ARMORED CORE for Answer Last <R> 作:かつて世界を目指した
---彼女が来て数日が過ぎた。最初は不安だったが、杞憂だったようで彼女は驚くほど早くなじんでいった。
ここ数日過ごして気付いたが、どうやら彼女はもてはやされるのが嫌いらしい。露骨に嫌がるわけではないが、若干の抵抗があるようで、作り笑いをしてしまうようだ。
本人もあまりうまく隠せていないことを自覚しているのだろう。その作り笑いはあまりにも引きつったものだった。
だが、それにしても・・・。
「---グラムさん?聞こえてますか?」
「ん・・・ああ悪い、考えごとしてた。何だ?」
「聞いてなかったんですか?・・・私のことなんか考えてもおもしろくないですよ。」
「・・・お前のことを考えてたなんて誰が言った?」
「グラムさん・・・私が言うのもあれですが・・・嘘、下手ですね。」
「・・・お互い様だろ。・・・で何の話だ?」
自分が彼女のことを考えていたということが張本人にバレたのがむずかゆくてグラムは話題を反らした。
「セレンさんから連絡です。今日の午後0時からブリーフィング室に来いとのことです。」
「そうか・・・。今日だったな。依頼の日は。」
「依頼・・・グラムさんはリンクス・・・でしたね。」
「ああ。まだなってそんなに経ってないけどな。」
そう言って彼は部屋の時計を見た。時計は10時を指していた。まだ猶予はある。
「あの・・・良ければ聞いていいでしょうか?」
「何だ?」
「グラムさんは・・・なんでリンクスになったんですか?」
「・・・痛いとこついてくるな・・・。」
「言いたくなければ構いませんが・・・。」
「違う。そういう事じゃない。・・・理由は・・・特にない、これが正しいかな。」
「?それはいったい・・・。」
「正確には、”使われるだけ”の存在にはなりたくなかった・・・かな。」
---しまった。仮にも企業の娘でもあるサナにこの発言はあまりよろしくなかったかもしれない。
「・・・そうですか。悪くない理由だと思いますよ。」
そう言って彼女は笑っていた。その顔は少なくとも俺には作り笑いには見えなかった。
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部屋を出て、30分が経過した。相変わらず広いところだ。事前に師匠に教えてもらわなければ間違いなく自力ではたどりつけないだろう。
そう考えていると部屋が見えてきた。あそこで間違いない筈---。
俺はドアをノックして部屋に入った。そこは、若干狭いかわりに、壁にウィンドウが備え付けられていた。
「来たか、グラム。少し早いが始めるとするぞ。」
そこで椅子に腰掛けていた師匠---セレンさんがそう言った。
「了解です。今回はどこの任務になるんですか?」
「今から説明する。・・・今回の内容はインテリオル輸送部隊のレッドバレー突破支援だ。」
「レッドバレー?確かそこってGAの・・・。」
「そうだ。レッドバレーは複数の輸送ルートが交錯する旧い交通の要衛だ。そして現在ここはGA勢力下になっている。・・・よく覚えていたな。感心したぞ。」
「それほどでもないですよ。それで、どんな感じに動けばいいですか?」
「何、簡単だ------。」
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「---よし、間もなく作戦領域に到着する。いけるな?」
「了解!”ストレイド”行くぞ!」
AMS接続完了。アイカメラから捉える景色がまるで肉眼で見ているかのような錯覚を覚えながら、着地。荒野の大地にストレイドが降り立つ。そしてすぐさま敵に発見される。
「敵のネクストを確認!各機一斉射撃用意!」
GA部隊のノーマル、MT、そしてトラックに積まれたミサイルからロックされる。このまま動かなければネクストといえども只では済まない。
「ミッション開始だ。まずは正面の部隊を片付けるぞ!」
「はい!」
だが---何もしない訳がない。すぐさまQBを起動させ左に回避行動を取る。
ドヒャァ!という音とともにロックが外れたミサイルが後ろに通り抜ける。
ストレイドはその勢いで前方の敵に向かってライフルを構え、撃ちこんだ。トラック及びノーマル数機が爆ぜる。
だが敵はまだ奥にいる。ライフルの弾には限りがある。ならば---。
ストレイドが右手に青い刀身を出して部隊に突っ込み、右手を振りぬく。残ったノーマルはその一撃を受けて、一瞬の間の後爆散した。
「いいぞ。その調子だ。次は崖上の部隊だ。」
ストレイドは一気に崖上へ上ると、ノーマルの群れに突っ込む。再び爆音。青い刀身を返す刀で、一緒にいたトラックを切り裂いた。
「インテリオル輸送部隊が作戦領域に到達。これより輸送部隊の支援を始める。」
「了解。」
後ろから、3台のトラックが見えた。おそらくあれのことだろう。すると、輸送部隊から通信が入った。
「あなたが、護衛機ですね。宜しくお願いします。」
「任せてください・・・よっ!」
そう言いながら再び敵の群れに突っ込む。ライフルを連射しながら、距離を詰め、残った敵をまとめてブレードで薙ぎ払う。
トンネルの前の部隊が再びミサイルを撃ってきた。今度は右へ。ドヒャァという音をいわせながらミサイルを避ける。
その勢いを殺すことなく、ブレードで薙ぎ払い、距離をとってライフルを浴びせた。
「輸送部隊、最短ルートを選択。もう少しだ。」
トンネルを駆け抜けていく。暗いトンネルだが、AMSのおかげかはっきりと道が見える。
「ルート上に大型の敵反応。旧型の巨大兵器だ。」
「輸送部隊の足止めには十分か。グラム、残らず撃破しろ。」
レーダーを確認するとトンネルのすぐ脇に2つの熱源があった。
---なるほど。待ち伏せか。なら・・・!
オーバードブースターを起動させ、OB(オーバードブースト)する。ブースターによるコジマ爆発を誘発することにより、更なる推進力を得る。その勢いでストレイドは普段の倍に近い速度を得る。
一気にトンネルを抜ける。右に大型の兵器があった。こちらを視認するなり主砲を撃ってきたが、音速に近い速さのネクストをとらえることはできない。
OBの勢いのまま巨大兵器の足へ、ブレードで一文字に切りつけた。切りつけられた箇所から火花が散り、爆散。
残ったもう一機が、ミサイルを撃ってきた。さっきまでの量とは遥かに多い。だがストレイドは臆することなく向かっていく。
右へ。左へ。爆音を立てながらさっきまでの倍近い量のミサイルを避け切り、肉薄する。
ブレードを主砲に突き刺し、引き裂くように切り払う。そのまま後ろに抜けると同時に爆発した。
「敵部隊の全排除を確認。よくやった。輸送部隊の被害もほぼゼロだ。」
「ほぼ?」
「ああ、別に被弾したわけじゃない。あくまで想定内の被害というわけだ。」
「どういうことだ?・・・あ、そうか。」
彼は熱くなっていた頭を冷やして冷静になった。このネクストは動くだけで回りに結構迷惑がかかる。最も、”迷惑”では済まないレベルのものだが。
「輸送部隊の作戦領域離脱を確認。作戦は成功だ。すぐに帰還しろ。」
「了解!」
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部屋に戻れたのは、任務が終わって、帰還して、今回のミッションの反省をした後、だいたい夜の8時ぐらいだった。流石にあいつは寝ているだろうか、そう思いながら俺は部屋を開けた。
「あ。グラムさんお帰りなさい!疲れたでしょう。休んでいてください。」というサナの声が聞こえた。
「お、おう・・・。まだ起きてたんだな。」
・・・やはり夜遅く、部屋に誰かいるというのはまだ慣れないな---。
そう考えながら、部屋に上がると、何やら匂いがしてきた。
---これは。
「なあ!今もしかして料理してんのか?」
「はい!昔から料理は趣味だったので・・・勝手に使っちゃまずかったですか?」
「いや、むしろ大歓迎だ。何作ってんだ?」
「とりあえず、卵焼きでも作ろうかと・・・。もう少しでできるので、待っててくださいね!」
「・・・何でも出来るんだな・・・。誰から
まあ気長に待とうか。誰かに作ってもらうなんて何年ぶりだろう…。
などと考えつつ、彼はベッドに寝転んだ。
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「---以上が報告です。」
「ごくろうだった。セレン殿。無傷で護衛しきったことについては報酬に上乗せしておこう。」
「ありがとうございます。」
彼女は自室の端末で、アレックス---今回の依頼主と会話していた。
「君の弟子は相当優秀なようだ。まあ当然か。貴方が育てたのですからね。」
「いいえ。まだあいつは未熟です。これからも教えるべきことは沢山あります。」
「中々手厳しいじゃないかね、”霞スミカ”殿。」
「・・・その名は止めていただければありがたいのですが。」
「!ああ、すまない、ついつい昔の呼び名で呼んでしまう。許してくれ。」
「・・・それより、”彼女”についてですが・・・。」
「・・・元気にしているかね?」
「はい。思ったより順応が早くて驚きました。」
「すまないね。あんな無茶なことを頼んでしまって。」
「いえ、構いません。・・・そのかわりというか、理由は話せないのですか?」
「・・・・・・すまない。こればかりは貴方でも今は言えない。」
・・・やはりそうか。彼女はそう思った。自分はおそらくそこそこの信頼はあるのだろう。現に彼女---サナ・ラインヘルツを任せて貰っている。(まあ正確にはアイツが世話をしているが)
それでもその”理由”を教えてはくれぬということは・・・おそらく知るのは彼と本人だけかもしれない。
「分かりました。別に今は構いません。では、これで・・・。」
通話を切ろうと思ったとき、ドアの向こう・・・グラムの部屋から匂いが彼女の部屋に入ってきた。
「これは・・・。」
「?どうしたのかね?」
「いえ、なんでもありません。ただ、弟子の部屋から何やら料理をしている匂いがしたもので・・・だが・・・少し変な匂いがしますね。」
そのとき彼の表情から笑みが消えた。そして震える声でこう言った。
「君の弟子が料理をしているのかね・・・?」
?一体どうしたというのか彼女には分からなかった。
「・・・・奴は、任務で疲れているでしょうから、おそらく彼女が・・・。」
そこまで言ったときセレンは彼の異常に気付いた。文字通りの真っ青顔になっていたのである。
しばらく沈黙が流れると、ドアの向こうから話し声が聞こえてきた。
「できましたよ!グラムさん!」
「おお、できたかどれどれ・・・これが”卵焼き”か?」
「はい!やり方通りに作ったはずなので大丈夫ですよ!」
「・・・・・・なんか紫っぽいな。こういうモンなのか?」
「さあ?私も初めてつくったので。」
「まあ食うか。じゃあいただきます。」
・・・暫くの沈黙。その後なにかがバタッと倒れる音がした。
「!?グラムさん!?ちょっと、しっかりしてください!」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「・・・・・すまない。私は言うべきことを言っていなかったようだ。」
「・・・・・・・次からは気を付けてください。ではいろいろ”処理"があるので失礼します。」
「本当に申し訳ない。・・・なぜ料理だけ壊滅的なのだろうな・・・。」
嘆くように呟くと通信は切られた。
・・・・・・生きてるよな?
そう思いながら彼女はドアノブに手を掛けた。
続く
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