーーそれでも、それでもMS乗りとして、あのMSとは似て非なる兵器に
どうしようもなく心が惹かれる。
その心を隠すように一夏に嘘をつく。
「そっか.....でもISの整備士なんかいいと思うけど?だってIS関連の仕事って相当な高収入だって話だぜ?」
「ISの整備士か....高収入なのは間違いなさそうだな。............うん。悪くない気がしてきた。
....あくまで高い収入源として目指すのもありかもしれないな」
顔を喜び一色に染める同い年の家族をみて、一夏は
(やっぱりISが好きなんだろうよ....隠さなくてもいいのに)
と暖かい視線を送る。
一夏も千冬も徹のIS好きには気づいていた。
というか気づかないわけがなかった。TVなんかでISの特集がやっていれば必ず録画し学校にいる間もその日はそわそわとしている。
休日フラッと外に出ては何かをベッドの下に隠す。
「任務完了....」と小さな声でつぶやく徹も何度か目撃されている。
IS特集の録画予約を消してみると、その日の徹は明らかに落ち込んでいた。
ベットの下の資料は日に日に増えてきている。
それでも徹はばれるまいと好きである感情を表に出していない.....つもりでいる。
一夏と千冬には、何故徹がIS好きを隠しているかは分からない。その理由を知ってみたいとは思う。
しかし一夏と千冬に、必死に隠そうと、ばれまいと、する徹はとても面白かった。それを見たいがためにそのことに関しての追及はしないことにした。
そう、徹は驚くほどに自分の感情を隠すのが下手なのだ。
しかも相手の感情を察する能力も致命的なほどに低い。
それゆえ一番近くにいるふたりの家族に自分の真意を隠しきることなど不可能である。
自分の情報の隠匿技術のお粗末さに気づいていないのは徹だけであった。
主人公の前世と今世の情報を紹介しとくべきかな?
カグラ・トオル /男・34歳(死亡時
地球連邦軍の仕官。パイロットで階級は少尉。
一応ニュータイプで人の動きや悪意に敏感。だが仲間の好意などの悪意以外の感情を察することはまったくできない。ゆえに色恋に対してまったく興味がなく、恋愛経験は0。
好きなことはMSに乗ること。宇宙をMSで駆けるのが好き。
世話好きな整備長の策略により趣味は何個かある。それゆえ料理は得意。
......あとそこそこのイケメン。
織斑(おりむら) 徹(とおる) /男
前世のカグラ・トオルの記憶を余すことなく引き継いでいる。
名前がそのままなのは織斑家に保護されるとき名前を聞かれ「トオル....」と答えたことで千冬に"徹"と名付けられたから。初志貫徹の"徹"という字には貫き通す、とことんまで行き届くという意味が込められている。