魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹―― 作:マジフジ
なのはとティアナがいざこざを起こし、解決してからの約二週間。ティアナは吹っ切れた、機動六課に入隊する前の彼女に戻った。訓練もあれから徐々に密度を上げていき、内容もハードになる。
「はい。今朝の訓練と模擬戦も無事終了。お疲れ様!」となのはがフォワード陣に声をかける。
過酷な訓練を終え、訓練場で整列して座り込んだフォワード陣の四名に、大の字になって倒れているホーク。彼らの訓練着は、これまでの訓練の時と比較しても、汚れの数が多くついていた。そんな彼らに対して、なのはが笑いかける。そんな彼女の隣にはヴィータとフェイトが、更に後ろにはシグナム。
「今日はいつもより厳しくしたんだけど、疲れたかな?」
と、なのはが聞く。フォワード陣が疲労困憊の表情を浮かべつつ、疲れたとフォワード陣のメンバーが思い思いを伝えた。しかし、それは第二段階の見極めのテストであったことをなのはが伝えると、フォワード陣は声をそろえて驚いた。
そのフォワード陣とは対照的に、なのはは後ろにいたフェイト、ヴィータ、シグナムの四名に視線を合わせる。
「どうでした?」
なのはがフェイトに、彼らの試験結果を聞く。
「合格」フェイトが何も躊躇わずに、微笑みを浮かべながら即答した。
そんな彼女を見て、ティアナとスバルと驚嘆な表情をしながら、「はやっ!?」とティアナとスバルが返答する。
「ま、こんだけみっちりやって、問題あるようなら大変だってこった」
「問題があれば、私たちがもう一度、基礎から徹底的に鍛え直すだけだ」
さらにヴィータが呆れながらも言う。シグナムの冗談とは到底思えない言葉を、聞いたエリオとキャロは顔を引き攣らせつつ、苦い笑み浮かべていた。彼女達三人の意見をまとめる様に、第二段階試験(フォワードの四名であり、ホークはもう一つ上の試験)を終了したことを、なのはが告げる。それを聞いたフォワード陣の五名は嬉しさが込み上げてくる。先程の疲労困憊がうその様であり、疲れを忘れて立ちあがった。
「デバイスリミッターも一段階解除するから、後でシャーリーのところにいってきてね」
「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練するからな」
明日、という言葉にフォワードの五名が疑問を抱いた顔つきになる。午後からすぐに訓練ではないのか、何をするのだろうか、そんな疑問に満ちた顔をしている。
「待った。明日から、というのは? 今日は他にやることがあるのだろうか?」
ホークが聞く。
「違うよ。今日は私達も隊舎で待機する予定だし」
「みんな、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」
なのはとフェイトの言葉を聞いて、何のことだろうかと言わんばかりに顔を合わせるフォワード陣、そんなフォワード陣に思わず笑みがこぼれる隊長達。
「ま、そんなわけで」
「今日はみんな、一日お休みです! 町にでも出かけて、遊んでくると良いよ」
言いたいことがやっと伝わったのか、パッと花が咲き開いたような笑いになり、元気よく「はい!」と返答した。
朝の訓練が終わり、ホークは隊長陣と共に食事を取っていた。普段から、ここで食事を取っている彼にとっては隊長陣がいてもいなくてもいつものペースを保っていた。彼が食堂のモニターに目をやると、レジアス・ゲイズ中将がモニターで演説している。
「魔法と技術の進歩と進化素晴らしいものではあるが、しかし! それがゆえに我々を襲う危機や災害も十年前とは比べ物にならないほどに危険度を増している! 兵器運用の強化は進化する世界を守るためのものである! 首都防衛の手は未だ足りん。地上戦略においても我々の要請が通りさえすれば、地上の犯罪発生率も二十パーセント、検挙率においては三十五パーセント以上の増加を、初年度から見込むことが出来る!」
言いたいことは分かる、とホークは評する。魔法のおかげで世の中が便利になり、生活もそれに比例して危険も伴う。事実、自分の親の様に慕っていたサウル・ゼノーニがその魔法を使って殺された。しかし、だ。それは兵器に対しても同じことが言える。そのバランスを上手く保つことが重要なのではないだろうか、と思った。
それ以降は、何に対しても興味が無くなって食事の皿に目線を集中させて、再び飯を頬張っていた。
朝食を食べ終わり、ホークは出かけようとしていた。彼の格好は普段の業務で着用している六課の制服ではなく、黒いジャケット、首元には紫色のスカーフ、赤のタンクトップとスラックスという、バリアジャケットとは対照的な色合いを意識した格好である。
「ネヴィル、その格好は良いとして……。お前は何故サングラスをかけているのだ?」
「簡単な話だよ、元犯罪者、しかもミッドを荒らした俺が歩いているってバレたら大変な事になるだろう」
そういう事か、と納得するシグナム。ホークはそれを見て、一言「行って来る」と伝えてシグナムの元を去った。外に行こうと六課の隊舎の前の入口に移動すると、ライトニングのフォワード陣と、なのはとフェイトに遭遇する。
「あ、ライトニング隊も一緒にお出かけ? ホークは付き添いかな?」
「はっ、馬鹿言え。いくらこいつらがガキとは言えど、一応軍人の端くれだ。保護なんか無くても大丈夫だろう、一人はやや過保護なんだがな」
心配そうな顔で繰り返すフェイトを見ながら、ホークは呆れる様に言い、なのはもそれを見て苦笑いするだけだった。
「あんまり遅くならないうちに帰るんだよ? 夜の街は危ないからね?」
「はいっ!」
街に向かって歩いていくエリオとキャロに、大きく手を振るフェイト。なのはも、街に出る二人に軽く手を振っていた。ホークはそれを確認した後、自分も出かけることを彼女達に伝え、彼もまた街へと出かけて行った。
「こうしていると……怒涛の勢いだったな、慌ただしく連続で起きた出来事の数々は」
街をのんびりと歩いていると、ホークがそうポツリと呟いた。六課に捕まる前は暴走族の一員として、高町なのはやフェイト・T・ハラオウンと言ったエース級の魔導師に無謀に戦いを挑んだのが最初の出来事。その数カ月後には六課に加入し、レリック確保の危なっかしい任務。その次にホテル・アグスタでのティアナの致命的なミスと――死んだはずの先代、サウル・ゼノーニとの交戦。ティアナとなのはとのわだかまり。連続して、濃い出来事過ぎる内容だった。
今日ぐらいは休日を貰い、穏やかに過ごさせてほしいという願望が心にはあった。
暴走族時代に愛食していたガム(彼にとってはタバコ代わり)でも買って、久々に食べて気分を落ち着かせてみるかと思い、近くのコンビニエンスストアに寄ったその矢先。ドーン、という巨大な音が響いた。その音が、たまたま彼の通っていた、近くビルの地下からだったので急いで現場に向かうと、運送車が横転していた。
「これは、どういう事だ?」
そう言い、彼が現場の調査を行おうとすると、現場員に止められた。
「何を騒いでいるのだ? ここは素人の来る場所では無い」
厳格な捜査官がホークに厳しく言い放った。
「事件が起きている。ここでどういう事が起きたのか、詳しい調査をさせて欲しい」
「そんなことをする必要、お前が無い」
そうはいかない、とホークは引き下がらずに捜査官に食いつこうとするが――
「陸士一〇八部隊の、ギンガ・ナカジマ陸曹です。現場検証のお手伝いに参りました」
ギンガがやってきた。これを見て、ホークが閃く。ギンガの許可などを取らずに、淡々とホークは言う。
「捜査官、待ってくれ。俺はホーク・ネヴィルという者だ。……ギンガ・ナカジマ陸曹の助手として、この捜査に参加している」
ギンガは驚きの表情を隠せないでいる。何を考えているのだ、と異議を唱えたがそれを無視する。
「よろしく頼む、現場員の方々」
ホークがそう言うや否や、「そういうことだったのか」と納得する。今までの態度が嘘のように、現場にいる人間はすんなりとホークの捜査の参加を受け入れた。
「ホーク。あの……どういうこと? 私の助手って」
「仕方ないだろ。こうしない限り、事件の捜査に参加なんて出来なかったからな。悪く思わないでくれ」
やれやれとギンガがため息をつく。勝手なことを言うな、とギンガは心中で思う。それを分かってか分からないかは定かではないが、ホークがギンガに「頼む」と短く言い、頭を深々と下げた。
「何を考えてこの行動を取ったかは分からないけど、こうなった以上……あなたは私の部下になったわ。しっかりと協力してよね」
「勿論だ」
ホークはギンガに短く答えた。
Ⅲ
「それで事故と聞きましたが?」とギンガが聞く。
その聞いた情報によると、何者かの攻撃を受けて荷物がひとりでに爆発したとのことらしい。横転した車の運転士は頭を抱えながら、ぶつぶつと言っている。混乱がまだ収まっていない様子だった。彼が輸送していたのは缶詰などと言った食料品、飲料水の入ったペットボトルなので爆発するわけが無い。
「それと妙な遺留品があってですね」
妙な遺留品という言葉を聞き、捜査官に二人は案内される。案内された場所には生体ポッドが置かれてあった。
「これは……生体ポッド!?」
「生体ポッド、ってことはおおかた、人造魔導師だろ。狂ってやがる」
ホークが舌打ちし、ギンガがそれに賛同する表情をする。
それは優秀な遺伝子を使って人工的に産み出した子供に投薬や機械移植等を行って後天的に優れた魔導師とする技術。多くのの問題があるので、一般常識や普通の倫理観や価値観である人であれば、手に染めることの無い技術である。
「おい、これはどういう事だ?」
と、ホークがポッド周辺に指をさす。重い何かで引きずられた様な跡があり、それを辿ると地下の所にまで続いている。生体ポッド、破壊されたガジェット。そして、現場捜査員に現場検証の状況確認を、ホークが一人一人に聞きこみ、その様な人影は全く見ていない、現場捜査をしている人間から聞いた。
自分達が確認できた、生体ポッドと何かしらの引きずられた後がある、二つの情報と捜査員に聞きこんだ内容から、とある答えを導き出す。
「五、六歳ぐらいの人間は入っていた。それはこの生体ポッドが決定的な証拠だ」
「そして、捜査員や周囲の目撃証言が無く、破壊されたガジェット。引き摺っていたのはレリック、と考えてよさそうね」
「自然に考えれば、そうなるな。ギンガ、外に出て通信して報告してくれ。俺は引き続き地下を捜査する」
分かった、とギンガは頷き外へ出る。
地下を調べてみよう、そう言った時にソーカルに全体通知が入った。それはコールナンバーでの通知だったので、緊急事態なのだろうと即判断して、一言一句聞き漏らさない様に真剣な顔つきで聞く。サードアヴィニュームのエフ二三の路地裏で、レリックと思しきケースを引きずっていた女の子が発見される。その女の子は地下から出現して、エリオとキャロを見て気絶したらしい。生体ポッド、引き摺った様な痕跡のある地下。これは単なる偶然ではなく、自分達の捜査している事件との関係がある。そう判断したホークはすぐにギンガと共に調査をしている案件を報告しようとした時だった。
「スターズツーからロングアーチへ。海上で演習中だったんだけど、ナカジマ三佐が許可をくれた。今現場に向かってる、それともう一人……」
「一〇八部隊、ギンガ・ナカジマです。ホークと共に別件捜査の途中だったんですが、そちらの事例とも関係がありそうなんです。参加しても、よろしいでしょうか?」
「うん。お願いや。ほんなら――」
ヴィータはリインと合流して海上の南西部の制圧、なのはとフェイトは北西部の制圧を指示し、ホークとギンガはフォワード四名と合流して地下を制圧することを指示した。
「先ずはティアナ達との合流ね」
ティアナから通信が入る。
「ギンガさん、お久しぶりです」
下水の通路を走りながら、ギンガさんに通信を繋げる。
「うん、ティアナ。現場リーダーは貴女でしょ? 従うから、指示をくれるかな」
「はい!」
ティアナは頭の中で、地図を想像して自分達がどの地点であれば、最速で合流できるかを考えた。
Ⅲ
「ギンガさん、デバイスでロングアーチと独立回線を開きます。準備いいでしょうか?」
「うん、大丈夫。ブリッツキャリバー、お願いね」
「俺も既に準備している、ソーカル、ジェットブーツモードだ」
ギンガの返事を聞いてから、ティアナは自身のデバイス、クロスミラージュを経由してギンガのブリッツキャリバーを、ロングアーチとの独立回線に繋げ、それを確認してギンガが追っていた別件の詳細を報告し始めた。
「私が呼ばれた事故現場にあったのは、ガジェットの残骸と、壊れた生体ポットなんです。そこで丁度、五、六歳の子供が入るくらいの。近くには、何か重い物を引き摺ったような後があって、それを辿っていこうとした最中、連絡を受けた次第です」
「俺は、偶然近くを通りかかって気になった。だから調査していた」
「それと、この生体ポット、少し前の事件で似たような物を見た事があるんです」
「私も……な」
ギンガの声とはやての声に暗いものが混じる。彼女たち、二人の関わった事件、人造魔導師計画。
「これはあくまで推測ですが、あの子は人造魔道師の素材として、造りだされた子ではないかと」
ギンガがそこまで言った瞬間、ホークの左目の分析装置が反応する。前方からガジェットドローンが近づいていた。
「敵だ、ギンガ!! 俺が見ているんだ、ガッカリさせるんじゃねえぞ」
「その台詞、そっくりそのまま返すわ」
言ってくれるね、とホークは内心で思う。ソーカルにジェットブーツモードから、両手剣モードへ切り替える様に指示する。普段は、片手で持っている剣を両手で持ち直し、気合を入れ直した。
「ギンガ、バックアップを頼む!! 面倒だ、フルパワーでぶっ飛ばす!!」
「分かった」
ギンガが言う。トライシールドを展開しつつ、ホークに攻撃が届かない様にフォローを行う。対するホークは剣を地面に突き立てて、両手剣全体に蒼い炎を噴出させる。その炎が次第に大きくなり、旋風が周囲に吹く。
「ギンガ、バックアップしてくれてサンキュー。食らえ! フルパワーの“炎風”!!」
ギンガに下がるように指示する。それを左目の分析装置で確認した後、ホークは大きな叫び声と共に、剣を地面に突き刺した。彼の突き刺した剣の周囲を纏っていた炎に大きな爆発が発生し、それに気付かず接近したガジェットは殆ど殲滅する。が、残り数体が残っていた。
逃がさない。その一心でギンガが、ホークが仕留め残したガジェットを殴り飛ばし、自分達に接近してきたガジェットを全て撃墜した。
「やるな、ギンガ!! 案の定、雑魚共が妨害して来たが、このレベルぐらいならば、たいしたことは無い」
「ええ。でも、一つでも多くの数を叩いておけば楽になるわ。それと……」
「それと? どうしたんだ、ギンガ?」
「炎風、常時フルパワーで放つのは止めておきなさい。あれだけ、派手な爆発を引き起こす技なのだから、あなたの身体にかかる負担がとんでもないはずよ」
「はいはい。ったく、心配性の野郎だ。さっさと行こう、ティアナ達と合流して、レリック回収しないと」
そう言い、再びホークはソーカルを両手剣からジェットブーツモードに切り替える。こうでもしないと、彼の脚力ではギンガに追いつけないから。その後も分析装置を基にして、最短で合流でき、かつ、ガジェットが大量に出ているポイントを叩いて回った。左目の分析装置から、ピピピという音が出る。
「ギンガ、この壁の向こう側にティアナ達がいる。それにケースも近い位置にある。ここを壊してさっさと合流してしまおうか。全力でここを壊せば行ける!」
「分かった、シンプルでわかりやすいね」
ギンガがそう言い、壁に向かって構える。ホークもまた、ソーカルを両手剣に変え、壁に構えた。彼の両手剣は蒼炎を纏わせながら、剣を大きく振り上げ力任せに切り刻んだ。ギンガも壁に思いっきり殴る。凄まじい爆音が響く。
「ギンねぇ! ホーク!」
「ギンガさん!」
警戒していたスバル、ティアナの顔色が明るくなる。エリオ・キャロは状況が掴めずにキョトンとした顔つきだった。
「一緒にケースを探しましょう」
ギンガが、優しく告げる。その後に優しい笑みを浮かべ、エリオとキャロはそれに対して敬礼で対応した。ホークが左手で、左目にある分析装置を操作、開いている右手で左肩をトントンと、軽く叩きながら言う。
「ここまで来た雑魚共、ガジェットは叩いてきた。……とは言っても、面倒だから突っ走った結果、たまたまガジェットがこちらに多く寄って来ただけだが」
「あれだけ、“炎風”を放っていたら、爆音を聞いて近づくよ」
「まあ、な。でも合流は出来た。後は任務完遂させるだけだ」
フォワード陣と合流した、ギンガとホークはレリックがあると思われる場所へと走りながら、自分達を妨害して来るガジェットを容赦なく撃墜していた。ナカジマ姉妹は息の合ったコンビネーション、ティアナは正確な射撃、キャロはフリードによる炎、ホークは持ち前の豪腕でガジェットを破壊していった。
「大型ガジェット!? ちっ、前方と後方の両方から来ていやがる」
それを聞いた、ギンガは前方のガジェットを、一撃で破壊することを決断する。スバルに大型ガジェットを相手に出来るかどうかを聞く。「決める!」と短く、ハッキリと答えた。
「ギンガ、こいつを使え! 魔力を反射・防御ぐらいなら出来るはずだ!」
ホークが自分の腰に装着していた反射装置をギンガに投げ渡し、ギンガはそれを受け取った。
「ホーク、後方をお願い。私とエリオとキャロはこっちの方をやるわ」
「了解した」
ティアナの指示に、ホークは短くうなずき、ソーカルはジェットブーツから両手剣にモードチェンジする。大型のガジェットが近づくのを分析装置で確認する。両手剣が蒼炎を纏い、円を描きながら回して構える。ガジェットのアームが、こちらに届く瞬間を見逃しはせず、斬り下ろした。大きな爆発音が響き、煙が包み込む。近くにいたティアナが心配になって様子を見に来る。
「ターゲットを破壊」ホークの声が響く。
両手剣で肩を叩きながら、ホークが煙の中から何事もなく現れた。
「その様子だと大丈夫そうね、爆音が響いたから驚いたわ」
「あの雑魚程度に傷を負わされると思っているのか?」
「まさか。それよりも、さっさとレリックを見つけるわよ」
ティアナに指示されて、ホークもそれに従う。全員が合流した後、下水通路を抜ける。レリックの反応があった推定位置に到着した後、分散して捜索をした。
魔法を使うと、レリックがそれに反応して暴走する可能性があるので、ティアナの言葉に頷きあってから、バラバラになってレリックの入ったケースを探す。
魔力を一切使っていない分析装置のおかげで、レリックの出現ポイントは大まかではあるが、範囲がかなり絞れていた。ホーク達、背丈のある人間は水の深い部分を探し、エリオとキャロは水の浅い部分を探していた。
「あ、ありました!」
水の浅い部分で探していたキャロの声が響いた。後はレリックに封印処理を施して、隊長陣に報告するだけだった。ピピピ、という音が分析装置から鳴り響く。
「敵、か?」
ホークがホルスターから、連射できるタイプの光線銃を取り出した。彼が周囲を見渡すと、誰一人として物音は立てていない。その音の残響を辿ると、壁にたどり着く。
「そこっ!」
ホークの銃から青い光線が、四発放たれた。しかし、それは相手にぶつかることなく、全てが壁に衝突する。全ての光線を交わした後、漆黒の魔力弾が四つの形成された。
その射線上には、キャロがいる。
「キャロ! 敵だ、モタモタするな!」
ホークが咄嗟に大声を張り上げた。
「え……きゃあっ!」
咄嗟に大声を張り上げたが遅く、その魔力弾はキャロの近くに着弾。直撃による大ダメージは免れたが、その魔力弾から爆風によって体重の軽いキャロは吹き飛ばされてしまう。
先程の爆風で手放してしまったのか、ケースは少し離れた場所に転がっていた。
「でやああっ!」
先程の光線銃である程度の位置を把握したのか、エリオが斬りかかる。咄嗟に援護射撃として、怯むタイプと怯まないタイプの二種類を取り出し二丁射撃でエリオを援護。エリオは空中でストラーダを一閃し、そのまま距離をキャロの前に着地した。
瞬間、エリオの頬から鮮血が飛び、それが心配になって駆け寄ったキャロを庇うように手を広げるエリオ。
にらみ合いが続く。相手がステルス魔法を解く。目の前に現れたのは召喚獣らしき戦士なのか、それとも魔法でそのような姿を意図的にしている戦士か。いずれにせよ、幾つもの戦場を潜り抜けて来たであろう、強者の雰囲気が出ていた。
スバルとギンガも、いつでも動けるように構えている。ホークは光線銃を構え、警戒態勢を解かない。
「あっ!」後ろから聞こえたキャロの驚いたような声と、駆け出す足音がする。
全員が召喚獣に気を取られている間、レリックのケースを回収する紫のロングヘアーの少女がいた。
駆け寄ったキャロに向けて左手を差し出し、小さく一言。「邪魔」と呟きながら、魔力を放出した。キャロは、咄嗟にラウンドシールドを張ったが、僅かな間では構成も甘く、強度も脆い。あっさりとシールドは破壊されて、キャロが吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「キャロッ! うあぁっ!!」
吹っ飛ばされたキャロがエリオにぶつかり、二人同時に吹っ飛ばされる。
凄まじい勢いのまま、二人はそのまま近くの柱にぶち当たった。
「うおおっ!!」
スバルが僅かな隙を見逃さず、召喚獣にとび蹴りをかました。
「はああっ!!」
すかさず、ギンガが拳を叩き込む。拳は防がれたが、そのままバッタモンを吹っ飛ばすことに成功。
「ほっ!」
ホークが空中に大きくジャンプした後、錐もみ回転をしながら、右足を大きく前方に蹴りだす攻撃。あらゆる魔法類を一切使っていないが、重力加速度によって着いた勢いのおかげで、威力が増大しているのか、右肩の装甲の一部が剥がれ落ちる。
少女は、周囲などどうでも良い、そう言わんばかりに去ろうとしていた。それを見て、スバルが大きな声を出して止めようとする。その問いかけに無視して進もうとするが、ティアナによって阻まれる。
「ごめんね、乱暴で。でもね、これ本当に危ない物なのよ?」
ダガーモードの魔力刃を、少女の首筋に押し付けた状態で、ティアナが言う。だが、渡そうとする考えが無いのか、その少女はレリックの入ったケースを強く抱えて、俯いていた。何かが来たのかを悟ったのか、目を瞑る。
突如、分析装置からピピピという音が聞こえた。それと同時に、目眩ましと思われる火炎弾が飛んできた。目が眩むような閃光と凄まじい爆音が、辺りを包みこむ。近くにいた全員が耳を塞いでいた。
少女の方へと視線を向ければ、こっちを一瞥してから背を向けて歩き出す。まだ、聞こえ辛い耳を押さえながら、ティアナ俺がデバイスを向ける。
「きゃあっ!」
少女の隣に居た、召喚獣がティアナを蹴り飛ばした。ティアナもまた、直ぐに体勢を立て直し、少女に目掛け、クロスミラージュから一発を撃つ。が、それは召喚獣に防がれてしまい、左肩の装甲の一部を剥がしただけだった。
「ったくもー。あたし達に黙って勝手に出かけちゃったりするからだぞ、ルールーもガリューも」
「アギト……」
「ま、もう大丈夫だぞルールー。何しろこのあたし! 烈火の剣精! アギト様が、来たからな!!」
空中に胡坐をかいたアギトの周りに小さな花火が舞う。
「お前らまとめて、かかってこいや!」
「こいつらを全員倒す。この喧嘩、買った!!」
ホークが光線銃の銃口を、敵に向けて吠えた。