魔法少女リリカルなのはstrikers――六課の鷹―― 作:マジフジ
気合の入った声を出しながら、融合機のアギドが薙ぎ払うように、無数の火炎弾をホーク達に向けて放つ。
それを見て、フォワード陣はそれを後ろに跳んでかわし、体勢を立て直そうとする。
アギドの火炎弾による攻撃で土煙が上がり、煙はもくもくと勢いよく空中に浮かびあがっていた。分析装置の反応音と同時に、その煙の中から召喚獣ガリューが、突き出した右手から伸びた刃を向けながら、突っ込んでくる。ギンガは自ら前に飛び出し、左手のリボルバーナックルを構え正面から激突した。
ギンガの魔力とガリューの魔力による衝突が起き、爆発して二人とも後退した。
「なんの!」
アギドが援護射撃として、四つの火炎弾を形成しそれを放った。
ホークがニヤリと不敵な笑いあげた後、腰に着けていた反射装置をバニッシュモードに切り替え、すぐさまアギドの元へと蹴り飛ばした。その火炎弾が全て、ホークの蹴り飛ばした装置と接触する。その瞬間、「ピシュン」と音を立てて消滅、蹴り飛ばした反射装置はホークの手元へブーメランの様に戻ってきた。
「テメエ、何しやがった!?」
自分の魔力を使って放った魔法が、何も出来ずに消されてしまい、それどころか相手の得意げな顔を見てしまう。アギドは自分の攻撃が徒労に終わったことに対する怒り、魔法をかき消されたことによる驚嘆の表情が入り混じった物になっていた。
「まあ慌てるな。この反射装置のことから説明をしてやる」と、冷静にホークが言う。
ホークはティアナに念話を使う。自分はアギドらを相手に時間を稼ぐから、一番理想な作戦を考えてくれと伝えた。それに同意したティアナは、短く「分かった」と返した。
ホークは腰に着けていた反射装置をアギドらの前に突き出す。ホーク自身の開発した装置は、相手の魔法を反射せずに一方的に打ち消すタイプのバニシングモード、相手の魔法を反射してその魔法を自分の所有権として使えるリフレクトモードの二種類があることを説明した。
それと同時に、ティアナが作戦を立てる。
「ティア、どうする?」スバルがティアナに聞いた。
「任務はあくまでケースの確保よ。撤退しながら引きつける」
自分達が与えられている任務、今現在の戦局を冷静に考慮する。キャロは気絶したままであり、先程のガリューとの交戦によって、エリオもダメージが残っている。そして、自分達と合流するために向かっている副隊長のヴィータ、曹長のリイン。向かっている二人と上手く合流できれば、ルーテシアらを止めることの出来る可能性を配慮したことをメンバーに伝える。
「よし、中々良いぞ。スバルにティアナ」
ヴィータから念話が届く。リインはティアナとスバルの二人に「状況をよく把握して、判断を下せている」と評価する。通信では無く、念話だったのでもうすぐ近くにいると言うことが判断できた。それとほぼ同時にホークの左目の分析装置が反応する。
「もう少し詳しく説明してやろうかと思ったが、残念だよ」
手に持っていた反射装置を腰に戻して、ティアナ達の後ろへと大きくジャンプした。ホークを追いかけようとするが、アギドは自分達に近づいてくる魔力反応を確認し、天井を見上げて一言、「デケェ」と焦ったような声を出す。その後、何かを探るようにせわしなく天井を見回した。
ヴィータの気合の入った声と一緒に、天井が突き破られた。隕石が降りかかる様に鋭い音を立てて、大量の瓦礫が地面の上に落ちる。そして、その中からリインが飛び出した。
「捕えよ、凍てつく足枷!」
リインがフリーレンフェッセルンを発動する。ルーテシアとアギドの周囲には、遠目から見ても、その寒さで体の内部から締め付けられるようであり、冷気が鋭利な刃物で体を貫く様なものであり、そんな氷が二人を包み込んでいった。
ガリューが捕らわれた二人に意識を逸らした瞬間を見逃さず、ヴィータが飛び出す。
彼女のデバイス、アイゼンをギガントフォームに切り替える。大きな叫び声とともにガリューに大きな大槌を振り当てた。一瞬こそ、それを受け止めるが、圧倒的なパワーに押し負け、近くの柱を削って壁へと激突した。そして、崩れる瓦礫と巻き起こった煙の中へと飲み込まれた。
「おう、待たせたな」気遣う様にヴィータが言う。
「皆、無事で良かったです」
敵が沈黙したのを目視で確認する。ヴィータがアイゼンを通常形態に戻しつつ、フォワード達を振り返った。自分の放った魔法で敵を拘束したかどうかを確認しながら、リインがふわふわと浮いていた。二人とも、今の攻防が何でもなかったかのような態度で、いつもと変わらぬ表情で立っている。対照的に、フォワード陣は茫然としていた表情をしていた。
「ちっ……」壁を見て、ヴィータは舌打ちをした。
ガリューを吹き飛ばした手応えもあり、目視で確認もした。しかし、壁にめり込んだはずのガリューの姿がそこから消えていた。
「逃げられた……ですね!」
次にリインが声を上げ、全員がそこに集まった。
曹長の放った拘束魔法を放ったが、ルーテシアとアギドの姿は無く、逃走ルートとして使用した地面に、大きな穴が存在していた。
レリックのケースは守られた、しかし二人はまだ逮捕には至っていないからどう対応するべきか――。そう考えていると地面が揺れる。その場にいた全員が一瞬だけバランスを崩した。
「大型召喚の気配があります。多分、それが原因で」
意識の戻ったキャロがエネルギーの分析をしていた。自分と同じ召喚魔法士であるキャロにはそれがすぐに判別することが出来た。ヴィータが、スバルに対して叫ぶように指示を出し、それを察したスバルがウィングロードを回転しながら上に敷いていく。ヴィータがくる時に開けた穴から外に脱出という作戦だ。スバルとギンガ、ナカジマ姉妹を先頭で行かせて、自分とリインは後から飛んでいく様に指示をした。
「キャロ、ほら帽子。で、レリックの封印処理をお願いできる?」
ティアナがキャロに帽子を渡しながら、問う。
「出来ます」キャロは迷わずに答え、急いで脱出するティアナと共に続いた。
Ⅱ
地下で六課のフォワード陣、ヴィータ、リインが脱出していると同じ時間帯、地上の廃棄都市区画では先に脱出したルーテシアが、空中に浮かびながら近代ベルカ式の魔法陣を敷いている。その地上では巨大な甲虫が、体全体から電流を放電している。周囲は局地的な地震が発生していた。
「ルールー、これはマズイって」アギドが釘を刺すようにルーテシアに言った。
彼女がやっていることは、下手をすれば殺人を犯すことになり、身内から殺人者が出てしまうことは、アギトの望むところではなかった。また、地下で埋まってしまったレリックのケースをどのように探すのか――その手間をしてまでも、この様な魔法を使ってまで犯すリスクでは無い。
「あのレベルなら、多分これくらいじゃ死なない。ケースは、クアットロとセインに頼んで探して貰えばいい」
「よくねーよルールー! あの変態医師とかナンバーズ連中と関わっちゃ駄目だって! ゼストの旦那、サウルも言ってたろ? あいつら口ばっか上手いけど、実際のところあたし達の事なんてせいぜい実験動物くらいにしか――」
アギドが最後まで何かを言おうとした所、地雷王の居る場所が窪む。額に電撃が一点に集まり、耳には地響きが鳴り響く。「やっちまった」軽く肩を下しながら、アギドが呟く。
そんなアギトを横目に、ルーテシアは左に立っているガリューを見た。怪我の心配をしていた。先程のエリオとの交戦で切り付けられた箇所から血が流れていた。
「戻っていいよ。アギトが居てくれるから」
ガリューはルーテシアに黙って頷き、身体が紫に輝いてその場から消えた。それに続くように、彼女ルーテシアは地雷王の方に視線を移す。戻って休ませようとしたのだが、そうは問屋が下さない。桃色の魔方陣が地雷王のいる場所から発生し、その魔法陣から縛りつける鎖が何本も存在した。
その光景にアギドもルーテシアも動揺をする。立ち直る時間さえ与えまいと、二人に目掛けて正面からはヴィータが接近し、その下から幾つもの青い光線銃が向かう。
それらに気付き、逃げようとそうとした瞬間、自分達の真正面にあるビルの屋上に居るティアナに気付く。ティアナがルーテシアらに目掛けて、引き金を引いた。
「くそっ!」
ティアナの撃ち出された魔力弾を回避しながら、アギトが火炎弾を、ルーテシアはダガーを撃ちだす。
その様子を窺いながら、ルーテシアは近くの高架の手摺に着地し、アギトは空中に浮かんでいる。しかし、ルーテシアが着地するのとほぼ同時に、高速で移動したエリオがルーテシアの胸元にストラーダを突きつけ、アギトの周りには氷で出来た無数のダガーが浮かび、突きつけられた。
「ここまでです」
リインがそう告げ、ルーテシアとアギトをしっかりとバインドで縛りつけた。それを追うようにフォワード陣がリインの元へと集まり、完全に囲まれたことを認識する。
「この野郎! 離せ!」
アギドがもがき続ける。それを見たホークは、ホルスターから光線銃を取り出す。アギドに対して、文字通り目の前で一発、威嚇射撃を放った。
「大人しくしろ。次は出力を最大にして、お前に当てる」
睨みつけた鋭い目付きをしながら言う。近くにあった瓦礫に向かい光線銃の出力を最大限にして放ち、粉々に粉砕させた。アギドは叫びもがくのを止めて地面に座り、ルーテシアは小さく俯いた。
「子供を虐めているみたいで、良い気分はしないが、市街地での危険魔法使用に公務執行妨害、その他諸々で逮捕する」
ヴィータがそう告げると、抵抗するのを止めた。
Ⅲ
抵抗を止めたのを確認して、ルーテシアの持っていたケースをエリオが回収する。
スバルとティアナがルーテシアの後ろに立ち、エリオとキャロが左サイド、ギンガとホークが右サイドを固め、ヴィータとリインが真正面から、ルーテシアとアギドが逃亡しない様に包囲する。
「答えてもらうぞ。何故、レリックを狙ったんだ?」
ヴィータが強い口調で聞く。ルーテシアが黙って目を瞑り、黙秘を貫く。スバル、ティアナが質問を問いかけても、依然として態度を変えなかった。それに対して、痺れを切らしたホークが、ホルスターから二丁の光線銃を素早く引き抜いて、右手の光線銃でルーテシアの足元に目掛けて一発光線銃を放ち、左手の光線銃はアギドに向かっていた。
「ルーテシア、とか言ったな。質問に答えないのなら、答えないので良い。だが、答えないって言うのなら、アンタの首とこの融合機を斬る」
そう言って、光線銃をホルスターに収納する。自身のデバイス、ソーカルをジェットブーツモードから両手剣モードへと切り替えた。両手剣を片手でルーテシアの首元で見せつけ、剣全体に蒼炎を纏う。剣に覆われた蒼い炎が、ホークの内にある激しい怒りを表している。それにルーテシアはビクリと体を震わせ、アギドも怯む。近くにいたギンガに強く抑えつけられた。溜めた炎は、虚しくも鎮火する。
「離せ、ギンガ」睨みつけたままホークが言う。
「止めてホーク。何もここまでしなくても!」
ギンガが悲しみとも怒りが入り混じっているような感情へと変わる。ホークの右手は彼女が強く握りしめて、抵抗してもほどけない程に締め付けられた。そのまま、開いている手でホークの頬を強く引っ叩いた。ひりひりと頬の痛みを感じてはいたが、決して目付きは変えなかった。
「彼女の言う通り、そこまで追い詰めなく良いのに。随分と乱暴な奴だ」
その声のする方向に向かって、全員が振り向く。剣先からは、氷の矢が高速で放たれ、それがホークの左目に装着していた分析装置“のみ”を貫き、破壊した。左頬からは矢を掠めたのか、血が流れている。道路の上にポタリ、と数滴流れた。
キャロとエリオが心配そうにホークに声をかけるが、耳には届かない。自分に向かって矢を放った人物を見たホークは「サウル・ゼノーニ」と短く言った。
「ホテル・アグスタでの一件以来だな、ホーク」
構えていた剣を下しながら、サウルは呟いた。怪我の有無を確かめる目をしながら、ルーテシアとアギドを見る。
ホークが唾を飲み込み、緊張感を和らげる。全身の神経を研ぎ澄まし、付け入る隙を一切与えない目で、サウルを睨みつける。ホークの隣にいるギンガ、後ろにいたティアナ達もその強者のオーラを感じ取ったのか、戦闘態勢を取った。
「ホーク。こいつがお前の言っていたサウル・ゼノーニか?」
ヴィータがアイゼンを構えながら聞く
「そうです。先代は、サウル・ゼノーニは、俺の育ての親だ。目の前で殺されたのだが生きてる理由までは分からないがな」
「それはそうだけども。そんなことより、時間が勿体ない。さっさとその二人を解放するのとレリックの引き渡しをお願い出来ないかな?」
「オメエ、ふざけたこと言ってるんじゃねえぞ!!」
ヴィータがサウルに攻撃をしかけようとした瞬間、今まで黙秘を貫いていたルーテシアが近づいた。
「逮捕は良いけど……大事なヘリは、放っておいていいの?」
ヘリ――それはエリオとキャロ、スバルとティアナらが保護した子供、その治療の為に搭乗したシャマル、そして操縦者のヴァイス。
砲撃のチャージを確認、その威力がSランク推定であり、狙いがヘリであることが判明する。ロングアーチから悲鳴に近い声が響いた。現在、機動六課の部隊長のはやてが空中でガジェットと大量交戦している。なのはとフェイトがヘリを守るため、向かっているが間に合うかはギリギリの状態。そして、ヴィータやフォワード陣は地上にいる。
その状況を見計らったように砲撃が放たれ、大きな爆音が響いた。
その場にいた全員が、ヘリに注目を集める。現場からでは煙が覆っていて目視では確認出来ない。更にジャミングが酷く、精査することが出来なかった。
「そんな……」
「シャマル先生とヴァイス陸曹が……」エリオとティアナが茫然しながら呟いた。
「てめぇ!」
ヴィータが怒りで我を忘れ、ルーテシアに掴みかかる。
スバルがそれを抑えつけようとするが、振り払われた。再び肩を掴み、ルーテシアを揺さぶりながら、ヴィータが怒りを露わにする。
「まさか、こんなことを言うなんてね……」
「先代。アンタのその反応……。関与してないな」
サウルの顔色こそ変わってはいないが、声がかすかに震えていた。ルーテシアとアギドを解放させるつもりで来ていて、注意を引きつけるつもりなど微塵も無かったが、起きてしまった惨状にただ驚嘆している。ホークを除いたメンバーは信じられない、と言った顔つきをして敵意をむき出しにしていた。
「おかしい。ヘリが撃墜されたのなら、落下するべきものがある。それが無いな」サウルがポツリと呟いた。
「落下するべきもの……そうか、ヘリの破片か!」
頭に浮んだ考えを整理し、それに気付いたホークが答えた。自分がかつて、暴走族時代に単身で機動六課に挑んだ時、戦闘機に乗って抵抗していた過去がある。その時に戦闘機が大破、主翼部分の破片が真っ先に落下し、それに続くように戦闘機本体も墜落した。意外な形で、暴走族の時に経験したことが活かせたホークは少し複雑な心境である。素早く状況判断できたのだが、自分にとって思い出したくない出来事を思い出したから。
そのすぐ後にロングアーチから、なのはが防御魔法を張ったことにより、ヘリが無事であることを確認した。全員がヘリの無事に安堵しつつも、サウルに対する警戒は一切解かなかった。
「エリオ君! 足元に何か!」
背後で、何かが動いたことに気付いたギンガが叫ぶ。それと同時に、地面からラバースーツを着た人間が飛び出した。ほんの一瞬でエリオからレリックケースを奪い取る。ティアナが弾丸を二発放つも、避けられる。再び地面に何らかの魔法を使って身を隠した。
フォワード陣が体を動かし、再び捜索をしようとしていたが、それが出来ない。
足元に冷たい感触を感じ、それを見ると足元が凍っていた。
「流石に数が多いと、不利だからね。一時的に動きを封じさせてもらったよ」
サウルが右手の剣と左手に所持している魔導書を、堂々と見せながら言った。
そのタイミングを見計らったように、先程エリオからレリックケースを奪い取った少女が出現し、ルーテシアとともにまた消えた。更にアギドもこの出来た隙を見計らって離脱をし、三人の反応は消える。目の前まで追い詰めたが、逃亡を許してしまった。
「さてと、どう出てくる?」
サウルが空を眺めながら呟いた。足場を凍らせた中で、唯一ホークがいない。逃げる場所が限られているので、空を見ると両手剣を正面に構えて気合を入れていた。
気合が入れ終えたと同時に空中にいるその場から、サウルを一点に集中して両手剣を高々と投げあげて、回転して剣をキャッチしてそのまま急降下して攻撃する。
やはりそうきたか、そう言わんばかりにサウルが緻密に防御魔法を組み立て、自分の前に氷で固めたラウンドシールドを展開した。
サウルの生成したシールド、落下速度の勢いのあるホークが、小細工なしの力勝負でぶつかり合う。ほどなくして、ラウンドシールドにひびが入る。力負けすると判断したサウルは後退して攻撃を避けた。
「流石だね、やっぱりこっちの考えは読んでいた?」
「ギンガが叫んだ後、アンタなら確実にそうすると思っていた。だから咄嗟に空中に逃げて体勢を立て直した」
アンタの戦闘術を叩きこまれたからな、とホークは淡々と言った。
全身の神経を研ぎ澄まし、サウルへの警戒心を弱めることは無い。両手剣を再度、構え直して戦闘する意識をむき出しにしていた。
「でも、もう良いや。目的は達成できた。それに、無意味な戦いは疲れるからね」
サウルはそう呟きながら、閃光魔法を使った。目もくらむほど強烈な光がその場にいた全員を襲いかかり、視野を塞がる。
彼らがようやく視力を取り戻したには、ホーク以外が凍らされていた足元の氷が解けきっていた。しかし、サウルの反応もロストしていた。
ⅳ
サウルらを取り逃してから通信がすぐに入った。ロングアーチ、そしてリインから、それぞれ対象反応のロストという報告をする。部隊長のはやてと通信を繋いでいたヴィータは、苦々しい表情で報告していた。隣ではリインがガックリと肩を落としている。自分の追っていた召喚士一味には逃亡されただけでなく、その逃走経路も掴めなかったことに対する不甲斐無さに怒りが湧いていた。
「あ、あの……ヴィータ副隊長」
ギンガに促されたスバルがヴィータを呼ぶ。はやてに報告中だったヴィータは、黙ってアイゼンを向けた。それにすかさず、ティアナが助け船を出す。
「なんだよ、報告中だぞ!」
「あの……ずっと緊迫してたんで切り出すタイミングが無かったんですけど……」
「レリックには私達で一工夫してまして」
スバルとティアナは苦笑しながら言った。
「一工夫? もったいぶらずにサッサと説明してくれないか」
ホークがイライラしながら言った。
ティアナらが身振りなどを交えて、説明する。レリックを収納していたケースはシルエットでは無く、本物だった。下手に数を増やして目を誤魔化せたとしても、シルエットは衝撃に弱い。奪われた時点ですぐに相手に分かってしまう。そのために、ケースを開封して、レリック本体に厳重な封印を直接かけた。
そのレリックは、敵との直接接触の少ないキャロに持ってもらった。ティアナが指をパチン、と軽くならす。花が咲いているヘアバンドは、レリックに戻った。
それを見たホークとヴィータは頬を引き攣らせ、リインは「なるほどぉ!」と驚嘆な声を上げた。
「とりあえず、任務は無事に完了したな」
敵前逃亡はされたが、最優先の目標である「レリックを確保」ということは無事に達成出来たことに、フォワード陣は安堵した。
「ホーク、これ」
ギンガが分析装置を拾い、それをホークに渡した。きまずい表情しながら、その分析装置を受け取る。「サンキュー」と短く感謝の念を言った。
「ねえ、ホーク。あの時止めなかったら、本当にあの子を殺す気だったの?」
「本当に殺すかよ。だが、あそこで容赦の無さをきっちり見せておかないと、あの先舐められたままだしな」
故障具合を確認しながら呟く。
「でも、止めてくれてサンキュー。もしかしたら、“人殺し”って言う理由で六課解散って最悪なシナリオになっていた可能性があったからな」
そんなことになったりでもしたら、自分と六課の全員に迷惑がかかってしまう。何よりも、これ以上道理に外れた行いをする訳にもいかないという気持ちで一杯だった。
そしてもう一つの確信。それは自分の育ての親、サウル・ゼノーニとはどんな形であったとしても、決着を付けなければならないということが強く根付いていた。