魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹―― 作:マジフジ
Ⅰ
午前五時。時期によっては完全に太陽が昇ってない時期だ。何故、そんな早い時間から目覚めているのかと言うと、午前の六時から始まる早朝トレーニングがあるが故に、少しでも脳や体が目覚めている状態に持っていく必要があるからである。
昨日の段階で作ってあったコーヒーを再びレンジで温め直す。コーヒーを飲んで後は、朝の早い時間からシャワーを浴びると言う贅沢な行いをして、眠気を目覚めさせ寝汗をも完全に洗い流す。気合を入れ直し、ホークは訓練場へと向かう。
「おはようございます!」
とエリオがホークに元気よく挨拶する。フリードもエリオに続くように挨拶した。ホークもまた「ああ、おはよう」と弾んだ声で返した。二、三のやり取りを交わした後、ホークとエリオは昨日の訓練の悪い所を互いに指摘と反省しつつ、準備運動を行った。しばらく体を解していると、ティアナ、スバル、キャロが合流する。
「今日もやるぞー!」とスバルが掛け声を言う。それに応えるかの様に、エリオとキャロの二人が「おおー!」と叫んだ。「こいつらもまだまだ子供だな」と思いつつも、ホークはその光景を見守る親の様な心境であった。
「はい、整列!」
白いバリアジャケットを身に纏ったなのはが、フォワード陣五人に対して号令をかける。余裕のあるなのはの表情と対照的に、集まったフォワード陣は「ぜえぜえ」と息も上げている状態だ。
「じゃあ本日の早朝訓練ラスト一本、みんな、まだ頑張れる?」となのはが問う。集まったフォワード陣の答えはイエス、だ。大声での返事に「まだ大丈夫だろう」と判断したなのは。
なのはの愛機、レイジングハートの機械音声と共に、宙に浮かぶ彼女の足元に桃色の魔方陣が浮かび、複数の魔力弾が出現して、高速で動く。中距離誘導制御型魔法《アクセルシューター》を用いた弾丸回避訓練、通称シュートイベーションだ。
「私の攻撃を五分間回避し続けるか、攻撃を私にクリーンヒットさせれば終了。ただし、誰か一人でも被弾したら最初からね」
「はい!」とフォワード陣が気合入れる様に答える。
「それじゃ、頑張っていこう!」
「このボロボロの状態で、なのはさんの攻撃を五分間、捌ききる自信ある?」
「無理」とスバルが短く答え、それに同意するように「同じくです」とエリオが言う。
「じゃ、何とか一発入れよう!」
「了解!」と三人が答える。ホークは代わりに拳をペシペシっと鳴らすことで意思表示をした。
「よし、行くよ! エリオ!!」
「はい、スバルさん!!」
「うん、準備はオーケーだね。それじゃ、レディ……ゴーッ!!」
と、なのはが開始の合図となる掛け声とともにアクセルシューターを飛ばす。それと同時に五人は回避した。
五人の組み立てた作戦は、まずフェイクシルエットの魔法を受けた偽物のスバルがなのはに特攻して、シルエット・ティアナが狙撃する素振りをして気を引かせる。本来のランクをS超えのなのはが気付かないはずがない。それを囮にして、幻術で隠れていたスバルがなのはを攻撃する。残していた二発のシューターが彼女に向かうため、回避したスバルをティアナが援護しシューターを撃ち落とす。ホークはその時間稼ぎかつ、放たれたアクセルシューターを誘き寄せる陽動の役割。本命であるエリオとキャロに寄せ付けない。隙を突いて、キャロのブーストを受けたエリオがなのはに一発入れる作戦。
「おらおらおらおら!!」
ホークが二丁の光線銃でひたすらなのはを連発する。一丁からは連射速度が素早く出ており、もう一丁からはテンポが遅れて出ていた。いくつもの光線が出ていたが、アクセルシューターには打ち勝てず全てかき消されていた。それどころか――無数のアクセルシューターを襲ってきた。
「後はお前らが高町一等空尉に一丁噛ましてやれ! この処理は俺が引き受けた!! 左目の分析装置で様子見てっから、サボタージュは出来ねえぜ!!」
と、全てを託しつつアクセルシューターの陽動を買って出る。ただ、彼も逃げているだけではない。少しでも襲ってくる光弾の数を減らすために建物の間に逃げ込んで、光弾を建物に衝突させ、その数を減らす。
一方――ティアナらには問題が起きていた。スバルのローラーが思うように作動せず、危険にさらされる。そんな、スバルを救出するべく、ティアナもアンカーガンで援護射撃しようとするも肝心な時に限り、不発する。幸い、なのはの意識はエリオとキャロには向かなかった。
「あの……っ、かなり加速がついちゃうから、気をつけて!」
「大丈夫! スピードだけが取り柄だから!」
不安げなキャロにエリオはそう答え、槍型デバイス・ストラーダを呼んだ。
「エリオ、今!」とティアナの声が響く。
「いっ……けえ!」
シンプルな直線的な軌道の攻撃。真っ直ぐ一点を貫く攻撃。なのはとエリオが正面衝突する。だが、煙から弾かれたようにエリオが姿を現れる。その姿を見た五人(ホークは分析装置越しで)は、失敗したかと思った。しかし――、なのはの愛機であるレイジングハートが「ミッションコンプリート」と告げる。なのはも「お見事」と言いつつ、防護服の左胸元の部分を指差した。最後のシュートイベーションはクリア。
しかしこの訓練を終えた直後、スバルのローラーは完全に焦げてしまい、涙目に。ティアナもアンカーガンも「だましだましやっている」と告げた。
「う~ん、皆訓練にも慣れてきたし……そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかなぁ?」となのはが言う。
「新デバイスだと? まさか次のトレーニングを見据えていたのか?」とホークが問う。
「うん。だいぶ基礎の訓練もこなせるようになってきたでしょ? だから、そろそろ自分たちの適正にあった訓練をしていこうかなって」
なのはの言葉を聞いた四人は嬉しそうな表情を浮かべる。ホークもこればかりは少しうれしそうな表情をしていた。
「じゃあ、詳しい話は隊舎に戻ってからしようか」
隊舎に戻る途中にフェイトとはやてと出会う。彼女たちは教会本部での騎士、カリムとの対談があるらしい。それを見送り、なのはとフォワード陣五名は寮のシャワーを浴びて早朝訓練でついた汚れを落としていた。男のシャワー時間は女に比べると短め。既にホークとエリオ、フリードは待たされることに。
「みんな、まだかなぁ……」
「クゥ……」
一人階段で待つエリオに同意するようにフリードが鳴く。
「昔、俺がリーダーを務めていた暴走族にも女が数名いたが、ここまでは長くない」と言いながら、ホークが六課の制服からガムを取り出す。
「ほれ、エリオも食え」とホークがガムを差出して、
「ありがとうございます」と言いながらエリオは受け取った。
「暇だから、何で俺が六課に入ったか話してやろうか?」
「良いんですか、ホークさん?」
「エリオ、お前と俺は同じチームだ。話すだけの信頼はある、と今までのたった一か月の訓練とほんのわずかに務めた業務から判断した」
「そうですか……。じゃあ、聞かせてください」
ホークは話した。自分には、まず生みの親がおらず天涯孤独だったこと。そんな天涯孤独だった自分に手を差し出したのは、彼の所属していた暴走族のホークの一つ前のリーダーであり、そのリーダーがわざわざ苦労を割いて自分を学力という面、魔法技術を使うという面、色々な面から鍛えられその背中を見て育ったこと。
そして、陸士訓練校で俗に言うパートナーとなる女性を見つけ、その女性が同じフォワード陣のスバル・ナカジマと戦闘スタイル、容姿まで酷似していたことに驚かされた内容など全てエリオに聞かせた。
「先代は、俺がこのまま堅気になることを望んでいた。陸士学校で出会ったそのパートナーとコンビを組ませて、な……」
「でもそうしなかったのは、やっぱり恩という感情からでしょうか?」
「恩、というのもあった。だが、俺はチームをまとめ上げて部下の不満をガス抜きしていて不満を無くそうと努力していた姿が理想的だった。この人の下で、動くのがありえないってな」と感慨深そうに言う
「それほど、人望が厚かったんですね。それで、先代と言うのは……?」
「殺されたよ。ラバースーツを来た訳の分からん連中に、俺の目の前で」と淡々と言うホーク。
それを聞いて、地雷を踏んでしまったと判断したエリオは申し訳なさそうな顔になる。そんな彼を見てホークが「そんな顔をするな」と一言。
「厳密にはその時、死んじゃいなかった。病院に行けばまだ助かる、そう思っていた」
しかし、その時、先代は既に自分の死期を悟っていた。何故ならば――殺されるときに内臓と言う内臓の器官のほぼ全てがやられており、肝臓も致命傷を負っていたこと。遺言で「チームを解散させろ、あのラバースーツの連中を忘れろ」と伝えられ、ホークの腕の中で息を引き取った。
「その先代の言葉を無視して、俺は敵討ちのために三度チームを再結成した。勿論、俺とパートナーを組んでいた女のことも考えた。彼女を巻き込むわけにはいかない、と判断して俺はそいつの目の前から消え、本格的に暴走族で活動開始。そしたらよ、いつの間にか学校卒業して、陸士部隊一〇八部隊とやらで、強くなった彼女と出会い、それからも追われ続けた。少なく見積もっても一年以上の期間だ」
「ホークさんのパートナーが追っていたのはもしかしたら、ホークさんが犯罪に染まってほしくなかったからじゃないでしょうか?」とエリオが推定した。
それは無い、と一言ホークが言う。「何故なら、陸士学校にいる時も普通に暴走族の一員として走り回っていたから」と理由を付けた。
「もし、そうだったとしても何故、分かった段階で止めなかったのか、だな。とにかく、俺は自分を追っていた彼女に力の差を見せつけてやろうと思って六課を襲った」
「そうすれば、自分を追うことを諦めるだろう、と」
そして、「無様にも逮捕された」と言葉を締めた。
「だから、このチャンスを与えてくれた八神には本当は感謝している。こうしてまた先代の死の真実を知るチャンスを与えてくれたからな」
ホークがこの言葉を言った後、女性たち三人が合流する。エリオには「このことは他事無言にしておけ。話す時が来たら、その時は俺から話すぜ」と釘を刺す。
合流した後は、メンテナンスルームへすぐに向かった。そこに集まっていたフォワード五人の目の前に、それらはあった。
「うわぁ、これが……」
「あたしたちの新デバイス、ですか?」
スバルもティアナも驚きを隠せない様子だ。ストラーダとケリュケイオンの外見は変わらない。ホークとスバル、ティアナのものは見慣れないものだった。ティアナのものは、カードのような形状。スバルのものは大きめのクリスタルのような形状。ホークのデバイスはブレスレッドの様な形状だ。
「設計主任、私! 協力、なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリイン曹長!」とシャーリーが得意げに言う。
「い、いいんでしょうか……もらってしまって……」
「もちろんですよ!」
「部隊の目的に合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア、そしてホーク……五人の個性に合わせて作られた、文句なしに最高の機体です!」とリインが言う。
五機のデバイスが宙に浮かび、それぞれの主の所へと向かう。
「この子たちはみんな、まだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められていて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです。ただの道具や武器と思わないで大切に、だけど性能の限界まで思いっきり全開で使ってあげてほしいです!」
「この子たちもね、きっとそれを望んでるから」とシャーリーが締めた。
「ごめんごめん、お待たせ!」と言いながら、メンテナンスルームになのはが入室する。
「ナイスタイミングです、なのはさん。ちょうど機能説明をしようとしていたところです」
「そっか、五機ともすぐに使える状態なんだよね?」
「はいです!!」
その後、シャーリーとなのは、リインの三人が新デバイスの機能説明が行う。各々のデバイスには、何段階かに分けて出力リミッターがかけられており、各自が今の出力を扱いきれると判断されたら、順次解除していくということ。ホークのみ例外であり、新人たち四人に比べると戦闘経験が段違いなために、最初から第二段階までのリミッターは外されている。
そこから派生して、隊長達に制限されているリミッターの話になる。前線で戦う隊長達にかけられたリミッターは、彼女らのデバイスだけで、本人にもリミッターがかけられている。はやては四ランク、なのは、フェイトは二.五ランクダウン、シグナムとヴィータは二ランクダウン。簡単に言えば、各自が保有できる戦力バランスを整えるための裏ワザ、とシャーリーが締めた。
「新型もみんなの訓練データを基準に調整してるから、いきなり使っても違和感はないと思うんだけどね」と目の前に出ているデータを調整しながら、シャーリーは続けた。
「午後の訓練の時にでもテストして、微調整しようか」
「遠隔調整もできますから、手間はほとんどかからないと思いますよ」
「便利だよねえ、最近は」
「便利です」
午後の訓練をしながら微調整をする。その後、五人はシャーリーから新デバイスの説明を受けていた。詳しいこと簡単に述べると、新デバイスの五機には出力リミッターが掛けてあり、五人の操作技術の向上とともに解除していく旨を教えられた。
「あ、スバルの方はリボルバーナックルとのシンクロ設定も、上手くできてるからね」
「本当ですか!?」
「持ち運びが楽になるように、収納と瞬間装着の機能もつけといた」
「わあ、ありがとうございます!」
シャーリーの説明にスバルが大喜びするが、その矢先だ。一級警戒体制のアラートが敷かれた。
「グリフィス君!」となのはの呼びかけに、モニターの一つにグリフィスが映る。
「はい。教会本部から出動要請です!」
「なのは隊長、フェイト隊長、グリフィス君? こちらはやて」
「状況は?」
グリフィスの応答に応えるように、モニターにはやてと、フェイトが映る。
状況を整理すると、教会の調査団が追っていたレリックらしき物が発見されて、場所はエイリの山岳丘陵地区。しかも目標は、山岳リニアレールで移動中。
そのまさかや、内部に侵入したガジェットのせいで、リニアレールのコントロールが奪われており、リニアレール車内のガジェットは、最低でも三十体。大型や飛行型の未確認のタイプが出ている恐れもあるということだ。
「いきなりハードは初出動や、なのはちゃん、フェイトちゃん、いける?」
「私は、いつでも」と画面越しのフェイトが答える。それに続くようになのはも「私も!」と答えた。彼女たちの返事を聞き、部隊長の視線がホーク達に移る。
「スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ホーク。皆もええか?」
「はい!」と五人が応える。
「よし。いいお返事や、シフトはA-三、グリフィス君は隊舎での指揮、リインは戦闘管制。なのはちゃんとフェイトちゃんは現場指揮」
「わかった」
「うん」
「ほんなら、機動六課フォワード部隊……出動!」
「了解!」と五人の声が響いた。
彼らの初めての出勤が始まった。
Ⅱ
機動六課前線部隊の中で、飛行適性を持っている魔導師は、なのはを始めとした隊長陣、フォワード陣に至ってはホークだけだ。残りのスバル、ティアナ、エリオ、キャロのフォワード組は飛行適性が無い陸戦魔導師。
「いきなり新デバイスでぶっつけ本番になっちゃったけど、練習どおりで大丈夫だからね」
実践(とは言っても管理局に追われてたりしていた過去だが)慣れをしているホークは緊張の「き」の字は無かった。だが、経験の浅いスバル達四人の顔には、まだ緊張の色が浮かんでいるのが見て取れる。
「エリオとキャロ、フリードも、しっかりですよ!」とリインが励ます。
「は、はい!」と二人はその期待に応える様に答えた。
「危ない時は、私やフェイト隊長、リインがちゃんとフォローするから。おっかなびっくりじゃなくて、思いっきりやってみよう!」
「はい!」と四人が答える。
現地航空観測隊が、ガジェットの反応を多数確認する。なのはが、「自分とフェイト隊長の二人で空を抑える。ホークは一足先に車両のレリック確保に向かって」と伝え、ヴァイスがメインハッチを開く。
「ホーク。いきなり単独だけど、皆が戦いやすくなるようにお願いね」
「了解した、最後尾の車両から攻めればいいんだな」とホークが確認を取る。
「そう。しっかりとバックアップをするから車両は任せたよ」となのはが言う。
「ホーク、オメエは管理局相手に喧嘩売ったんだ。その実力、たっぷり見せてもらうぞ」とヴァイスが告げた。
「あいよ、よし行くか! ライトニングファイブ、ホーク・ネヴィル。これより戦闘を開始する!!」
一気にハッチを駆け、飛び降りる。空へ出た体は、重力に従って落ちていく。デバイスを起動させ、バリアジャケットに身を包む。彼の着用していた制服は消え、魔力で構成された防護服を纏っていく。白いジャケット、首元には水色のスカーフ、青のスラックスと青のタンクトップ、左目に分析装置を装着、両手には指貫グローブを、銀色のジェットブーツを装着。そのまま車両の最後尾へと突っ込んでいった。なのはは、ホークを追いかけるガジェットを殲滅させつつフェイトと合流しようとしていた。
「面倒! 正面突破する!!」とホークが叫びながら車両内に潜入する。
ホークとて、馬鹿では無い。左目の分析装置でガジェットの戦闘力、どれだけの数がいるのかを確認した。五機のガジェットがホークを捉える。敵と認識したガジェットはホークに攻撃するために魔力を発射させた。
案の定襲ってきた、ホークはそう思いつつも、腰につけている反射装置を咄嗟に蹴り飛ばす。その装置が放出された魔力をほぼ零距離で反射してガジェットを破壊。
「こちらホーク! 今いるエリアの車両の雑魚共をぶっ倒した! 次の車両に向かうぜ!」
「了解。ライトニングファイブ、そのまま次の車両へと向ってください」
と、機動六課の作戦指令室から指示が来る。
一方、スターズも最前尾の車両に潜入が成功し、彼女達もまたガジェットを倒してレリックの確保へと向かう。ホークは後から合流するであろう、エリオとキャロとフリードに任せ、自分は彼らの進行を妨げるガジェット達を排除するという算段だった。
この作戦が想定していた範囲内の予想以上のスピードで重要貨物室のある第七車両へと近づく。車両の前ではスターズの二人が、後ではホークが次々に倒しているためか、エリオとキャロとフリードに対するは警戒など全くないという程だ。このまま上手く行くと思われていたが――
その屋根から見えたのは、第七車両への扉を護るように配置されたであろう、球型の大型ガジェット。
「フリード! ブラストフレア!」
フリードの口からブラストフレアが放つ。ガジェットのアームはそれを嘲笑うかの様に簡単に弾き飛ばした。その隙をついて、エリオがガジェットに突っ込む。しかし、ガジェットは大型であった為か、魔力で強化したストラーダを簡単に受け止めた。そして、ガジェットからAMFが発動、エリオの魔法はおろか、キャロの魔法陣さえかき消した。
苦しげな声をエリオは上げつつに、ストラーダでガジェットのアームを受け止めていた。キャロが心配そうに様子を見るも「大丈夫、まかせて!」とエリオは言った。
エリオは不利な状況を打破するために、体勢を立て直す。だがこれが仇となってしまい、エリオの形勢は更に不利になり、ガジェットのアームに拘束されたまま壁に叩きつけられてしまった。気絶したのを確認した後、外へと放り投げた。
「ちっ……。一足遅くなっちまったか」
と、第八車両のガジェットを全て倒し、ようやく合流したホークだったが、エリオが放り投げられたのを確認している。隣には自分が撃破したであろうガジェットを新型が乗っていた。それを感じたのか、ガジェットは意識が少しだけホークに逸れた。
「ライトニングフォー、飛び降り!?」というアルトの通信を聞き、ホークは飛び出そうとする。
「ちょい待ち、ホーク! アンタはそのガジェットを倒すんや。あの状況なら、キャロも最高のコンディションで魔法が使える。もし、そうで無かったとしてもカバーが出来る」
というはやての指示に納得がいく。何故ならば、今、レリックを確保できる状態に最も近いのが自分。外にはAMFの影響を受けないキャロ、それに万が一の為の救援がある。彼の答えは一つ――
「そういうことか。あのガキ共の命、任せたぜ」と言い目の前のガジェットに集中する。
連射の効く光線銃を連射しつつ、ガジェットの攻撃をかわす。時折、味方のガジェットを蹴り当てていたが、防戦一方では拉致が開かない、と判断する。
短めの掛け声と共に、その場で力を溜めるホーク。全身にオレンジの炎が全身を覆う。
「バーニングホーク!!」と叫び、ガジェットに突っ込んだ。
真正面からデバイスのアームと衝突し合う。力はややホークが有利か。ガジェットは車両外へと逃亡した。
Ⅲ
一方、外では無事にキャロがエリオの救助が成功。そのまま、車両外に出たガジェットの撃墜へと向かう。
「フリード!!」
キャロはフリードの頭の上に乗って、指示を出す。その口元には炎が集まり、巨大な炎の塊となり、フリードのブラストレイファイアはガジェットに向かっていった。だが、ガジェットにダメージはあまりなく、ガジェットは存在していた。
これを見て、エリオは装甲形状では砲撃じゃ抜き辛いと判断し、「自分とストラーダに任せろ」と言った。それを承認したキャロは両手に、桃色の光が宿らせる。エリオがガジェットに突っ込んでいくと同時に、魔力はストラーダの所へと向かっていった。
この一連の行動を見ていたホーク。連射の効くタイプの光線銃をホルスターにクルクルっと一回転させてホルスターに収め、相手の怯むタイプに変える。車両の中からその銃を連射してダメージを与える。その光線銃を受けていたガジェットのアームとケーブルの動きが鈍くなっていたのを見逃さず、破壊した。
「エリオ! 俺がこいつの少しだけ注意を引く! 後はお前が決めろ!!」とホークが叫ぶ。
「はい! 一閃必中!」と、決め台詞と共にガジェットに突進し、その中心にストラーダを突き立てる。そのまま刃を上へと振りぬき、ガジェットを両断し、撃破。ホークの左目の分析装置は「target all clear」という文字が浮かんでいた。
車両のコントロールは取り戻し、無事にスターズの二人がレリックを回収する。はやての指示で、スターズは中央のラボまでレリックを護送。ライトニングの三人は現場待機で、現地の部隊の者と引き継ぎの役割を果たした。
所々で大ピンチを迎えた初任務だったが、何とか成功を収めたのであった。