魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹――   作:マジフジ

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前回のギンガとの一件を忘れてたので。その後日談。そして、アニメ時間軸で七話です。ホークの敵対するキャラをようやく出せた……。
前回も言いましたが、ギンガ√かシグナム√で構成を練ってます。こっちが見たいと言うリクエストがあれば、感想ではなく、ここのメッセージ機能を使って意見を言っていただけると助かります。私のID⇒98820


五話

 ホークとギンガは訓練場で一勝負した後、陸士部隊一〇八部隊の隊舎で話をしていた。ここの部隊長であるゲンヤが「しこり残さず、きちんとケリを付けろ」と配慮したためか個室で二人きりで話をしている。しばらく部屋に気まずい雰囲気になるが、ギンガが口を開いた。

「ホーク、昔に比べたら大分強くなったわね」ギンガはクスリと笑いながら言った。

「そりゃそうだ……。六課に入ってから大分訓練漬けだからよ。陸士学校やムショに入る前よか強くなってねえとおかしくないってーの」

 対照的に苦笑いしながら、ホークは返答した。ホークの方から六課のことを話そうとすると、ギンガは穏やかな笑みを浮かべながらいった。

「わかっている。ホークがそんなことしていないってことはスバルから聞いて、八神二佐に六課の初任務の時の映像を見せてもらったの。あなたがあんなに気遣って、信頼して。高町一等空尉も改心したって言っていたし」

 ギンガの信頼を得られたことにホークは安堵する。だが、どうしてこんなに回りくどい手段を取ったのか――その疑問がホークの頭の中をよぎる。彼女がそこまで知っていたのならば、模擬戦なんかしたの?ホークがギンガに聞こうとした。

「やっぱり、自分で確かめたかったのかな……。昔を思い出したかったのもある」ギンガは言う。

 ギンガは部屋の天井を見つめ、ホークと自分が対戦していた時のことを思い返す。昔から変わらないピョンピョンと相手にリズムを取りつつ、相手に合わせる姿。でも、顔つきや雰囲気が変わっており昔とは違うと感じた。

「昔を思い返すか。中々苦い思い出だな」

 戦闘面などを含めたすべての面で、ホークは「あのころとは違う俺」になったのだと思っているから、それはずっと封印してきた記憶。当時のことを覚えているギンガも覚えられているのは居た堪れない気分になる。当時から彼女には叶わなかったから。しかし、それが事実だ。

「あ……ごめんなさい」それを察したギンガは咄嗟に謝罪する。

「いや、気にすんな。当時の俺でも、お前に勝てる要素が無かったからな。それに、それ以外では埋める要素があったし、それで追いつくしか出来なかった」

 ひとことで言うなら、ホークは純粋な魔力や戦闘面では到底ギンガに敵わなかった。だが、その実力をカバーするために、ホークの親代わりとなった先代や陸士学校の教師の元に付いて、光線銃を含めた武器類の扱いや相手が使用して来た時の対処、近接戦闘術、戦闘機の操縦、設計・製造、更にポジションを器用にこなせるだけのトレーニングを行い、全てを体に染み込ませた。

「それは、本当に凄いよね。普通は長所をさらに伸ばして行った方針だったのに?」ギンガは感心するように言って、青く澄んだ目を開いた。「そんなころから、色んな訓練をしてたのね」

 ギンガにはどう足掻いても勝てない。ならば、ギンガに追いつけるだけの出来ることはしようと熱心にトレーニングをしていた。ホークにとって、それらはハードではあったものの、会得することはさほど時間を必要とすることではなかった。陸士学校で学んだことはしっかりと身についていたし、先代から教わったことの大部分は、現場での実際的な経験というものだった。

「俺、不器用だからな。こうやってやるしかなかった」

 ギンガは笑った。「違いないわ」

 その後も、彼らは学生時代の話に花を咲かせた。ホークとギンガがコンビを組んだ時の互いのファーストインスピレーションなどを。どちらかと言えば、ギンガがホークに世話を焼いていた思い出の方が多くあった。世話を焼かれつつも、愚痴を言いつつも、いざ実践になると互いを信頼し合っていた。トップコンビ(男子はホーク、女子はギンガ)としての規範を全ての生徒に示していた。だが、一つの不幸からホークはギンガの前から消えた。それ以降の出来事をホークは話した、「先代の死をきっかけに、先代の想いを無視して暴走族へ本格的になった過去」、「ギンガを巻き込みたくなかった出来事」を。

 ギンガは黙って聞いていた。ホークは自嘲気味に自分の過去を話していたが、決して笑うこと無く。「それで?」と、ギンガが言った。ホークは淡々と答えた。

「そのあとはお前に知っての通りだ。陸士学校を卒業したギンガ・ナカジマと対峙し、その後は追いかけられ、時空管理局にも追われた。そして、機動六課の成立前に襲った。思えば、俺は回り道をしていたのかもしれない。俺が先代の言う通り解散させていれば、仲間も処分は受けなかった。それを許さなかったのは俺だ。感情的だった。自分を育て上げた人間が目の前で殺されたとはいえ、この判断を下すべきでは無かった」

 沈黙が発生する。ギンガは想像していた出来事以上のことにじっと黙ってしまい、ホークもこれ以上なにか言うと、言い訳ばかり口にして、彼女の心象を悪くしてしまいそうだったので、沈黙していた。ホークには気まずい様な気分であり、彼女とのあいだで沈黙が生まれたことが不快とは全く感じていない。それよりも、自分を庇うような彼女の気持ちにホークは耐えられなかった。

「私や、その後の学校について知っている?」ギンガが聞いてみる。

「いや。先代が殺されてから、そっちで手一杯だった」

「結構大変だったんだよ、私はその時から一人で過ごしてた。大変だったわ」

 でも戻ってくると信じていたから、なんとかこともなく乗りきることができたのかもしれない、とギンガが締めた。ホークは「済まなかった」と謝罪し、ギンガは「でも反省してそれを受け入れて、戻ってきたから許すわ」と笑いながら言った。

 その後も、ギンガとホークは喋っていた。先程の模擬戦闘での立ち回り、良かった所はここだ、悪い所はここだ――みたいな話を続けていた。ゲンヤが部隊長室からこちらの様子を見に来て、「もう夜だぞ」と釘を刺された。

 不味い、と思ったホークはすぐに六課に帰宅する準備を始めた。そして、外に出た後はギンガから一言「スバルを含めたフォワード陣の面倒をお願い」と言われ、ホークはそれに黙ってサムズアップで応えた。

 

 ギンガとの和解、なのは、フェイト、はやてらの故郷である、第九十七管理外世界・地球、極東・日本、海鳴市の出張任務から数日が経過した。その間は特に何も起こらず、新人たちも日々の訓練と業務をこなしていた。そんな中、ホテル・アグスタの警備任務が入ってきた。オークションと言っても、勿論骨董品だけが取り引きされるだけならば、六課そのものの出る幕じゃない。本命は、取引許可が出ているロスト・ロギアなどに反応して出てくる可能性があるガジェット。レリックが関わっている可能性は低いが、ガジェットが出てくる可能性は高いらしい。それを叩くために六課に依頼が舞い込んできたという訳である。

 ――特定遺失物。またの名を『ロストロギア』。それは過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称。当然それらは危険なものが多いが、中には研究によって安全性が確認されるものもある。それらは研究機関に提供されたり、「特に危険性の無い」という判断をされたものは今回の様なオークションに出品することも認められている。古代の遺産であるロストロギアの歴史的価値は高く、それを集める者も多い。

「改めて、ここまでの流れと今日の任務のおさらいや」

 ミッドチルダ首都南海地区上空。ヴァイスが操縦するヘリ内部で、機動六課フォワードはこれからの任務について聞かされていた。フォワード陣五名と各分隊隊長、部隊長補佐、そして医務官・シャマルと狼・ザフィーラは大きく表示されたモニターを見る。

「これまで謎やったガジェット・ドローンの製作者、及びレリックの収集者は現状ではこの男」とはやて言って、モニターに一人の男を映した。

「違法研究で広域指名手配されている次元犯罪者――ジェイル・スカリエッティの線を中心に、捜査を進める」

 この件に関してはフェイトが中心となって任務を進めている。それでも、フォワード陣には頭には入れてほしいと言って、それにフォワード陣は返事をして返した。

「骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。それが今日のお仕事ね」

 シグナム副隊長とヴィータ副隊長が、昨夜からずっと警備しているが、外側は副隊長達だけじゃ手が足りない。その外側の警備を、副隊長達の指示に従う前提だが、フォワード陣に託したわけだ。そうして最後の確認をしながら、彼らはホテル・アグスタへと向かった。数名を除いて――

「で……何で、俺とグランセニック曹長がヘリでお留守番なんだ?」

 とホークが、左目の分析装置を微調整しながら疑問を口に出す。内部警備ではなのは、フェイト、はやての三人をはじめ、ヴィータとシグナムの五名。外部警備はフォワード四名とザフィーラとシャマル。入口には厳重なシャッターもある。

「まあ、そう言うな。いつもの連中がいないと寂しいぜ、ヘリはいつも俺とストームレイダーだけだ」とヴァイスが返す。

「んだな、でもたまにはこうやって現場待機するのも悪くはねえ。それより、一つ聞いても良いか?」

「お前ね、口の利き方には気を付けろよな。今はともかくとして、後々苦労するぞ。それで話ってのは?」

「八神と同じことを言いやがって。それは善処するさ。それよりも、八神達の騎士についてだ」

 話は八神はやてを中心とした話になる。使うデバイスは魔導書型で、名前は「夜天の書」という名前みたいであり、そして、それはヴィータ、シグナムの両名の副隊長二人に、医務官のシャマル、ザフィーラ、リイン曹長の五人は部隊長が所有する特別固有戦力で、全員がそろえば無敵の部隊になる、とヴァイスが説明する。「まあ、ここから先は特秘次項だから、俺も話すことは出来ねえな」と最後に付け加えた。

「なるほど……やはりあり得ない戦力だな。この中で、劣等感を持ちやすいランスターなんか大変そうだな」

「んだな、俺からしてみればアイツも優秀な奴なのによ」

「俺もどっちかと言えば、ティアナ側の人間だ。優秀な魔法は使えないし、ましてや砲撃や射撃と言った基本は出来ねえ。出来るのは俺オリジナルで開発した近接魔法ぐらいだ」

「お前、ティアナの過去を知ってるのか?」と疑問をぶつけるヴァイス。

「当たり前だ。ちょっと調べさせてもらった」

 彼女は、自分への劣等感や兄への想い、日々の訓練で自分が強くなっている実感が湧いて来ない焦燥感、プライドの高さゆえに自らの存在感を示すことに強く固執していたことなどから、危なっかしい奴と評していた。

「だからこそ、心配な面もあるんだよな、同じ射撃型としてよ」

「その時はアンタがフォローを頼むぜ」

 普通では考えられないほどの戦力を保有している機動六課。部隊長がどんな裏技を使ったのか詳しいことは知らないが、隊長は全員オーバーSランク、副隊長でもニアSランク。他の隊員達だって、前線から管制官まで全員未来のエリート。

 十歳と言う若さでBランクを取っているエリオと、レア竜召喚士のキャロ。危なっかしくはあっても、潜在能力と可能性のかたまりで、優しい家族のバックアップもあるスバル。センターガードとして実力を挙げているティアナ。

 メンバーだけ見ると凄まじいと改めてホークは思った。

 その時――

「来ましたっ!ガジェット・ドローン陸戦Ⅰ型、機影三十、三五……」

「陸戦Ⅲ型、機影二、三、四!」

 シャーリーから通信が入る。すかさず、シャマルが前線のメンバーに指示を飛ばす。スターズ、ライトニングのフォワード陣も前線へと向かった。

「仕事か。じゃあ行って来るぜ」

「気を付けてな」

 ヴァイスの言葉を受けながら、自分のデバイスのソーカルをジェットブーツモードへと切り替える。シャマルに前線の映像を自分にも見せることを頼むと、クラールヴィントを経由して送られた。ホークはザフィーラと合流して共にガジェットを叩くように指示される。一気に戦力を叩こうと言う算段に納得して、ホークはフルスピードでザフィーラと合流した。

「遅いぞ、ネヴィル」とザフィーラが釘を刺す。

「悪い、ヘリからここまで来るのに時間がかかった。それよりも早速団体さんが来ているな!」

 ホークはソーカルにジェットブーツから両手剣に切り替える。迫ってくるガジェットに対してザフィーラが一つにまとめる様に拘束した。ホークはその意図を察したのか、その場で力をためて、力が堪ったのを確認した後、一気に素早くガジェットに近づき真っ二つにする。実際は魔力による「ただの移動」であり、自分の肉体を武器に一気にぶつけると言う単純な技であり、剛剣も相まって当たれば強い技である。

「ネヴィル、戦い方が雑だ。もっと繊細に立ち回れ!」

「ああ、分かった。言う通り雑になっていたな」

 

 モニターの中で、副隊長達とザフィーラが次々とガジェットを壊していく。それは迅速かつ正確にスバルは「凄い」と感嘆の声を漏らすが、対照的にティアナは険しい顔をしながら拳を握りしめて、「コレで……能力リミッター付き?」と漏らした。そんな時、キャラのデバイス、ケイシュリオンが誰かの召喚魔法を使っているのに反応、また、シャマルのクラールウィントにも反応した。魔力反応の大きさに、ロングアーチのシャーリー、それぞれのデバイスが反応した。

 同時に――各戦局でもガジェットの動きが見違える様に良くなっていた。順調に撃墜こそしていたが、それをガードするようになったから。術者である何者かが遠隔で操り、通常より動きの精度を上昇させている有人操作であることがすぐに理解できた。

 そう判断したシグナムは、ヴィータにラインまで下がるように指示する。ザフィーラとホークにすぐに合流するように指示をシャマルは出した。

「ネヴィル、お前は召喚魔法士を探せ。ここは私とザフィーラで止める」

 シグナムがホークに指示を出す。

「……だが」

「召喚魔法士を叩けば、一気に戦力は落ちる」

 なるほど、と納得する。有人操作をしている主を叩けば、一気に向こうの戦力はフォワード陣でも対処の出来る範囲となる。

「頼んだ。頼りにしている」

「任せろ。お前の後ろには誰一人通させん」とザフィーラは自信満々に行った。

 ホークは飛行魔法を用いて、シグナムとザフィーラと別れる。左目の分析装置で既にその居場所を見抜いていたのか、フルスピードで向かった。しかし――そこで思わぬ人物と再開を果たしてしまう。その人物はホークの後ろにいたが、直観的に嫌な感じがして、背筋が凍り付く。ホークは信じられないと思いつつも口に出した。

「まさか、召喚魔法士に会いに向かっただけなのに、あなたに会えるとは思いませんでしたよ……先代……!!」

 左手に魔導書を持ち、右手には剣を持っている相手に背を向ける。

「あの召喚魔導士に会うつもり? でもそうはいかないよ」

「何故……何故、先代――サウル・ゼノーニがそっちの味方をしているんだ!?」

 死んだはず先代、サウルが何故生きているのか――、何故召喚魔法士を庇うのか理由を知らなかったホークはソーカルを両手剣にして先代に襲い掛かる。

「テラアイス」

 右手に持っていた剣から青白い稲妻のような光線の様に、氷の魔力弾が二発、ホークに当たる。彼に外傷は一切無く、痛みは無かったが、息が出来ない。

 自分の意思に反して、ゆっくりと身体が宙を舞うのが分かる。身体の内側から冷たくなる感覚がある。それはみるみる指先、腕、足、身体中が動かなくなっていく。五感も無くなり、最後に「すぐに溶けるから安心して」と言われ、ドシン、とホークは一つの氷の塊となって地面に打ち付けられた。その音を聞いたシグナムがすぐに駆けつける。

「貴様……ネヴィルに何をした?」とシグナムが問う。

「ちょっと、彼には凍ってもらった。しばらくすれば勝手に溶けて、いずれ普通に活動する」

 シグナムが逃がすまい、と剣を構えた。

 申し訳ないけど、今は捕まるわけにはいかない。そうサウルが言う。サウルが言った後は何かの転送魔法を受けて、何処かへと消えてしまった。

 

「遠隔召喚、来ます!」とキャロが叫ぶ。

 その叫びと共に、四つの召喚魔方陣が地面に浮かび、そこから現れたのは陸戦Ⅲ型の物が一機と、訓練でよく見たⅠ型の物が十機。

 エリオとキャロは召喚魔法陣から出たガジェットに驚いていた。「優れた召喚士は、転送のエキスパートでもあるんです」とキャロが一言言う。

「何でもいいわ、迎撃いくわよ!」とクロスミラージュに弾丸を入れながら、ティアナは言う。それに応えるかの様にスバル、エリオ、キャロは意気込んだ。

 しかし――やはり強化されたガジェットを相手に、ティアナらは苦戦を強いられた。

 ティアナは展開したⅠ型に向けて弾丸を放つが、全て難なく回避され、仮にクリーンヒットしても、AMFがそれを阻止するせいか、てんで手ごたえが無い。

「くっ!」

 彼女が自分の非力さに歯噛みする。後ろからⅠ型ガジェットが攻撃されるが、ジャンプしてそれを避けた。

「防衛ライン、もう少し持ち堪えて! ヴィータ副隊長がすぐに戻ってくるから!」とシャマルからの指示が来る。

 それに対して、ティアナは自分が全機撃ち落とすと宣言した。それに対して、シャマルが心配するも「あんなに毎朝毎晩、練習してきたんだから」とティアナは聞く耳を持たなかった。

「エリオ、センターに下がって! 私とスバルのツートップで行く!!」

「あ、はいっ!」

「スバル? クロスシフトA、行くわよ!」とティアナがスバルに指示すると、すぐにスバルが「おう!」と快諾した。

 スバルがウィングロードでガジェットを引き付けていく。それを確認して、彼女はクロスミラージュのカートリッジを四発分のロードをする。彼女周囲には、無数の魔力弾が浮かび、そこに魔力が上乗せされていく。自分の弾丸はちゃんと敵を打ち抜けることを証明したい一心で。電流の様に絡みついたのを見た、シャーリーは「四発ロードなんて無茶」という忠告を無視して――

「撃てます! クロスファイアー……シュート!!」両手を掲げて、引金を引いた。

 クロスファイアーシュートが、ガジェットに襲い掛かる。それは着実にガジェットを捉えて破壊していった。しかし、一発分流れる。最悪なことにそれはガジェットの引きつける役割をするために、空中を走っていたスバルだった。

 だが――直撃は免れた。ヴィータがギリギリでスバルの元へと飛んで行ったクロスファイアーをクラーフアイゼンで弾き飛ばし、そのままガジェットの残骸の溜まっていた場所に当たったから。

「ティアナ! この馬鹿!!」

 彼女は腹の底から怒っていた。当然だ、命令を無視して無茶をやり、味方を誤射しかけたのだから。ティアナは自分の致命的なミスをやらかしたことをひどく後悔する目になっていた。スバルは、ティアナをフォローするため、今のもコンビネーションの一つであり、自分のミスであることを主張した。そんなスバルにも、ヴィータは「今のは直撃コース」だ、と叱責した。

「後は私がやる! 二人纏めてすっこんでろ!」

 この後、スバルとティアナは自主的に裏手の警備へと回り、ヴィータとライトニングのフォワード陣がガジェットを撃墜した。

 

「おし、全機撃墜」

 グラーフアイゼンを肩に担いで、ヴィータが辺りを見回しながら言う。

「こちらもだ。召喚士は、追いきれなかった上に、ネヴィルが何者かにやられたがな」

「だが、命に別状はない。しかし、しっかり見てもらうべきだ。それに、召喚士が居ると分かれば対策も練れる」

「――だな」

 シグナムとザフィーラから通信が入り、それが任務終了の合図になった。ヴィータが緊張を解く。

「……そういや、ティアナはどうした?」とライトニングの二人に問う

「ティアさんなら、裏手の警備の方に」とエリオが言い、「スバルさんも一緒です」とキャロが答えた。

 その裏手では、スバルとティアナがいる。スバルが気まずそうに表を見ていた。

「ティア、向こう……終わったみたいだよ?」と声をかける。しかし、ティアナはスバルの顔を合わさずに「あたしは、ここの警備やってるから。アンタはあっち行きなさいよ」

「……あのね、ティア」

「いいから、行って」

「ティア、全然悪くないよ! あたしが、もっとしっかり――」

「行けっつってんでしょ!?」

 ティアナは自己嫌悪に陥る。スバルは自分を思って言ってくれてるのに、八つ当たりしかできないなんて。でも、今は誰にも関わって欲しくないという感情が強くあった。

「ご、ごめんね。また……後で、ね? ティア」と申し訳なさそうにスバルが行く。

 ティアナは思い出していた。自分のミスで敵どころか味方までも致命傷を与えかねないことになったこと。ヴィータに本気の叱責を受けたこと。自分が不甲斐無く、思い出すだけで、涙が出てくる。

「あたしは……」彼女が続けようとした言葉は何も出ず、涙が止まらずに溢れ出ている。

 

 時同じくして――ホークを凍らさていた氷が解凍していた。彼の中で永遠に止まっていた時間が、急に動き出すのが分かった。身体の中心から、一気に温かさが戻ってくる。血液が全身に流れ、身体中を駆け巡り、心臓が鼓動を打つ。靴底から伝わる地面の感触も、彼は感じていた。

「うっ……」

 立ち姿のままだったホークは、途端にがくんと膝をついた。

 頭がクラクラして、視界がぼやけている。何が起きたか理解するのに一瞬の間があったが、サウルの氷の魔法弾を二発の食らい、自分が氷漬けになった事を思い出す。恐らく、先代が加減してくれたのだろう。

「大丈夫か、ネヴィル」とザフィーラが声をかける。

「ザ、ザフィーラ!? に、任務は!? 任務はどうなった?!」

 思いもよらぬ場所で目覚めて、ホークは素っ頓狂な声を出した。何が起きたのか分からない。召喚魔法士を追いかけていたのが、何故、ホテル・アグスタの前にまで戻ってきているのだろうか。

「簡単な話だ、既に私達がガジェットを全機撃墜させたからだ」と、ヴィータは言う。

「そんなことよりも、聞きたいことがある。お前を凍らせたあの男、何者なのだ?」とシグナムは聞いて来る。

「サウル・ゼノーニ。俺が過去に所属していた暴走族の前のリーダーで、俺の育ての親だった人間だ。召喚魔法士を追いかけている際、迎撃された。何で生きているのか、俺は分からない。俺の腕の中で、息を引き取って逝ったのに何故……?」

「サウル・ゼノーニか……。主はやての様な、魔導書を使っていたが?」

「あれは先代の戦闘スタイルだ。左手の魔導書であらゆる属性を変えて、その変えた属性を右手の剣で攻撃する。右手の剣は近接戦闘は勿論、遠距離にも使う。さらに変則的な遠距離魔導師であり、近接も中距離も苦にしないオールラウンダーなタイプだ」

 とホークは言う。近接戦闘中心で、遠距離も攻撃手段が限られている自分とは相性が悪すぎると心の中で考察していた。そんなのが、あの召喚魔法士の近くにいるのか――そう思いつつも、ヴォルケンリッターの面々は対策を考えることにした。

 

 それからしばらくして、検証現場となる。なのはがフォワード陣を集める。

「えっと。報告は以上かな? 現場検証は調査班がやってくれるけど、みんなも協力してあげてね? しばらく待機してなにもないようなら、撤退だから」

「はい」と四人が答える。ティアナの返事は少し遅れた。

 さっきの顛末は、ヴィータからなのはに報告。ヴィータもティアナ達からもう一度事情を聞いた後で報告はした。制止を無視して無茶をした挙句、味方を誤射。ヴィータが間に合わなきゃ、スバルは最悪死んでた可能性だってある。

「それと、ティアナ……」

 なのはに名前を呼ばれて、ティアナがビクッと身体を震わせる。

「ちょっと、私とお散歩しよっか?」

「……はい」

 小さく返事をして、高町隊長に連れられて森の方へと歩いていく。

 スバルは、そんな二人を心配そうに見つめている。

「それじゃあ、私達は調査のお手伝い。ティアナなら大丈夫だよ、なのはも、ちょっと注意するだけだと思うから」とフェイトがスバル達を安心させるように言う。

 林道では、なのはとティアナが二人で歩く。

「失敗、しちゃったみたいだね」歩くのをやめて、なのはが振り返る。

「すいません。一発、逸れちゃって……」

 ヴィータに怒られたみたいだから、改めて叱ったりはしない。

 と言った後、「ティアナは時々、少し一生懸命すぎるんだよね。それでちょっと、やんちゃしちゃうんだ」と言った。

 その言葉でティアナは自分自身の未熟さを改めて痛感して、うなだれる。なのははそんな彼女に近づいて、ティアナの肩に自分の手を置いた。

「でもね? ティアナは一人で戦ってる訳じゃないんだよ? 集団戦での私やティアナのポジションは、前後左右、全部が味方なんだから」少しだけ厳しい目をしながら言う。

「その意味と、今回のミスの理由。ちゃんと考えて、同じ事を二度と繰り返さないって約束できる?」

 ティアナはしっかりと頷く。 

「なら、私からはそれだけ。約束したからね?」

「はい」

 自分はもっと強くなりたい、兄の為に、自分の為にとティアナは心に思った。

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