俺たち転生者 蟹魚復権活動中   作:キューマル式

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第10話 白と黒、何かを学ぶ

「なんですと? 小宇宙(コスモ)の使い方を教えて欲しいと?」

 

「うん」

 

ここは『巨蟹宮』、訓練の合間に疲れたなのはへとお茶を淹れてくれたセージになのはが言ったのが冒頭の言葉だ。

ちなみに、ここの主は昼寝の真っ最中。

『巨蟹宮なら昼寝し放題、ヒャッホウ!』などとのたまっており、神罰(セージの拳骨)がくだるのはそう遠い未来のことではないだろう。

 

「その前に教えて欲しいのだが…何故、小宇宙(コスモ)の使い方を?」

 

「うん。

快人くんって凄く強いから、私も小宇宙(コスモ)が使えるようになれば今よりもっと強くなって、色んなことに役立てるんじゃないかと思って…」

 

そんな風に答えるなのはを見ながらセージは思う。

 

(…なのは嬢は幼い。故に、危うい…)

 

セージがなのはから感じたのはそれだった。

『力』というものの本質を捉えていない…セージはそう考え、少しなのはへ教えを説くことにした。

 

「では、なのは嬢。 まずは今のあなたの力を見せて下さい。

 そうですな…空から私に向かって全力で魔法を撃ち込んでみなさい」

 

「え、でも…」

 

自分を撃てというのは抵抗があるのかなのははしばし逡巡する。

そんななのはに、セージはなんてことないという風に言った。

 

「なに、私はあの快人の師なのだよ。 避けられないはずはないだろう」

 

「そっか。 それもそうだよね」

 

その言葉に納得したなのはは飛び上がると、杖を地上のセージに向けて構える。

 

「いくよ、セージおじいさん!」

 

「いつでも来なさい」

 

なのははその言葉を聞くと、自身の杖『レイジングハート』に魔力を叩き込む。

伸びた銃身(バレル)をしっかりとホールドし、膨大な魔力が杖先に集まっていく。

そして、なのははそれを解き放った。

 

「ディバイン・バスター!!」

 

なのはの持つバカげた量の魔力を収束して放つ、必殺の砲撃魔法だ。

セージに言われた通り今のなのはの全力全開、最高の威力を持つ攻撃だ。

だが、それを避けられる・弾かれることをなのはは疑っていなかった。

何と言ってもセージはあの快人の師なのだ。おまけに元蟹座(キャンサー)の黄金聖闘士(ゴールドセイント)。

蟹座(キャンサー)の黄金聖衣(ゴールドクロス)が無くても十分すぎるほどに強い。

だからこそ、何一つ疑ってはいなかったのだが…。

 

「!? セージおじいさん!!」

 

「…」

 

セージは動かなかった。

しっかりとその桃色の光をじっと見つめ、動こうとしない。

そして、一度放たれたディバイン・バスターを止める事は出来なかった。

 

ドグォォォォォン!!

 

轟音と爆発。

 

「せ、セージおじいさん!!」

 

慌ててなのはは地上に降り立った。

爆発で発生した煙で辺りが見えない。

 

「ふむ…凄いな。 この攻撃、青銅(ブロンズ)か、ともすれば白銀(シルバー)に迫る威力だ」

 

土煙の中からセージの声がする。

そして煙の晴れたその先には…左手から肩をごっそりと抉れ失ったセージが立っていた。

 

「あ、ああ…」

 

なのはは杖を落とし、ペタンと座り込んでしまう。

取り返しのつかないことをしてしまったことへの恐怖が、なのはの全身をガクガクと震わせた。

 

「ふむ…なのは嬢、どうしたのかね?」

 

「だって、私、私ぃ!!」

 

泣きそうななのはを、セージはポンと右手で頭を撫でる。

 

「安心しなさい。 前にも話したが、私は小宇宙(コスモ)で形作られた幽霊のような存在。

 これぐらいは…ほら、この通りだ」

 

そう言うと、セージに光が集まってきてゆっくりと形を作る。

そしてそれが済むとそこには、元通りの姿のセージが立っていた。

 

「ふ、ふぇぇぇぇ! よかったよぉ!!」

 

安心したのか、なのはは声をあげて泣き始めた。

それをセージは、まるで孫をいたわる老人のように落ち着くまでその頭を撫でる。

やがて、落ち着きを取り戻したなのははセージに聞いたのだった。

 

「でもセージおじいさん、なんで避けたり弾いたりしなかったの?」

 

セージの実力ならどうとでも出来たはずだ、なのにそれをしない理由がなのはには分からない。

そんななのはに、セージはゆっくりと優しく語った。

 

「君の持つもの…『力』とはどういうものなのかを教えるためだよ」

 

そう言って、セージは背後を指す。

そこに出来上がっているのは地面に穿たれたクレーターだ。

 

「あの破壊の跡、そして私の姿を見て君の『力』がどういうものか、分かって欲しかったのだ」

 

「で、でも魔法には『非殺傷設定』が…」

 

『非殺傷設定』…それはなのは達の使う魔法の特色の一つだ。

この設定が施された魔法は、物理殺傷力を失い、相手を魔力ダメージで気絶させるだけに留まる。

殺さずに相手を捕えるために発展したミッドチルダの魔法文化の一端といえる力だ。

だが、セージはその言葉に首を振る。

 

「それは、峰打ちだから大丈夫と真剣を振っているのと同じこと。

 当たり所が悪ければ無事では済むまい」

 

セージの言うことは事実だ。

如何に『非殺傷設定』とはいえ、状況によっては精神・神経へのダメージを負う。

運が悪ければ後遺症だって残ることがあるのだ。

 

「分かって欲しいのは、君の魔法という『力』には、相手を害するほどの効果があるという事実だ。

 それは理解できただろう?」

 

言われて、なのはは震えながら頷いた。

さっきのセージの姿…あれをやってしまったのは間違いなく自分の『力』だ。

あれが他の人にも出来てしまう、その事実をなのはは理解する。

その途端、自分の持つ魔法という『力』が怖くなってしまった。

今まではユーノの手助けのため、そしてともすればジュエルシードの暴走からたくさんの人を救える素晴らしいものだと単純に喜んでいた。

ユーノたちに『魔法の天才』だの『才能がある』だの言われて嬉しかったのも事実で、実はそれを誇らしく思ってもいた。

でも…今はそんな魔法が怖い。

もしも今のがセージで無ければ、取り返しのつかないことになっていた。

 

「なのは嬢、君達の魔法も、我ら聖闘士(セイント)の小宇宙(コスモ)も、相手を害することのできるものであり、『力』なのだ。

 だが、その『力』無くして切り抜けられぬ試練があることも事実。

 『力のなんたるか』を知った上で、『何のために力を使うのか?』を心に定めるのだ。

 心を強くし、その『力』を律するといい」

 

そう言ってセージは奥へと去っていこうとする。

 

「小宇宙(コスモ)とは、魂の力。

 君が『力』というものを理解し、それでもなおその心が『正しい力』を欲するのなら、君の中の無限の宇宙は応えるだろう。

 まずは、考え、悩み、不屈の心を鍛えなさい」

 

それだけ言ってセージは『巨蟹宮』の奥へと消えていく。

残されたなのはは、自分の力のあり方について考えるのだった…。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「たぁ、はぁ!」

 

「甘いな」

 

ここは『双魚宮』、フェイトはシュウトの修行風景をただ見続けていた。

高機動戦闘を得意とするフェイトの目にも、打ち合うシュウトとアルバフィカの師弟の姿はほとんど見えない。

だが、状況は見える。

あのシュウトがおされているのだ。

 

「まだまだ甘い…」

 

華麗にアルバフィカが宙を舞い、シュウトの背後を取る。

そしてシュウトに掌底をいれると同時に、小宇宙(コスモ)を爆発させた。

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「シュウ!?」

 

盛大に吹き飛び、頭から地面に落ちるシュウトに思わずフェイトは側に駆け寄ろうとするがアルバフィカがフェイトを止めた。

 

「なに、あの程度は心配無用だ。 そんな柔な鍛え方はしていない。

 シュウト、今日はここまでだ。

 私とフェイトにお茶を淹れてくれ」

 

そう言葉をかけられると、シュウトは身体をさすりながら立ち上がった。

 

「いたたたた…。

 分かりました、すぐ淹れてきますよ、お師様」

 

そう言って即座に奥へと向かっていくあたり本当に大丈夫なのだろう。

それを理解すると、フェイトは元通り椅子へと腰掛ける。

正面に座るアルバフィカは、物憂げに本を読み始める。

疲労の跡が全く見えないあたり流石はシュウトの師匠だと、フェイトは感心していた。

 

「…」

 

「…」

 

…会話が続かない。

正直に言えば、フェイトはどちらかといえば人見知りをする質だ。

一方のアルバフィカも他者に関わり合いにならないようにしていたため会話の得意な方ではない。

そこで必然的に会話にならないのだが…フェイトとしては、幼馴染の親代わりだという師匠に嫌われるというのはどうしても避けたかった。

フェイトは気付いていないが、それは姑に必死に気に入られようとする新妻の心境である。

そのために何とか当たり障りのない会話をとフェイトは思い、知らずのうちに特大の地雷を踏んでしまった。

 

「あ、あの…アルバフィカさんって綺麗ですね」

 

ピクリ

 

本のページをめくっていたアルバフィカの手が止まった。

フェイトは空気が冷えるのを感じる。

その時になって、フェイトは自分のミスに気付いた。

 

「あ、あの…」

 

「フェイト…君は私の何をもって美しいと称したのだ?」

 

その言葉にフェイトは答えられない。

アルバフィカはパタンと読んでいた本を閉じた。

 

「私はそう言われるのが好かない。 その言葉は私の『誇り』を傷つけるのでな」

 

「『誇り』を?」

 

フェイトの言葉に、アルバフィカは頷く。

 

「別段、美しいという言葉を悪いというのではない。

 ただ、大体の場合その言葉は私の外見だけを持って称される。

私にはそれが我慢ならないのだ。

フェイト…人の美しさとはなんだと思う?」

 

「美しさ…ですか? …わからないです」

 

「人の美しさ、それは全てを貫くような『誇り』を纏っているかどうか、だ。

 その纏う『誇り』を理解し、美しいと称するのならいい。

 そうされず、外見のみで語られる美しいという言葉を、私は嫌悪する」

 

言われて、軽率な言葉にシュンとしたフェイトを、アルバフィカはフッと笑って頭を撫でる。

 

「すまない、突然おかしな話をした」

 

「いえ、私こそすみませんでした」

 

恐縮し、頭を下げるフェイトにアルバフィカは言葉を続ける。

 

「フェイト、君はこれからも様々な困難にぶつかるだろう。

 だがどんな時でも己の『誇り』を纏うことをやめてはならない。

 『誇り』を貫こうと進む者の魂は、どんなものにも勝る輝きを放つ。

 そうやって生きる君は、きっと誰よりも美しい…」

 

そう語った時、丁度シュウトがお茶を持って戻ってきた。

 

「お師様、フェイト、お茶がはいりました」

 

「そうか…」

 

そう言ってティーカップに口を付けるアルバフィカ。

 

「ほら、フェイトも冷めないうちにどうぞ」

 

「あ、ありがとう、シュウ…」

 

フェイトもティーカップを受け取り、その香りを楽しむ。

そんな時でも、フェイトの頭の中には先程のアルバフィカとの会話が繰り返されていた。

 

(自分自身の貫く『誇り』…私の『誇り』は…何だろう?)

 

フェイトは己の貫くべき『誇り』について考えるのだった…。




なのはフェイトの強化フラグ。
この先生きのこるには必須。
この2人が師匠だというだけで勝った気になれる。
LC勢は素晴らしかった。
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