「「やったぁぁぁ!!」」
前時代的なブラウン管テレビの前で、2人の美女が手を合わせてハイタッチ。
2人とも絶世の美女だが、着ているイモジャーが何もかもを台無しにしている。
この2人は女神アテナに女神アフロディーテ。
快人とシュウトを『リリカルなのはの世界』に転生させた女神さまたちである。
「いやぁ、よかったよかった。 蟹座大活躍で、私大満足!」
「私も魚座が普通にフェイトちゃんの王子様やってって満足ね。
これで子供時代からの溜飲が少し下がったってもんよ!」
ブラウン管テレビには快人とシュウトの様子が映し出されている。
それを見ながら、あぐらを掻いてちゃぶ台上のお茶を飲み、ポテチをつまむ女神さまたち。
今の光景を信者たちに見せて言ってやりたい。
『お前らの女神だろ、早く何とかしろよ』…と。
するとお茶を飲みながら、アテナさまはアフロディーテさまに言った。
「しっかし、デスマスクとアフロディーテはすごいじゃない。
いつの間にあんなサプライズ用意してたの?」
「えっ?」
アテナさまのその言葉に、アフロディーテさまの動きが止まった。
「なに言ってるの、アテナ?」
「だから、デスマスクとアフロディーテのことよ。
ものすごいサプライズだったじゃない、あんなこと用意してるんなら一言教えてくれてもいいのに…このこの!」
肘でアフロディーテさまを面白そうにつつくアテナさま。
だが、アフロディーテさまは慌ててアテナさまに言い返す。
「ちょっと待ちなさい。 あれ、あんたがやったんじゃないの?」
「? アフロディーテがやってくれたんでしょ?」
「私は何にもやってないわよ。 アテナがやったんじゃなかったの?」
「えっ?」
「えっ?」
2人の女神さまに沈黙が落ちる。
そして…女神さまたちはやっと事態に気付いた。
「まさか!?」
「あの世界に私たち以外が干渉してる!?」
その結論に、アテナさまとアフロディーテさまはたどり着いた。
「これは…」
「調べてみないと不味いわね…」
アテナさまとアフロディーテさまは、さっきとは違う真剣な雰囲気で呟くのだった…。
イモジャー姿で。
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「ふぁぁぁぁぁ…」
「朝からおっきな欠伸なの」
朝の光の中を、学校の教室で快人は机に突っ伏し大きな欠伸をする。
なのははそんな快人を呆れ顔で見ていた。
「そりゃ重大な役目を夜通しやって疲れてるんだよ」
「なに? もしかして聖闘士(セイント)関係の何か?」
声を潜めて囁くなのはに、快人は首を振る。
「うんにゃ、昨日発売したゲーム攻略」
「ダメ人間だぁぁ!!」
幼馴染のダメさ加減になのはは頭を抱える。
あれから…時の庭園での戦いから2週間がたっていた。
快人たちの怪我もすっかり癒え、なのはの周りには以前と変わらない生活が戻っている。
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あの戦いの後、回復した快人とシュウトはプレシアの治療を行った。
快人の小宇宙(コスモ)で生命力と回復力を増大させ、その間にシュウトの毒で病気だけを殺すという、聞いているだけでは良く分からない治療だった。
それで何とかなってしまうのだから、本当にでたらめである。
「ここまで出鱈目だといっそ清清しいわ」
実際にこの治療をうけたプレシアはそう漏らしていた。
しかし過程はどうあれ、プレシアの回復はフェイトにとって喜ばしいもので、病の治ったプレシアに泣きながらフェイトが抱きついたことは記憶に新しい。
そして、そんなフェイトを優しく抱きとめるプレシアは間違いなく母親のそれだった。
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目的を果たしたユーノは残ったジュエルシード20個を持って、ミッドチルダへと帰っていった。
「本当にありがとう。 約束どおり、口裏はうまく合わせるよ。
とてもじゃないけど、聖闘士(セイント)のことは話せないだろうからね」
ユーノは最後にそう言って去って行った。
事件の後、聖闘士(セイント)のことをあまり知られたくない快人たちから、以前提案があったように話を合わせるように頼んだのだ。
これにはプレシアも協力的で、結局ジュエルシードは『プレシアの助けで回収、一つは誤ってプレシアが使用してしまい病が治った』ということになっている。
快人は常々面倒ごとはごめんだ、といっていたのでユーノが頑張ってくれたのだ。
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そしてフェイトたちテスタロッサ家は…
「皆さん、朝会の前に今日は2人転校生を紹介します。 入って、2人とも」
担任の声に教室に入ってくる少年と少女。
少年の整った顔立ちに女子の幾人かが黄色い声を上げ、少女の可憐な容姿に男子の間でどよめきが起こる。
「シュウト=ウオズミです。 よろしくお願いします」
「はじめまして、フェイト=テスタロッサです。 その…よろしくお願いします」
シュウトははにかみながら、フェイトはやや緊張した面持ちで自己紹介をした。
テスタロッサ家は結局、地球へと移住してくることになった。
プレシアがフェイトと母娘をやり直すにあたって心機一転を考え、フェイトの意思を組んだ結果である。
シュウトとフェイトの視線に気がついた快人・なのは・アリサ・すずかは、軽く手を振り反応する。
そんなやってきた友達を見てから、なのはは快人の方を見た。
相変わらず、眠そうな顔をした何とも頼りない姿。
だが、なのははその本当の姿を知っている。
黄金の聖衣(クロス)を纏い、誰よりも強く頼れるその姿を。
そしてそんな快人が言っていた言葉を思い出すと、頬が緩む。
(なのはは俺の勝利の女神だ! って)
快人にそのことを言うと、『テンションが上がりすぎて口走った妄言だから忘れろ!』と必ず言うが、忘れられるはずもない。
いつでも隣にいることを許してくれたようなその発言が嬉しかったのだから。
今回のことで、拙いながらなのはもフェイトも小宇宙(コスモ)に目覚めた。
今はそれを含め、いろんなことを学んでいる最中だ。
今日も学校が終わったら、魔法に小宇宙(コスモ)に、たくさん練習しよう。
ずっとずっとあの黄金の隣で、勝利の女神でいられるように…。
たくさんのものを救えるように…。
今よりもっとずっと強くなろう…なのははそんな風に思うのだった…。
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快人はやって来たシュウトを見てこれからの事を思う。
(神様…か)
どんな意図がある、どこの神かは分からないが、自分たちによくない感情を持つその存在が今回のことで確認された。
今後も騒がしく、はた迷惑な『何か』が自分や弟には降りかかってくるのだろう。
だが、それに負けることは許されない。
この身に纏う、黄金聖衣(ゴールドクロス)にかけて。
(俺もシュウトも強くならないとな…)
快人はそう心のうちで呟くと、とりあえず今は目を瞑って惰眠を貪ることにする。
こうして2人の黄金聖闘士(ゴールドセイント)と2人の魔法少女はつかの間の休息へ浸るのだった…。
無印編 完
無印編、完。
次回から幕間を挟み、夏休み編に突入。
敵は夏といえば…?