魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹――   作:マジフジ

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マジフジと言うものです。以後、よろしくお願いします。いまさらですが、リリカルなのはストライカーズの小説を書いてみました。


プロローグ&1話

・プロローグ

 ある休日の昼下がり――少年院の留置所の面会室に男女がガラス越しで対面している。

 囚人である男は面会に来たであろう女を鋭い眼光で見る。女はそんな様子などお構いなし、と言わんばかりに話を切り出した。

「頼みがあるんやけど」

「唐突にどうした? 俺はあんた達が、六課が正式に設立する前に、襲ったはずだ。そんな襲った相手に用事でもあるのか? 八神はやて」

「まあ、そないなに不機嫌な顔をせんで。ホーク・ネヴィル」

 突然の訪問に困るホークと呼ばれた男。だがそのようなことは気にしないで、はやては続ける。

「実はな、あんたを六課のフォワードとして迎え入れたい」

「何故? ならず者の、暴走族だった俺をか?」

「若い人が多い分、新人も多くなってしまったため、ベテランが圧倒的に少ない。あんたの様に戦い慣れている者が必要や」

 ホークは暴走族時代の自分を思いだす。有名な暴走族のチームのヘッドとして、管理局全体に名を馳せていた過去。次元航行部隊には勿論、地上部隊にも追われていたこと。あまり思い出したくない過去のため、苦笑いしそうになる。が、それを堪えてホークは真剣に自分の考えをまとめた。

「確かにあんた達、管理局の人間とは戦ってきた。数えきれない程に。だがそれでも、俺はガキの領域は出れていない。それなら、もっと戦い慣れている奴を探せばいい。八神の地位なら、その条件を満たす人物を集めることが出来るはずだ」

 そう簡単にはいかない、と言わんばかりにはやては首を振る。

「表向きの設立理由はレリックの対策と、独立性の高い少数精鋭の部隊の実験のためであって……」とはやてが続けようと思ったらホークが全てを察したのか、口を挟む。

「察しがついた。大方、六課は『最悪の事態が起こった場合に対応する部署の設立』というあやふやな感じで、中々優秀な人材を集めることが出来ない。そのため、八神と親しい連中を頼りにして、人材を集めると言う訳か」

「そういうことや」と頷くはやて。

「協力する前にいくつか約束をしてもらいたい。まず、俺が捕まる前に所持していた光線銃と反射装置とデバイス、そして、俺自身が操縦していた小型飛行艇の戦闘機ブルー・メテオ。これらを返して貰いたい。もしこれがダメと言うのなら、あんたの協力には応えることは無理だ」

「だけども、デバイスとあのおもちゃに近い光線銃、そして反射装置の返還。その程度の条件なら大丈夫や。あんたを支えてきた大切なものやからな」

「何だ、分かっていたのか。それじゃ、利害一致だな。手続きとか色々と済ませなければならない事があるから、六課とやらに合流出来るのは暫く時間がかかるだろうがな」

 事件の捜査に対しても、非常に協力的だったが故に重い罪を課せられることは無く(本来ならば十年近くの罪)、ホーク自身が「自らの身を洗うため」としばらく少年院で過ごしていた。

「所で、話は変わるが……あんた達、俺の仲間はどうした? 仲間は今どうしてる?」

「全員が管理局に協力的な姿勢見せ、かつ罪を自首してきたから、そこまで重い処罰にするべきでないって事で保護観察処分や。“ホーク兄貴の『全うに生きろ』という願いを踏みにじりたくない”って言っとたな。皆が自主的に自首してきてな。今では第二の人生を歩めるように、職や資格を取る勉強をするって張り切っていたわ」

 はやての口からその言葉を聞いて、心の底からホッと安心した表情になるホーク。

「そうか、奴らはもう……。後は俺だけか……。勤め先の機動六課で世話になるか、これからよろしく頼む」

 

(ここが機動六課か……。中々悪くない建物だな) 

 機動六課の隊舎の前で男が一人、荷物を地面に置いて隊舎を眺める。

 ならず者部隊の暴走族リーダーを務めていたホーク。見た目こそは華奢な体型をしている。しかし、デバイスとして使っていた両手剣を軽々と振るっていた豪腕の持ち主。“無骨で荒削りだが、力強い”といった評価を得たこともあり、その強さをミッドチルダでもそれなりに名前を知られていた。

(ここの連中は俺のことを知っているのだろうか……。いや、そんなことよりも八神の所に向かわないと行けないな。あの兄ちゃんなら何か知っているだろう)

「私服の所、悪い。あんた、ちょっと良いか?」

 近くにいる男性職員がいたためか、その職員に声をかける。職員はホークが私服姿であった事に困惑をしていた。そんなことをお構いなしにホークは続ける。

「おっと。事情を話していなかったな。名はホーク・ネヴィル。昔は暴走族のヘッドをやっていた。今は居心地が良かった少年院から出て、八神はやて二佐の直々のスカウトを受けて来たものだ。もうすぐにでも始動するこの機動六課に、ね」

「ちょっと待ってください。今、確認を取ります」

 その職員の前にウインドウ画面が展開される。その職員は戸惑いの表情を出しながらの報告していた。無理もない話だ、元々は名の知れた暴走族のヘッドが少年院から出所していきなり時空管理局で働きますと言うものだから。しかも、ホークは六課設立前に一度隊舎を襲っていた(ただし、人・器物類に被害は全く無い)

「はい……。分かりました、失礼します。隊長室にあなたを通してほしい、と。案内します」

「ご理解の方、示して貰って感謝する。グリフィス・ロウラン准陸尉」

 

 

 隊長室に着いて。現在、隊長室には八神二佐、リインフォースⅡ空曹長、グリフィス、ホークの四人は勿論、それ以外にも――。

(高町なのは一等空尉、フェイト・T・ハラオウン執務官、シグナム二等空尉、ヴィータ三等空尉、シグナム医務官……。やはり、自分達の城を襲ったから良い印象など無いか)

 空気が重い。一度だけ交戦した者同士とは言え、これから活動する拠点となる場所を襲った相手に許す訳など無い。ヴィータは瞳の黒眼部分が極端に小さくなり、なのは、フェイト、シャマルもあまり機嫌の良い表情をしていない。

「高町、テスタロッサ・ハラオウン、シグナム、ヴィータ、シャマル。あなた達が俺を許せないことは分かっている。もちろん、俺自身の過去の行動も。信じてもらえるかどうかは分からないが……」とホークが重い口を開いた。

 一呼吸置く。目付きも真剣になり、声質も鞭を打つような力のこもった物になる。

「今の俺は、あのころの……暴走族のヘッドになって、無差別に大暴れしていた時とは違う。あのラバースーツを着た連中とその親玉が何故、俺にとって育ての親同然だった先代のヘッドを殺したのか……。このまま引き下がれない! 六課に入って、あんた達の手伝いをさせてくれ。頼む」

 ホークの叫びの様に聞こえる声が響く。この場にいる全員に対して、“土下座をするのではないか”という勢いで頭を下げている。

 周囲はホークの態度に困惑している。以前まで、ホーク・ネヴィルは六課のエースとも呼ばれる人物達と戦ってきた。そんな相手がいきなり、自分と戦った相手に、自分を少年院に入れた相手に真剣な顔つきで頭を下げてまで、頼みごとをしている。

「顔を上げてな。……ふう。いきなり頭まで下げるから驚いたわ」とはやてが言う。

「どうやら、かつての、事件直後のお前とは違うみたいだな」とヴィータ。

「何がホークを変えたのか……。ちょっと気になるかな」となのはが続けた。

 ホークは説明をした。

 自分を変えたもの――それは、六課そのものだと言うことを。

 六課を襲い、少年院に入って情報で知ったこと。これから六課に関わるかもしれない人々の多くの活躍。自分自身が追い求めていたい事実を知って、「もう出来なくなるかもしれない」と後悔した事実を話した。

「ふふ……。ホークの印象から、そんな風に心の内を明かしてくれるとは思わなかったわ。これは蔑ろには出来んわ」はやてはそう言った。

「だが、私達はお前を完全に信頼した訳では無い、ホーク・ネヴィル。それは高町、テスタロッサ、主はやても同じだ。お前の犯した過去が消える訳では無いからな」とシグナムが言い。

「それを行動で示して。何よりも、きっとそれを最も望んでいるのはあなたを育てた先代だと思うの」とシャマルが続ける。

「せやな。……改めて、迎え入れるわ」とはやてが締める。

「ああ、そのつもりだ。心遣いに感謝する。手数をかけるな……」

 これこそが、ホーク・ネヴィルが六課に入るきっかけとなった出来事だった。

 

・模擬戦闘(1話)

「皆、お疲れ。話ばっかでしんどかったやろ」

 あの後も、ホークが六課の目的について問いだす、自分がやるべき任務についての話を聞いていた。はやてもずっと話していたためか、少しだけ疲労が見える。

「大丈夫ですよ。はやてちゃんの方がずっと働いていたので」

「そうです。主はやてに比べれば、この程度は」

「そうそう。はやて、かっこよかったぞ」

 シャマル、シグナム、ヴィータが声をかける。「それじゃ、解散」とはやてが言おうとするも、ホークが「待った」とはやてを制した。

「突然で申し訳ない。俺をテストしてくれないか? 俺自身の今の実力がどの程度なのか、それを純粋に知りたい。誰に相手してもらうかも、決めてある」

「つまり、模擬戦闘がしたいんやな。ちょうどええわ、うちもあんたの実力を改めて知りたいと思っていたわ。それで相手、って言うのは?」

「相手はシグナム、だ。理由は俺も捕まる前まで、両手剣のデバイスだった。彼女が剣のデバイスを使用するってこと、それは既に調べは付いている。勿論、あんたにはランク的に見ても、敵わないことぐらいは分かっている。だが、だからと言って……。戦いを挑まずにはいられない」

 はやては勿論、シグナム以外のヴォルケンリッターの面々はホークを戦闘狂の一人とさえ思った。それは、その場にいたグリフィス、なのは、フェイトも思った様だ。シグナムは「ほう、なかなかいい面構えだ。ハキハキした喋りからもネヴィルの覚悟が伝わる」と、素直に感想を述べる。

「良いだろう。その真剣な目、私も騎士として応えなければならないな。全力でいかせてもらうぞ」

「ああ、そうしてくれ」

 二人の間では、既に意識が戦闘モードの状態だ。この状態で、何を言っても無駄と思ったはやてが呆れかえる。

「ホーク、あんたの使っていたデバイスは返しておくわ。光線銃と魔力反射装置は……」

「デバイスだけで良い。そもそも、両手剣の時はその二つを使わないからな」

「分かった、あんたは先に訓練場に行っててな。シグナムも」

「分かりました、主はやて」とシグナムが凛とした声で答える。

 昼を過ぎても、訓練場は快晴で雲一つない絶好の天気だった。ホークはデバイスを取り返し、青のベストに黒のタンクトップ、黒のズボン、両手に指貫グローブというバリアジャケットに着替える。当然、シグナムも騎士甲冑を展開して、準備が完了。

「本当はメカを相手に、想定していたのだろう。だが、俺のワガママを通してくれて感謝する」

「気にするな。さあ全力で来い、ネヴィル!」

「では……本気で行かしてもらうぞ!」

 お互いに剣型のデバイスを手に打ち合う。ホークは、力任せにシグナムにデバイスを繰り出す。しかし、シグナムは余裕からなのか、口元に笑みを浮かべ、それらを苦も無く避ける。ホークの剣を振りかぶられたものが、振り下ろされるのよりも素早く正確に、シグナムがレヴァンティンを突き出す。勢い余ってホークは仰向けに倒れてしまう。

「どうしたネヴィル? この程度なのか?」

「こんな程度で終わっていいのか?」、「お前はその程度の実力では無いはず」という口調を含めて、シグナムはホークのファーストネームを呼ぶ。当然、と言わんばかりに青年、ホーク・ネヴィルは立ち上がった。

「こんな程度で、音を上げるとでも思っているのか? シグナム、あんたに勝てない事ぐらい分かっている。だが、一太刀だけでも報いるつもりなんだけどな」とホークは剣を構えシグナムを見据える。

「ふっ、そうこなくてはな。さあ、構えろ!」

 その後もホークは全力で力任せに剣を振るが、シグナムに全く攻撃が決まらない。渾身の一撃も、あっさりとレヴァンティンに受け止められてしまった。

「ちっ……。ならば!」

 二回ほどバック転でシグナムと距離を取る。体勢を立て直し、シグナムに剣の刃を向ける。デバイスの両手剣を高く廻し投げ、ホーク自らも跳躍して剣を掴み、シグナムに一直線に向かいながら回転して斬り下ろす。

「烈! 風!」

 先程の打ち合いから――、大方ではあるが、ホークの剣筋が分かって来たので、シグナムは受け止めずにその場から退いた。

「流石だな……。殆どの相手は、この攻撃を捌ききれると判断して、受けにかかるのだがそれを避けるとは」

「空中で勢いをつけ、相手の防御ごと斬り抜ける。最も、この場合は叩き潰すという表現が適しているな。華奢な体型と舐めてかかった相手が、痛い目を見て来たのだろう」と予想するシグナム。

「ああ……ビンゴだ。捌き切るので精一杯だったから苦し紛れに放ったが……」

 事実、ホークは致命傷を避けてはいるものの、バリアジャケットの部分が所々、切り裂かれている状態だ。

「これだけの腕力だ。落下速度による力の増加、魔力による強化を施されれば、並の防御魔法では防ぎきれず、致命傷になる」

「そうだ。わずか、短時間でここまで分析するとは。あんたには通じる訳が無いか。続けるぞ、シグナム」

「ああ。今度は私から行くぞ!」

 恐ろしい速度でシグナムの刃が迫る。バリアジャケットが切り裂かれようと、自分が痛い思いをしようと、せめて一矢報いることを考えるホーク。受けても、受けても、受けても、後ろに下がることはせず、根性で耐えて付け入る隙を見つけようとしていた。

「だぁーっ!!」

 シグナムに付け入る隙を見つけたと思ったホークは見逃さない。「もらった」と言わんばかりに、両手剣を思い切り振りおろす。だがシグナムの反応は早かった。瞬時に攻撃をかわし、その勢いを殺さぬまま無防備なホークの背中に、強烈な打撃をお見舞いする。

「うっ、ぐあっ……」

 ホークは大きく吹っ飛ばされ、気を失った。

「ホーク? ホーク!」と医務官のシャマルは叫びつつ、駆けつける。

 

 ホークは夢を、見ていた。

 これはずっと前のことだ。

 もう何年前のことだろう。あまりに昔のことでよく思い出せない――。しかし、愛用していた戦闘機の上で、誰かと談笑していて、温かい気持ちになるのを感じる。そこにいるのは……そう、ホークの育ての親だった。ホークが子供の頃から、尊敬していた一人だ。

「……先代……俺は……」

 

 額に何か冷たいものを感じて、ホークは目が覚める。背中に感じた感触は布団。どうやら、医務室に運ばれたみたいだ。ホークはすぐに思い出した。シグナムと剣の打ち合いをしていて、その最中に気絶したのだと。

 ホークが体を起こすと、水を含んだタオルが額からずり落ちる。タオルを手にとってあたりを見渡すと、辺りは外の景色を感じない物だった。

「シャマル……俺は……」

「あ、ホーク。気が付いた?」

 シャマルは笑顔で振り返る。その笑顔は、ホークの不安を少しでも和らげようとしていた

「大丈夫?」とシャマルが心配そうに聞く。

 まだ少し頭がぼんやりしているが、気にするほどでもないだろうと感じたホークはすぐに「大丈夫だ」とすぐに短く返事をした。

「シグナムもあそこまで本気でやることない、と思ったんだけど」とシャマルが愚痴を漏らす。

「あの程度で音を上げているようでは、傭兵としても、剣士としても戦場で生きていくことなどできん。それよりも、八神達はどうした?」

「そうだ、なのはちゃんとはやてちゃんから伝言があるわ」とシャマル。「高町と八神からか?」

「ええ。“魔力無しで自分の身体能力による、ごり押しっていうのは減点対象。今は何もなくても、いずれ体に負担がでるよ。そういった点も、六課に入ってから改めて教えていくからね”って。はやてちゃんからは“あんたは三等士からになると思われる。細かいことはまた改めてってことで。今日は色々とあったから疲れたろ? 今日は解散して、ゆっくり休んどき。明日、隊舎の中を誰かに案内説明させる”と言っていたわ」

「了解した。俺の方も少し、話があったのだが……」とホークはシグナムに負けたことが悔しいのか、顔を少しばかり歪めながら言う。

「話?」と疑問を投じるシャマル

「数分で終わることだがな。俺のもう一つの戦闘スタイルだ。それは両手剣フォームではないし、今回みたいな戦闘スタイルではない。あそこにいた全員には、その別のフォームも見て貰いたい」

「そういうこと……。ちょっと待ってて。隊長室にいるはやてちゃんと連絡を取るわ」

 シャマルは、ホークの頼みを聞くためはやてを呼び出す。しばらくしてシャマルの前にウィンドウ画面が展開し、はやての顔が映しだされた。

「ん? なんや、シャマル。なんか報告か?』

「えっと……実は今、ホークが話をしたいって。大丈夫?」

「了解や。隊長室に通してあげて」

 シグナムとホークは共に医務室を出て、隊長室に向かうため一人で歩く。隊長室ではまだ要件を確認していた為か、はやての他になのは、フェイト、シグナム、ヴィータらがまだ残っていた。

「お、来た。それで、話って言うのは?」と切り出すはやて。

「俺のもう一つの戦闘スタイルを見て貰いたい」

「ほう、もう一つあるのか」とシグナムがすかさず入れる。

「ああ、ジェットブーツモードって言うべきだな。とにかく、今日のとは別の戦闘スタイルに当たる。八神、シグナムと明日もう一度頼む。勿論、別フォームで、だ」

「分かった。今後の教導の為にも承認するわ。な? 高町一等空尉」と、はやてはなのはに顔を向けて言う。

「勿論」と快諾するなのは。

「分かった。……そういう事で。明日、午後一で訓練場に来てな。二人とも」

 シグナム、ホークの両名共に承諾する。一日を終えて、ホークは宿舎に向かうため一人で歩いている。

(全く、今日一日色々とあったな。そして、明日も模擬戦。こりゃ、暴走族時代の日々を思い出すな……)

 ホークは緊急的に呼び出された人員であるため、そして元暴走族という肩書きを恐れる人物が多いため、一人部屋をもらい、そこでぐっすりと休んだ。

 翌日になり、昨日と同じ訓練場へと向かう。昨日と同じ訓練場に立つ。昨日と同じくシグナムとの組手だ。

「八神。俺が拘置所にいた時から、頼んでいたものを今返してほしい」

「分かった、これな」

 そう言い、はやては二丁の黒い拳銃、円形の型をしている装置をホークに返した。ホークは腰に円形の装置を腰に吊し、二丁の拳銃を銃のホルスターに収めた。

「なるほど……。その腰についているホルスターはそのためだったのか」とシグナムが納得したように言う

「そういう事だ。ただ、このスタイルは驚く程、昨日のスタイルとは異なる。それでも良いのならば、俺は戦う」

 バリアジャケットの姿こそ変わらない。変わっているのは銀のブーツを履いていて、両手剣はどこにも無いこと。

「面白い……。では見せて貰おうか!!」

「ああ、良いぜ」

 ピョンピョンと軽やかなステップを踏む。攻め込むかと、見せかけて。左手を付き出して一言、「かかってきな」と言う。

「言われるまでもない!」

 レヴァンティンを構えて、ホークに襲い掛かる。対して、ホークは突っ込むのではなく、光線銃をすぐに取り出しシグナムに向けて撃つ。青い光線が当っても痛みを感じないのか、そのままゴリ押す様に切りに向かう。

 ホークにとっては、それが想定済みだったためか、光線銃をホルスターに収めつつ寸前で避ける。カウンターと言わんばかりに思いっきりパンチを放つ。それは殴る意思が無いものであり、顔面にクリーンヒットはしなかった。が、シグナムはピクリとも動かなかったためか、動揺しながらも質問をする。

「な、何故……今のパンチを避けなかった?」とホークは問う。

「簡単な事だ。お前には私を攻撃する気が無かったからだ」と淡々と答えるシグナム。

「流石だな。だが、次は無い。覚悟しておけ」

「その言葉、嘘で無い事を期待しているぞ」

 と、シグナムは言いながらレヴァンティンを振り払う。バック転をして、ホークは避けつつ体勢を立て直した。

「はあぁ!!」

 シグナムは鋭い突きを繰り出す。しかし、ホークもそこまで甘くは無い。昨日のシチュエーションを思い出す。――あの時は両手剣で、大ぶりな攻撃をした後の突きだった故によろめいた。今は違う。何故ならば、真面に対処できる体勢であるから。

 レヴァンティンの柄の部分にまで手を引き寄せたのを確認した後、シグナムの手を地面に叩きつけ、後方宙返りをしながらキック、所謂サマーソルトキックを繰り出し、そのままジャンプしてレヴァンティンを高く蹴り上げる。自分自身は落下しながら両手に一つずつ光線銃を持ち、二丁で何度も撃ち抜いていたが――

「やらせはしない!」とシグナムがホークの目の前に現れる。レヴァンティンを集中的に狙っていたホークの体はがら空きである故に、回避できるもので無い。わき腹をほとんどカウンター気味に打ち込まれた。

「うぐっ!」 

 と、ホークがダメージを受けつつもくるりと体を回転させて、着地する。シグナムはレヴァンティンを手に取る。

「待ち戦法ばかりじゃ、しょうがねえ。このジェットブーツスタイルに適していないが……。それでもだ!!」

 ダッシュして、近づく。急な戦法が変わったので、何かが来ると思ったシグナムは咄嗟に防御魔法、パンツァーシルトを貼る。

「ホーク……スラッシュ!!」

 と、叫びつつ瞬時に残像を残しながら高速移動する。当然、パンツァーシルトに弾かれてしまう。しかし、それこそが狙いだった。

「かかったな!」

 ホークは腰に着けていた反射装置を蹴り飛ばす。装置自体を防御するのは簡単だ。

「ぐっ!?」

 シグナムの張っていたパンツァーシルトを強制的に打ち消してしまい、シグナム自身も軽くパンチされたかのように吹き飛ぶも、すぐに体勢を立て直す。ホークは蹴り飛ばした装置をブーメランの如く手元に戻し、腰につけ直した。

「今のは? その蹴り飛ばした装置に何か仕掛けでもあるのか?」

 と疑問を投げかけるシグナム。自分の張っていた防御魔法がかき消された上に、蹴り飛ばした小型の円形装置に軽くではあるが、吹っ飛んだのだから。

「簡単な話だ」とホークは装置をリフティングしながら説明する。

 この装置はケースバイケースに応じて使う物。相手の魔法を反射しないで一方的に打ち消しつつ相手を吹っ飛ばす時に使うバニシングモード、相手の魔法を反射してその魔法を自分の所有権として使えるリフレクトモードの二種類があること。

 自分の周囲を覆うように張り、相手の魔法を反射・打ち消したりする様に使うのであれば、今回のシグナムの様に前方に装置を蹴り飛ばしたり、後方に肘打ちして使うなどと説明を得意げに行った。

「中々便利な装置だな。それで、幾多の強者を退いてきたのか?」

「そうだ。そして、この装置とは全く関係ないもう一つの技を見せてやるよ」

 その場で力を溜めるホーク。全身にオレンジの炎が全身を覆う。

「バーニングホーク!!」

 そのままシグナムに突っ込んでいく。が、単純な突進攻撃でありそれは意図も簡単に避けられる。舌打ちして、「そう簡単に当らせてもらえないか」って愚痴を言う。

「当たり前だ。それにまだ終わりでは無いのだろう?」

「当然だ……。完全にケリを付ける」

 この後、ホークはシグナム相手にスピードについて行くのが精いっぱいの防戦一方という戦局であり、付け入る隙さえ見当たらずに勝負がついてしまった。

「中々面白かったぞ、ネヴィル。次の手合せを楽しみにしている」とシグナムは言う。

「当たり前だ、次は負けないぜ」とホークが返す。

 

 この戦闘を見ていた、はやてとなのはの二人は冷静に分析する。

「二日連続でシグナムとの模擬戦か。ホークを見た感じはどうや?」

「かなりユーティリティ―だね。でも、悪く行っちゃうと器用貧乏、かな?」

 機動六課部隊長・八神はやて二等陸佐が、戦技教導官・高町なのは一等空尉に問う。はやての言葉に、なのはは答えた。

「シグナムさんとの模擬戦、そして暴走族時代の映像を見て、伸ばしていく方向もだいぶ見えてきた」

 言って、なのははホークのデータをモニターに表示させる。

「両手剣スタイルは、スピードが遅い代わりに一撃一撃の攻撃力が高い。ジェットブーツスタイルは、スピードが速いけど攻撃力が無い。怯むけど連射力の無いタイプと怯まないけど連射力のあるタイプの二種類の光線銃、反射装置を使って、自分の有利な間合いに持っていて相手を翻弄する感じだね」

「何べん聞いても思うけど、随分と対極的なスタイルやな」

「でも、デメリットは大きくある。両手剣の時はシグナムさんも言っていた様に、力任せによる攻撃が多く、大ぶりな攻撃が大きいが故に、その力を発揮できずに相手に翻弄されるときもある。今の時は、攻撃に決定的なダメージを与えられず、ジリ貧であるが故に長期戦を強いられる。二つのスタイルを上手く生かして臨機応変にポジションを変更が可能なポジションフリーが良いかな?」と分析をするなのは。

「そうか。そこは高町なのは教導官にお任せします」 

「分かりました、八神部隊長」

 この日から、ホーク・ネヴィルにとっても忘れられない一年が始まった。




ホーク・ネヴィル (Hawk Neville) 男性 17 (strikers開始時)

魔導師ランク…総合でA (相当) 出身⇒ミッドチルダ
身長⇒177cmのやせ形 
外見イメージ⇒蒼炎の軌跡時代のアイク風

特徴
 2種類の光線銃を扱い、2種類とも黒い拳銃の型。連射力が非常に高いものの相手が全く怯まないタイプの光線銃、連射力が非常に低いが相手を怯ませるタイプの光線銃の2種類を持つ。どちらも魔力消費は0だが殺傷能力も0である。ちなみに、2種類とも青いレーザー状。(通常時・白兵スタイルで使用)
 両手剣スタイルもあるので、アウトレンジ以外は対処可能である。
 ほとんどの魔法は基礎的な物しか使用しない。砲撃タイプもあるが、滅多に使わない。そのため、普段の戦闘では自ら開発した反射装置や自らの体を炎で覆う装置など、開発装置と多彩な蹴り技を使用した白兵戦を得意としている。
 戦闘機・ヘリなどを一通り扱えるも、本人は空中戦闘が可能な戦闘機を好んで使う傾向が多い。特に、戦闘機やヘリに関してはミッドチルダでも最上位の腕を誇る。ちなみに戦闘機は自分専用戦闘機があるくらい、拘りがある。(ヘリライセンスも無論所持している)

性格
 無愛想ながらも、義理人情に重んじる。一人称は「俺」で二人称は「お前」、「そいつ」
経歴や身分など関係なく、誰であっても一切敬語の類を使わず対等な目線で対話する。そのためか、上司となるなのは・フェイト・はやてらに対しても「高町」・「ハラオウン」・「八神」と呼び捨てであり、無限書庫の司書長のユーノにも「スクライア」と呼ぶ
 礼儀作法は不得手であり、相手に強制されることも、強制することも嫌っている。表面上は煙たがっているが、実際は機動六課の面々を家族の様に思ってたりする。

短所
 後先を顧みない言動があり、自分の考えを正直に述べるため、時には場の空気を読めない失言をしてしまう。しかし、理解に努める姿勢を備えている。
 戦闘機の操縦に関しては最上位を争う程の腕前であるが、操作が乱暴な上に自信が強いあまりに単機特攻など無茶な戦闘を行いがち、時折だが致命的な操縦ミスをやらかす
 デバイスを変えようともしないため、結構頑固な一面がある。デバイス以外にも、開発装置と二丁の拳銃が無くなったとたんにお荷物となる傾向が強い。
 ぶっきらぼうな一面があり、斜めに構えているため取っ付き難いと思われがち。好戦的で周囲に心配されがち。

過去の経歴
 両親や親族と言えるべき者たちは、物心ついた時にはいない。そのため、捻くれて育ってしまい、かつてはミッドチルダの空中を走り回る暴走族だった。機動六課の面子に見つかってしまう。仲間を逃す代わりに、自分が単身で挑むことに。(代わりに仲間には、全うに生きるように指示する。この時にチームは解散)
 結果、捕まってしまうも腕を買われて機動六課に入隊。魔力はそこまで無いが、前述した白兵戦・開発した装置のおかげで前線でも戦える

特技…射撃関連全て 趣味…自分専用の戦闘機のメンテナンス
 
両手剣スタイル
 攻撃と防御を上昇させ、スピードを捨てたスタイル。一発一発の攻撃と耐久面を重く見たスタイル。大ぶりな攻撃が多いゆえに小回りが利きにくい難点を持つ。

炎風…周囲に炎を伴う風圧を発生させ、勢いよく相手を前方に吹き飛ばす。フルパワーで放てば、自身もデバイスも多少のダメージを受けてしまうのが難点

反撃…剣を構え、突進してくる相手にカウンターをかます。砲撃・射撃魔法の場合は軌道を変えるだけで終わる。対肉弾戦用であり、相手に倍返しする

突進斬り…力を溜め前方へ猛突進。基本魔法の移動を応用しただけの技、シンプルな直線攻撃だが腕力も相まって「当たれば強い」
烈風…両手剣を高く投げ、その後自分がジャンプでキャッチし、そのまま急降下する。着地後は衝撃波が周囲に発生(範囲は自分の引ける魔法陣程度の大きさ程度だが)

超烈風…所謂、最後の切り札。振り上げた蒼く燃える剣を相手に当て、空高くに打ち上げ、その相手を空中に、左手バインドで拘束しながら、メッタ切りにした後、急降下して地面に叩きつけ大ダメージを与える技。この時、目の前の敵に意識が集中しているので、周囲から攻撃を貰いやすい。

・ジェットブーツスタイル(白兵戦スタイル)
 攻撃・防御・スピードと全ての面においてバランスが取れたスタイル。全ての距離において万遍なく対処できるが、器用貧乏という感じは否めない。攻撃を捨てて、防御とスピードに意識を高めている。

光線銃…先述通り、魔力消費・殺傷能力が0の青いレーザーを発射。(というか、魔法では無い)
怯まないタイプと怯むタイプの2種類を使う。主に怯まないタイプはダメージ蓄積用、怯むタイプは相手の足止め用に使う。(普段の時もホルスターに入れている)

ホークスラッシュ…幻影を出しつつ、高速の切り裂き攻撃をしながら移動する。距離は短めなので、相手への奇襲で主に使用。移動中は何も出来ないという致命的欠点がある。

リフレクト…装置を起動させ、自分の体を覆う様に円形のバリアを張り、砲撃・射撃魔法を反射するリフレクトモード、打ち消すバニッシュモードの二種類を使い分ける。リフレクトモードは、その魔法は自分の所有権になり、展開直後はダメージを与えられる。
バニッシュモードは相手の魔法を打ち消しつつ、相手にダメージを与える。ケースバイケースで前方に蹴り飛ばし、後方に肘打ちして使う。耐性に限りがあるので、何度も使える物ではない

バーニングホーク…少しの間その場で炎を纏い、パワーを溜める。パワーを溜めた後、相手に目掛け、炎を纏った突進攻撃を行う。持続時間がかなり短めなので、奇襲で使う

・ホークの使う戦闘機
 大きさとしては小型サイズの物を使用し、無尾翼機の機体。対大型戦艦を意識して作られた(名前はブルーメテオ)
 用途に応じて翼を開いたり閉じたりすることができ、戦闘機に装着してある反重力発生装置により急旋回や急加減速などといったあらゆる機体制御が可能。次元を渡れる世界へ突入できる能力は勿論、管理外の単独での大気圏への突入・離脱を難なくこなせる。装備はレーザー砲を機首に1門、主翼に2門。
 防御面としては電磁シールド発生装置を搭載し、ローリングすることで敵の光学・魔法攻撃を反射することが可能となっている。しかし、高速回転している時は目標を見失ってしまう。
 無補給での長期作戦活動を可能とさせるため、敵兵器を破壊した時に放出された残存エネルギーを回収し、機体のエネルギー補給や修復や強化を行うシステムも搭載
 これらのことから、かなりの大金がつぎ込まれおり、一度撃墜してしまうと戦線に復帰できるまでかなり時間を要する
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