女尊男卑の世界にて新人類は何を見る   作:一撃男

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トオルくんにとっての真の不幸は不殺を貫いても、自分自身は死なない技量をもっていたことです。
ゆえに戦場の中で彼はゆっくりと壊れていきました。






第五話

「ではここまでで質問がある人ー!」

 

山田先生の声が教室に響く。

半年の予習の成果が出ているため一夏もなんとか授業についていけていた。

この世界に生を受けて以降はひたすら敵情視察と称したISの勉強をしてきた徹には、なおさら理解できぬところなどなかった。

 

「うん♩皆さん理解できているみたいで先生嬉しいです!」

 

山田先生はにっこりと微笑む。オドオドしたり、今のように笑ったり。

感情豊かで愛されるべき教師だな、と徹は思う。

 

(それに....山田先生の授業は分かりやすい。事前に予習をしていればついていくことは容易だろうな....)

 

目の前の親友はそれでも授業についていくのがギリギリだとは思うことはなかった。

 

 

 

 

休み時間。

先の授業で一夏が理解できなかったところを徹が解説していた。

 

「あ......あーそういうことか。サンキュ、徹」

「おいおい一夏君。言っておくが、まだ基礎中の基礎の段階なんだぞ?ここで理解できないことがあるなんて......なんというか.....本当に半年勉強したのか?」

 

徹は少し呆れた顔をする。

だが前世でより複雑なMSに関わっていた徹は問題がないように感じているが、実際IS学園で学ぶことは相当に高度な学習内容なのだ。

並の人間ならば、半年程度予習したところで授業にはついていくのが精一杯で完全に理解することは難しい。

つまりそもそもの基準がおかしい。

 

物覚えに関しては一般人の一夏にとって授業は少しばかり難解であった。

ゆえに基礎中の基礎にすらついていくのは難しい。むしろその全てを完璧に理解できている周りの生徒が異常なんだと一夏は思うが口には出さない。

......徹は案外努力を怠る人間には厳しいからだ。徹の中の基準がそこである以上、下手な言い訳は自分の立場に響く。

 

「いや.....俺はそんなに物覚えが良い方じゃないからn

「ちょっとよろしくて?」

 

会話の流れを切る形で女の子が一夏と徹に話しかけてくる。

完全に台詞を重ねる形で声をかけられた一夏は少しふてくされたが、それを顔にはださなかった。

......ロングの金髪をロール状にした貴族風の女の子。

こちらから女子には話しかけずらかった徹たちにとっては、遠くからヒソヒソと話されるより、こうして話しかけてくれる方がよほどありがたい。

だからセシリアの第一印象はふたりにとって悪くはなかった。

 

「え......と?......

「オルコットさんだよ一夏君。学友の名前くらいは、覚えておくべきだよ。

で、なんの用事ですか?オルコットさん」

 

一夏は自己紹介の時に寝ていたやつがよく言うなと思った。

しかし実は徹は入学前にクラスの人間はキチンと把握していたのだ。

渡された名簿と顔写真を見比べておき、クラスの人間の顔と名前くらいは一致するようにしていた。

ゆえに....あの自己紹介の時間に寝てしまっていて損したことは肩の痛み程度であった。

 

「あら.....少しは感心いたしましたわ。徹さんと言いましたかしら?この学園に所属しただけはあって、ただの猿ではないようですね?

それと一夏さんでしたか?あなたはもう少し精進しなさいな。

わたくしに話しかけられこと自体が光栄なのですからそれ相応の態度で応じなさい」

 

ふたりの抱いた第一印象はもの凄いスピードで崩れ落ちた。

.....典型的な女尊男卑型の人間だろう。

徹は先にISを嫌う建前として女尊男卑社会への嫌悪を示したが、女尊男卑を嫌うこと自体は建前ではなかった。

一夏もいきなり現れて尊大な態度をとりはじめたセシリアにはあまり良い気持ちは抱かなかった。

それでも気をとりなおして会話を計る。

教室の知らない女子とのファーストコンタクトだ。なるべく穏便に済ませたい。

 

「悪いな.....徹と違って俺は少しもの覚えが悪いからな。君が誰かもわかってないんだ」

「ッ!わたくしを知らないッ?

わたくしはセシリア・オルコットですよ!イギリスの代表候補生で入試主席のわたくしを知らないとは!

.....あまりに知識がとぼしいのではなくて?」

 

そうか。代表候補生だったのか。

国を代表するIS操縦者である国家代表の候補生ともあらば相当なエリートなのだろう。

この尊大すぎる態度も溢れる自信を表しているのかもしれない。

 

「オルコットさん?信じられないことだとは思うけど一夏も入学したばかりで慣れてないとこがあるんだ。許してやって欲しいな」

 

徹が頭を下げる。

うーん。悪いのは向こうの口のような気がするから徹が頭を下げる必要はないんじゃないかと思う一夏である。

 

「本当に信じられませんわね。日本の男性とは全てこのように知識が足りていないのでしょうか?

わたくしセシリア・オルコットが代表候補生であるということなど、常識でしょう。

その常識すら理解できてないなようでは学生やIS操縦者以前に人として心配になりますわ」

 

うわぁ....さらに一夏への罵倒が留まる気配がない。

普段ならば否定してやりたいところだが、徹とて、この女の子に不都合な指摘をしようものならどうなるかくらいは分かっていた。

あの罵倒の対象が自分へと切り替わるだけだ。

徹は一夏を犠牲に面倒ごとを避けることにした。

 

「本来ならばわたくしのようなエリートと教室を共にできるだけでも奇跡!その幸運な自分をもう少し認識すべきではなくて?」

 

「そ、そうか。それはラッキーだ」

「オルコットさんの足を引っ張ることがないように最善を尽くすよ」

 

正直、女尊男卑に染まりきっていたとしても、この自分絶対主義は痛々しすぎる。ふたりはセシリアの発言の数々にドン引きしていた。

ふたりがドン引きしていることにも気付かずに、セシリアは更に言葉を続ける。

 

「ふふん。まぁでも?優秀なわたくしはそのように野蛮なおふたりでも見捨てるようなことはいたしませんわ?優しくしてさしあげます。

そうですわ?泣いて頼まれればわからないことなどを指導してさしあげないこともないですよ?」

 

「「ははははは......よろしくお願いいたします」」

 

いつの間にか一夏と共に蛮人扱いを受けていることも、黙って受け入れて乾いた笑みで応じる。

 

「そうやって最初から素直に返事をしていればいいのです。

なにせわたくしはつい一ヶ月前に実装されたばかりの新技術搭載型の試験兵器を使いこなすエリートであり、

さらに入試で唯一教官を倒したエリート中のエリートなのですからね」

 

「んにゃ?俺も倒したぞ?教官?」

 

この時ばかりは一夏を恨んだ。なぜ会話が終わろうとしているのに、また話題を振りまくのだろうか?

 

「ハァッ?」

 

案の上、セシリアは驚愕の表情をしながら詰め寄ってくる。

 

「い、いや倒したというより突っ込んできた相手を避けたら壁に激突して動かなくなったというか.....」

 

「徹さんはどうなんですかッ?」

 

うげっ。対象が徹に切り替わる。

 

「お、俺の場合は特殊な事情があってね。入試自体パスだったんだよ」

 

徹の場合は、所属を決めるのに時間がかかり過ぎて入試など形式的にすらやる時間がなかった。

ゆえに時間の都合で入試はパスされたのだが.....

それを

「俺はスーパーエリートなので入試を受けることすらなく入学したよ?」

とセシリアは捉えた。

 

「クッ......あなたたちは人を馬鹿にするのが随分お上手みたいですわね!」

 

その結果、セシリアは怒りに震えていた。

セシリアのその台詞の直後に授業開始を告げるチャイムがなる。

 

「ッ!わたくしのプライドを傷つけた代償は後々必ず払ってもらいますからね!逃げることは許しませんからね?よくって⁉︎」

 

と捨て台詞を残して去っていった。

なぜひたすら罵倒されたあげくにこんな扱いを受けねばならないのか。

セシリアの理不尽さにふたりはため息をついた。

 

 

 

 

IS学園は全寮制を取り入れている。

つまり昼も夜も各国から集まった操縦者たちはIS学園の敷地内にて暮らすことになっている。

基本的に寮は二人部屋となっている。

そのため男性である一夏と徹は当初同室であることが提案された。

しかしこれに各国が大反対。

大義名分としては、『同じ場所に男性操縦者を二人も集中させていれば、その分リスクも高まる』というものが掲げられていたが、

実際はハニートラップの機会を増やすために徹の部屋には空きをつくっておきたいという浅ましい思惑があった。

 

ゆえに徹はふたり部屋をひとりで使うことを命じられた。

1026号室。一夏の隣の部屋である。

同室の人間は"まだ"いない。

 

いずれ、自分の妹を名乗る人物を転校させ、同室にするとのお達しがあった。

なんでもフランスの人間らしい。

たしかにカグラの見た目を引き継いでいる徹は、純粋に何人と判断することは難しい。

でも、間違いなくアジア系の顔立ちの筈だ。一体何をどう見たらフランス人に見えるのか?

 

「まあフランスはIS開発において他の先進国に一歩遅れをとっているからな......。男性IS操縦者の獲得には本腰を入れざるをえなかったのかもな」

 

そう。厳しい徹の同室の権利を勝ちとったのはフランスなのだ。

先進国にも関わらず、第三世代のISの開発が上手くいっていないこともあり、この件かける本気度が他の国とは一線を異にしていた。

 

それに、他の国々は、面会時にいくらハニートラップを仕掛けてもことごとく返り討ちにされている現状から、同室権利に男性操縦者発見直後に一夏との同室を許さなかった時ほどには魅力を感じなくなっていたのだ。

 

余談だが、各国では徹は女性に興味はないのではないかという噂がまことしやかに囁かれた。

.....徹にはそっちの趣味はないため普通に女性には弱い。

返り討ちにはしているもののハニートラップは徹に絶大な効果がある。

女性との関係がなく、経験のない徹はドキドキして顔を真っ赤に染めるだろう。

でもそのようなことをされて顔が真っ赤になろうと、徹は正気のままで相手を説教する。

「女性であるのにはしたない」

だとか

「自分の身体を大切にしなさい」

だとか説教をする。

徹は無駄に軍で鍛えてきたわけではないので、力で無理やり屈服されたりはしない。

そして何より問題なのが色仕掛けをくらっても理性を失わないことだ。

軍で養われた強い精神の軸は簡単にはぶれない。

 

だからハニートラップを仕掛ける人物をことごとく説教して追い返してきた。追い返すことができた。

 

「ま、またあのような迫られ方をするのだろうか?

うぅぅ.....勘弁してほしい」

 

しかし徹は、ハニートラップを役得と思えるほど女性慣れはしていないので恥ずかしさに悶える。

おっさんの中身を引きずりながらも徹は思春期。

女性の甘美な魅力に悶々とする夜もあるのだ。

 

そのことについて悩んでいたからだろうか?

徹は隣の部屋でおきた事件に気づくことはなかった。

 

「ま、待て箒!話せば分かる!」

 

「問答無用だァーー!!」

 

 

 

こうして一夏と徹はIS学園での波乱万丈の初日を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ん?露骨なフラグが一本あるね?

気にしないでくださいね。
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