ARMORED CORE for Answer Last <R> 作:かつて世界を目指した
---誰かの声が聞こえる。意識が朦朧としているせいか、全く聞き取れない。
「---------。」
「-------------------。」
・・・何やら誰かと誰かが話している。おぼろげにしか見えないがおそらく片方は男、もう一人が女だろう。
そして、少しだけ会話が聞こえてきた。
「・・・な・・・・・こ・・・な・・・・・・。」
「す・・・・・り・・・うの・・・・・め・・・・。」
途切れ途切れのせいで全く意味が分からない。何とかして聞けないものか・・・。
不意に目の前がはっきりしてくる。おぼろげだった黒いシルエットが光に消えていく。
---そして彼は目覚めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
目が覚めると俺はベッドで寝ていた。頭がまだ目覚め切っていないためか少しボーッとする。
・・・あれ?俺いつ寝たっけ・・・。確か部屋に帰ってきて・・・。
不意に自分の右足の太腿あたりに何かが当たっていることに気付いた。何だろうと思いながら見てみると、ベッドに頭を置いてうつぶせに寝ているサナがいた。
・・・なんでここにいるんだ?とにかくこのままでは動くと起きてしまう。
どうしたものかと考えていると、彼女が目を覚ました。
「あ・・・。」
彼女の顔を見て俺は驚いた。彼女はどうやら泣いていたようだったからだ。
「・・・なんで泣いてんの・・・?」
「・・・ごめんなさい。あんなもの食べさせてしまって・・・。」
---思い出した。俺は彼女が作った”卵焼き”なるものを食って意識を失ったのだった。
・・・ん?俺何言ってんだ?毒が入っていたわけでもないのに・・・。
俺はある結論に至った。彼女は趣味だとは言っていたが、腕は・・・・・・。
「いや、だとしても泣くな・・・。・・・まさかセレンさんに怒られたのか?」
「・・・いいえ。そういうわけではないんですが・・・。」
といってまた泣きそうな顔になった。・・・困った。何と言っていいか分からない。
そう思いながら俺は彼女に声をかける。
「流石に、なんか食べて意識失ったのは初めてだけど・・・、まあ俺のためにやってくれたことだし。だから泣かないでくれ。あー・・・なんていうか・・・そうだ!・・・女の人の涙は苦手なんだ。」
「はい・・・。ありがとうございます・・・。」
彼女は少しだけ落ち着いたようだ。
---我ながらクサイ言葉を使ったものだ。本でよくみる言い回しを咄嗟に使ってしまった。悪いクセだ。
時計を見ると時刻はまだ午前5時を回ったばかりだ。
その時ドアからノックが聞こえた。おそらく---
「サナ、グラムは起きたか?様子を見に来たぞ。」
そう言ってセレンは部屋に入ってきた。彼女もついさっき起きたのだろう、目が若干眠たげな感じがした。
「セレンさん・・・おはようございます。」
「ああ、起きたか。あのまま天に召されたかと思ったぞ。」
「冗談よしてください。死因”卵焼き”とか一生笑われますよ。」
「・・・本当にごめんなさい・・・・。」
挨拶を済ませ、俺は師匠に用件を聞いた。どうやらネクストのことについてある技術者が話したいとのことだった。
「今から行けばいいですかね?」
「奴のことだ。それでも問題ないだろう。連絡しておくぞ。」
と言って彼女は端末でどこかに連絡すると俺にこう言った。
「・・・ソイツのことは悪く思ってやるなよ。悪気はないみたいだからな。」
「・・・分かってますよ。・・・あの師匠。ちょっと物申したいことがあるんですが・・・。」
「あ?」
「・・・イイエ、ナンデモアリマセン。」
「よろしい。では行くぞ。」
そう言って彼女は足早に部屋から出ていった。・・・危なかった。つい口から本音が漏れてしまった。
「やれやれ・・・。んじゃちょっと行ってくるとするか。・・・なあ。」
「はい?なんでしょうか・・・?」
「いや、なんだ。俺もあんまりうまいわけじゃないが・・・たぶん人並みにはできるからさ、機会がありゃある程度教えれるよ。」
「え?それって・・・。」
「趣味だったんだろ?腕はどうあれ・・・。やればいいさ。やりたいことやるのが人生一番いい・・・って師匠が言ってた。」
「!・・・でもそこまでしてもらうのは・・・。」
「何、気にするなよ。そういうのはいろいろ慣れてるからな・・・。例えばセレンさんは------。」
そこまで口にしたところで部屋の外から声がした。
「遅いぞ!早くしろ!」
「おっと!すんませーん!今行きます!」
そう言って彼は部屋の外に駆け出して行ってしまった。
「あ・・・。」
サナはその後ろ姿を見えなくなるまで見ていた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
俺はセレンさんとともに、薄暗くて広い空間にたどり着いた。なにやら周りから機械音が聞こえる。
奥には巨大な人影のような機械。あれは---
「やあやあ、よく来てくれたね!お久しぶりだねぇスミちゃん。」
目の前にいたのは、ひとまわり小さい女の人だった。服には油がたくさん付いていてまさしく”技術者”らしい姿だった。だが・・・
「誰ですかこの子?見るからに13,4歳・・・。」
「失敬な!こう見えてスミちゃんより年上だよぉ私は。」
・・・マジか。世の中いろんな人がいるんだな・・・、というかさっきから彼女が言ってる”スミちゃん”ってまさか---。
「・・・次そう呼んだら殺すぞ。トリニティ・ランディス。」
「あれー?スミちゃん怒ってる?そんなに怒んないでよー。」
・・・どうやら彼女はセレンさんの知り合いらしい。というか、彼女をあんなに挑発して大丈夫なのだろうか・・・。あの人企業の人を平気で脅すような人なんだけどなぁ・・・。
「ま、まあとりあえず・・・。トリニティさんでしたよね。何の話ですか?」
このままでは話が脱線しそうな気がしたので俺は話を振った。
「あーそうだった。ちょっとこっちに来てくれ。」
そう言って彼女はハシゴに上りながら俺たちを手招きしてきた。迷わず師匠とともに上ると、目の前に巨大な人型の機械---ネクスト”ストレイド”があった。
「さて、聞きたいことはだいたい2つくらいだよ。まずは・・・ぶっちゃけ乗ってみてどうだった?」
「どうって言われても・・・。まあ別段乗りにくいと感じた事はありませんでした。後は・・・昔シミュレーターで乗ったアレ・・・03-AALIYAHだ。アレよりはEN(エナジー)に余裕があったような気がします。」
「気がするというよりそうなんだけど・・・。Y01-TELLUSはそういう機体だからねぇ。乗り終わった後はどう?」
「え・・・?乗り終わった後?・・・・・・疲れるとかだるいというか・・・軽く運動した後みたいな感じです・・・。」
「・・・・・・・・・・なるほどねぇ。」
彼女は何やら訝しげな顔をしながらそう言った。・・・何か俺の発言が気になったのだろうか。そう考えていると続けて彼女はこう言った。
「2つ目だけど・・・武装面だね。ブレードはどうだった?」
「良かったですよ。使いやすかったですし、クセも少ないと思います。」
「そいつは良かった。設計者としては嬉しいよ。」
「あのブレードは貴方が作ったんですか?」
「そうだよー。ついでに君のストレイドのアセンもスミちゃんと一緒に考えたんだよぉ。ねえスミちゃん?」
「・・・・・・不本意だったがその通りだな。」
とセレンさんは不機嫌そうに言った。しかしこの人、性格は少し軽いがインテリオル唯一のブレードであるLB-ELTANINを開発したり、ネクストの設計図を作ったり、結構凄い人なんだな
「後は左手のライフル04-MARVEだけど・・・レーザーライフルにする気はないかい?」
「・・・すいません。なんというか・・・合わない・・・それに・・・あれなら。」
「・・・?まぁ、分かったよ。じゃあ最後は提案なんだけどさぁ。」
「何ですか?」
「君の両背面武装なんだけど・・・使ってないよね?」
「あ・・・。言われてみれば確かに・・・。」
自分は背面武装を2度にわたる任務で一度も使っていない。つい使うのを忘れてしまうのだ。悪いクセだな・・・と考えていると、
「そこでなんだけどね!?”コレ”つけてみないかね!?」
彼女は興奮しながら、周りにいた人に指示を出した。何やら奥の方から何か来た。それは見た目は武装には見えなかった。そうこれは---
「ブースター?」
「ご明察!!これはかの有名な”オーメル”の武装だよ!名前はACB-0710。取り寄せるのには苦労したよ。」
「追加ブースターか・・・悪くないな。グラム、どうする?」
とセレンさんが俺に問いかけてきた。少し迷って俺はトリニティさんにこう言った。
「分かりました。でもあのプラズマキャノンも残しといてください。使うかもしれませんから。」
すると彼女はその言葉を待っていたといわんばかりにこう言った。
「そう言ってくれると信じていたよ!早速取り掛からせてもらおうか。話は以上だよ。戻って構わないよー。」
「いろいろありがとうございます。じゃあ俺はこれで・・・。」
そう言って部屋に戻ろうとしたら彼女が思い出したかのように言った。
「あ!ちょっとスミちゃん時間あるかい?少しだけ話したいことがあるんだけど。」
「その言い方を改める気はないようだな・・・。いいだろう。」
師匠は呆れながら答えた。
「じゃあグラム君!スミちゃん借りるからねー!」
そう言って二人で奥に行ってしまった。
何の話をするのだろうか。まあすぐ終わるだろう。俺はそう思いながらドッグを後にした。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
セレン・ヘイズはトリニティとともに奥の部屋へ来た。
「・・・で話とは何だ?トリニティ。」
「いやーまさか君があんな子を弟子に持つなんて私は思っていなかったよ。」
「・・・そんな世間話なら帰るぞ。お前は私をそんなくだらん事で呼ぶようなやつじゃない。」
「・・・・・・単刀直入に聞くけどさ。」
彼女は続けてこう言った。
「彼とはどこで出会ったの?」
「・・・何故そんなことを聞く?」
「質問に質問で返さないでよ・・・。気になったからだよ。彼みたいなものすごく高いAMS適正を持つ人なんて滅多にいないよ。」
「・・・・・・。」
彼女の指摘は最もだった。AMS適正というのはすなわち一種の”才能”であるため、AMS適正を持つ人間も遥かに少ない。
その上その”天才”の中でもずば抜けたAMS適正を彼は持っていた。
「普通の適正値でも、乗った後は、若干の吐き気や、眩暈があるもんだよ。でも彼にはそういう症状がない。相当高いだろうねぇ。」
「・・・確かにな。」
「さらにもう一つ気になったのは・・・彼は今だいたい18,9だよね?彼は国家解体戦争の時から生きていた。なのに企業に見つからなかったなんて・・・。あり得なくはないかもだけど・・・ねぇ。」
「・・・・・・・・。」
「まあ言いたくないなら構わないよ。ただ話してくれるのなら話してくれるとうれしいかな。君とはいろいろ縁があるからね。」
「・・・そうだな。だがスマン。・・・話すことはできない。」
セレンは申し訳なさそうに言った。
「やっぱそうなるよねぇ・・・。まあいいよ。ただ・・・。」
「抱え込むな、だろう?もう聞き飽きたぞ、その言葉は。」
「分かってるならそれでいいよ。んじゃ仕事があるからこの辺で。バイバイスミちゃん。」
そう言って彼女は部屋から出て行った。
・・・全く、あいつは相変わらずおせっかいな奴だな。彼女はそう思うと懐からタバコとライターを取り出した。
「・・・すまんな。トリニティ。アイツのことについては---私自身も本人も何も分からないんだ。」
セレンは独り言を言いながらタバコに火を点けた。
続く
感想、評価お待ちしています!