魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹―― 作:マジフジ
ギンガ√かシグナム√で今絶賛悩んでいます。ここでは、ちょっと構成を練りつつ、原作と極力改変無しで行ける様に頑張りたいです。
Ⅰ
あの緊急の初出動から数日が経過した機動六課、陸戦訓練場。本日よりフォワード陣はそれぞれ自分のポジションに合わせた個人訓練に入っている。フロントアタッカーのスバルはヴィータから、センターガードのティアナはなのはから、ガードウィングとフルバックのエリオとキャロはフェイトと。そしてポジションフリーのホークは――シグナムに稽古を着けてもらうことに。
ヴィータはスバルにフロントアタッカーというポジションの重要性を解く。そこは単身で敵陣に切り込み、味方の防衛ラインを守るのが主な役目であり、防御能力などの生存スキルが高いことが最重要、攻撃時間を長く取りつつ、サポート陣に頼らずに済むことを解いた。そして、ヴィータはシールドの使い分けを出来る点、下半身を上手く利用して防御することを指示した。
フェイトはエリオとキャロに回避の重要性を解く。実践形式で見せ、納得させた。ガードウィングであるエリオは、高機動力と優れた回避能力、如何なる位置からでも攻撃と防御が行なえること、そしてフロントアタッカーとの連携や、センターガード・フルバックの保護が主な役目の重要性を教え、フルバックのキャロには前衛の支援に勤め、時には大威力の攻撃魔法で敵に決め手となる攻撃をぶつけるポジション。動きの激しい前衛の行動を把握し、そのフォローに最適なポジションに素早く移動することが必要とされることを解いた。
なのはは、ティアナにセンターガードというポジションの役割を教える。陣形の中央に立って誰よりも早く中遠距離を制し、正確な援護射撃と前衛指揮を行うポジション。「視野を広く持ち、咄嗟の判断で正確な弾丸をぶつけるのが重要」、とティアナは口に出して言う。「チームの中央に立ち、誰よりも距離を精する、それがセンターガード」となのはが続けた。
一方のホークは――これらの判断能力が備わっているためか、いきなり実戦形式でシグナムとの対戦となる。しかし、ホークは実際の所かなり燃えていた。何故ならば、六課が正式に稼働する前に彼は剣のデバイスで打ち合いをしている。しかしその時は何も出来ずスピードに圧倒されてただシグナムの攻撃を貰い続けているだけだった。対するシグナムも非常に楽しみにしていた。「あの時からネヴィルがどの程度成長したのか」、と心の底から思っていた。
「まさかあんたとこうやって打ち合える機会が恵んで来るとは……燃えて来た」とホークが言うと、「それは私とて、同じことだ。人に物事を教えるという柄では無い。近づいて斬ってみろ、私もある程度の魔法を使わせてもらう」とシグナムは返した。
「俺も飛行魔法を使う。使える手段は使って、正々堂々と斬らしてもらうぞ」
とホークはバリアジャケットに着替える。シグナムも騎士甲冑服に着替え、剣を打ちつけ合う。シグナムはそれを試すように剣質を確かめる。彼女は「以前よりスピードが上がっている。剛の力を持った剣士に、柔の要素が加われば、こうにも手応えが増すのか」と評価していた。
「まだまだ攻める」とホークは一言いう。
剣を小さく振り、軽く切り上げる動作をした後に、素早く突きを出し、最後に両手で剣を持ち直して、素早い連続突きで攻撃する。シグナムはレヴァンティンで最初の突きまでは受け止めた。しかし、高速の素早い突きではそれだけで防ぎきれないと判断したためか、防御魔法のパンツァーシルトで全て受け止める。彼女は、ホークが少しだけ歯ごたえのある剣士になったことに少しだけ歓喜していた。
時を同じくして――
「おおー、やってんな」とヴァイスが口を開く。
彼は陸戦訓練場付近で、開かれた五枚のモニターにはフォワードの個人訓練の様子が映し出されている。ランニングしているエリオとキャロ、なのはの魔法を的確に処理をしている姿のティアナ、ヴィータの猛撃に最後まで防御しようとするスバル。そして――
「良いよな。若い連中は……つか、一組だけ、シグナム姐さんとホークだけはガチの実践なんだな」と言う。本気の表情で、剣の打ち合いをしている二人に乾いた笑い声を上げつつ、訓練を最後まで見た。
「はい、じゃあ午前の訓練終了」となのはが号令してメンバーを集める。
号令に集まったフォワード陣は、ほぼ同時に地面に座り込む。口を利く余裕も残ってない。個別スキルの特訓のハードさが身に染みてわかる場面だろう。
ヴィータが「フェイト隊長は忙しいから、そうしょっちゅう付き合えねーけど。あたしは当分、お前らに付き合ってやっからな」と言い、自分のハンマー型のデバイス、グラーフアイゼンをフォワード陣に向けた。それに対して、フェイトは「ライトニングのエリオとキャロ、スターズのスバルとティアナも、成長期だから無茶はしないように」と心配をしてした。その後は「皆で昼食を取ろう」となのはが言うと、周囲が明るくなった。彼女たちが六課に戻ろうとする時、はやてとシャーリーに出会った。
「皆お疲れさんや」とはやてが戻ってきた隊長陣とフォワード陣に声をかけると、フォワード陣全員の「はい!」という良い返事が返ってくる。
「はやてとリインは外回り?」ときくとリインが「はいです! ヴィータちゃん」と無邪気な声で返す。
「うん、今日はナカジマ三佐とお話して来るよ。スバル、お父さんとお姉ちゃんになんか伝言とかあるか?」とはやてが聞くと、「大丈夫です」と手でジェスチャーしながら言った。
「俺からはあります。相手はギンガ・ナカジマ陸曹宛てに。ホーク・ネヴィルは今、機動六課にいる、もうアンタが追う必要が無い」とホークは淡々と告げた。
「ちょっと待って! 何で、ホークがギン姉を知ってるのよ!?」
スバルは驚くのは無理もない。彼女が心の底から慕っている姉、ギンガ・ナカジマを知っていたのだから。彼女は何故、ホーク・ネヴィルが自分の姉の名前と階級を知っているのか、という疑問が頭をよぎっていた。
「悪いな、スバル。今はまだ話せねえ」とホークは遠くへと去っていく。去り際に最後の一言、「悪いが今は一人にさせてくれ。昼は俺抜きで食べてほしい、午後の訓練は必ず参加する」と。そのまま、自分の部屋に戻って行った。
六課の食堂では、シャーリーとスバルとティアナ、エリオとキャロが同じ一つの机で食事をしていた。スバルの父、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐。そして彼女の姉、ギンガ・ナカジマ陸曹。ナカジマ一家の話題を皮切りに、会話は出身や部隊員の繋がりについてになった。主に隊長陣――はやて、なのはが生まれ、フェイトも一時期その世界で暮らしていた第九十七管理外世界、隊長陣達の故郷であり、ナカジマ一家の先祖がかつて住んでいた地球について。キャロが「名前の響きとか似ている」と気付いた点を述べて、スバルが「地球には自分も父も行ったことが無く、良く分からない」とパスタを口に運びながら言う。
そして話は一旦エリオに移る。しかし、彼の育ちはその悲惨な出身、本局の特別保護施設育ちだということを、あまりにも明るく話していた。が、ティアナがスバルに「馬鹿」と念話で一言釘を刺した。スバルも気まずい表情を浮かべる。「気にしないでくれ、ずっと幸せだった」とエリオがフォローする。次にシャーリーが「その時からフェイトさんが保護責任者だったね」と言い、エリオはそれに笑みを浮かべる。エリオはフェイトに感謝してもしきれない、と言わんばかりの表情をしていた。
時を同じくして――
ホークは隊舎の自分の部屋で体をストレッチしながら、自分がギンガ・ナカジマと出会った時の頃を思い出していた。彼が最初彼女と対峙していたときは、「ギンガ・ナカジマ」という人間の印象は、何も無かった。強いて言えば、女性の身でありながら陸士学校に通っている。変わった女だ、という認識以外は完全に無かった。
その印象が変わったのが、彼女とコンビを組んでからだ。それは、彼が陸士学校に在学していた時の話になる。彼女のシューティング・アーツを間近で見たときである。素早いスピード、そして重い攻撃。彼女のスピードに翻弄されてホークは負けた。
不思議な物だな――ホークはそう思う。徐々にではあるが、長髪の楚々とした容姿で心優しく、明るい性格が気に入っていた。天真爛漫、という表現では流石に可哀想だ。学校の生徒や自分をまとめ上げていく、チームリーダー。決して、悪を許さない心。それが、ホーク・ネヴィルがギンガ・ナカジマに対して抱いた印象である。
「アイツ、どう反応するかな。やっぱり怒るのか?」と独り言を言いつつ、ホークは午後から夜にかけて行われるトレーニングに耐えるため、食堂へ行った。
一方のはやては、陸士舞台一〇八部隊の部隊長室でゲンヤと話を持ちかける。頼みごととして、彼女は「密輸物のルート捜査をしてほしい」と言った。彼女は自分の師匠、ゲンヤの部隊が一番詳しいという理由での依頼だ。ゲンヤはそれを快諾し、捜査主任がラッド・カルタス二等陸尉、その副官がギンガであることを伝える。
場所は廊下になるが、ギンガとリインも資料を貰って話をしていた。リインの口から「フェイトが主任になる。一緒に操作に当たってもらうこともある」とギンガに告げた。これにはギンガも嬉しそうに「凄く頑張らなければならない」と答える。操作協力をしてくれるにあたり、デバイスをプレゼントされることを告げられたが、ギンガは戸惑った。「フェイトとちゃんと一緒に操作できるようにする」とリインの言葉を聞いて、ギンガは「ありがとうございます」と言った。
カルタスとギンガ、はやては今後の予定などの打ち合わせをする。その打ち合わせがスムーズに終わり、はやて、ギンガ、ゲンヤの三名はミッドの食亭で食事をしている。話はスバルのことで盛り上がっていた。やはり、自分達の身内の活躍が気になるのだろう。スバルの話が終わった後、はやてはホークからの伝言を切り出した。
「あのな、ギンガ。ウチのフォワードから伝言があるんや、ホーク・ネヴィルから」
「ホーク……から……?」とギンガが神妙な顔つきになる。
「今、自分は機動六課にいる。もう追いかける必要は無い、って」
ギンガもまた、スバルからのメールで彼のことを聞いていた。かつて、自分のパートナーであり、管理局に指名手配される程の犯罪者にもなっていたホークが、今ではスバルのチームメイトであることを。
「アイツが信用できへんのか?」とはやてがギンガに優しい口調で聞く。
「はい……。スバルからホークのことはいくつか聞いています。しかし、私は確かめたいのです、私自身が納得できるように」
「分かった。私の方からもホークに言っておく。彼もアンタと話したがっていたわ。スグに約束を取り付ける」とはやてが言った。
「ありがとうございます」とギンガは一礼する。
この後、フェイトから「緊急会議をしたい」という通信を受ける。事件の犯人の手掛かりが見つかった、と言う。ギンガには「私とフェイトちゃんからまた連絡をする」と伝え、彼女はこれを承諾。この時、ゲンヤがはやてに速く戻る様に配慮していた。
Ⅲ
「はーい、それじゃあ夜の訓練おしまい」となのはが告げる。フォワード陣は最早ヘロヘロな声で「ありがとうございました」と答えた。朝から晩までみっちり訓練していたのだから無理もない話だ。まだまだ体力が未完成であり、発展途上の彼女達では、相当しんどいだろう。寮への道を歩く五人も、似たり寄ったりだが、自分達はまだまだ強くなると信じて前に進む。
「お疲れだな、ソーカル」と自分のデバイス(フォワード陣が全員で考えた名前である)に労わった。それに応えるかの様にソーカルも自分の主、ホークを労わる返答をする。
部屋に戻る前に、はやてからの伝言を受けた。「数日たったら、ギンガが直接会って話をしよう」と。それを聞いたホークはもうすぐ、ギンガと直接対面する日も近い――そう思いつつ六課の寮に戻り、倒れ込むようにベッドで寝た。
その日から数日が経過したある日、ホークは有休を取る。彼が有休を取った理由は簡単だ。彼もまた彼女、ギンガ・ナカジマと話をしなければならなかったから。このまましこりを残したままではいけない、その一心で彼は陸士部隊一〇八部隊のギンガの所へと訪れた。
「よう、久し振りだな。ギンガ」とホークが声をギンガにかける。
「ええ、久し振りね」とギンガは怪訝そうに返答した。
彼女と出会った時、やっぱり許して貰えないか、とホークは思った。自分の元から何も言わずに、去っていた。そして、ぬけぬけと六課にいる。更に妹のスバル・ナカジマには過去の出来事を隠して接している。警戒するには、十分すぎる判断材料だ。
「提案がある、聞いてくれるか」とホークが聞き、「分かった」とギンガが答える。
「俺と模擬戦闘しろ、昔から俺は不器用なんでね。俺と勝負することで、俺の答えが分かるはずだ」と提案した。
「分かったわ、訓練所でやりましょう」とその誘いにギンガが乗る。
ギンガは訓練着に着替えて、ホークは自身の特注で頼んでいた黒のタンクトップ及び黒のスラックスの訓練義を着替え、訓練所に来ていた。
「ギンガ、クドいがもう一度聞く。自分で確かめたいんだよな?」とホークが質問すると黙ってギンガがうなずく。所謂、イエスと言う答えだ。
「そうか。だが、言っておく。俺は六課に入ってから隊長陣にイヤという程しごかれてきた。そして……この戦いでは、悪いが俺も気の本気で攻めに行くぜ。」
と、ホークは光線銃の銃口をギンガに向けながら言った。それに対して、ギンガはホークに構えを取る。
「なら! その本気、見せてもらうわ!!」
ギンガの掛け声が戦闘開始の合図となった。ホークが上空へ飛んだのを確認して、ギンガがウィングロードを展開して追いかける。そのウィングロードの上にホークが連射の効くタイプの光線銃を連射してギンガを攻撃する。ギンガはトライ・シールドでレーザーを弾いて反らすのも考えた。しかし、それでは防戦一方になってしまうのでその攻撃の軌道を見抜き、寸前でかわしつつ接近するという選択を取る。ホークは一旦、光線銃をホルスターに収めた。そのわずかな間に一気にホークに接近に成功して腹にボディーブローを食らわせる。
「グフッ」と一瞬ホークが怯む。
膝を付きそうになるも、それを耐えて彼女に殴られた左手を持つ。持った後は、高速で数回程度の回転を加えて――ウィングロードの上に投げ飛ばした。
ギンガは投げ飛ばされても冷静に体制を立て直し、無事に着地するが――
「ほれほれっ!」
ホークもまた接近する。ギンガに休む間を与えず、更にダメージを与える為に拳や蹴り足を全力で繰り出す。ギンガも攻撃を貰うまいと、必死にガードをする。お互いが足や拳を繰り出しつつ、体をバネの如く利用して全力回避する。ホークもCQC(近接格闘)を過酷な暴走族の逃亡生活で自然と身についていたか、実力では負けてはいなかった。お互い、体が温まってきたのかより一層速度やキレを増して迫っていた。
「隙あり!」とホークの僅かな隙を見逃さす、足払いをするギンガ。
「うおっ!?」
足払いをした後、さらに蹴りを加えられ遠くにホークが吹っ飛ぶ。ギンガは見逃さずにスバルと同じ技、リボルバーシュートを放った。そのリボルバーシュートを左目の分析装置で確認したホークは咄嗟に、腰に着けてあった反射装置をパンチして前方に飛ばす。
かかった――それを見たギンガは心の中で思った。反射装置を飛ばしている時はブーメランの様に手元へ戻ってくる。それを利用した作戦だったのだ。その隙を見逃さずにホークの背後に仕掛けてあったウィングロードを滑り、ホークの背中に手を付ける。それはホークが自分の反射装置を手に戻した時と同じタイミングだった。
「参った……降参だ、俺の負けだ」とホークは負けを認めた。
そして、彼は言った――流石だよ、言うことが無いくらいにギンガは強い、と。