「はぁ!!」
フェイトが渾身の魔力を込めた魔力刃をヤンへと叩きつける。
だがその魔力刃はヤンの構えた楯へと防がれてしまった。
楯には傷一つ付かず、逆に魔力刃の方が欠けてしまっている。
「何て…硬い!?」
「この
そんな子供だましの力が通用するものか」
そう言って拳を振り上げるヤン。
「フェイトちゃん、避けて!!」
その言葉にフェイトが即座に飛び退くと、なのはのアクセルシューターが高速でヤンへと襲いかかる。
その数12。それがヤンを包囲するように迫る。
だが。
「ふん!!」
「嘘…」
「一発で…」
ヤンの右腕が振るわれると、全てのアクセルシューターが撃ち落とされていた。
なのはとフェイトの目には一瞬、ヤンの腕が12に分かれた様に見えた。
ほぼ同時に12回の拳を振るい、アクセルシューターを撃ち落としたのだ。
明らかに音速を超える速度の拳…その事実になのはとフェイトは戦慄しながらもヤンへと視線を巡ると次の一手を考える。
ヤンはそんな驚愕する2人の少女をさも面白そうに見つめていた。
「どうした、手品は終わりか?
来ないのなら…こちらから行くぞ」
そして振るわれるヤンの右拳。音速を遥かに超えるそれは
なのはとフェイトは空中に飛び上がりその衝撃波を回避するが、連続して放たれるそれは徐々に回避を難しくさせる。
動いたのはなのはだった。
元々、なのはの機動力は高くない。フェイトのような『避けて当てる』魔導士と違い、その防御力と攻撃力を持って攻める『受けて放つ』タイプの魔導士なのだ。
快人がなのはとフェイトを、あるゲームから『なのははスーパー系、フェイトはリアル系』と称していたが、分かりやすい表し方である。
とにかく、回避し続けることが不可能と判断したなのはは防御魔法を展開する。
「ほぅ…」
その様子にヤンは驚きの声を上げた。
なのはの防御魔法は
セージやアルバフィカの下でつんだ、
「行くよ、レイジングハート!!」
自身の相棒であるデバイスに告げ、なのはは攻撃の準備に入る。
即座に収束されていくなのはの魔力。それに
「ディバインバスター!!」
放たれた桃色の閃光は、迫る衝撃波を弾き散らしながらヤンへと迫る。
ヤンはその閃光を左手の楯で防いでいた。
「なかなかの威力だが…この最強の楯の前では涼風同然よ!」
その言葉通り、なのは渾身の収束魔法はヤンの構えた楯の前に霧散していく。
その衝撃すら全て防がれ、ヤンへのダメージなどありはしない。
だが、魔法少女たちの狙いはそこでは無かった。
「そんなこと…!」
「百も承知!!」
なのはのディバインバスターと同時に、フェイトはヤンの後ろへと回り込んでいた。
今のままの2人では、それを破壊することは不可能だろう。
だったら、楯以外を狙えばいい。
なのはの砲撃で楯の防御を集中させ、同時に別方向からフェイトが攻めるという作戦だ。
この作戦を瞬時に実行に移せるあたり、なのはとフェイトのコンビネーションの高さは驚嘆に値する。
フェイトはハーケンに
それを
しかし…。
「無駄なことを!」
ヤンは振るわれたハーケンの刃を、『楯の付いていない右腕』で受け止めていた。
ハーケンの刃を全力で振るったというのに、
そこでなのはとフェイトは自分たちの認識の甘さを思い知った。
楯部分以外ならその強度を突破できると思ったが、それは間違いだ。
そしてなのはとフェイトは理解する。
ヤンの
「まずはお前だ、小娘!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
驚愕によって思考に空白が出来てしまったフェイトにヤンの拳が振るわれた。
バックステップによって拳の直撃こそ避けるが、そこから発生する強大な
咄嗟に
「フェイトちゃん!?」
「次はお前だ、小娘」
「!?」
吹き飛ばされるフェイトが目に映った次の瞬間には、なのはの目の前にヤンがいた。
慌ててなのはもフェイトと同じく
フェイトと違い、なのはの防御魔法はかなり強固だ。さらに
驚愕で目を見開くなのはの腕をヤンが掴むと、その身体を地面へと投げつけた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「!? なのは!?」
地面をバウンドするように転がるなのはが、先に倒れていたフェイトへと突っ込んだ。
もつれるように吹き飛ばされた2人は並んで地面へと倒れ伏す。
「く、うぅぅぅぅ…」
「立た…ないと…」
バリアジャケットによって致命的なダメージこそないが、体中に傷を負った2人はボロボロだった。
なのはは地面についた左手に力を込め、必死で立ち上がろうとする。
フェイトはデバイスに力を込め、立ち上がろうとしていた。
だが、2人とも膝立ちの状態から立ち上がることが出来ない。
しかし次の瞬間、2人は傷すら忘れたかのような速度で空中を仰ぎ見た。
そこには空中高く跳んだヤンの姿がある。
そして、2人にも分かるほどの強大な
「ここまでだ、小娘ども。
この
そして大地に向かって一直線に落ちてくる。
その姿はさながらドリルだ。
「ボーン・クラッシュ・スクリュー!!」
直撃ならば相手を
それが大地へと突き刺さる。
そこから発生した、いままでとは桁が違う衝撃波がなのはとフェイトに襲いかかろうと迫る。
「フェイトちゃん!」
「なのは!!」
なのはは左腕を、フェイトは右腕を突き出し防御魔法を展開する。
だがヤンの拳一発で砕けた防御魔法が、この衝撃波を防げる訳が無い。
2人は衝撃波と閃光に包まれたのだった…。
~~~~~~~~~~~~~~~
「ふふふ…さて、エリス様の元に連れ帰るか」
爆心地から立ち上がったヤンは、ゆっくりと未だ立ち昇る土煙の中を歩きだす。
ヤンはなのはとフェイトの戦闘不能を疑ってはいなかった。
それも当然である。
生け捕りにして連れてこいという命令であるから手加減はしたが、それでも自身の必殺の技であるボーン・クラッシュ・スクリューの衝撃を受けたのだ。
全身の骨が数本は砕け散り、まともに動けないことは疑いようもない。
そう考えていたヤンは、そこで奇妙なことに気付いた。
土煙の向こうから、
だが、ヤンの感じる
それどころか、先程まで感じた
「バカな、あの衝撃を耐えれたというか!?」
ヤンの拳一発で砕けたような障壁では、絶対にボーン・クラッシュ・スクリューの衝撃を防げるはずが無いのだ。
一体どんな手を使ったというのか…ヤンは土煙の向こうへと目を凝らす。
そして…ヤンは見た。
「はぁはぁ…」
「く…はぁ…」
2人の展開した防御魔法はその場に健在だった。
肩で苦しそうに息をしながらも、なのはもフェイトも腕を突き出している。
そして…その腕は黄金の輝きを放っていた。
「
ヤンは驚きで目を見開いた。
ヤンの言う通り、なのはの左腕には
これは突入前に、2人の幼馴染がなのはとフェイトに施した『保険』だった。
互いのインテリジェントデバイスに忍ばせておき、危険になったら使うようにと託したものである。
その『保険』の力に、なのはとフェイトは目を見開いた。
「凄いの、これ!」
「私たちの
使用者の
そして最高位たる
その力でなのはとフェイトは
動揺するヤンの前に立ち上がった2人は、その
「フェイトちゃん、あの人を倒すなら今しかない!」
「行くよ、なのは!」
2人は一気に勝負を決めるべくヤンへ向かって大地を蹴る。
なのはとフェイトにとって、勝機は今しか無かった。
2人の怪我は決して軽いものでは無かったし、魔力も
そして2人にはもう一つ…『
それは使用者の
強大な
それにより強固な防御力と機動性の確保という2つを両立させることができるのだ。
だが、これはメリットであると同時に、逆のデメリットもありえることを意味する。
使用者が
そして、当然のことながら最高位である
なのはやフェイトの
それを今2人が扱えているのは、直前に快人とシュウトが込めた
いわば、今の
そしてそのバッテリー…快人たちの込めた
快人とシュウトは1~2時間はもつはずとは言っていたが確証はないし、実際に戦闘で使ったことは無いのだ。
戦闘機動を行ったらわずか数分でガス欠という可能性もありうる。
これが2人が最初から
だからこそ、2人の勝機はここしかない。
「はぁぁぁぁ!!」
フェイトは出来うる限りの魔力と
「くっ…確かに威力は上がっているが、その程度で俺の最強の楯は…」
「なら…受けてみて、この攻撃!」
フェイトが飛びのき、ヤンが声に反応し天を仰ぎ見ると、なのはに向けて星が集まるかの様に魔力が流れて行く。
そして、なのははその魔法にありったけの
「スターライト・ブレイカー!!」
それは光の奔流。
あのデスマスクすら唸らせた、なのはの必殺奥義。
ヤンはその奔流へ向けて、自慢の楯を構えた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
ヤンは雄叫びを上げながらその奔流を受け止めていた。
上からの圧力により空間が軋みのような音を上げる。
その永遠に続くかに思われた軋みの音も、なのはの光の奔流の終わりと共に消えた。
「は、はは! 耐えきったぞ、小娘!!」
なのは最大の攻撃を防ぎきったヤンは、今度こそトドメを刺そうと視線を巡らせるがその時、ヤンの目にフェイトの姿が入った。
低く屈めた身体はまるで引き絞られた弓のように、そして握るデバイスには魔力の刃がまるで槍のように突き出している。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
そしてフェイトが飛び出した。
その速度は初速から音速を超え、瞬きの間にヤンへと接近する。
ヤンが楯を構え、フェイトが魔法と
スコン!
乾いた音と共に、静寂があたりに戻る。
フェイトの突き出した魔力刃が、ヤンの楯とぶつかり合っていた。
静寂。そして…。
「ば、バカな…」
ピシピシという音が、ヤンの楯から聞こえ始めた。
それは少しずつ、だが確実に進む崩壊の音。
楯の表面にまるで蜘蛛の巣のようにひびが入り始める。
そして…そのひびは次第に大きなものになり、遂に楯が真っ二つに割れた。
なのはとフェイトの執念が、
「バカな! このヤンの最強の楯がこんな小娘どもに!?」
最強と信じた自分の楯の崩壊に、驚愕で目を見開くヤン。
そして2人の魔法少女は最後の仕上げのために、残る力を込めた。
「フェイトちゃん!」
「なのは!」
目と目で通じあうなのはとフェイト。
「スターライト・ブレイカー!!」
「サンダー・スマッシャー!!」
再チャージを完了したなのはが再びスターライト・ブレイカーを放ち、飛び上がったフェイトが全力のサンダー・スマッシャーを放つ。
楯を失ったヤンには、もはやその閃光を防ぐすべは無かった。
「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
圧倒的な爆発の閃光に、ヤンは巻き込まれていった…。
~~~~~~~~~~~~~~~
「はぁはぁ…」
なのはとフェイトは荒い息のまま、地面へと降り立つ。
互いにもはや魔力も
2人はデバイスを構えながら巻き上がった土煙に目を凝らす。
そして…その土煙の向こう側にうっすらと人型の影を見た。
「「!?」」
2人の間に緊張が走る。
だが、ヤンはそのままグラリと傾き、大地にうつ伏せで倒れ込んだ。
起き上がる気配はない。
「やった…の?」
「私たち…
その瞬間、2人は糸が切れた人形のようにガクリと膝を付いていた。
2人の状態はひどいものだった。
身体は傷だらけで、魔力・
そして激しく傷ついていたのは2人だけではなかった。
「レイジングハート…ごめんね」
『マスター、お気になさらずに』
「バルディッシュ、大丈夫?」
『まだ、稼働は可能です』
2人の言葉に、相棒であるデバイスは答えるがその音声にはノイズが混じっていた。
2人のデバイスには、バリバリとショートしたような電光が走っている。
これで、2人の戦闘能力はほとんど無くなってしまった。
しかし、2人は立ち止まらない。
「もうひと頑張りしないと…」
「そうだね。 アリサが、すずかが待ってる…」
まだ親友を助け出していないのだ、ここで立ち止まるわけにはいかない。
そう己を奮い立たせ、2人が立ち上がったそのときだった。
「ふん、使えない奴め…」
聞こえてきたその声に、2人はバッと振り返る。
そこに居たのは2人のローブの人影。
その人影がバッとローブを剥ぎ取る。
「
「オリオン座のジャガー」
「そんな…」
「新手が…2人!?」
なのはとフェイトが新たに現れた
そんな中、ふわりと一人の少女が舞い降りる。
それは金色の髪をした、美しい少女。貫頭衣のような白い服に、矛を杖のように持ちながら優雅に大地に舞い降りた。
まるで主人を前にしたように
だがなのはとフェイトはそんな
その視線は新たに現れた少女に釘付けである。
その少女は、なのはとフェイトのよく知る顔であった。
「何で、どうして…!?」
「何でそいつらと一緒にいるの!?」
なのはとフェイトは信じられないといった顔で目を見開く。
そして、2人はその少女の名を呼んだ。
「「アリサ(ちゃん)!!?」」
その名前で呼ばれた少女は、形容しようのない邪悪な笑みで嗤うのだった…。
魔法少女VS楯座のヤンでした。
魔導士もやろうと思えば聖闘士を凌駕する、という話。
今後もちょくちょく起こるだろう魔導士VS聖闘士での作者なりの見解です。
単一では聖闘士>魔導士ですが、複数で協力できれば凌駕できないレベルでは無いということ。
もっとも黄金聖闘士クラスになれば、どうやっても魔導士ではどうにもできませんが…。
戦いに勝ったなのはとフェイトですが、ピンチは続きます。
次回は聖闘士星矢で有名な召喚魔法発動。
召喚魔法「やっぱり来てくれたんだね!」
…劇場版の瞬はニーサン召喚装置というのが情けない。